まず、アルジェリアで発生したテロ事件について、ひと言、申し上げます。
事件発生以来、政府としては、総力を挙げて情報収集と人命救出に取り組んでまいりました。しかしながら、世界の最前線で活躍する、何の罪もない日本人が犠牲となったことは、痛恨の極みです。残された御家族の方々のお気持ちを思うと、悲痛の念に堪えません。
無辜(むこ)の市民を巻き込んだ卑劣なテロ行為は、決して許されるものではなく、断固として非難します。私たちは、今般の事件の検証を行い、国民の生命・財産を守り抜きます。国際社会と引き続き連携し、テロと戦い続けます。冒頭、その決意を申し上げます。
昨年末の総選挙による国民の審判を経て、自由民主党と公明党の連立政権を発足させ、第96代内閣総理大臣を拝命いたしました。
私は、かつて病のために職を辞し、大きな政治的挫折を経験した人間です。国家のかじ取りをつかさどる重責を改めてお引き受けするからには、過去の反省を教訓として心に刻み、丁寧な対応を心掛けながら、真摯(しんし)に国政運営に当たっていくことを誓います。
国家国民のために再び我が身を捧げんとする私の決意の源は、深き憂国の念にあります。危機的な状況にある我が国の現状を正していくために、なさなければならない使命があると信じるからです。
デフレと円高の泥沼から抜け出せず、50兆円とも言われる莫大な国民の所得と産業の競争力が失われ、どれだけ真面目に働いても暮らしが良くならない、日本経済の危機。
32万人近くにもおよぶ方々が住み慣れた故郷に戻れないまま、遅々として進んでいない、東日本大震災からの復興の危機。
外交政策の基軸が揺らぎ、その足元を見透かすかのように、我が国固有の領土・領海・領空や主権に対する挑発が続く、外交・安全保障の危機。
そして、国の未来を担う子どもたちの中で陰湿ないじめが相次ぎ、この国の歴史や伝統への誇りを失い、世界にごしていくべき学力の低下が危惧(きぐ)される、教育の危機。
このまま、手をこまねいているわけにはいきません。みなさん。今こそ、額に汗して働けば必ず報われ、未来に夢と希望を抱くことができる、真っ当な社会を築いていこうではありませんか。そのためには、日本の未来をおびやかしている数々の危機を何としても突破していかなければなりません。
野党として過ごした3年余り、全国津々浦々で現場の声を丹念に拾い集め、政策のあるべき姿を考え抜いてまいりました。政権与党に復帰した今こそ、温めてきた政策を具体的に実現させ、国民とともに、現下の危機突破に邁進(まいしん)します。
内閣発足に当たって、私はすべての閣僚に「経済再生」「震災復興」「危機管理」に全力を挙げるよう一斉に指示をいたしました。危機の突破は、全閣僚が一丸となって取り組むべき仕事です。同時に、与野党の別を問わず、国政に携わるすべての国会議員が担うべき責任でもあるはずです。
この議場に集うすべての国会議員諸氏に訴えます。危機を突破せんとする国家の確固たる意思を示すため、与野党の叡智(えいち)を結集させ、国力を最大限に発揮させようではありませんか。各党各会派のご理解とご協力を切に求めてやみません。
我が国にとって最大かつ喫緊(きっきん)の課題は、経済の再生です。
私がなぜ、数ある課題のうち経済の再生に最もこだわるのか。それは、長引くデフレや円高が、「頑張る人は報われる」という社会の信頼の基盤を根底から揺るがしていると考えるからです。
政府がどれだけ所得の分配を繰り返しても、持続的な経済成長を通じて富を生み出すことができなければ、経済全体のパイは縮んでいってしまいます。そうなれば、ひとりひとりがどんなに頑張ってみても、個人の手元に残る所得は減っていくばかりです。私たちの安心を支える社会保障の基盤も揺らぎかねません。
これまでの延長線上にある対応では、デフレや円高から抜け出すことはできません。だからこそ、私は、これまでとは次元の違う大胆な政策パッケージを提示します。断固たる決意を持って、強い経済を取り戻していこうではありませんか。
すでに、経済再生の司令塔として日本経済再生本部を設置し、経済財政諮問会議も再起動させました。この布陣をフル回転させ、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」、そして「民間投資を喚起する成長戦略」という“三本の矢”で、経済再生を推し進めます。
金融政策については、従来の政策枠組みを大胆に見直す共同声明を、日本銀行との間で取りまとめました。日本銀行において2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することを含め、政府と日本銀行がそれぞれの責任において、共同声明の内容をきちんと実行していくことが重要であり、政府と日本銀行の一層の緊密な連携を図ってまいります。
加えて、先にまとめた緊急経済対策で、景気を下支えし、成長力を強化します。これから提出する補正予算は、その裏付けとなるものです。「復興・防災対策」「成長による富の創出」「暮らしの安心・地域活性化」という3つを重点分野として、大胆な予算措置を講じます。速やかに成立させ、実行に移せるよう、各党各会派の格別のご理解とご協力をお願い申し上げます。
他方、財政出動をいつまでも続けるわけにはいきません。民間の投資と消費が持続的に拡大する成長戦略を策定し、実行してまいります。
iPS細胞という世紀の大発明は、新しい薬や治療法を開発するための臨床試験の段階が見えています。実用化されれば、健康で長生きできる社会の実現に貢献するのみならず、新たな富と雇用も生み出します。イノベーションと制度改革は、社会的課題の解決に結び付くことによって、暮らしに新しい価値をもたらし、経済再生の原動力となります。
最も大切なのは、未知の領域に果敢に挑戦をしていく精神です。みなさん。今こそ、世界一を目指していこうではありませんか。
世界中から投資や人材をひきつけ、若者もお年寄りも、年齢や障害の有無にかかわらず、すべての人々が生きがいを感じ、何度でもチャンスを与えられる社会。働く女性が自らのキャリアを築き、男女がともに仕事と子育てを容易に両立できる社会。中小企業・小規模事業者が躍動し、農山漁村の豊かな資源が成長の糧となる、地域の魅力があふれる社会。そうした、あるべき社会像を、確かな成長戦略に結び付けることによって、必ずや強い経済を取り戻してまいります。
同時に、中長期の財政健全化に向けてプライマリーバランス※の黒字化を目指します。
※プライマリーバランス……政府会計において、過去の債務に関わる元利払い以外の支出と、公債発行などを除いた収入との収支。これが黒字であれば、毎年の政策的な経費が税収などの毎年の収入でまかなわれていることになる。
震災復興では行政の縦割りを排す
安倍 東日本大震災の被災地は、2度目の厳しい冬を迎えています。私は、昨年末に総理に就任した直後に、最初の訪問地として迷うことなく福島を選びました。そして、先日は宮城を訪れ、これからも、可能な限り現地に足を運ぶつもりです。
ah_abe3.jpg 宮城県亘理町の仮設住宅を訪れた安倍首相(出典:首相官邸Webサイト)
被災地のことを思う時、私は、ある少女とその家族の物語を思い出さずにはいられません。東日本大震災で、小学校3年生だった彼女は、ひいおばあさんとお母さんを亡くしました。悲しみに暮れる家族のもとに、被災から2カ月後のある日、一通の手紙が届きます。それは、2年前、少女が小学校に入学した後に、お母さんが少女に内緒で書いた“未来へあてた手紙”でした。
手紙には、入学当初の苦労話の後に、こうつづられていました。
「げんきに学校にいってくれるだけで、とてもあんしんしていました。このてがみを みんなでよんでいるところを たのしみにして、これから おかあさんは がんばっていきます」
この手紙を受け取ったのは、私がかつて被災地で出会い、先般、再会を果たした少女です。その際、彼女は、私の目をじっと見つめ、「小学校を建ててほしい」と言いました。過去を振り返るのではなく、将来への希望を伝えてくれたことに、私は強く心を打たれました。
故郷の復興は、被災地のみなさんが生きる希望を取り戻す作業です。今を懸命に生きる人々の笑顔を取り戻す。それは、その笑顔をただ願いながら天国で私たちを見守っている犠牲者の御霊に報いる道でもあるはずです。
復興という言葉を唱えるだけでは、何も変わりません。まずは、政府の体制を大転換します。これまでの行政の縦割りを排し、復興庁がワンストップで要望を吸い上げ、現場主義を貫きます。今般の補正予算においても思い切った予算措置を講じ、被災地の復興と福島の再生を必ずや加速してまいります。
【私の論評】経済主体の演説は、「戦後体制からの脱却」の一里塚!!まずは、この一里塚を着実に歩むことが一番!!
上の演説をぐっと縮めて要旨だけを掲載すると以下のようなものになると思います。
経済再生では大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を「三本の矢」として「強い経済」を取り戻すと宣言。2%の物価目標を明記した日銀との共同声明について「できるだけ早期に実現することを含め、それぞれの責任で実行していくことが重要だ」と日銀に奮起を促した。中長期の財政健全化に向けて、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指すことも明言しました。
震災復興では被災地の要望を復興庁が一元的に吸い上げる現場主義に転換し、「被災地の復興と福島の再生を必ずや加速する」と約束。「危機管理」の柱に外交・安全保障を据え、「日米同盟を強化し、日米の絆を取り戻す」と表明しました。
沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国との対立などを踏まえ、「国民の生命・財産と領土・領海は断固として守り抜く」と強調し、拉致問題について(1)全ての被害者の即時帰国(2)真相究明(3)実行犯の引き渡し-に全力を尽くす意向を示しました。結局のところ、経済の立て直しが最も大きな比重を占めていましたし、演説の時間は、比較的短いものでした。私は、これは意図して、意思きしてこのような演説にしたのだと思います。 評論家の中には、経済対策を中心にした演説に対して参院までの安全運転だとして、原発やエネルギー問題、TPP参加などの問題についても語るべきであったことを主張する人もイましたが、私自身は、まずは経済対策ということで、非常にわかりやすいものだッタと思います。
結びでは、敗戦後の日本再建に向けて国民の協力と奮起を促した芦田均元首相の言葉を引用、「今ここにある危機を突破し、未来を切り開いていく覚悟を分かち合おう」と訴えた。
「経済再生」、「震災復興」、「沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国との対立」が大きな主題であり、この後に、結びで締めています。プレゼンテーションとみても、参考になる素晴らしいものだったと思います。
さて、こうしたいわゆるアベノミックスと呼ばれる、安倍総裁の経済対策に対して、大方の人は、賛同しているし、期待感を持っているようですが、なかには、アベノミックスに対して、経済が復活しないうちに、物価があがり大変なことになると、大騒ぎしている人がいます。
しかし、このような人は、経済などのほかに、企業の仕事がわかっていないからこのような妄言をはいているのだと思います。
ご存知メガマック |
これに関連して、マクドナルドは、「為替予約をしているので、円安の影響はすぐに出ません」と説明しています。為替予約とは1年後、3年後など一定期間後に、あらかじめ決められた為替レートで金融機関と外貨の売買取引を行なうことで、企業は為替リスクを回避できるというものです。ただし、円安が長期にわたれば、ハンバーガーが値上がりする可能性は大きいです。
海外との取引きをするということになれば、急激な円高・円安ということなることはいくらでもありうることであり、それに備えるために、為替ヘッジというシステムがあります。
たとえば、低金利の円ではなく高金利通貨で1年間運用しようとします。1年間為替変動がない、もしくは円安になっていればよいのですが、円高になってしまう恐れもあります。
そこで、1年後にある一定の為替レートで円に戻す予約をします。そうすれば為替差損を被るリスクを回避できます。これを為替ヘッジと言います。
この為替ヘッジを行うためには、現時点で将来の為替レートを予約しておく、つまり一定期間後の高金利通貨を売り、円を買う取引を予約しておく(為替予約)ことが必要になります。そして、為替ヘッジコストは一般的に、円とヘッジ対象通貨の短期金利の差になります。
前述の例で言うと、高金利通貨を売って低金利の円を買うわけですから、為替ヘッジコストになります。
一方、人気の通貨選択型投資信託では、高金利通貨で金利の低い通貨をヘッジします。将来のために、金利の低い通貨を売って高金利通貨を買うわけですから、その金利差が為替ヘッジプレミアムとなり、儲けとなるのです。
外貨のままで償還金や利息を受け取る場合には、為替変動の影響を受けることはありません。しかし、外貨ベースで儲かっていても円で受け取る際に、為替の変動で損失を被ることがあります。為替リスクや為替ヘッジについてはしっかりと理解しておくことが大切です。
以上は、個人ベースの取引をおこなうのでさえ、考慮しなければならない事項です。ましてや、企業レベルでは当然考えるべきものです。
それが、円安になったからといって、すぐに、価格に転嫁するような会社があったとすれば、上記のような備えをしていないか、していても危ない会社と考えたほうが良さそうです。
円高や円安になったとしても、これは単なる為替のレートですから、長期的は大きな問題ではありません。しかし、急激な変化があった場合には、甚大な影響を被る危険もあります。
最近の日本は、円高基調であったし、それに震災などの復興などがありましたし、アベノミクスなどとは関係なく、普段よりも、円の需要が高まることから、日銀もマネタリーベースを増やすほうに動くことは、十分に予測の範囲であったと思います。しかし、日銀はこの常識を裏切ったために、震災直後に円高が進みました。
しかし、これは、日銀が常識外れだからであって、まともであれば、マネタリーベースをかなり増やすのが当たり前です。そうなれば、円安方向に振れる可能性もかなりの率でありえると認識するのが当たり前です。
このような背景から、アベノミクスで円高だからという理由ですぐに、価格をあげるような会社は、馬鹿か危ない会社か、騙しているとみるべきだと思います。理想的には、1年くらいでは多少の値上げ、円安が継続するなら、3年後くらいから本格的値上げというやりかたが望ましいです。
戦後体制を決定したポツダム会談 |
ましてや、アベノミクスで、円安になり、国民経済が回復しないうちに、物価があがり、大変なことになると騒ぐ人は、為替リスクヘッジも念頭に浮かばない大バカか、このブログにも、以前から述べているいわゆる、戦後体制擁護派もしくは、戦後利得者でありいずにせよ、偽装転向コミンテルンである可能性が高いです。
本日の演説には、前回総理であっ頃の、所信表明演説いわゆる「美しい国」発言、要するに、「戦後体制からの脱却」は含まれてはいませんでした。しかし、安倍総理はこのことを忘れているわけではありません。あくまで、目指しているのはこれです。
しかし、以前のこのブログにも掲載したように、この大目標を実現するためにも、いくつか一里塚を定めてあり、その最初の一里塚が、経済再生です。経済再生ができないようでは、この大目標も達成できないということです。安倍総理には、まずは演説の通り、経済再生に専念していただきたいものです。その他のことは、参院選後とか、もっと後でもいっこうに構わいないと思います。皆さんは、どう思われますか?
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