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2016年5月11日水曜日

中国は「中所得国の罠」を抜けられない 今後の経済成長は線香花火に―【私の論評】中国の分析でも、中国は罠にどっぷりとはまり込むことになる(゚д゚)!

中国は「中所得国の罠」を抜けられない 今後の経済成長は線香花火に

中所得国の罠
一国の経済発展は対外取引が起爆剤になっている。鎖国したまま経済発展することは不可能であり、自由貿易体制が欠かせない。それは経済学の歴史でもある。しかし、今の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)には、中国が参加できない理由がある。

TPPには貿易だけでなく投資の自由化も含まれている。しかし、中国は社会主義なので、生産手段の私有化を前提とする投資の自由化は基本的に受け入れられない。

また、TPPでは国有企業が大きな障害になる。国有企業が大半を占める中国は、民営化などを迫られるだろうが、国有企業改革は国家体制を揺るがす事態につながりかねないのだ。

「1人当たり国内総生産(GDP)1万ドル」の水準は、「中所得国の罠」といわれ、なかなか突破できない。突破には対外取引自由化などが必要となるが、中国にはそれができない。

別の観点からもこの現象が説明できる。第2次産業が十分成熟しないうちに消費主導へ脱工業化シフトを急ぐと、成長が息切れしてしまうのだ。1980年以降の1人当たりGDPと第2次産業就業者比率の推移を見ると、安定成長国は成長停滞国に比べその比率が高い傾向にある。1人当たりGDPが1万ドルを超えてからは、第2次産業就業者のシェアが低下傾向にあり、安定成長国でも成長力の屈折の時期と重なっている。

一方、成長停滞国はその段階に達する前に第2次産業が頭打ちとなり、「早すぎる脱工業化」の現象が生じる。中国は製造業拡大による成長段階の途上にあり、第2次産業のシェア拡大がこれまでの高い成長を支えてきたことが分かる。

李克強首相らは「最近は消費経済にシフトしつつある」と強調している。だが、現段階ではまだ、脱工業化できるほど第2次産業のシェアは十分に高くない。中国では30%程度までしか上がっておらず、成長停滞国と同じレベルだ。成長国は35%以上になっている。この段階で中国の第2次産業シェアが頭打ちになると、成長停滞国の二の舞いになるだろう。

これは中国当局の「中国経済は消費経済に移行しているので、経済成長は心配ない」という説明が当てにならないことを示している。

一般には可処分所得があって国内品を買えば消費、海外品を買えば輸入なので、両者は同じ方向に変化するのに、中国では消費と輸入が違いすぎる。さらに、中国がこの段階で消費経済に移行すると、「早すぎる脱工業化」で尻すぼみとなり、「中所得国の罠」は抜けられなくなる。

また、中国の第2次産業は国有企業が中心なので、技術の進歩などの成果を取り込めない。自由主義国の第2次産業は、貿易自由化、資本自由化を通して全国あるいは世界の市場に打って出られるが、中国の場合、一党独裁が完全な貿易・資本自由化を許さず、第2次産業を十分に発展させる邪魔になるという構造である。功に逸(はや)った中国だが、今後の経済成長は“線香花火”の恐れ大だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】中国の分析でも、中国は罠にどっぷりとはまり込むことになる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事は、高橋洋一氏の分析です。中国人はどのように分析しているのか、楼継偉財政相の分席を以下に掲載します。

楼継偉(ロウ・ジーウェイ)中国財政相

楼継偉(ロウ・ジーウェイ)財政相は昨年4月下旬、北京の清華大学で開催された「清華中国経済ハイレベルフォーラム」の講演で「中国は今後5年から10年の間に50%以上の可能性で『中所得国の罠』に陥る」と発言して大きな波紋を呼んでいました。

具体的には、人口1人当たりの国内総生産(GDP)がほぼ3000ドル(約37万3000円)に近づくと、急速な経済発展によって蓄積された矛盾が集中的に爆発し成長が止まり、社会が混乱し争乱状態に陥る場合もあります。例えば、ブラジル、アルゼンチン、チリ、マレーシア、フィリピンなどの国々です。いずれも3000ドルから5000ドル(約62万2000円)の発展段階でもがいており、一時的にせよ、治安が不安定だった時期もありました。

世界第2の経済大国である中国の財政相が、中国も同じような状態になる可能性があると自ら語ったのですから、事態はかんり深刻です。

しかも、習近平(シー・ジンピン)国家主席は昨年末から中国が高度成長期を過ぎてなだらかな成長が続く「新常態(ニューノーマル)」に入ったと宣言しましたが、「中国は中所得国の罠には陥らない」と断言していました。ところが、習氏の経済ブレーンでもある楼氏が、罠に落ちる確率は5分5分以上だと悲観的な見方を明らかにしているのだから驚くべきことです。

楼氏は続けて、罠を乗り越えるには、「年間5〜7%の経済成長を実現し、今後5〜7年の間に全面的な改革を行い、中国市場に依然として存在する『ひずみ』を解決しなければならない」と対応策を提起しました。

その「ひずみ」について、楼氏は1・農業改革、2・戸籍改革、3・労働・雇用改革、4・土地改革、5・社会保険改革―の5点を挙げていました。いずれの問題も新中国建国以来の難問ばかりです。

ちなみに、中所得国の罠の一般的な10大特徴は次の通りです。1・経済成長の低下あるいは停滞、2・民主の混乱、3・貧富の格差、4・腐敗の多発、5・過度の都市化、6・社会公共サービスの不足、7・就職難、8・社会の動揺、9・信仰の欠如、10・金融体制の脆弱さ。驚くべきことに現在の中国にはこれが、すべて当てはまっています。

実質経済成長率と一人当たりGDPの推移(60年代以降):1万ドル前後で中所得国の罠に陥る国も

習近平指導部は1つでも対策を誤れば、奈落の底に落ちるような極めて厳しい状況に置かれていました。

このような状況のなかで、習氏が打ち出したのが、アジアインフラ投資銀行(AIIB)でした。習氏は中央アジアを中心とする陸の「シルクロード経済ベルト」と、東南アジアやインド洋沿海の国々を対象とした「21世紀海のシルクロード」という「2つのシルクロード」構想を打ち上げ、中央アジアの「絹の道」に高速鉄道という「鉄の道」を敷設。と同時に、インド洋のシーレーンに多数の港湾を建設しようとしています。AIIB創設の目的は、これらのインフラ建設プロジェクトのために資金を提供することにありました。

さらに、これらのプロジェクトで中国内の余剰鋼材やセメントを使用すれば、中国に資金が還流します。その結果、「年間5〜7%の経済成長」も可能になり、中所得国の罠に陥らない可能性が大きくなります。

習主席も出席した1月のAIIB開業式。金立群総裁は革新性を強調したが…
AIIBには昨年57カ国以上もの国々が名乗りを上げていましたが、それでも、このような壮大なトリックを現実化しようと、中国が執拗に誘っているのが日本でした。

昨年、4月には安倍晋三首相と習氏による2回目の日中首脳会談が行われました。習氏は一昨年11月の初の首脳会談での仏頂面とは打って変わって笑顔で対応。「AIIBは国際的に一定の評価を得ており、日本の評価が得られると信じている。日本が参加すれば、わが方も日本の立場を最大限尊重する」と語り、日本のAIIB参加を強く要請しましたた。

その後、4月から5月にかけて、序列第2位の李克強(リー・カーチアン)首相や3位の張徳江(ジャン・ダージャン)全国人民代表大会(全人代)委員長、4位の兪正声(ユー・ジョンション)中国人民政治協商会議(政協)主席ら日本側要人と相次いで会談に応じ、習氏同様、AIIB入りを熱心に説きました。

中国としては、日本が入ることでAIIBの格付けを高くし、自らの思惑を現実化する狙いがあるのは明らかでした。しかしながら、ご存知のように、日米両国ともAIIBには加入しませんでした。

このAIIBは現状では、その実態は日米や欧州との協調融資に頼り、独自の資金調達は先が見えないという羊頭狗肉であり、さらに習近平政権肝いりの別組織との内紛も生じかねない状況です。

大きな懸念材料である格付け問題は未解決です。開発銀行は通常、融資資金を調達するために債券を発行するのですが、最大の出資国である中国の格付けが反映されるAIIBは、ADBのように「トリプルA」格を取得するのは困難で、当面、無格付けで債券を発行する方針とみられます。

先行して中国とブラジル、ロシア、インド、南アフリカ共和国のBRICS5カ国が設立した「新開発銀行」も、債券発行で「トリプルA格」を取得したのは、中国国内の2つの金融機関だけという状況でした。

米格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは今年に入って、中国の信用格付け見通しを引き下げています。

融資資金を利率の高い借り入れで調達するにせよ、参加国からの出資金でまかなうにせよ限界があります。ADB (アジア開発銀行)や欧州復興開発銀行(EBRD)との協調融資で、先進国の助け舟を受けるしかないのが実情です。

組織運営でも中国のもくろみ違いが生じています。欧州諸国が雪崩を打ってAIIBに参加したことは中国にとっては“うれしい誤算”でした。うるさ型の先進国がメンバーとなったことでAIIBのステータスは上がったものの、中国のペースで運営することには限界が出でしまいました。

中国のための銀行だとの批判をかわすために体裁を取り繕ったところ、身動きが取りづらくなってしまったのです。

このような状況では、中国の頼みの綱のAIIBもまともに機能しそうにありません。そうなると、習近平の中央アジアの「絹の道」に高速鉄道という「鉄の道」を敷設し、インド洋のシーレーンに多数の港湾を建設しようという目論見は、頓挫することになりそうです。

しかし、この構想は最初から無理があったのではないかと思います。中央アジアの国々それに、ロシアにとっては、中国が中央アジアに高速鉄道網を築くことは、中国が軍隊や戦車などの兵器を迅速に送ることができるようになることを意味します。

インド洋のシーレーンに多数の港湾を建設することは、中国の海洋覇権を南シナ海からさらにインドにまで拡張することを意味します。

中国はシルクロード経済圏構想でアジアの地政学的中心目指しているが・・・・
このようなことを周辺諸国や、日米が合意すると思ったのでしょうか。だとしたら、習近平は稀代の大馬鹿者としかいいようがありません。習近平は、以前米オバマ大統領との会談で「太平洋には両国を受け入れる十分な空間がある」と言い、事実上太平洋を2分割する提案をしましたが、にべもなく拒絶されています。

EU諸国などは、中国から地理的に相当離れいるので、儲かりさえすれば良いくらいの考えで、AIIBに参加したのでしょうが、ロシアは中国がどのような計画を持っているのか、探るために加入したのでしょう。中国の意図がわかれば、はやいうちにそれを潰すこともできます。鉄道網が構築されたとしても、その弱点を把握し、最も少ない努力と時間で、鉄道網を破壊する方途を考えだすことでしょう。

それに、ロシアは、ウクライナ問題で、欧米から制裁を受けていますし、国内にめぼしい産業がなく石油や天然ガスなどの資源が頼みの綱でしたが、原油価格の低落を受け、経済がかなり低迷しています。このままでいくと、国家基金が2019年初めに底つくといわれています。そのため、ロシアとしてもAIIBで儲かるならそれは、それで良いという考えだと思います。 

このような、AIIBに日米が、参加するなどと思い込むのは、あまりにも軽薄です。安倍総理が敢えて敵に塩を送るような真似はしないのは最初からわかり切っていることです。それに、いかに及び腰のオバマとはいえ、AIIBに加入するほどのお人好しではありません。

いずれ、AIIBは有名無実化することでしょう。そうして、高橋洋一氏が指摘するように、中国は、TPPには参加できません。そうなると、しばらく中国は国内でも、海外でもインフラ投資ができないことになります。

そうなると、中国はやはり、中進国の罠にどっぷりとはまるしかないわけです。

さらに、仮にオバマが稀代のお人好しで、米国がAIIBに参加したとしても、確かに中国はしばらくの間海外へのインフラ投資で経済がまた発展しだすかもしれません。

しかし、良く考えてみてください。海外インフラ投資が活発になれば、中国は再度経済発展をし始めることでしょう。しかし、海外インフラ投資が一巡して、インフラの投資先がなくなったらどうなるでしょう。無論、成長は止まります。習近平を含む中国共産党の幹部らは、このような単純なことも理解できないようです。

お先真っ暗の習近平主席。3月13日、中国時間の午後5時、中国政府の通信社「新華社」の
ウェブサイトに「中国最後の指導者、習近平」という報道が現れた。無論誤りだが・・・
インフラ投資で中国経済が一時息を吹替したにしても、中国市場に依然として存在する『ひずみ』を解決されていなければ、5年から10年もすれば、また中進国の罠にはまりこむしかなくなります。

現在の中国の経済をたてなおすためには、楼継偉財政相が指摘するように、1・農業改革、2・戸籍改革、3・労働・雇用改革、4・土地改革、5・社会保険改革―の5点を何とかしなければならなのです。

そのためには、まずはこのブロクでも何度も主張しているように、ある程度以上の民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめなければならないのです。現在の先進国は、これをいずれかの時期に達成し、経済的中間層を多数輩出し、それらが、自由で活発な社会経済活動がすることにより、社会・経済が発展し、中進国の罠にはまることなく、経済的にも軍事的にも強国になったのです。

今のままでは、中国は中進国の罠にどっぷりと嵌り込むしかなくなります。その果てには、図体の大きなだけの、アジアの凡庸な独裁国に成り果てるしかなくなります。見込みがあるとすれば、いくつかに分裂して、沿海部の大都市部を含む国もしくは、国々が、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をなしとげ、急速に発展することです。

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