超氷河期の就職戦線を勝ち抜いた学生たちの間で、野村ホールディングスの初任給が話題を集めている。
来年4月に入社する新卒社員の初任給がナント! 54.2万円。日本経団連調査(大卒・総合職、22歳)の平均が20万9697円だから、2倍以上の開きだ。この金額は45歳(54万6771円)と同レベルになるという。いくら何でもという気になる。
基本給だけで650万円。ボーナスを加えればラクに800万円は超すだろう。新卒でありながら年収はいきなり上場企業の管理職並みだ。息子が父親の収入を超えるなんてことも起こるのではないか。さすが国内ナンバーワンの野村というべきか。
この高額給与にありつけるのは「グローバル型社員(通称、G型社員)」と呼ばれる約40人に限られる。G型社員はインベストバンク、グローバルマーケット、ITオペレーションなど6コースのいずれかに配属されて、世界を相手にビジネスを行う。
「G型社員には、配属された部門で必要とされる専門性と海外とのやりとりを過不足なくできる語学力が求められています。TOEICで800点以上を期待しています」(野村HD広報担当者)
つまり、入社=即戦力じゃないとダメ。高い給与をもらう以上、当然だが、彼らには最初から厳しいハードルが課せられているのだ。仕事ができなければ、もちろん給与はダウンする。残業手当や家賃補助などはなく、勤務地は異動が発令されれば国内外どこでも行かなければならない。犠牲にするものも少なくないのである。
野村が日本の慣例を破り、多額な資金を投じてまで新卒者の初任給を引き上げたのはなぜか。
「野村が世界で生きていくことを考え始めたということです。世界でベスト5に入るという目標も、新卒者の高額初任給もそのためのものです」(外資系証券幹部)
野村は日本の証券会社で最初に海外市場に進出したが、勝負にならなかった。現在、野村の収益力は外資系証券の10分の1程度でしかなく、世界での評価はいまでも“ローカル証券”にとどまっている。新卒者の高額初任給はリベンジを懸けた最初の一手か。
(日刊ゲンダイ2010年8月13日掲載)
世界で伍していくためには、こういうことも必要か?
野村ホールディングスが、旧リーマン・ブラザーズが独自採用した新入社員に対し、野村採用の2倍以上の額の初任給を支給することが分かった。世界的な金融危機で内外の金融界では再編が加速しており、統合企業同士の雇用条件の差や、それから生じる不調和などへの対応が金融機関経営者の課題となる。
複数の関係者によると、リーマンが2008年9月15日の破綻より前に既に内定を出していた新卒採用者も1日から「野村の新入社員」となった。野村は彼らに年収で650万円(プラス賞与)を支給する契約を結んだ。一方で、野村側が採用した大卒社員は240万円(同)で、リーマン経由の社員はこの2.7倍の水準となる。
「不協和音」
日本では三菱UFJフィナンシャル・グループと米モルガン・スタンレーが来春に証券業務を統合、米シティグループは個人向け証券部門の売却を模索中だ。一方、米国では米バンク・オブ・アメリカがメリルリンチを傘下に収めた。統合では賃金や待遇の差だけでなく、異なる言語や企業文化の違いも克服できなければ、統合効果は期待できない。
明治ドレスナー・アセットマネジメントの笠谷亘氏は、新入社員の給与格差について「それは波紋を呼びそうだ。不協和音が生じ、融合がうまくいかなければ、野村はいくらお金をつぎ込んでもリターンは得られない」と述べた。リーマン経由の従業員も「いきなり結果を出すことを求められるだろう」と指摘する。
野村HDの渡部賢一社長は1日、都内で開催した入社式で、リーマン経由も含めた722人の新入社員を前に「野村は年齢、性別、国籍などに関係なく皆さんの意欲を生かし、能力を発揮できる職場だ」と強調。その上で「経済、金融環境は厳しいが、今回も皆さんの若いエネルギーもいただき乗り越えていきたい」と呼びかけた。
「リーマン・リスク」を明記
野村には約1万8000人(08年3月末)の社員がいたが、昨年10月にリーマンのアジア、中東・欧州部門の約8000人を継承した。半年から1年半在籍する社員には賞与支払いを保証することなども決めた。渡部社長はリーマンを「ワールドクラスの競争力を備え、人材も優秀」と評価。継承関連で約2000億円に上る負担発生を表明していた。
それぞれの会社資料からはじき出した社員の平均年収も、リーマンの33万2000ドル(3240万円、08年11月期)に対して野村が約1400万円(08年3月期)と2倍以上の差がある。新入社員については、リーマン経由の内定者の採用決定の有無を含む処遇が注目されていたが、厚遇で迎えられたことになる。リーマンでは約20人を内定していた。
野村は年度末にかけ新株発行を伴う約3130億円の資金調達に踏み切った。その目論見書には、「リーマンから継承した従業員と、もともとの野村従業員との融合が円滑に行えない可能性」や、「賞与支払い保証をしたカギとなる従業員が受け取り後に流出する可能性」などを今後の事業リスクに挙げ、業績に悪影響を与えることがあると明記した。
完全に異なる2つの文化
慶応大学商学部の金子隆教授(金融論)は、「カルチャーの違うもの同士が一緒になる場合、条件を先に決めなければうまくいかない」とし、「野村とリーマンは文化も報酬体系も全く違い社内に2つの企業があるようなもの。不調和があれば人材流失も避けられない」とみる。融合が進み「相乗効果が出てこそ企業統合の意味がある」と述べた。
野村HDは、金融混乱に伴う業務全般の低迷や投資損失に加え、リーマン買収関連費用が重しとなり、2008年4-12月期の9カ月決算は4924億円の赤字を記録した。ブルームバーグ・ニュース調査によるアナリスト5人予想中央値では、09年3月通期決算では赤字が約6120億円に拡大する見通しで、統合のプラス効果はまだ出ていない。
野村広報の並川徹氏は、リーマン経由の新入社員の有無や給与・契約内容などついては言及を避けた。その上で、旧リーマン社員との処遇をめぐって社内で「摩擦や軋轢(あつれき)が起きているとは思わない」と指摘し、今後については「統合効果を生かし、きちっとしたビジネスを作っていく必要がある」と述べた。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90970900&sid=aT2BflEz2LDM
記事に関する記者への問い合わせ先:平野 和 Kazu Hirano khirao1@bloomberg.net日向 貴彦 Takahiko Hyuga thyuga@bloomberg.net
更新日時: 2009/04/01 16:09 JST野村HDが旧リーマーんブラザーズ日本法人の社員を引き受けていたことは、周知の事実です。上の事例は、昨年野村HDがリーマン・ブラザーズが内定していた新卒も引き受けていたということを掲載していなかってのである意味非常に分かりにくい内容でした。
やはり、このような特殊事情があったということです。最初はリーマン・ブラザーズの新卒受け入れではじまった、初任給の高い社員の受け入れが、今年度も継承されたということです。この措置しばらく経緯をみていく必要があると思います。いずれにせよ、日本の民間会社にも本当の意味でエリートが出てきたということです。日本では、良くエリートといいますが、有名大学を卒業して、有名会社に入ったというだけではエリートでもなんでもありません。
欧米では、このような特別枠は珍しいことではなく、将来の幹部を目指すコースははっきりしています。まずは、高卒、大卒、大学院卒で入るコースなど最初からはっきり分かれています。もっと細分化されて、今回の野村HDのような特別枠を設けていところも珍しくありません。賃金も、昇格、昇給も全く異なります。このあたりは、日本では、あまり区別してきませんでした。いわゆる平等主義という考え方です。しかし、これだと、優秀な学生は外資系の企業に流れるという考えもあったのだと思います。
今回の措置外部では、うかがいしれないいろいろ事情があると思います。まずは、賃金体系の平等性という観点もあると思います。リーマン・ブラサーズから入ってきた一部の新卒だけの給料を高くするわけには行かなかったのだと思います。だから、まずは、野村HDの新卒から別体系の給与体系を創設したのだと思います。もう、そのような制度があるのかどうかまではわからないですが、いずれ、あるいはすでに、たとえば、従来の給与体系の社員も、本人が希望して、会社のほうも認めれば、この新しい賃金体系に移れるようにすると思います。
これによって、若い時代に発揮できる能力に関しては、遺憾なく発揮できる体制を整え、旧体系の人では、年次を重ねるごとに養成される、いわゆる経営者感覚など養っていける体制にもっていくのではないかと思います。どちらのコースを選んだ人が、将来の経営者になっていくのか、今から興味のつきないところです。しかし、自分の考え方により、いずれかの道を選択できるようになったということは、一歩前進だと思います。
しかし、それにしても、私たちが忘れていることがあります。それは、ここしばらく、派遣村の話題などが大きく取り扱われ、低賃金ばかりが目についていましたが、上の事例のように高賃金ということもあり得るということです。
それは、そうです。グローバル化といえば、世界には低賃金で働いている人々も多数いますが、それとはまったく逆で高賃金で働く人々もいます。
グローバル化ということは、世界の広いグランドの中で、今まででは考えられなかったほどの、低い賃金と高い賃金の間の中で、賃金が決まって行くということです。
金を稼げる人は、高賃金で、そうではない人は低賃金でと選別されていくことになります。特に、金融の世界ではこれは、激しくなると思います。10年前に、ドラッカーがネクスト・ソサエティーという著書の中で、日本の金融機関は、西欧に比較する約60年遅れていて、赤ん坊なみであると語ったことがあります。まさに、世界の水準からすれば、そういうことなのでしょう。そうして、それは、今でもあまり変わっていないのだと思います。
なぜ、そのようになってしまったかといえば、はっきりいえば、日本が共産主義だったからです。こういうと、皆さん何のことをいってるのかわからなくなるかもしれませんが、1990年代はじめまで、日本は共産主義といっていいくらい、政府の規制がきつい国でした。このことに関しては、このブログにも以前掲載して、ソ連崩壊直前にロシアの経済学者が、「われわれの共産主義は失敗したが、世界で成功を収めている理想の国がある。それは、日本だ。我々の共産主義も本来日本のようであるべきだった」と述べていたことを紹介したことがあります。
特に、金融業界では、終戦後間もなくから保護的な制作がとられ、護送船団方式といわれ、国がいろいろな規制をかけて、どの金融機関も政府の庇護をうけていたというのが実体です。しかし、そのことが日本の金融業界を弱体化しました。政府の庇護政策が、かえって、日本の金融機関を弱体化してしまったのです。だからこそ、橋本龍太郎内閣において、金融ビッグバンといわれた、日本国内の規制の大幅な撤廃が敢行されたのです。
上の記事の一番最後に、「野村は日本の証券会社で最初に海外市場に進出したが、勝負にならなかった。現在、野村の収益力は外資系証券の10分の1程度でしかなく、世界での評価はいまでも“ローカル証券”にとどまっている。新卒者の高額初任給はリベンジを懸けた最初の一手か」と書かれていましたが、まさににそのとおりです。
日本の金融機関だけが、いつまでも、後進的であってはならないからです。私自身としては、この動き今後も継続されるのか、注目していきたいです。そうして、初任給の高かった社員が本当にその後大活躍するのかどうか、興味のつきないところです。
そうして、こうしたことが、日本の社会を変えていくのかどうか非常に興味があります。そうして、良いほうに変わっていって欲しいと思います。
良い方向性としては、上記のような新卒が本当に実力を発揮して、日本も世界に伍してやっていける時代なるということです。悪い方向性としては、単なる格差社会の拡大です。
しかし、いずれにせよ、上の動画にあるように、強欲だけが支配する日本にはなってもらいたくないです。ただし、新卒でも高い給料が欲しいと思えば、高い能力があれば、そうした選択肢を選ぶことができる社会にはなってもらいたいと思います。
ただし、ドラッカーがネクスト・ソサエティーにおいても述べているように、自由主義経済を最も大事で、最善のものと考えるわけにはいきません。経済とは、人間のごく一側面を示すものでしかないからです。やはり、大事なのは社会です。社会が良くならなければ、実体経済も良くならないからです、良くならない状態で、金融経済だけが良くなれば、それこそ、金融危機やリーマンショックのようなことが度重なる世界になるからです。
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