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3月12日爆発後の1号機 |
東京電力福島第1原発1号機への海水注入が一時中断したとされた問題で、東京電力は26日、実際には海水注入の停止は行われていなかったと発表した。同原発の吉田昌郎所長が「事故の進展を防止するためには、原子炉への注水の継続が何よりも重要」と判断し、実際に停止は行わなかったという。本店の指示に反し、現場が独自の判断をしていた。指示系統のあり方が問題となるとともに、事故対応をめぐる連携の悪さが改めて浮き彫りとなった。
会見した東電の武藤栄副社長は「これまで、説明してきた中身が、現場が錯(さく)綜(そう)する中で事実と違い、申し訳ない。コミュニケーションの行き違いがあった」と謝罪した。
吉田所長の判断については「技術的には妥当だった」(武藤副社長)とした。吉田所長の処分については今後検討するという。
東電によると、海水注入は3月12日午後7時4分に開始。21分後の午後7時25分に、首相官邸に派遣した東電社員から「首相の了解が得られていない」との連絡が東電本店にあったため、本店と原発でテレビ会議を行い、注入の停止を決定した。しかし、吉田所長はその決定に従わず、独自の判断で注入を続けたという。
東電本店の社員が24日から25日にかけて、状況を再確認するため同原発で吉田所長から事情を聴取し、事実が判明した。吉田所長は「新聞や国会で話題になっており、IAEA(国際原子力機関)の調査団も来ていることから、事故の評価解析は正しい事実に基づいて行われるべきだと考えた」と説明し、事実を明らかにしたという。
東電は21日に同問題の経緯を初めて明らかにした際、12日午後8時20分に海水注入を再開したと説明していた。この点について東電は「当時、発電所からそういった報告があったが、適切な報告ではなかった」と発表内容を訂正した。東電は21日に問題の経緯を明らかにした時点で、吉田所長からの事情聴取は行っていなかったという。
同問題をめぐっては、海水注入が原子炉を冷却するための唯一の方法だったため、菅直人首相の言動を受け、東電が海水注入を停止した点などが、国会でも問題視されていた。
【私の論評】ブラックホーク・ダウンの事例は現場の指揮官が意思決定できることの重要性を示している!!
私は、今回のような、原発に限らす、とにかく、戦争の異常な状況下での現場主導での判断についての問題になるといつも思い出すのが、映画「ブラックホーク・ダウン」のモデルともなった、モガディシュの戦闘です。
さて、モガディシュの戦闘について、以下に簡単に掲載します。
アメリカはソマリア内戦の一方に肩入れし、特殊部隊を使って敵側指導者の拉致を試みましたが、特殊部隊の乗ってきたヘリがソマリア民兵に撃墜されました。 ヘリを失った特殊部隊は敵に包囲されたましたが、翌朝国連軍に助けられました。
予想外の被害がでたものの、作戦は成功。 死者は米兵18名、国連兵1名、ソマリア民兵&市民350~1,000名以上とされています。
モハメッド・ファッラ・アイディードの副官たち(所在地はモガディシュのバッカラ市場) アイディードの外務大臣 オマール・サラッド アイディードの最高政治顧問 モハメッド・ハッサン・アウレを捕らえること目的とし 1993年10月の3から4日にかけての15時間の間(当初は30分の予定) ソマリアの首都モガディシュにおいて行われたもので 前段階として希望の回復作戦が行われていました。
司令官および司令部は ウィリアム・ガリソン将軍、統合タスクフォース指令センター 。民兵のほうは不明参加人数および死者数は先の通り。参加人数は、アメリカ側180名、ソマリア民兵2000人以上とされています。
結果を箇条書きで簡潔にまとめると、以下のようになります。
ハブル・ジェディド派の指導者たちの捕縛に成功、作戦目標は達成。タスク・フォースの敗北、ブラックホークヘリ2機の大破、アメリカ軍兵士18人が死亡、73人が負傷。捕虜も1名殺害されるがその十倍以上は民兵が死んだとされています。
The True Story Of Black Hawk Down
ちなみにこの作戦は、国連主導のものではなく ビル・クリントン大統領率いる米国の単独で 米軍以外の兵力は一切投入されていません。ただし、収集がつかなくなって、どうしようもなくなってから、国連軍が応援に出ています。これは、確か、パキスタン軍で、米軍にはなかった、戦車など投入しました。
この話では、いつも、ヘリコプターが撃墜されたことが、強調されますが、映画の中でも、かなり長い距離をあちらこちらと、市内を車両であちこと動きまわり、結局、敵の銃弾にさらされて、出さなくて良い死者や、負傷者を多数出してしまったことが良くわかります。これは、現実の戦闘でもそうだったといわれています。とにかく、本土からの指示のももと、市内をあちこち翻弄されるように長い距離を走りまくりました。作戦の目的が達せられても、死者や、負傷者がこれだけ大きければ、失敗したといわれても仕方ないと思います。
これに関しては、戦闘中にいちいち、アメリカ本国と連絡をとり、命令などを聴いていたため、対処が遅れ、想像以上に死者、負傷者を出してしまったという反省があり、それ以降、アメリカ軍では、現地指揮官の権限の幅を大きく広げたり、兵士の権限も大幅に広げています。
しかし、これなど、実は、第二次世界大戦中などでは、普通に行われていたことだと思います。第一、あのころは、通信設備も今と比較すれば、整っていませんでしたし、戦争のほとんどは実質現場の最高指揮官が判断して行っていました。
皆さんも、アメリカ映画などみていれば、現場の第一線の兵士が、通信機で、敵の座標を指示して、遠隔地の大砲群や、複数艦船などから、砲撃させるのをみたことはないですか。あのようなときに、いちいち、本国や、かなり上の層にまで、指示をあおいでいたら、戦闘や、戦争そのものに負けてしまいます。
原発も、平時はそんなことはありませんが、津波におそわれた後では戦闘と同じことだと思います。津波に限らず、他でも、想定外の事故や、攻撃などあると思うのが当たり前だと思います。
菅さんが、なぜ、注水に関して、了解しなかったのか、あるいは、吉田所長がなぜ了解なしに、注水を継続したのか、それらを追求して真実を明らかにすることも必要だとは思いますが、上記のアメリカ軍でも、意思決定方式を変えているわけですから、今までの意思決定の不備など今回の事例を参考にして、変更していくべきだと思います。
それなしに、菅総理がどうの、吉田所長がどうの、東電がどうのということばかり論議していては、全く埒があかないと思います。
今回の原発事故は、国のエネルギー政策という大きな問題、課題への対応もさることながら、類似もしくは、予想もしないような危機に瀕したとき、どのような意思決定をすべきかなどを含めて、危機管理システムの必要性を訴えかけているよう思えます。
ドラッカーもいっています、頻々として類似の問題が発生する場合は、最早、人の問題ではない、システムの問題であり、すみやかにシステムを変更すべきだと主張しています。まさに、その通だと思います。菅さん、いろいろと非難されていますが、これから、どのように対処するかで、菅さんに対する歴史的評価も変わって来ると思います。クリントン氏は、上記の失敗の後、真摯に反省して、軍隊の意思決定方式を変更したり、現在も引き続き行われている、無人偵察機やそれによる攻撃などへのシフトを最初に意思決定しました。だから、それなりの歴史的評価があります。それをしなかったとしたら、ただの馬鹿でど助平な元大統領となってしまったかもしれません。
菅さんも、このまま何もしなければ、ただの、馬鹿で無能な、空き缶首相ということになるでしょうし。システムを変更すれば、変更したという功績は残ります。さて、これから、菅さんは、どちらの道を選ぶのでしょうか?私は、危機管理システムの構築と、原子力行政の抜本的見直しなどすれば、それなりに評価されることになると思いますが、それは、誰の意見にも左右されない、菅さん自身の意思決定が必要不可欠と思います。
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