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2019年1月3日木曜日

もう“カモ”ではない、トランプの世界観、再び鮮明に―【私の論評】中東での米国の負担を減らし、中国との対峙に専念するトランプ大統領の考えは、理にかなっている(゚д゚)!

もう“カモ”ではない、トランプの世界観、再び鮮明に

佐々木伸 (星槎大学大学院教授)

 トランプ米大統領が先の電撃的なイラク訪問で行った演説は中東政策ばかりか、同氏の描く世界戦略をあらためて鮮明にした。「米国はもはや(金をむしり取られる)“カモ(suckers)”ではない」。こう宣言した大統領の狙いはずばり、「軍事資源」の再配置と同盟国に対する防衛費の公平分担要求だ。

昨年末電撃的イラク訪問をしたトランプ大統領

トランプ節全開

 大統領は12月26日、イラク西部アンバル州のアルアサド空軍基地に到着、約100人の兵士の歓迎を受けた。大統領の紛争地への訪問は就任以来これが初めて。歴代の大統領は何度も紛争地の米部隊を慰問しており、紛争地入りを渋るトランプ大統領を「臆病呼ばわり」する向きもあった。今回の訪問はそうした批判に応えるためでもある。

 大統領の演説は批判にさらされているシリアやアフガニスタンからの軍撤退方針を正当化する内容であったが、自らの世界観を強く印象付けるものでもあった。

 「われわれは世界の警察官であり続けられない」
 「ほとんどの人が聞いたこともない国に軍を派遣するのは馬鹿げている」
 「米国1人が重荷を背負うのは公平でない」
 「金持ちの国々がその防衛に米国を利用することはもうできない」

 ニューヨーク・タイムズによると、大統領のこうした世界観は何年も前から思い描いてきたことだ。例えば、大統領は2012年2月27日のツイッターで「アフガニスタンから出ていく時だ。われわれを憎悪する人々のために道路や学校を作っているのは国益に沿わない」とつぶやいている。

 大統領はイラク演説でこの持論の世界観を披歴した上で、「元々シリアへの軍派遣は3カ月限定だった」と撤退決定を擁護。ペンタゴンの将軍たちが「撤退の半年延期を提案したが、私は即座に拒絶した」と自らの決断だったことを誇示した。

対中国向けに転換か

 この決定について、ホワイトハウスの黒幕といわれたバノン元首席戦略官は「孤立主義への回帰ではなく、国際主義者の“人道的派遣症”からのピボット(転換)」との分析を米紙に明らかにしている。

 バノン氏によると、トランプ大統領は中国との経済的、地政学的な戦いに集中できるよう、シリアなどの軍駐留を終わらせたいのだという。限定的な軍事資源を最大の脅威と見なす中国向けに転換するということだ。こうした「アジアシフト」はトランプ氏が敵視するオバマ前大統領の主張「リバランス政策」と基本的に同じ考えだろう。

 大統領は中東政策についても(1)シリア撤退の一方でイラクからは撤退しない(2)イラクをイランと戦い、過激派組織「イスラム国」(IS)を叩く「出撃基地」にする(3)シリアのISの監視と掃討作戦はトルコのエルドアン大統領に任せる(4)シリアの復興資金はサウジアラビアなどに拠出させる――などの考えを明らかにした。イラクには現在約5200人が駐留している。

 大統領の撤退方針に対しては「賢い選択」(元駐シリア米大使)と評価する声もあるが、撤退した後に米国益をいかに守るのか、全体的な中東政策にシリア撤退をどう反映させて組み立てていくのか、戦略が見えないという指摘が多い。

 ただ、大統領の演説で忘れてはならない発言の1つは防衛費の公平分担という指摘だ。すでにトランプ政権は在韓米軍の駐留分担で具体的な提案を韓国側に行ったとされており、日本や北大西洋条約機構(NATO)にも早々に分担増を突き付けてくるのは間違いないところだろう。

見捨てられたクルド人の選択

 今回の軍撤退決定で最大の敗者はIS壊滅作戦で米国に翻弄された末に切り捨てられたシリアのクルド人だ。米国の説得を受けてシリア民主軍(SDF)の中核として最も厳しい地上戦を主導し、多くの戦死者を出した。だが、トランプ政権は「クルド人を見限った上、トルコのエルドアンに差し出した」(ベイルート筋)。

 クルド人勢力の民兵組織「クルド人民防衛部隊」(YPG)は米軍の支援の下、ISを駆逐してシリア北東部を支配下に置いた。支配地域はシリア全土の3分の1弱に相当するが、これを自国の安全保障上の脅威と見なす隣国のトルコのエルドアン大統領は容認できなかった。

 同大統領は国境に大規模部隊や戦車を集結させ、すぐにでも侵攻すると恫喝する一方、「トランプ大統領と裏取引し、米軍の撤退と引き換えにクルド人の勢力拡大を食い止める“裁量権”を獲得した」(同)。まさに大国のエゴに弄ばれる少数民族の悲劇を感じさせる展開だ。

 だが、クルド人もしたたかだ。この窮地に、トルコと敵対するアサド・シリア政権に庇護を求め、手を結んだのだ。砂漠の風紋のように変化する中東の離合集散を見る思いだが、シリア側の発表によると、シリア政府軍が28日、YPGの招きでクルド人支配下の北部の要衝マンビジュに進駐したという。トルコをけん制する動きに他ならない。

 これに対し、エルドアン大統領は「シリア側の心理作戦」と一蹴している。だが、トルコ軍がシリア領に侵攻する事態になれば、シリア政府軍との交戦の恐れも出てこよう。アサド政権の背後にはロシアとイランの存在があり、米軍が撤退する「力の空白」をめぐってシリア情勢は一段と複雑な様相を呈している。

【私の論評】中東での米国の負担を減らし、中国との対峙に専念するトランプ大統領の考えは、理にかなっている(゚д゚)!

冒頭の記事には、「見捨てられたクルド人の選択」と記されていますが、これは予め予想されたことです。

イラク情勢については、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
アメリカの2度目のシリア攻撃は大規模になる―【私の論評】今後の攻撃はアサド政権を弱体化させ、反政府勢力と拮抗させる程度のものに(゚д゚)!
シリアの首都ダマスカス。アサド大統領のポスターの前で警備に当たるロシア軍とシリア軍兵士。
米軍が大規模な攻撃を仕掛ければ、ロシアとぶつかる危険がある
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事にはルトワック氏の主張する米国のあるべきシリア政策を掲載しました。

ルトワック氏によれば、米国のあるべき戦略は、シリアのアサド政権と、反政府勢力を拮抗させるというものです。

アサド政権が強くなれば、米国が反政府勢力に軍事援助を与えるなどして、反政府勢力を強化して、アサド政権を弱らせるます。逆に、反省勢力が強くなりアサド政権が弱体化すれば、今度は反政府勢力に対する軍事援助などを減らし、相対的にアサド政権を強くするというものです。

米国にとって望ましいと思える結末は「勝負のつかない引き分け」であるというのです。

なぜこれが望ましいかといえば、 まず第一に、もしシリアのアサド政権が反政府活動を完全に制圧して国の支配権を取り戻して秩序を回復してしまえば、これは大災害になるからです。

第二に、 もしこれらの反政府勢力が勝利するようなことになれば、彼ら(クルド人勢力を含む)は米国に対して敵対的な政府をつくることになるのはほぼ確実だからです。これは、反政府勢力が、アルカイダであろうが、非宗教的なマルクス主義/アナーキスト組織的でもあるクルド人勢力であろうが、他の勢力であろうと同じことです。

クルディスタン地域政府の軍隊「ペシュメルガ」のクルド人女性隊員=2016年3月30日

米国に対して親和的な勢力など、アサド政権を含めて、シリアには存在しないのです。クルド人勢力もたまたま一時的に米国と利害が一致しただけのことです。実際、トランプ氏が米軍引上げを宣言すると、トルコと敵対するアサド・シリア政権に庇護を求め、手を結んだではありませんか。

さらにいえば、イスラエルはその北側の国境の向こうのシリアにおいてジハード主義者たちが勝利したとなれば、平穏でいられるわけがないです。

非スンニ派のシリア人は、もし反政府勢力が勝てば社会的な排除か虐殺に直面することになるし、非原理主義のスンニ派の多数派の人々は、もしアサド政府側が勝てば新たな政治的抑圧に直面することになります。

そして反政府勢力(アサド政権と手を結ぶ前のクルド人勢力)が勝てば、穏健なスンニ派は非宗教的なマルクス主義/アナーキスト組織的な支配者たちによって政治的に排除され、国内には激しい禁止条項が次々と制定されることになります。

シリアの人々にとっても、いずれが勝利しても良いことはないのです。そうして、これでは、いずれが勝利したとしても、米国に勝利はないのです。だからこそ、ルトワック氏は米国はアサド政権と反政府勢力を拮抗させておくのが、最上の策としたのです。

ただし、ルトワック氏がこの主張をしたときには、トルコはシリア内の紛争に関して機能停止状態でした。国内のクルド人勢力の対応に追われていたのでしょう。

そのトルコがシリア問題に介入すると、トランプ大統領に確約したのです。これは、ルトワック氏の戦略の枠組みからみれば、アサド政権と国内の反政府勢力と拮抗させることから、アサド政権と、トルコ政府との拮抗へとシフトすることを意味しています。

これは、反政府勢力よりもさらに頼もしい存在です。トルコが介入すれば、シリア情勢はかなり変わります。

エルドアン・トルコ大統領

トランプ大統領は、アサド政権と、トルコのエルドアン政権とを拮抗させ、米軍をシリアからひきあげ、対中国向けに集中する道を選んだのです。

そうして、これはバノン元首席戦略官が分析しているように、「孤立主義への回帰ではなく、国際主義者の“人道的派遣症”からのピボット(転換)」に他ならないのです。

そうして、この判断には、合理性があります。アサド政権の後ろにはロシアが控えていますが、そのロシアは経済的にはGDPは東京都より若干小さいくらいの規模で、軍事的には旧ソ連の技術や、核兵器を受け継いでいるので強いですが、国力から見れば米国の敵ではありません。

局所的な戦闘には勝つことはできるかもしれませんが、本格的な戦争となれば、どうあがいても、米国に勝つことはできません。シリアやトルコを含む中東の諸国も、軍事的にも、経済的にも米国の敵ではありません。

一方中国は、一人あたりのGDPは未だ低い水準で、先進国には及びませんが、人口が13億を超えており、国単位でGDPは日本を抜き世界第二位の規模になっています。ただし、専門家によっては、実際はドイツより低く世界第三位であるとするものもいます。

この真偽は別にして、現在のロシアよりは、はるかに経済規模が大きく、米国にとっては中国が敵対勢力のうち最大であることにはかわりありません。

トランプ政権をはじめ、米国議会も、中国がかつてのソ連のようにならないように、今のうちに叩いてしまおうという腹です。

であれば、トルコという新たな中東のプレイヤーにシリアをまかせ、トルコが弱くなれば、トルコに軍事援助をするということで、アサド政権を牽制し、中東での米国の負担を少しでも減らして、中国との対峙に専念するというトランプ大統領の考えは、理にかなっています。

物事には優先順位があるのです、優先順位が一番高いことに集中し、それを解決してしまえば、いくつかの他の問題も自動的に解決してしまうことは、優れた企業経営者や管理者なら常識として知っていることです。

しかし、優先順位の高い問題を放置して、他のことに取り組んでも、結局モグラたたきになることも、昔からよく知られていることです。

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2015年3月4日水曜日

経済の常識 VS常識 政策の非 人口減少は諸悪の根源か―【私の論評】人口現象などの自分以外のせいにするのは、戦前戦後とも馬鹿の言い訳! 奇妙奇天烈摩訶不思議な論調には吉田松陰先生のように理で勝負せよ(゚д゚)!

経済の常識 VS常識 政策の非 人口減少は諸悪の根源か

2015年03月03日(Tue)  原田 泰 (早稲田大学政治経済学部教授・東京財団上席研究員)

日銀政策決定委員会 委員 となった原田泰氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 人口減少が諸悪の根源のように言われるが、経済学の歴史で見ると、人口増加こそ諸悪の根源だった。

古くはマルサスである。産業革命以前でも人類が豊かになる兆しはあった。農耕の発明、国家統一による社会秩序の安定、大帝国の成立による交易の利益などなどである。

人類は豊かになっても良かったのだが、少しでも豊かになれば子供が生まれ、人口が増加し、一人当たり耕地面積が低下して、人類は貧しいままだった。社会秩序の安定や交易から生まれる利益は、すべて人口増加に吸収され、一人当たりで豊かになることはなかった。これが、マルサス人口論の教えである。

その後の開発された経済成長理論でも、人口増加は一人当たりの資本を減少させて人類を貧しくする要因である。これは韓国や中国のような人口成長率の低い国の一人当たりGDPの成長率が高く、フィリピンやインドのような人口成長率の高い国で一人当たりGDPの成長率が相対的には低いことから納得していただけるだろう。

人口減少論は責任逃れのため

ではなぜ人口減少が諸悪の根源というような議論が日本で盛んなのだろうか。

第1は、人口減少がトレンドとして続いていけば、日本という国がなくなってしまうから大変だということなのかもしれない。このままの人口成長率が続けば、後1000年たたないうちに最後の日本人が生まれることになる。

第2は、高齢化の負担がとんでもないことになるからだ。本欄(原田泰「無責任な増税議論 社会保障は削るしかない 税と社会保障の一体改革に欠けている論点」2011年12月06日)で書いたように、現在のレベルの高齢者の社会保障を維持するためには、60%の消費税増税が必要になる。しかし、これは人口減少の問題ではなくて、高齢化の問題だ。現役世代に対して高齢世代が増えすぎたから起こっている問題である。

第3に、人口減少は、とりあえず誰かのせいにすることが難しいので、責任逃れには都合が良いという理由がある。現役世代に対して高齢世代が増えすぎたから社会保障会計の赤字が生じていると認識すれば、高齢世代の社会保障支出を減らすしかないと議論することになるが、人口が減少しているせいだとなれば、人口を増やせばよいとなる。デフレは人口減少によるとしておけば、日銀のせいではなくなる。経済成長率が低いのは人口減少のせいだとしておけば、とりあえず誰のせいでもなくなる。

戦前は人口増加が問題だった

一方、戦前の日本は、人口圧力に人々は真剣に悩んでいた。日本は人口過多の国だから、男は兵隊になって海外領土を確保しなければならないと思い込んでいた。植民地や海外領土を得ることに一生懸命になっていた。満州事変で満州国を成立させたとき、日本人が熱狂したのも、広大な領土が手に入って、日本が人口圧力から逃れられると思ったからだ。

ところが実際には、人々は満州には行きたがらなかった。移住者の多くは朝鮮籍日本人で、日本人移住者の多くは軍関係者、満州鉄道及びその関係企業の日本人だった。30歳の東京地裁判事、武藤富男は、満州国に赴任するにあたって、年棒6500円を支給されたと書いている。

  満州国の人口は1930年から40年代の初期にかけて3000万人から4500万人に増えていたが、日本人はその5%もいなかった。昭和恐慌から急速に回復した日本はもはや人手不足になっており、満州国に行く必要がなかったからだ。

空想の人口圧力論で満州国を奪ったのだが、いざ奪ってみると人口圧力はすでに解決されていた。本来、人口が減少することは、生産性を高めることだ。人口が減れば、少なくとも土地生産性は高まるはずだ。江戸時代と異なって、少ない人数で広大な農地を耕す様々な方法がある。なんでも人口のせいにするのは止めた方がよい。

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】人口現象などの自分以外のせいにするのは、戦前戦後とも馬鹿の言い訳! 奇妙奇天烈摩訶不思議な論調には吉田松陰先生のように理で勝負せよ(゚д゚)!

上の記事、結論をいうと、人口が増えたー、人口が減ったーと騒ぐことにはほとんど意味がないこと、そういうことを言う輩は、目の前の不都合に対して自分の頭で考えることができないので、人口のせいにして何もしないことの言い訳にするということです。

確かにそういう輩も多いのですが、言い訳だけではなく、それを飯の種にするという輩も大勢います。

以下にそれらの事例をあげてみます。

まずは、自分の頭で考えることができないので、人口のせいにしても何もしないことの言い訳にした事例をあげます。
(論文)日本の人口動態と中長期的な成長力:事実と論点の整理 :日本銀行 Bank of Japan―【私の論評】出た出た、日銀得意の嘘レポート!!

これは、2012年の日銀のレポートですが、驚くことにはっきりとデフレは人口減のせいだとしています。しかし、デフレ、インフレとは貨幣現象であり、人口減・人口増とはそもそも全く関係のないことは、最初からわかりきっています。

この頃の日技は、白河体制であり、デフレであっても、今日の日銀のように金融緩和をすることもなく、デフレと円高を放置し続けました。彼らは、まともな金融政策をしないので、デフレになったにもかかわらず、何もしないことのいいわけにこのようなレボートを出したのです。
低劣番組『新報道2001』で前原氏がデフレ原因は人口減、円高原因は震災によるサプライチェーンの寸断だと発言−【私の論評】日本で横行する、財政も、金融も、日本自体もわからなくなくなる低劣番組は視聴に値しない!!
国会で献金問題を追求する前原氏

この記事は、2013年1月のものです。民主党の前原氏は、報道番組の中で、「デフレの原因は、人口減と」はっきりと述べています。なぜこのようなことを言うかといえば、彼の頭の中では、自民党や安倍総理を追求するための、データとしてインプットされているのでしょう。

これは、直接は、飯の種ではないでしょうが、民主党を有利にもっていくという意味では、間接的には飯の種だと思い込んでいるのだと思います。

前原氏は、このように思い込んでいるせいか、日銀の金融緩和政策に関しても、奇妙奇天烈摩訶不思議な発言が多いです。

前原氏に限らず、政治家やいわゆる似非識者の中にも、人口減をデフレや、衰退の原因とする輩が多いです。

さてこうした間違いに関して、過去の数字などを持ってきて、人口増・人口減と、デフレやインフレとの相関関係がないことを示し、デフレと人口減には全く関係ないことを示す人も大勢います。

しかし、このような一切統計を用いなくても、原田泰氏のように「なんでも人口のせい」にすることの、間違いを見事に論破しています。

このように理を解けば、統計数値を用いなくても、多くの人々に理解していただけるでしょうし、さらには「理」が基本になっているため、多くの人々が様々な事象について目先の変化でとらわれることなく、物事を判断できるような機会を提供することにもなります。

このように、世の中の事象を読み解いたり、それを多くの人々に訴えたりするには、統計数値などを出す前に、「理」を説くのが一番と思います。

これは、ドラッカーの『マネジメント』などの書籍を読んでいても、そう思うことが度々ありました。そもそも、ドラッカーの書籍には、ほとんどグラフや表が出てきません。マネジメントの世界では、統計数値も重要ですが、それは全く本質ではありません。

おそらく、様々な数値が頭の中に入っていたとしても、管理者には良いかもしれませんが、経営者にはなれないでしょう。

だからといって、私は「統計数値」を軽視せよと言っているわけではありません。それは重要です。変化を見るためには、非常に便利です。中には、数値もろくにみないで、好悪や感覚で、脊髄反射的に物事を考えるというとんでもない人も多数存在することも事実です。そのような輩は、はなから問題外ということになると思います。

しかし、まともな人であっても、数値だけ見ていても、本当の変化は見抜けないことがおうおうにしてあります。数値とともに、「理」がなけば判断を見誤ってしまいます。

「統計数値」だけがたよりだと、統計数値を様々に駆使したトリックなどに容易に引っかかてしまいます。しかし、その根底に「理」があれば、そのようなことはありません。

理とは、古代中国哲学の概念です。 本来、理は文字自身から、璞(あらたま)を磨いて美しい模様を出すことを意味します。 そこから「ととのえる」「おさめる」、あるいは「分ける」「すじ目をつける」といった意味が派生しました。 もと動詞として使われたが、次に「地理」「肌理(きり)」(はだのきめ)などのように、ひろく事物のすじ目も意味するようになりました。

理を理解していないと、政治論争でも、経済でも、学問でも奇妙奇天烈摩訶不思議なことを考えたり、語っても自分では気づかないという悲惨なことになってしまいます。

そうして、それはおうおうにして個人の問題だけではすまなくなります。たとえば、過去においては、長期間にわたる、デフレ・円高の放置、最近では、国会などの献金問題の追求もそうですし、民間でも、大塚家具の父娘の争いなども引き起こしてしまいます。



吉田松陰など、日本では優れた人は、語学や技術を教えるだけではなく、この「理」を説いて人々を感動させて導いてききました。

私達も、奇妙奇天烈摩訶不思議な論調には理で勝負していくべきと思います。

それにしても、原田氏のように上の記事のように「理」を説く人が、日銀の政策決定委員会のメンバーになったということは喜ばしいことです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2014年8月20日水曜日

【日本の解き方】消費税増税、「死んだネコ」程度の成長率では理がない ―【私の論評】こんなんじゃ、企業数値も読み解けないレベルの低さ、これで増税の判断をするの?一体どうなっているの(゚д゚)!

【日本の解き方】消費税増税、「死んだネコ」程度の成長率では理がない 
2014.08.20

4~6月期のGDP速報値の発表を受け、記者会見する甘利経済再生相=13日、内閣府

消費税率10%への引き上げを判断する材料の一つとされる今年7~9月期国内総生産(GDP)について、「回復する」との声が聞かれる。特に、増税を進めたい側の人たちから、そうした声が多いようだ。

甘利明経済財政・再生相は、「景気は緩やかな回復基調が続いている」としている。1~3月期と4~6月期の実質GDPの平均は昨年10~12月期を上回っていることを理由にしているようだ。

昨年10~12月期、今年1~3月期、4~6月期の実質GDPは、それぞれ527・5兆円、536・1兆円、527・0兆円である(季節調整済みの値)。今年1~3月期と4~6月期の平均は531・6兆円なので、昨年10~12月期の527・5兆円を上回っているというのである。しかし、この計算にどのような意味があるのか。

消費税増税の影響を考えるには、「増税なかりせば」の場合と「増税した現実」の値を比較しなければいけない。増税前の実質GDP成長率は2%程度になっていた。となれば、「増税なかりせば」の場合、1~3月期はその前年同期比2%増で532・1兆円、4~6月期は前年同期比2%増で535・8兆円と計算できる。

これから考えると、実際の実質GDPと増税しなかった場合では、1~3月期は駆け込み需要増でプラス4兆円、4~6月期はその反動減と増税による消費減少でマイナス8・8兆円分の差異がある。

4~6月期の実質GDPをみると、「増税なかりせば」の場合535・8兆円であるのに対し、増税を行った結果の現実は527・0兆円。増税によって、「増税なかりせば」の場合より低くなっているわけで、今年1~3月期との平均が昨年の10~12月期より高いなんて言い訳にもならない。マスコミは、そのようなヘンテコな数字を持ち出された時に、どのような意味があるのか質問すべきである。


「死んだネコ」の話には続きがある。リバウンドは少しで、その後も下がるのだ。ちょっとばかり上がった隙に、消費税増税を決めたらまずいだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

この記事の詳細はこちらから(゚д゚)!

【私の論評】こんなんじゃ、企業数値も読み解けないレベルの低さ、これで増税の判断をするの?一体どうなっているの(゚д゚)!

甘利明経済財政・再生相は、昨年10~12月期、今年1~3月期、4~6月期の実質GDPを比較して経済を語っています。これに対して、この計算にどのような意味があるのかと、高橋洋一氏が反論しています。

まったく、高橋氏のいう通りです。そうして、高橋氏はもし、「増税なかりせば」という数値を出し、それと比較しています。

これは、これで一つのやり方で良いことなのですが、企業経営に携わた人間からいわせると、このやり方以外に、本来やるべきことがあります。

たとえば、企業数値を見るにしても、10~12月期、1~3月期、4~6月期をみるにしても、連続したこれらの数値をみて、どうのこうのと、言ってもそれだけでは、通用しません。それだけで、直近の業績を判断して、モノを語れば「馬鹿」と言われても言い訳はできません。

j実施すべきは、4~6月の数値であれば、1年前、2年前、3年前との比較です。4年前、5年前ともなれば、随分経済の情勢も変わりますから、そこまでは比較しなくても良いと思いますが、場合によっては、そこまでやっても良いくらいです。これをせずに、その前との比較だけで語っていていては、話にも何にもなりません。

そうして、それだけではなく、これを読み解くためにも、10~12月期、1~3月期、4~6月期の1年前、2年前、3年前の数値も分析しておくべきでしょう。

無論甘利氏の語ったように、10~12月期、1~3月期、4~6月期をも見るべきです。ただし、これも本年度、昨年度、一昨年度もみるべきでしょう。

そうして、さらに、1年前、2年前、3年前の社会情勢の変化や、特に当該企業に与えた、変化などもみておくべきでしょう。たとば、これは人のプロポーションを見るにしても同じことだと思います。直近の変化だけみていては、その本質はわかりません。

人体型も直近だけでは見えない経年変化がある

なぜ、こんなことが必要かといえば、企業業績には季節変動という現実があるからです。

たとえば、私自身は、長い間ピザ宅配業に関わってきたので、これを例にとって、話をします。

ピザ宅配業はどこでもそうだと思うのですが、一番業績があがるのは、12月、1月です。3月も若干あがります。毎年、年間の大半の利益をあげるのは、12月、1月です。

年度がはじまってから、暫くの間は黒字であったとしても、黒字はほんの少しか、赤字であるのが普通です。それを12月、1月で挽回して、年全体で利益を出すというのが普通です。だから、いやがおうでも、12月、1月の年末年始商戦には力がはいるというわけです。

10月には、12月、1月につなげるため、イベントを開催するのが普通です。他の、ケーキ屋さんなども似たようなものだと思います。レストラン業界もこれに近いと思います。これらの業界は、とにかく年末・年始が稼ぎどきであることには変わりないと思います。

このような利益構造にある業界で、昨年10~12月期、今年1~3月期、4~6月期の実質業績を比較してものごとを語っても、何も意味はありません。

体型の変化も比較的短い間におこることもある

やはり、毎年の社会情勢、経済情勢などを把握しておいて、1年前、2年前、3年前との比較をするというのが筋です。

日本経済だって、同じことだと思います。ピザ宅配業界のような変化はしないでしょうが、毎年決まった、季節変動のようなものはあります。

にもかかわらず、単年度だけの数字の変化で物事を語るというのは、全く不可思議なこととしか言いようがないですし、全く納得できません。

企業数値も読み解けないようなお粗末さで、国の経済の舵取りなどできるのでしょうか?

甘利大臣は、内閣府の役人の、作文を読み上げているだけなのでしょうが、それにしても酷すぎです。内閣府の前身の組織、経済企画庁は、少なくともこのような低レベルの数字を出すようなことはありませんでした。

内閣府になってからは、今回のことに限らず、他の数字に関してもどうしようもない低レベルになってしまいました。

ゴールデンプロポーションにもっていくためには、長期と短期の両方の見方が重要だ


甘利大臣も、役人に一言、1年前、2年前、3年前との比較も出すようにといえば、こんな酷いことにはならなかったと思いますし、それこそが上に立つものの役割というものだと思います。

こんな数字の読み方をする人は、企業では絶対高い地位につくことはできないと思います。

本当に困ったものです、こんなレベルで増税の判断などされたらたまったものではありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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過去33年でワースト2!消費税増税がもたらした急激な消費落ち込みに政府は手を打てるか―【私の論評】総白痴化した支配層にはこんな自明の理も理解できなくなっている!中華や財務省・マスコミの陰謀があったにしても酷すぎ・・・!しかし、希望はある(゚д゚)!


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