2014.08.20
4~6月期のGDP速報値の発表を受け、記者会見する甘利経済再生相=13日、内閣府 |
消費税率10%への引き上げを判断する材料の一つとされる今年7~9月期国内総生産(GDP)について、「回復する」との声が聞かれる。特に、増税を進めたい側の人たちから、そうした声が多いようだ。
甘利明経済財政・再生相は、「景気は緩やかな回復基調が続いている」としている。1~3月期と4~6月期の実質GDPの平均は昨年10~12月期を上回っていることを理由にしているようだ。
昨年10~12月期、今年1~3月期、4~6月期の実質GDPは、それぞれ527・5兆円、536・1兆円、527・0兆円である(季節調整済みの値)。今年1~3月期と4~6月期の平均は531・6兆円なので、昨年10~12月期の527・5兆円を上回っているというのである。しかし、この計算にどのような意味があるのか。
消費税増税の影響を考えるには、「増税なかりせば」の場合と「増税した現実」の値を比較しなければいけない。増税前の実質GDP成長率は2%程度になっていた。となれば、「増税なかりせば」の場合、1~3月期はその前年同期比2%増で532・1兆円、4~6月期は前年同期比2%増で535・8兆円と計算できる。
これから考えると、実際の実質GDPと増税しなかった場合では、1~3月期は駆け込み需要増でプラス4兆円、4~6月期はその反動減と増税による消費減少でマイナス8・8兆円分の差異がある。
4~6月期の実質GDPをみると、「増税なかりせば」の場合535・8兆円であるのに対し、増税を行った結果の現実は527・0兆円。増税によって、「増税なかりせば」の場合より低くなっているわけで、今年1~3月期との平均が昨年の10~12月期より高いなんて言い訳にもならない。マスコミは、そのようなヘンテコな数字を持ち出された時に、どのような意味があるのか質問すべきである。
「死んだネコ」の話には続きがある。リバウンドは少しで、その後も下がるのだ。ちょっとばかり上がった隙に、消費税増税を決めたらまずいだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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【私の論評】こんなんじゃ、企業数値も読み解けないレベルの低さ、これで増税の判断をするの?一体どうなっているの(゚д゚)!
甘利明経済財政・再生相は、昨年10~12月期、今年1~3月期、4~6月期の実質GDPを比較して経済を語っています。これに対して、この計算にどのような意味があるのかと、高橋洋一氏が反論しています。
まったく、高橋氏のいう通りです。そうして、高橋氏はもし、「増税なかりせば」という数値を出し、それと比較しています。
これは、これで一つのやり方で良いことなのですが、企業経営に携わた人間からいわせると、このやり方以外に、本来やるべきことがあります。
たとえば、企業数値を見るにしても、10~12月期、1~3月期、4~6月期をみるにしても、連続したこれらの数値をみて、どうのこうのと、言ってもそれだけでは、通用しません。それだけで、直近の業績を判断して、モノを語れば「馬鹿」と言われても言い訳はできません。
j実施すべきは、4~6月の数値であれば、1年前、2年前、3年前との比較です。4年前、5年前ともなれば、随分経済の情勢も変わりますから、そこまでは比較しなくても良いと思いますが、場合によっては、そこまでやっても良いくらいです。これをせずに、その前との比較だけで語っていていては、話にも何にもなりません。
そうして、それだけではなく、これを読み解くためにも、10~12月期、1~3月期、4~6月期の1年前、2年前、3年前の数値も分析しておくべきでしょう。
無論甘利氏の語ったように、10~12月期、1~3月期、4~6月期をも見るべきです。ただし、これも本年度、昨年度、一昨年度もみるべきでしょう。
そうして、さらに、1年前、2年前、3年前の社会情勢の変化や、特に当該企業に与えた、変化などもみておくべきでしょう。たとば、これは人のプロポーションを見るにしても同じことだと思います。直近の変化だけみていては、その本質はわかりません。
人体型も直近だけでは見えない経年変化がある |
なぜ、こんなことが必要かといえば、企業業績には季節変動という現実があるからです。
たとえば、私自身は、長い間ピザ宅配業に関わってきたので、これを例にとって、話をします。
ピザ宅配業はどこでもそうだと思うのですが、一番業績があがるのは、12月、1月です。3月も若干あがります。毎年、年間の大半の利益をあげるのは、12月、1月です。
年度がはじまってから、暫くの間は黒字であったとしても、黒字はほんの少しか、赤字であるのが普通です。それを12月、1月で挽回して、年全体で利益を出すというのが普通です。だから、いやがおうでも、12月、1月の年末年始商戦には力がはいるというわけです。
10月には、12月、1月につなげるため、イベントを開催するのが普通です。他の、ケーキ屋さんなども似たようなものだと思います。レストラン業界もこれに近いと思います。これらの業界は、とにかく年末・年始が稼ぎどきであることには変わりないと思います。
このような利益構造にある業界で、昨年10~12月期、今年1~3月期、4~6月期の実質業績を比較してものごとを語っても、何も意味はありません。
体型の変化も比較的短い間におこることもある |
やはり、毎年の社会情勢、経済情勢などを把握しておいて、1年前、2年前、3年前との比較をするというのが筋です。
日本経済だって、同じことだと思います。ピザ宅配業界のような変化はしないでしょうが、毎年決まった、季節変動のようなものはあります。
にもかかわらず、単年度だけの数字の変化で物事を語るというのは、全く不可思議なこととしか言いようがないですし、全く納得できません。
企業数値も読み解けないようなお粗末さで、国の経済の舵取りなどできるのでしょうか?
甘利大臣は、内閣府の役人の、作文を読み上げているだけなのでしょうが、それにしても酷すぎです。内閣府の前身の組織、経済企画庁は、少なくともこのような低レベルの数字を出すようなことはありませんでした。
内閣府になってからは、今回のことに限らず、他の数字に関してもどうしようもない低レベルになってしまいました。
ゴールデンプロポーションにもっていくためには、長期と短期の両方の見方が重要だ |
甘利大臣も、役人に一言、1年前、2年前、3年前との比較も出すようにといえば、こんな酷いことにはならなかったと思いますし、それこそが上に立つものの役割というものだと思います。
こんな数字の読み方をする人は、企業では絶対高い地位につくことはできないと思います。
本当に困ったものです、こんなレベルで増税の判断などされたらたまったものではありません。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
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