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2009年1月23日金曜日

顧客のITガバナンス確立の企てに協力しませんか-情報の使い手は誰か?


顧客のITガバナンス確立の企てに協力しませんか(この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください 日経BP ITPRO)

 最近、ユーザー企業の人からITガバナンスの話を聞くことが多くなった。ITガバナンスはユーザー企業にとっては永遠の課題だが、いくつかの事情で最近 ちょっとブームらしい。ITベンダーから言えば、「あまりカネにならない」領域。ただ、このご時勢、“ソリューションプロバイダ”の真価が問われている。 ITベンダーとしてもソリューションを考えたい。

 まずITガバナンスって何、という話だが、私がゴチャゴチャ言うよりも、COBITの定義で十分。いわく「ITガバナンスは、経営陣および取締役 会が担うべき責務であり、ITが組織の戦略と組織の目標を支え、あるいは強化することを保証する、リーダシップの確立や、組織構造とプロセスの構築であ る」

 分かりやすい定義だ。そして極めて当たり前。だけど、ほとんどのユーザー企業はできていない。ITベンダーの人なら「客なんて、そんなものよ。こ の話、やはりカネにならないな」と思うだろう。しかし、ちょっと待て、である。ユーザー企業の問題意識にしばし付き合っても、損にはなるまい。

 ユーザー企業の間でITガバナンスに関心が高まってきたと言っても、多くの場合、経営者が問題意識を持っているのではない。「うちもITガバナン スに取り組まなければ」と言っているのは、たいていはシステム部門である。まあ、そこが日本の企業ITの哀しい現実で、弱体化したシステム部門の復権につ なげたいという思いが見える。

 大半の企業では、経営者はITに関心がない。というか、忙しすぎてITなんぞに意識のリソースを割けないといったほうが正しい。こんなご時勢なん で、「不要不急のIT投資は凍結」と言っておしまいである。で、新規案件でやることのなくなったシステム部門は、「それなら長年の課題であるITガバナン スに取り組むか」という話になる。

 しかも、J-SOX対応がとりあえず一段落した。そう言えば、内部統制確立のためのフレームワークにCOBITを使った。その余勢を駆って、 COBITベースでITガバナンスの確立にも取り組もう・・・。システム部門の気持ちは分かるが、これでは大変なことになる。ITガバナンスを単なる統制 と読み替え、一方的にルールを決めて利用部門に押し付けたら、結果はミゼラブルだ。

 ITガバナンスを確立・強化するためには、当然のことながら経営者のリーダーシップが前提。それに利用部門の協力も不可欠だ。リーダーシップも協 力もない中で、弱体化したシステム部門が「IT投資・運用ルール」なるものを作ったらどうなるか。大変な反発を受けるのが関の山で、ひょっとしたら黙殺さ れておしまいなんてことになるかもしれない。

 まずは、忙しくてITなんぞにリソースを避けない経営トップに代わり、経営の視点でITを企画する強力なCIO機能がいる。そのためには経営陣と システム部門との強いリレーションが必須。さらに、システム部門と利用部門の円滑なコミュニケーションも不可欠だ。つまり、システム部門が経営陣や利用部 門と会話でき、課題や情報ニーズをくみ取れる体制がなければ話にならない。ルールなんぞは、その後だ。

 そんなわけで、“システム部門主導のITガバナンス”の企ては、あっさりと瓦解するだろう。では、そんなユーザー企業を前にした時、ITベンダーとしてはどうするのか。「やはりカネにならない」と放っておけばよいのだろうか。

 かつて、と言っても、ほんの数カ月前までだが、ITベンダーの多くが「選別受注」を口にした。危ない案件、つまりITガバナンスが怪しい企業の案 件は断ると豪語した。ITベンダーの中でも心ある人たちは、「ユーザー企業のCIO機能やシステム部門の強化に向けて我々も協力しないと、日本のITの未 来は暗い」といった話をしていた。

 さて、景気がこうなってしまったが、ITベンダーはかつての発言を忘れてはいないと思う。案件受注は極めて厳しい情勢だが、パートナーとしてユー ザー企業のITガバナンスの確立・強化に向け、少しは協力してみてはどうか。COBITの成熟度診断もよいが、経営者と対峙できるシステムコンサルタント のノウハウや、利用部門に飛び込める営業担当者のリレーション構築力を、ユーザー企業のシステム部門に伝授することだって考えていい。

 ユーザー企業のITガバナンスが強化され、システム部門が復活してくれば、ITベンダーにとっても中長期的にカネになるはずだ。くれぐれも、IT ガバナンスが欠如した、とんでもない案件に、「背に腹は変えられぬ」とばかりに食い付いてはいけない。そんなことをすれば、ユーザー企業との健全な関係を 作ろうとしてきた、これまでの努力はすべて水の泡である。

 [2009/01/23]

情報の使い手は誰か?
今日コンピュータを使える能力、いわゆるコンピュータ・リテラシーは当たり前のものとなっています。一昔だと、ユーザー・インターフェイスが良くなくて、コンピュータを使うこと自体が大変なことだったこともありました。それこそ、メインフレームがあって、忘れた頃にメインフレームから月に一度大量のデータが紙で吐き出され、もうそのころには情報の鮮度も落ちて手遅れとか?

しかし、現在ではそのようなことはなくなり、キーボードを叩ける人なら、誰でもかなり簡単にコンピュータを使いこなせるようになってきました。今では、誰もが短期間研修でも受ければ、相当なことができるようになり、コンピュータ・リテラシーは当たり前のものとなりました。

ただし、情報リテラシー(情報能力)関しては、まだまだです。本来あるべきところまではきていません。もう、現段階ではコンピュータを使うことではなく、情報を扱うことが当たり前になっていなければならないはずです。

しかし、そうなっていないにはそれなりに原因があります。それは、無論ITガバナンスにも深くかかわってくることです。

今日企業に働く多くの人が、自分が知るべき情報明らかにするのは、IT部門の仕事だと思っています。いうまでもなく、これは間違いです。IT部門は、道具をつくる場所であって、道具を使うのは働く人自身です。

企業で働く全ての人々は、道具としてのコンピュータの使い方を決めるのは、自分自身だということを知らなければなりません。すべての人には、情報責任を果たす責務があるということです。「自分はどのような情報をもたなければならないのか、誰から手にいれなければならないのか。どのような形で手にいれなければならないのか。それはいつか」、さらには、「どのような情報を与えなければならないのか、誰に与えなければならないのか。どのような形でか、そしてそれはいつか」を問い、実行しなければなりません

残念ながら、企業で働く人々のほとんどが、これらのことを考えるのはIT部門だと思っています。しかし、そのようなことは、これからは通用しません。CEOだろうと、昨日入ったばかりの新人であろうと、こうした情報責任を果たしていく必要があります。

最近、情報の観点から組織改革が行われるようになってきています。情報を経営資源ととらえるならは、階層の整理が俎上に上らざるをえなくなります。そうして、マネジメント上の階層がほとんど何もマネジメントしていないことが明らかになります。それらの階層は、トップとボトムから届くかすかな信号を増幅しているだけです。

情報理論の第一法則によれば、あらゆる中継器が雑音を倍増しメッセージを半減させるとしています。同じことが、人のマネジメントをせず事実上の意思決定もしないマネジメント階層についていえます。それらの階層は情報の中継器にすぎません。したがって、そのうような階層は必要ないということになります。

これからは、大企業であっても、四つ以上の階層を持つ企業はなくなります。しかも、そもそも企業で働く人々は、階層の多さ組織構造の失敗と意味すると受け入れられなければなりません。それは、既存の組織にとってまさに青天の霹靂だと思います。

さて、ITガバナンス、つきつめて考えると、とてつもない組織改革につながっていきます。しかし、現在の企業を取り巻く環境を考えたとき、今回述べたようなITガバナンスの問題は一部に過ぎなく、まだまだ、問題が山積しています。これらに、ついてはまた別の機会に掲載したいと思います。

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