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2011年2月26日土曜日

高速バス横転 逮捕の大学生は就職活動の帰りか―【私の論評】もう雇用環境は本格的に変わってしまったのかも?

高速バス横転 逮捕の大学生は就職活動の帰りか



広島県の山陽自動車道で、大阪発鹿児島行きの高速バスが横転し、12人がけがをしました。26日午前0時前、乗客の大学生が運転席に来て「降りたい」と言い出し、運転手が「降ろせない」と説明するとドアを蹴り出しました。その後、大学生が突然、ハンドルをつかんで左に切ったため、バスは路肩に乗り上げて横転しました。大学生は殺人未遂の疑いで逮捕されました。

逮捕された鹿児島大学3年の楫田優希容疑者(22)は25日午後11時55分ごろ、東広島市の山陽自動車道を走る高速バスの車内で、運転手からハンドルを奪って左に切り、バスを横転させた疑いです。警察などによると、楫田容疑者は後ろから2番目の席に座っていて、走行中、たびたび運転手の席に来て「降りたい」と要求していましたが、運転手が「降ろせない」と説明すると入り口のドアを蹴るなどしたということです。楫田容疑者は、警察の調べに対して「バスを横転させて自殺したかった」などと話しています。楫田容疑者はスーツ姿で会社の説明資料を持っていたことなどから、就職活動の帰りだった可能性があります。警察では、引き続き詳しい動機を調べています。

【私の論評】もう雇用環境は本格的に変わってしまったのかも?
この学生、鹿児島大学の学生だということで、調べてみましたが、この大学は、国立大学法人でした。偏差値なども調べてみましたが、一応国立大学ということで、地方大学の中では決して低いほうというわけではないようです。

このレベルの大学であれば、従来なら、本人が犯罪を犯したとか、よほど神経的におかしいとかがなければ、超一流とはいわないまでも、中堅どころには問題なく就職できた思います。

あらためて、最近の就職戦線の困難さについて、思い知らされたような気がします。しかし、それは、それとして、この学生いくら、就職活動がうまくいかないからといって、自殺しようとするだとか、それだけでなく、その目的を達成するために、周りの人を平気で犠牲にしようとする態度は、とてもいただけませんね。とばっちりを受けた他のバスに乗っていたお客さん、本当に運が悪くてお気の毒です。

はっきり言わせていただければ、この学生を採用しなかった企業の判断が正しかったことを改めて、証明したようなものです。おそらく、かなり、利己的な性格の持ち主なのだと思います。それに、困難な状況に耐えられないで精神的に弱いことをさらけ出したと思います。

このような人は、学力とかそう言う前に、まずは、まともな社会人になることに努めるべきだったと思います。現在企業に入れば、どこでも、戦場のようなものです。どの企業でも、先行き不安の状況で一生懸命にがんばっている最中です。会社の事業も、前例のない時代に突入し、昔のことをただ継続しているような企業はつぶれてしまいます。会社に入れば、こうした常時不安定なことの連続です。いつも、新たなことに挑戦しなければならなくなります。そんな中に、こんな人が放りこまれたら、とんでもないことになっていたと思います。

このブロクでは、現在は、デフレの最中で、デフレを克服しなければ、何をやっても雇用は回復しないということを再三のべてきました。これは、マクロ経済的にみれば当たり前の事と思います。しかし、これはこれとして、一歩ひいて、ミクロ的な見方をしてみると、企業側としても、最近では、何の仕事もできないし、コミュニケーションもうまくとれない、社会性のない新入社員を定期的に採用する事自体に嫌気がさしているという部分もあるのではないかと思います。

春は進入学や入社シーズンであり、萌え出づる春にふさわしい新鮮なイメージを持つ日本の風物詩です。これにあわせて学校を卒業して新社会人となる就職者が会社での第一歩を入社式で迎えられます。ことしも、まもなくそのシーズンがはじまります。

このことを誰もが当たり前のことと信じて疑わないようですが、実はグローバルな視点からみれば、大変不思議ことなのです。なぜなら入社式というのは日本以外にはない風習であり、習慣だからです。日本の企業で、普通に挙行される入社式では社長の訓示やら辞令を受け、代表者が企業への貢献を誓いの言葉として唱和するなどして社歌斉唱し、社是の唱和などで晴れの儀式として演出されます。これは、日本の社会では、重要な通過儀礼をなしています。

しかし、これをもう少し客観的に見つめてみると、企業の採用が一斉に新卒者に対して行われ、一斉入社となることから始めて意味を持つことです。最近では通年採用が増えてきているようですが、必要なときに人材を採用し、そうでないときは採用を控えるという企業活動の経済合理性に忠実に行動するならばそうならざるを得ないのである。この通年採用では入社式という儀式を構成することは不可能になることは明らかです。実は、日本以外の諸外国では、このような儀式はありません。

すでに、多くの企業が、、早期退職優遇制度、管理職年俸制度、管理職定年制度を導入してから久しいです。いずれ、一般社員も年俸制度になり、そして最終的には通年採用方式が導入されるようになるでしょう。

実は、近年の新卒の就職難に関しては、背後にこのような変化があるのだと思います。現在デフレが克服されず、放置され、そのため新規雇用がなかなか生まれない状況にあります。しかし、実はこうしたことが、先の変化を加速させているのだと思います。

こうした変化の行き着く先は、日本的雇用慣行の終焉です。とどのつまり、今でいうところの、正社員は絶滅することになるでしょう。最終的には、企業にはプロしか残らないことになります。そのなかでも、いわゆるドラッカーがいうところの、知識労働者が主流を占めることになるでしょう。しかし、こうしたプロフエッショナルの知識労働者を相手とする経営の難しさは、未だ多くの経営者が認識していないことでしょう。現状では、せいぜい中高年の労務費を圧縮する手段ぐらいに考えているから、その報いを正確に予測しているものは少ないと思われます。こうした経営のいきつく先は、当然、労働市場の流動化ということになります。

特に、ブロの知識労働者に関しては、もともと会社にロイヤリティーをもつものではありません。実は、彼らは、自らの仕事の専門分野にロイャリティーを持つのです。それは、医師が病院に務めているというのではなく、医師という仕事そのものに誇りと信念を持っているのと同じことです。

労働市場が流動化するということは、実は経営者にとって、特に大企業経営者にとってかなりデメリットが大きいということがいえます。社会が受ける傷も深い、競争が激しくなり、優勝劣敗が明らかになるし、失業率が増え、外国人労働者も増え、犯罪が増え、ぎすぎすした面といかがわしい面が多くなるかもしれません。しかし、社会はもっと開放的になるでしょう。実際、1980年代にアメリカで深刻な不況とレイオフの嵐が吹き荒れたときに、多くの人が失業して自信を失っていたときに、景気が回復し、多くのレイオフされた人たちのうちとくにプロの知識労働者の能力が認められ、多くの人がまた、就職することができました。そのときに、彼らは「自分はできるんだ」と逆に大きな自信をつけたといわれます。このころから、アメリカでも、はじめて、知識労働者の雇用の本格的流動化がはじまったものと思われます。

実は、最近の就職難の背後には、こうした動きがあるのだと思います。しかし、日本には、日本の雇用慣行が根づいています。人々の意識もそれを美徳としているようなところがあります。だから、日本の場合は、ストレートに上記のような筋書き通りには進まないかもしれません。

私は、おそらく、新卒の二本立てのような人事政策が増えてくるのではないかと思います。

以前、このブロクでは野村ホールディングスのG型社員というのを掲載したことがあります。これは、今年から入社する新たなタイプの社員です。この社員の初任給は54.2万円です。

この高額給与にありつけるのは「グローバル型社員(通称、G型社員)」と呼ばれる約40人に限られています。G型社員はインベストバンク、グローバルマーケット、ITオペレーションなど6コースのいずれかに配属されて、世界を相手にビジネスを行います。

G型社員には、配属された部門で必要とされる専門性と海外とのやりとりを過不足なくできる語学力が求められていて、TOEICで800点以上を期待されています。

つまり、入社=即戦力じゃないとダメ。高い給与をもらう以上、当然ですが、彼らには最初から厳しいハードルが課せられているのです。仕事ができなければ、もちろん給与はダウンします。残業手当や家賃補助などはなく、勤務地は異動が発令されれば国内外どこでも行かなければなりません。犠牲にするものも少なくないのです。

おそらく、野村では、このような社員がいなければ、これからの激しいグローバル競争に勝利することはできないと踏んでいるのだと思います。なにせ、野村も日本では最大の証券会社ですが、世界の中の投資銀行という業種の中では、最低レベルですから・・・・・。

しかし、一方では、通常の新入社員も入れています。これらの社員が今後どのように育っていくか、最初から給料の高い社員がやはり、能力を発揮するのか、それとも、今まで通りの新卒が育っていくのか。興味のつきないところです。通常の考えでは、給料の高い、能力の高い社員が、勝利をおさめるように思われるでしょうが、そうとも限りません。能力の高い社員は、独立心も旺盛です。一方の普通の新入社員は、組織によって育てられ、個人的な能力は最初は圧倒的に劣っていますが、、組織運用能力を伸ばしていくかもしれません。

おそらく、いましばらくは、多くの企業で、このような中途入社の社員も含めた、二本立てとか、三盆立ての人事制度にするのではないかと思います。その果てに日本流のプロの知識労働者を満足させる企業ができあがり、そういう企業が発展していくのではないかと思います。おそらく、外見は今まで通り、新卒を大量に雇用しているようにみえる企業でも中身は相当かわってくると思います。今後、従来の日本独自の雇用慣行に後戻りすることはないと思います。

それにしても、この記事の発端となった、学生、このようなことがおこりつつあることなど全くわからないのでしょう。大学側でも、何かの機会にこうしたことを教え込む必要があると思います。いまだと、語学が本当にできる学生なら就職には困らないと思います。それに、語学に限らず、何かに秀でている人は、困らないと思います。

それに、いずれは、雇用の流動化も日本でも本格的に始まるでしょうから、今は中小企業にはいって、そこの会社を大きくするくらいの気持ちで頑張って、本当に自分の能力を伸ばしていれば、いずれどこかの会社など認められる時期もやってくると思います。それに、就職した会社が本当に大きくなれば、何もそこから動く必要もありません。そうすれば、大きな会社の社長への最短コースになるかもしれません。就活で頑張っている学生の皆様、このようなことを考えて、もっと気を楽にして、頑張ってください。これから、努力した人には必ず報われる日がやって来ると思います。だから、間違っても上の記事の学生のようなことをしてはいけません。そんなことをすれば、本格的に将来が閉ざされることになってしまいます。

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