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2019年11月13日水曜日

【国家の流儀】韓国と連動して中国、ロシア、北朝鮮による「日本海」争奪戦が始まる…安倍政権はどう対応するか―【私の論評】二正面作戦不能の現在の米軍では、日本を守りきれないという現実にどう向き合うか(゚д゚)!


海自のイージス艦「あたご」

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、数年前から日本の防衛費を上回る軍拡を推進しており、このままだと対馬海峡をめぐって日韓「紛争」が起こることになりかねない。

 もちろん、同盟国・米国は、韓国の「暴走」を必死で押さえ込もうとしている。日韓が紛争を引き起こせば、北朝鮮や中国、ロシアを喜ばせるだけだからだ。

 しかし、残念ながら文政権は、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定するなど、米韓同盟を空洞化させる方向に進んでいる。しかも厄介なことに、この文政権の背後には中国共産党政権がいる。

 2017年12月に訪中した文氏は、習近平国家主席から、(1)米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)の追加配備はするな(2)米国のミサイル防衛に参加するな(3)日米韓の安保協力を軍事同盟に発展させるな-の「3つのNO」(三不の誓い)を突き付けられた。この指示通りに、文政権は「離米・反日」を強化しているわけだ。

 この韓国と連動して、今年に入って中国、ロシア、北朝鮮による「日本海」争奪戦が始まった。

 日本海の「大和堆(たい)」という豊かな漁場で違法操業を続けている北朝鮮は、日本の排他的経済水域(EEZ)周辺に連続してミサイルを発射しているが、日本政府は「遺憾の意」を示すだけだ。そうした弱腰に付け込んで、中国やロシアも日本海での活動を活発化させており、7月には中ロ両国の爆撃機が空中集合したうえで、対馬海峡を抜けて東シナ海まで編隊飛行する合同パトロールを実施した。

 東シナ海では、沖縄県・尖閣諸島を含む南西諸島沖に連続で60日以上にわたって、中国海軍の軍艦や海警局の巡視船が出没し、領海「侵入」事件が続いている。中国軍機による挑発行為も深刻で、自衛隊機によるスクランブル発進は過去最多になりそうだ。

 私が知る米軍関係者も「日中両国は、東シナ海で事実上の『戦争状態』にある」と憂慮を隠さない。そうした危機感を背景に、マイク・ペンス米副大統領も10月24日、「米中関係の将来」と題する演説で、東シナ海における「親密な同盟国である日本」に対する中国の軍事的挑発を激しく非難した。

 安倍晋三政権は、海上保安庁第11管区海上保安本部の定員を大幅に増員し、600人を超える「尖閣警備専従部隊」を創設するなど、尖閣を含む東シナ海を必死で守ろうとしているが、劣勢だ。しかも、「紛争」は今年に入って、日本海にも波及しつつあるが、自衛隊と海上保安庁の現有能力で対応できるとはとても思えない。

 南シナ海が奪われ、東シナ海も風前の灯、そして、今度は日本海だ。中国、ロシア、韓国、そして北朝鮮による連携「攻勢」にどう対応するか。大局を見据えた国家戦略の見直しが急務だ。

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障や、インテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞した。他の著書に『天皇家 百五十年の戦い』(ビジネス社)、『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』(PHP新書)など多数。

【私の論評】二正面作戦不能の現在の米軍では、日本を守りきれないという現実にどう向き合うか(゚д゚)!

冒頭の記事で、江崎氏が指摘するように、日本海の争奪戦がはじまるかもしれない可能性は確かにありますが、ではすぐにそれが実行されるかといえば、すぐにはないというのが正解だと思います。なぜなら、日本には現在世界で唯一の超大国である、米軍が駐留しているからです。

韓国、中国、ロシア、北朝鮮等が日本海をいずれ我がものしようとしても、米軍が駐留している日本に対しては、挑発くらいしかできません。本格的に奪うことなどできません。

しかし、争奪戦が始まり実際に奪われる可能性も、否定できません。それはどのような場合かといえば、このブログでも以前指摘させていただいたように、中東などで大規模な戦争がはじまり、それに米軍が介入したときなどです。

現在の米軍は、残念ながら世界の警察官として、大規模な二正面、三正面作戦などできません。米国も関与する本格的な戦争が世界で、一箇所にとどまらず二箇所、三箇所と起こってしまえば、米軍は一箇所だけを優先的に選択して戦争するしかなくなります。

米軍の海外配置の状況(グァムは米国領なので含まず)

中東などで米軍が大規模な作戦を遂行しているときに、日本海で同時大規模な作戦を遂行する能力は今の米軍にはありません。

これについては、以前のブログにも掲載したことですが、最近米国のシンクタンクが、これについて研究した結果を発表しています。

中露や中東の軍事的脅威に対応する米軍の能力が「限界」にあるという厳しい評価が下されたのです。これは、米軍事専門シンクタンクによるもので、「現在の姿勢では、米軍は重要な国益を守るとの要求に、わずかしか応えられない」と強調しています。

問題なのは、特に海軍において、この相対的弱体化に即効性のある解決策がないことです。「世界最強」のはずの米軍に何が起こっているのでしょうか。

評価は著名な米保守系シンクタンクのヘリテージ財団によるものです。同財団が10月末に発表した「2020年 米軍の軍事力指標」と題する年次報告書は、米陸海空軍と海兵隊の軍事的対処能力を、非常に強い▽強い▽限界▽弱い▽非常に弱い-の5段階で評価しています。ただ、基準は「2つの主要な戦争を処理する能力」などとしており、2正面作戦を行うにおいての評価であるあたりが超大国米国らしいです。

とはいえ、中東ではイランの核開発、南シナ海では中国の軍事的膨張、さらに北朝鮮の核ミサイル開発と、地域紛争が偶発的に発生しかねない「火薬庫候補」は複数あり、2正面を基準にするのは米国としては当然の条件です。

この5段階で「限界」とは、乱暴な言い方をすれば「戦争になっても勝てるとは言えず、苦い引き分けで終わりかねない」、あるいは「軍事的目標を達成するのは容易ではない」ということです。

同報告書では欧州や中東、アジアの3地域での軍事的環境を分析。例えば中国については「米国が直面する最も包括的な脅威であり、その挑発的な行動は積極的なままであり、軍事的近代化と増強が継続している」などと、それぞれの地域の脅威を明らかにしたうえで、対応する陸海空軍などの米軍の能力を個別評価しています。ところが驚くことに、その内容は、「限界」ばかりなのです。


米陸軍女性兵士

まず陸軍は、昨年に引き続き「限界」のまま。訓練や教育など多大な努力により旅団戦闘団(BCT)の77%が任務に投入できる状態となった点は高く評価されたのですが、兵力を48万人から50万人に増強する過渡期にあり、その準備や訓練に加え、陸軍全体の近代化が課題となっています。

米海軍女性兵士 ネイビー・シールズ隊員

さらに問題なのは海軍です。前年同様「限界」ですが、内容は厳しいです。まず艦艇の数で、「中国海軍300隻と(海軍同様の装備を持つ)175隻の中国沿岸警備隊」(米国海軍協会)に対し米海軍は290隻。トランプ政権は「2030年代までに海軍の保有艦艇を355隻に増やす」との構想を持っています。一部には予算面から、この構想の無謀さを指摘する声があるのですが、本当の問題は355という数字をクリアすることではなく、艦艇の運用面、いわばクリアした後にあるのです。

海軍艦艇は整備と修理や改修、耐用年数延長工事や性能アップのため、定期的にドック入りして「改善」を行う必要があります。一般的に、全艦艇の3分の1はこうした「整備中」にあり、訓練中も含めれば、即時に戦闘行動に投入できるのは半数程度とされます。

ところが米海軍には、大型艦艇に対応するドックが足りないのです。全長300メートルを超える原子力空母ともなれば、ドック入りしなければならないのに他の艦船が入渠(にゅうきょ)しているため、順番待ちが生じている状態なのです。

米国海軍協会などによると、米海軍原子力空母11隻のうち現在、任務として展開しているのはロナルド・レーガン▽ジョン・C・ステニス▽エイブラハム・リンカーン-の3隻のみ。ニミッツをはじめほか8隻はドックで整備や部分故障の対応中といった状態なのです。

しかも空母に限らず米海軍艦艇がドック入りした際の整備の工期は、予定を大幅に超える事態が頻発しているというのです。

過去のオバマ政権時の軍事予算削減が響き、ドックも足りず、整備できる人間の数も足りないのです。このような状況でなお艦艇数を増やしても、整備や修理待ちの列が長くなるだけです。また原子力空母の多くが建造後20年が経つということに代表される、各種艦艇の老朽化、さらには新型艦の不足も海軍を悩ませています。

報告書では「資金不足と利用可能な造船所の一般的な不足により、艦艇のメンテナンスが大幅に滞り、配備可能な船舶と乗組員に追加の負担がかかっている」と指摘されています。

確かに、このような状態で中東と南シナ海、あるいは朝鮮半島で緊迫した事態が発生したらと考えると「限界」の評価はうなずけます。ベトナム戦争の際、米海軍はベトナム近海に常時数隻の空母を展開していたのですが、現状の3隻、訓練中を含めても5~6隻の稼働では「2正面の展開」は困難です。

米空軍女性パイロット

一方で空軍は前年の「弱い」から「限界」にランクアップという、とても素直には喜べない状態です。

戦闘機と攻撃機の数が必要数の8割にとどまっているほか、パイロットの不足などをこの評価の理由にあげています。また海兵隊も「限界」で、近接支援を行う武装ヘリなど海兵隊配備の航空機の維持や保守要員の不足などがマイナスとなりましたた。

報告書は「(米軍は)現在の作戦と準備レベルの維持に人的・物的資源が振り向けられているため、近代化プログラムは苦戦している」としたうえで、「現在の姿勢では、米軍は重要な国益を守るとの要求に、わずかしか応えられない」と結んでいます。

なかでも海軍には「水平線の向こうに警告を示す不吉な雲が見えている」との表現で、“進路”を変えるなら今だとの警鐘を鳴らしていますが、まずはドックから作らねばというのは、「おいしいおにぎりを食べたいから、まず水田を作ろうや」という状態ともとれます。トランプ米大統領が北大西洋条約機構(NATO)や日本に軍事的対処能力の向上を求めるのも当然といえば当然なのです。

このようなお寒い状況では、確かに米軍大規模な二正面作戦などできません。中東で米軍が大規模作戦を実行し始めた場合、日本海で大規模な侵略があった場合、米国はこレに十分に対処できない可能性が大です。

かといって、米国ではシェール・オイルの採掘によって、石油は自国で賄えるようになったため、米軍が中東から引き揚げ、現在中国の台頭に悩まされているアジアに主力を置くようにすれば、日本にとっては一見良いようにみえるかもしれません。それで、今まで通り、日本は米国に守ってもらえると安堵するかもしれません。

しかしそれだけでは、日本自体は、安全が確保されるかもしれません。しかし、米軍が引き揚げた中東は不安定化するでしょう。原油の輸入を頼っている日本とししては、これは死活問題です。中東に原油を頼る、他先進国とも協調しつつ、中東に大規模な軍隊を派遣して、中東の安全保障を確保しなくてはならなくなります。

いずれにしても、日本の安全保障は今のままでは、脅威にさらされることになります。まずは、現行の憲法や法律でできることはすべて実行するべきです。防衛予算は、現行のままでも増やすことはできます。無意味な1%枠など捨て去り、少なくとも2%に増額して、同盟国である米国等とも協調しつつ、アジアと中東の安全を確保すべきです。

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