10月21日、ロイター/イプソスが発表した米大統領選に向けた支持率調査によると、共和党候補の ドナルド・トランプ氏の支持率が上昇した。写真は同日、ノースカロライナ州で演説するトランプ氏 |
調査は14─20日、全米50州で有権者1640人を対象にオンラインで実施。クリントン氏の支持率は44%、トランプ氏は40%となった。7─13日に実施された調査ではクリントン氏が8ポイントの差をつけていたが、そのリードは半分に縮まった。
また、今回の調査からは、トランプ氏が過去に女性に対するわいせつ行為を働いたと考えているとの回答が63%に達したこともわかった。
【私の論評】驚天動地の急上昇の背景には何があるのか、日本はどう対処すべきか(゚д゚)!
この驚天動地の急上昇の背景には何があるかといえば、大きく言って2つの事柄があると考えられます。
まず一つ目は、ヒラリー候補が大統領になった場合、おそらく現オバマ大統領の政策が継承され、あまり変わりがないことが予想されるということです。
アメリカではオバマ大統領の評判は地に堕ちています。日本で例えると、それこそオバマ大統領にルーピーと呼ばれた、鳩山元首相よりもまだ酷いというような感覚です。
ここで、オバマの失政を振り返っておきます。
2011年12月にオバマ大統領は、イラクから米軍を撤退させましたが、その時期があまりに早すぎました。この判断によって、中東はさらに混乱することになりました。そもそも、イラクからの撤退はオバマにとっては2008年大統領選挙戦略の切り札の一つでした。同年の大統領選では、「イラク戦争反対を表明していた唯一の有力候補」として、自己PRに全面的に使い、厭戦気分が高まっていたアメリカ国民の心を捕らえました。
2012年アフガニスタンに向かう米軍兵士たち |
大統領就任後、オバマは、アルカイダとの戦いの「主戦場」と位置づけるアフガニスタンに米軍をシフトさせるという大きな方針を掲げます。同時にイラクの都市部から戦闘部隊を撤収、郊外の基地に再配置するとともに、「2010年8月末までにイラク駐留の主力部隊の撤退を開始し、2011年末までにイラクから完全撤退する」という出口政策のシナリオを打ちたてます。
実際、このシナリオ通りにイラクからの撤退が進んでいきました。2011年末というイラク撤退日程は、12年選挙でのオバマ自身再選を後押しする “手柄”の一つにしようという狙いもありました。
ISISはシーア派色の強いマリキ政権に反発するスンニ派の住民も味方につけ、勢力を拡大させてきました。イラク情勢がさらに不安定化すれば、米軍の再び軍事介入する可能性も高まります。
アフガン撤退を遅らようとする意見も既に次第に大きくなっています。オバマ政権の「イラク・アフガン戦争の完全終結」までのこれまでのシナリオは完全に崩壊しました。
拘束されたアメリカ人5人がイランによって開放されたことを伝えるCNNのニュース |
さらに、核武装を目指すイランに弱腰な姿勢をとったことも、5人のアメリカ人がイラン当局に拘束されたことを受けて、16年1月に4億ドル(約408億円)の金を秘密裏に支払ったのも大失敗でした。
8月になってそれが明らかになったときは、多くのアメリカ人が憤激したはずです。これによってオバマはアメリカ人を人質にすれば多額の身代金を得られるという、悪しき前例を作ってしまったようなものです。共和党は、4億ドルの金がシリアのアサド政権に流れる恐れもあると批判していましたが、本当にその通りかもしれません。
移民制度改革を発表したオバマ大統領 |
そうして、さらに酷いのはオバマ大統領が不法移民に対して寛容な措置をとったことです。確かにアメリカは「移民の国」です。アメリカの「建国の理念」に賛同する移民たちが、アメリカに活力を与え、発展させてきたというのは事実です。しかし、アメリカは断じて「不法移民の国」ではありません。
にもかかわらず、オバマ大統領はアメリカ国内に1100万人いるとされる不法移民の強制送還免除を目的とした「移民制度改革」まで打ち出したのです。もしこの法律が施行されていたとしたらアメリカ生まれの子を持つ親など不法移民の約500万人に合法滞在が認められる可能性がありました。
にもかかわらず、オバマ大統領はアメリカ国内に1100万人いるとされる不法移民の強制送還免除を目的とした「移民制度改革」まで打ち出したのです。もしこの法律が施行されていたとしたらアメリカ生まれの子を持つ親など不法移民の約500万人に合法滞在が認められる可能性がありました。
結局はテキサス州などアメリカの26州が「大統領の権限を逸脱している」として提訴し、米連邦最高裁の判断が真っ二つに分かれ、米連邦高裁の「移民制度改革は無効」との判断が維持されたことにより、この政策は何とか食い止めることができました。しかし、オバマ政権下の8年間で不法移民が増えたのは事実です。それが治安の悪化など、アメリカ国内で現在大きな問題になっています。
さらに、ここでは詳細は述べませんが、ウクライナ問題でも煮え切らない態度を取り続けたオバマは、結局ロシアのクリミア併合を許してしまいました。
このような失政続きのオバマです。オバマと同じく民主党のクリントン候補が大統領になった場合、このような外交政策が継承される可能性が大きいです。これに関しては、多くのアメリカ国民が懸念を抱くのは当然のことです。
二つ目には、このブログにも何度か掲載したように、アメリカのメディアは非常に偏っていて、そのほとんど9割がリベラル・左派勢力に握られており、保守派は1割に過ぎないという実体があるということです。そのため、日本でも報道されるアメリカは、アメリカのメディアによるものがほとんどで、多くの日本人はアメリカの半分しか知らないというのが実情です。
米大統領選の第3回テレビ討論会で司会を勤めた米FOXニュースのクリス・ウォーレス氏 |
この状況は、日本国内の状況にたとえると、産経新聞は存在せず全部の新聞がリベラル・左派新聞であり、保守派新聞は、テレビなどのマスコミもほとんど全部がリベラル・左派であり、唯一FOXニュースだけが例外で保守であるという状況です。
この状況ですから、米国内では民主党のクリントン候補に対して肯定的に、共和党のトランプ氏に対しては否定的という傾向があります。だから、米国ではトランプ氏に否定的な報道が多くなるのは当たり前といえば当たり前です。
これに関しては、以下の動画をご覧いただくとさらに良くご理解いただけるものと思います。
ウォーレス氏は告発サイト「ウィキリークス」の流出メールで、クリントン氏が環太平洋経済連携協定(TPP)など自由貿易に前向きな姿勢を示していたことを追及。トランプ氏が「ありがとう」と応じる場面もありました。
今回のトランプ氏の支持率の上昇は、最後のテレビ討論会の司会者がFOXニュースのクリス・ウォーレス氏だったことや、このままではアメリカは大変なことになると考え焦燥感を抱いた保守層が、以前よりもより積極的に大統領選挙に関与するようになったからと考えられます。
アメリカ大統領選に関する報道で、日本のメディアは盛んに「アメリカは内向きになっている」という報道を続けています。
確かに各候補者は、外交問題ではなく国内問題に関して主張する機会が多かったのですが、だからといって、アメリカが内向きになっているというわけでもありません。というより、アメリカは「原点回帰」をしようとしているとみるべきです。
典型的なリベラルの発言を掲載した共和党派によるfacebookの写真 |
現在、アメリカには歪な「米国型リベラリズム」はびこっています。これは、多くのまともなアメリカ人なら誰もが感じていることでしょう。そうして「米国型リベラリズム」の象徴がオバマ大統領であり、民主党なのです。
だからこそ、メディアではほとんど報道されないものの、現実には半分を占める、保守層はリベラリズムをたたき潰して、強いアメリカを取り戻そうとしているのです。
「原点回帰」の動きはアメリカだけの話ではありません。ヨーロッパでも同様の動きが起きています。イギリスの欧州連合(EU)離脱もその象徴といえるものと思います。
イギリスは財政破綻や難民問題など、ヨーロッパが抱える問題に巻き込まれることに嫌気がさし、EU離脱の道を選んだのです。
「原点回帰」の動きはアメリカだけの話ではありません。ヨーロッパでも同様の動きが起きています。イギリスの欧州連合(EU)離脱もその象徴といえるものと思います。
イギリスは財政破綻や難民問題など、ヨーロッパが抱える問題に巻き込まれることに嫌気がさし、EU離脱の道を選んだのです。
この動きはまさに「原点回帰」です。だからといってイギリスが内向きになっているかといえば、そんなことはありません。イギリスはEU離脱で国境をはっきりさせただけです。
そうして、共和党の大統領候補であるドナルド・トランプ氏も同様の考えを持っているようです。彼が不法移民について激しく批判しているのも、国家の破壊につながりかねない、うさん臭いグローバリズムにはうんざりしているからです。
しかし、ニューヨーク・タイムズ紙やCNNなど、民主党の広告塔といっても過言ではないアメリカのリベラル・左派メディアは、トランプ氏の考えが気に入らないようです。トランプ氏が共和党予備選挙に出馬して以降、ずっと批判を続けてきました。
日本のメデイアもこれに右にならえであり、同じく最初からトランプ氏を色物、際物として色眼鏡で見た報道を繰り返してきました。
米国の「リベラルメデイアの顔」。多くの日本人は彼らの主張が アメリカの主流であると信じて疑わないが、彼らの主張は アメリカの半分しか現していない。クリックすると拡大します。 |
しかし、現時点でもトランプ氏が大統領になる可能性は捨て切れません。にもかかわらず、上の動画にもあったように、安倍総理はクリントン氏とは会談したものの、トランプ氏とは会談していません。
もし、トランプ氏が大統領になったとしたら、現在の日本ではトランプ氏と全くパイプも何もない状態で、アメリカとの外交をしなければならないことになります。
さらに、ヒラリー氏が大統領になったとしても、ヒラリー大統領が代表するのはアメリカの半分にしか過ぎないどころか、もっと小さいかもしれないことを認識すべきです。
議会は、今でも共和党のほうが多数です。そうして、忘れてならないのは、アメリカ大統領は平時においては、世界で最も権力のないリーダーであるということです。
多くの人は、アメリカでは大統領に権限が集中していると勘違いしているようですが、実はそうではありません。なぜこのような勘違いがはびこったかというと、第二次世界大戦中の大統領などを思い浮かべからでしょう。
アメリカでは、総力戦のような戦争になると、戦争を遂行するために、権力が大統領に集中する仕組みになっているのです。だから、多くの人は戦争中のアメリカの大統領を思い浮かべ、アメリカの大統領は強大な権力を持っていると勘違いしているのでしょう。しかし、平時の大統領はアメリカ議会の承認がなければ何もできません。さらに、平時のアメリカでは司法がかなり強い権力を握っています。
トランプ氏が大統領になれなかったにしても、それに対する反動として議会はさらに共和党の勢力が強くなる可能性が十分ありますし、今でも共和党のほうが多数派です。
そうなると、日本も保守層とのパイプを持っておく必要がありますし、私達も、アメリカの報道に関しても、アメリカや日本のリベラル・左派的なものだけではアメリカの半分しか知ることが出来ないことを認識して、FOXニュースや弱小なその他のアメリカ保守メディアに注目していくべきでしょう。
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