高橋洋一氏 |
株安によってアベノミクスが頓挫するのではないか? という不安が高まるなか、5月23日、『リフレが正しい。FRB議長ベン・バーナンキの言葉』(中経出版)が発売された。この本は、FRB議長であるベン・S・バーナンキの過去の講演のうち、とくに「日本のデフレの問題」と、「リフレ政策の是非」について語られている講演をセレクト、翻訳したものである。
本インタビューでは、この本の監訳・解説を務め、プリンストン大学客員研究員時代には直接バーナンキ教授(当時)の薫陶を受けた、嘉悦大学教授で政策工房会長の高橋洋一氏に、「今回の株安がもたらすアベノミクスへの影響」を聞いた。はたして株安でアベノミクスは頓挫したのか?(聞き手・構成/編集集団WawW ! Publishing 乙丸益伸)
新生日銀(黒田・岩田日銀)は何をしようとしているのか?
まったくその通りです。アメリカでもリーマン・ショック以降、予想インフレ率が急激に下がってしまいました。だから2%にまで予想インフレ率を上げるために、バーナンキが大規模金融緩和を行ったわけです。
予想インフレ率というのは、「今後どの程度物価が上昇すると予想しているか?」を測ることのできる数値です。いろいろな計測方法がありますが、その一例としてBEI(ブレークイーブンインフレ率)という数字を見ることで、その国の予想インフレ率を見ることができます。
なぜ目標インフレ率が2%なのかは、正に今回の本『リフレが正しい。FRB議長ベン・バーナンキの言葉』(中経出版)の第2章「デフレーション――「あれ」をここで起こさないために」という講演のなかで、バーナンキがすでに2002年11月の段階で言っていたことです。
今回の黒田・岩田日銀の大規模金融緩和は、目標インフレ率も2%だし、緩和のペースもバーナンキがリーマン・ショック後に行ったものと似ています。どころか、黒田・岩田コンビは、リーマン・ショック後のバーナンキの金融緩和よりも、もう少し早くやろうとしているのかなという風には見えます。
―― リーマン・ショック後にバーナンキが行ったQE1・QE2・QE3とは何だったんですか?
QEというのは「量的緩和」のことで、量的緩和第1弾~第3弾のことを指しています。本質的にはQE1もQE2もQE3も同じことです。量的緩和とは、中央銀行が市場から、長期国債など何らかの資産を買い入れる対価として、市場にマネー(=マネタリーベース=中央銀行が市場に供給するマネー)を供給するというかたちでの金融緩和策のことを言います。
量的緩和策が目指す最初の達成目標は、何らかの経済ショックがあり下がってしまった予想インフレ率を、+2%程度まで引き戻そうというものです。バーナンキはリーマン・ショック後にこれを行い、みごとアメリカの予想インフレ率を回復させることに成功しました。
黒田・岩田日銀の政策は効かないのか?
それは単なる誤解です。わたしは10数年前から言っていますが、「日銀がマネタリーベースを増やしたら、半年のラグはあるものの予想インフレ率は高まりますし、これまでも高くなってきました」。その事実をもって本来は終わりなだけの話です。
その先の話で言えば、予想インフレ率が高まると実質金利が下がるから、そこからさまざまな経路を通して実体経済に正の影響を及ぼします。実質金利とは、「実質金利=名目金利-予想インフレ率」という式であらわされるものです。少しのタイムラグを経て、景気もよくなるし、実際のインフレ率が上がるということです。
実際、バーナンキがリーマン・ショック後にQEを行った際、日本でも多くの論者が「量的緩和がインフレ率に波及するドライブ(経路)がない」ということを言っていました。当時のさまざまな論者の発言は、検索してもらえば今でも出てくるでしょう。でも、アメリカでは、バーナンキのQEにより、実際に予想インフレ率は高まり、ちゃんとタイムラグを経て、実際のインフレ率も上がってきています。それはアメリカに限らずイギリスなどでも見られた現象です。
その現実まで見た上で、わたしは当時、「波及経路がないなんていう話は、アメリカやイギリスなどで起こらなかったので、この話は終わりですね」という話をしました。そしたらまた、日本で黒・岩コンビが量的緩和を行うと、また同じ論者の人たちが「量的緩和には波及経路がない」と言い出した。それを見て、どうしてなんだろう? と不思議な思いが去来するばかりです。まったくわたしには理解できません。
黒田・岩田緩和の成功確率はおよそ9割
このグラフから導き出される相関係数は+0.91。相関係数というのは、2つのデータがどれだけ関連性があるのかを示す係数で、-1から+1までの間の数値を取るものです。この相関係数が+0.91ということは、現実の、現在の日本では、マネタリーベースの増加率と予想インフレ率の上昇率のあいだには、かなり強い関連性があるということです。
最近、予想インフレ率が少し下がってきていますが、黒田緩和は4月に始まったばかりです。はじめる前から市場は先取りしてきたので、ちょっとSPEEDING(速度違反)でした。調整は少しあるでしょう。
これを見た上で、なんで「日本のマネタリーベースを増やしても、波及経路がないので予想インフレ率は上がらない」なんていうようなことを言うのでしょうか? わたしは逆に聞きたいですよ。
危ない橋をわたる車 |
・・・・・・・・・・・・・<中略> ・・・・・・・・・・・・・・・・
『リフレが正しい。』(中経出版)は、バーナンキの講演のなかでも、とくにバーナンキが「リフレ」についての考えを披露している講演をセレクトして 翻訳したものです。興味深いことに、読みなおしてみると、バーナンキがほぼ一度も、どの講演でも株価の話について触れていないことがわかります。これは、 バーナンキもちゃんと予想インフレ率の動向を見ながら金融政策運営を行なっていることの証左になるのではないでしょうか。
最終章の「日本の金融政策、わたしはこう考える」には、日本でのリフレの達成のために、日本銀行が何をしなければいけないか? が明確に書かれてい ます。そのなかでバーナンキは、「リフレが正しい」と言い切り、そして、何度も何度も「予想を転換することの重要性」を説いているのです。
世界第一級の経済学者であり、金融政策の実務家による、贅沢なアベノミクスの解説書にもなっているこの本は、まさにこういった「株安などが起こり、 リフレの実現への信頼にゆらぎが生じているとき」にこそ読んでいただきたい本です。「バーナンキなら、こういった(突然の株安のような)事態に対して、ど う対応しただろうか?」という視点で読み進めていただいても面白いと思います。
【私の論評】 危ない橋を渡りたい人たちは、どうぞお渡り下さい。ただし余計なことをくっちゃべって、安倍内閣を頓挫させ、日銀の政策を頓挫させるようなバカ真似はしないでくれ(゚д゚)!
詳細は、上の記事をご覧いただければ、何も説明を必要としないくらい理解しやすく書かれていますので、これに対して私自身がさらに説明を加えるというようなことはしません。
それにしても、アベノミクスは、株価を上げたり、円安にするために実行しているのではなく、あくまでもデフレ・スパイラルから抜け出すために実行しているということで、株価が上がったり、円安になったりというのは、その副産物でしかないということを多くの人々にきっちり理解していただきたいものです。
高橋洋一氏は、以下のような5段階を上の記事でしています。
1.日銀がマネタリーベースを増やす
2.予想インフレ率が約半年かけて徐々に上昇し、実質金利が下がる
3.消費と投資が徐々に増える
4.外為市場で円安が起こり、徐々に輸出が増える
5.約2年~をかけて、徐々にGDPが増え、失業率が下がり、賃金が上がり、インフレ率も上昇する。その過程で株価も上がる。
この5段階とは少し違うのですが、上念司氏が、国会の公聴会であげていてたデフレ脱却に向けた5段階というのがあります。それを以下に掲載します。 ちなみに、この資料は、現在副総裁の岩田氏が大学の教授をしていたときにまとめたものだそうです。
現在上の表の四段階まできているわけです。そうして、5段階まで行って、これが終了してはじめてデフレから脱却できるというわけです。いずれにしても、高橋洋一氏の5段階でも、この5段階でも、ある程度時間がかかるのは、間違いないです。現在株価が暴落したなどと騒いでいる人もいますが、これは、アベノミクス始動後、市場の期待があまりに大きく、かなりの勢いで株価が上がったため、調整局面にあるということであり、昨年の安倍総理誕生以前と比較すれば、現在下がったとはいえ、そのときと比べれば、かなり高水準であることには変わりはありません。
いずれにしても、デフレ脱却をするにも、株価があがりきるにしても、それなりに時間がかかるということです。バーナンキの経済対策もそうでしたが、いかなる経済対策もそれなりにある程度の時間がかかるのは、当然のことです。こんな理屈を無視して、アベノミクスを今の段階で批判する人もいますが、そんな人に私はこう言いたいです「そんなにすぐに効果がでる経済対策があるというのなら、提案して下さい」と。1年もしないうちに、あっという間に株価が鰻上に上がったり、デフレからすぐ脱却できて、一般国民も潤うような経済対策などこの世に存在しないです。
そうして、私が最も危惧するのは、高橋洋一氏が指摘するように、1割の可能性にBETする危ない橋を渡る人たちに翻弄される人たちが、大勢でてくることです。そうして、そのような人たちが翻弄されるだけなら別にその人達が株で損するだけですから、何も問題はないわけで、大勢には影響がないから良いのですが、このような人たちのうち、発言力の強い人などか、アベノミクス大失敗を煽りまくり、それに輪をかけて日本の経済が良くなると、自国の経済がズタボロになる中国や韓国のスパイの尻馬にのる、馬鹿な親中・親韓の政治家たちが、力を増し、最悪の場合は、またぞろ安倍おろしが再燃して、安倍内閣が退陣に追い込まれ、アベノミクスが途中で頓挫することです。
そんなことになって、また日本経済がデフレから脱却できなければ、失われた20年どころか、失われた30年になってしまいます。そんなことにならなければ良いと思います。
しかし、私は多くの日本国民は、まともな感覚を持っているので、今回ばかりはバカ者どもに煽動されるということはないと信じています。
そうして、これは、あながち根拠なしに言っているわけではありません。たとえば、全く根拠のない政府の財政破綻の話を話としては、信じた人たちもいるかもしれませんが、さりとて、それに対して準備をして、大損をしたという人の話は、全くといって聴いたことがありません。
もし日本政府が財政破綻するというのなら、これは、大儲け確実です。それは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)をすれば、大儲けできます。これは、クレジットデリバティブの一種で、債権自体を移転することなく信用リスクのみを移転する取引です。最も取引が盛んなクレジットデリバティブのひとつ。銀行の自己資本比率を高める対策の一環としても利用されます。
詳細は、以下のURLをご覧になって下さい。
クレジット・デフォルト・スワップ
それにしても、私は、この取引を大々的にやって、大儲けしたとか、大損したという話を、財政破綻ということがクローズアップしてから一度も聴いたことがありません。ということは、財政破綻を吹聴した人々はこれをやらなかったということです。それしても、変です。日本が財政破綻することが確実であれば、CDSを大々的にやって、大儲けすべきです。しかし、そうしないということは、煽るだけ煽っても、自らは信じていないということです。というこは、なぜ煽るかといえば、日本国をそうして、日本人を煽り、馬鹿な投資などに誘いこみ、日本経済を弱まらせるために、煽ったということです。
MRIインターナショナルの会報に登場した有名人たち |
しかし、そんなことをして煽りまくっても、字面では信じたような人でも、実行動に出た人はいなかったということです。本当に煽られてしまえば、日本は、金満家も大勢いるはずですし、実際に随分前から、「オレオレ詐欺」などがあって、大金をだまし取られた人もいますし、最近ではMRIインターナショナルによる詐欺(アメリカ医療機関への投資詐欺)もあって、かなりの人が騙されています。
しかし、日本政府の財政破綻は、あれだけテレビで大騒ぎ、新聞でも大騒ぎ、野田元総理なども、国民一人の借金七百万円(正しくは国民ひとりあたりが政府に貸しているお金の額)ともっともらしく大騒ぎしたにもかかわらず、CDSで大損した人の話は聴いたことがありませんし、それに、財政破綻詐欺というのもありませんでした。
野田元総理は、かつて国会で国民一人あたり赤ん坊まで含めて七百万円もの借金があると語った |
ですから、今回のアベノミクス失敗論なども、字面では信じたとしても、実行動に出る人はいないと思います。いずれにしても、デフレから脱却する前に増税するなんてバカ真似も絶対するべきではありません。してしまえば、それこそ、アベノミクスは頓挫してしまいます。
いずれにせよ、目先の株価の上下や為替レートの上下に一喜一憂したりするだけならそれは、個々人の自己責任だからかまわないのですが、アベノミクスを失敗だと吹聴したり、それだだけではなく、安倍おろしに加担するなどというような行為は、あまりにも時期尚早だし、軽率・軽薄だと心得るべきだと思います。 私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
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