ねじれ状態の下で2011年度予算案などを審議する通常国会がいよいよスタートした。菅総理は、就任後初めての施政方針演説を行い、社会保障と税制の一体改革をめぐって、「国民の負担増は避けられない」と理解を求めるとともに、野党側に協議を呼びかけた。
ところで、首相が読み上げた原稿は今週発売の週刊新潮によれば、以下のようなものだった模様だ。
今週の新潮にのってた管首相の原稿 |
法人税実効税率の5%引き下げについて「雇用と投資につながる保証があるのか」とする志位和夫共産党委員長の質問に、法人税「引き上げ」と2回も発言。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)も「IPP協定」と読み間違えた。
一方、26日の小池百合子自民党総務会長の代表質問に対して「2つの答弁漏れがあったことをおわび申し上げる」と述べ、再答弁した。だが、この後の井上義久公明党幹事長の質問にも答弁漏れをしてしまい、再登壇して「おわび申し上げる」と陳謝した。
26日の本会議は、小池氏への首相の答弁が終了後、自民党が答弁漏れがあったとして追加答弁を求めた。しかし民主党が応じず、そのまま散会となった。
27日の参院本会議では、前原誠司外相が、自民党から「下を向いて早口で原稿を読むだけで、国会軽視だ」と反発を受けた24日の参院での外交演説について「参院軽視の意図は全くないが、丁寧さを欠き、おわびする」と陳謝した。
【菅首相施政方針演説内容】(読むに値する内容ではないため、読みたくない方は読み飛ばしてください、ただし、【私の論評】の部分では、突っ込みどころを解説してありますので、こちらはおみのがしなく!!)
【1・はじめに】
演説に先立ち一言申し上げます。一昨日、宮崎県において高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されました。政府は当日中に、鳥インフルエンザ対策本部を開催し、初動対応を行ったところです。本件も含め、感染拡大の防止など、対応には万全を期してまいります。
発足から半年、私の内閣は、元気な日本の復活を目指し、「経済」「社会保障」「財政」の一体的強化に全力で取り組んでまいりました。これを推し進めた先に、どのような国を造っていくのか。そのために国政はどうあるべきか。本日は、改めて、私の考えを国民の皆さま、そして国会議員の皆さんに申し上げます。
私が掲げる国造りの理念、それは、「平成の開国」、「最小不幸社会の実現」、そして「不条理を正す政治」の三つです。変化の時代の真っただ中にあって、世界中が新しい時代を生き抜くにはどうすればよいか模索しています。日本だけが、経済の閉塞(へいそく)、社会の不安にもがいているわけにはいかないのです。現実を冷静に見つめ、内向きの姿勢や従来の固定観念から脱却する。そして、勢いを増すアジアの成長をわが国に取り込み、国際社会と繁栄を共にする新しい公式を見つけ出す。また、社会構造の変化の中で、この国に暮らす幸せの形を描く。今年こそ、こうした国造りに向けかじを切る。私のこの決意の中身を、これから説明致します。
【2・平成の開国-第1の国造りの理念】
第1の国造りの理念は、「平成の開国」です。日本は、この150年間に「明治の開国」と「戦後の開国」を成し遂げました。不安定な国際情勢にあって、政治や社会の構造を大きく変革し、創造性あふれる経済活動で難局を乗り切ったのです。私は、これらに続く「第3の開国」に挑みます。過去の開国にはない困難も伴います。経験のない変化。価値観の多様化。その中で、安易に先例や模範を求めても、有効な解は見つかりません。自ら新しい発想と確固たる信念で課題を解決する。その覚悟を持って「平成の開国」に取り組みます。
(包括的な経済連携の推進)
開国の具体化は、貿易・投資の自由化、人材交流の円滑化で踏み出します。このため、包括的な経済連携を推進します。経済を開くことは、世界と繁栄を共有する最良の手段です。わが国はそう強く認識し、戦後一貫して実践してきました。この方針に沿って、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンド交渉妥結による国際貿易ルールの強化に努めています。一方、この10年、2国間や地域内の経済連携の急増という流れには、大きく乗り遅れてしまいました。そのため、昨年秋のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に先立ち、包括的経済連携に関する基本方針を定めました。今年は決断と行動の年です。昨年合意したインド、ペルーとの経済連携協定(EPA)は着実に実施します。また、オーストラリアとの交渉を迅速に進め、韓国、欧州連合(EU)およびモンゴルとのEPA交渉の再開・立ち上げを目指します。さらに、日中韓自由貿易協定の共同研究を進めます。環太平洋連携協定(TPP)は、米国をはじめとする関係国と協議を続け、今年6月をめどに、交渉参加について結論を出します。
(農林漁業の再生)
そして、「平成の開国」を実現するため、もう一つの大目標として農林漁業の再生を掲げます。貿易を自由化したら農業は危うい、そんな声があります。私は、そのような二者択一の発想は採りません。過去20年で国内の農業生産は2割減少し、若者の農業離れが進みました。今や農業従事者の平均年齢は66歳に達しています。農林漁業の再生は待ったなしの課題なのです。昨年の視察で夢とやりがいに満ちた農業の現場に接し、私は確信しました。商工業と連携し、6次産業化を図る。あるいは農地集約で大規模化する。こうした取り組みを広げれば、日本でも、若い人たちが参加する農業、豊かな農村生活が可能なのです。
この目標に向けた政策の柱が、農業者戸別所得補償です。来年度は対象を畑作に拡大し、大規模化の支援を厚くします。また、安全でおいしい日本の食の魅力を海外に発信し、輸出につなげます。中山間地の小規模農家には、多面的機能の発揮の観点から支援を行います。農業だけではありません。林業が中山間地の基幹産業として再生するよう、直接支払制度や人材育成支援を充実させます。漁業の所得補償対策も強化します。そして、内閣の「食と農林漁業の再生実現会議」において集中的に議論を行い、6月を目途に基本方針を、10月を目途に行動計画を策定します。
(国会における議論の提案)
われわれは、経済連携の推進と農林漁業の再生が「平成の開国」の突破口となると考え、以上のような方針を定めました。国民の皆さまは、この問題に高い関心を寄せています。自民党は、TPPについて、3月中に党の賛否をはっきりさせる意向を明らかにしています。そうした各党の意見を持ち寄り、この国会で議論を始めようではありませんか。
(開国を成長と雇用につなげる新成長戦略の実践)
さらに、この「平成の開国」を成長と雇用につなげるため、新成長戦略の工程表を着実に実施します。既に、前国会の所信表明演説でお約束した政策が決定され、実行に移されています。国内投資促進プログラムを策定し、法人実効税率の5%引き下げを決断しました。中小法人の軽減税率も3%引き下げます。観光立国に向けた医療滞在ビザも、約束した通り創設しました。地球温暖化問題に全力を尽くすため、長年議論された地球温暖化対策のための税の導入を決定しました。再生エネルギーの全量買い取り制度も導入します。鉄道や水、原子力などのパッケージ型海外展開、ハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)の供給源確保は、閣僚による働き掛けで前進しています。
私自らベトナムの首相に働き掛けた結果、原子力発電施設の海外進出が初めて実現します。米国、韓国、シンガポールとのオープンスカイ協定にも合意しました。こうした行動に産業界も呼応し、10年後の設備投資を約100兆円とする目標が示されました。新事業と雇用を創造する野心的な提案を歓迎します。その実現を後押しするため、大学の基礎研究をはじめ科学技術振興予算を増額します。日本をアジア経済の拠点とするため海外企業誘致も強化します。中小企業金融円滑化法の延長や資金繰り対策など、中小企業支援にも万全を期します。有言実行を一つ一つ仕上げ、今年を日本経済復活に向けた跳躍の年にしていきます。
【3・最小不幸社会の実現-第2の国造りの理念-】
次に、「平成の開国」と共に推進する、2番目の国造りの理念について申し上げます。それは、「最小不幸社会の実現」です。失業、病気、貧困、災害、犯罪。「平成の開国」に挑むためにも、こうした不幸の原因を、できる限り小さくしなければなりません。一人ひとりの不幸を放置したままで、日本全体が自信を持って前進することはできないのです。われわれの内閣で、「最小不幸社会の実現」を確実に進めます。
(雇用対策の推進)
最も重視するのが雇用です。働くことで、人は「居場所と出番」を見つけることができるのです。特に厳しい状況にある新卒者雇用については、特命チームで対策を練り、全都道府県に新卒応援ハローワークを設置しました。2000人に倍増したジョブサポーターの支援で、昨年12月までに約1万6000人の就職が決定しました。私が会ったジョブサポーターは、「誠心誠意語り合えば、自信を取り戻し、元気になる学生がたくさんいる」と話してくれました。学生の皆さん、ちゅうちょせずに訪ねてみてください。ジョブサポーターがきっと味方になってくれるはずです。企業に対しても、トライアル雇用を増やし、卒業後3年以内を新卒扱いとするよう、働き掛けを強化しています。12月現在、大学新卒予定者の内定率は68.8%にとどまっており、引き続き全力で支援していきます。
そして、雇用対策全般も一層充実させていきます。一つ目の柱は、雇用を「つなぐ」取り組みです。新卒者支援は、今申し上げた取り組みに加え、中小企業とのマッチングも強化します。また、雇用保険を受給できない方への第2のセーフティーネットとして、職業訓練中に生活支援のための給付を行う求職者支援制度を創設します。
二つ目は、雇用を「創る」取り組みです。新成長戦略の推進で潜在的需要の大きい医療・介護、子育てや環境分野の雇用創出を図るとともに、企業の雇用増を優遇する雇用促進税制を導入します。そして三つ目は、雇用を「守る」取り組みです。雇用の海外流出を防ぐため、既に雇用効果が出ている低炭素産業の立地支援を拡充します。雇用保険の基本手当の引き上げも行います。これら三つの柱による雇用確保に加え、最低賃金引き上げの影響を受ける中小企業を支援します。労働者派遣法の改正など雇用や収入に不安を抱える非正規労働者の正社員化を進めます。
(社会保障の充実)
「最小不幸社会の実現」のために何といっても必要なこと。それは、国民生活の安心の基盤である社会保障をしっかりさせることです。来年度は社会保障予算を5%増加させます。基礎年金の国庫負担割合は、2分の1を維持します。また、年金記録問題の解消に全力を尽くします。医療分野では、医師の偏在解消や、大腸がんの無料検診の開始、乳がん・子宮頸(けい)がんの無料検診の継続を盛り込みました。B型肝炎訴訟における裁判所の所見には前向きに対応し、国民の皆さまのご理解を得ながら早期の和解を目指します。介護分野では、24時間対応のサービスなど、一人暮らしのお年寄りに対する在宅介護を充実させます。子ども・子育て支援は、現金給付と現物支給の両面で強化します。3歳未満の子ども手当は月2万円に増額し、保育や地方独自の子育て支援のため500億円の交付金を新設します。障害者支援サービスは法改正を踏まえて拡大し、今国会には障害者基本法の改正を提案します。また、総合的な障害者福祉制度の導入を検討します。
(社会保障制度改革の進め方)
厳しい財政状況ですが、来年度については、このように国民生活を守るための予算を確保できました。公共事業の絞り込みや特別会計の仕分けなど最大限の努力を重ねた結果です。昨年決めた財政健全化の約束も守りました。しかし、こうした努力だけで膨らむ社会保障の財源を確保することには限界が生じています。制度が想定した社会経済状況が大きく変化した今、わが国は社会保障制度を根本的に改革する必要に直面しています。この認識に立ち、内閣と与党は、社会保障制度改革の五つの基本原則をまとめました。第1は、高齢者をしっかり守りながら若者世代への支援も強化する「全世代対応型」の保障です。第2は、子ども・子育て支援による「未来への投資」、第3は地方自治体による「支援型サービス給付」の重視です。第4として、制度や行政の縦割りを越え、サービスを受ける方の視点に立った包括的な支援を挙げました。
そして第5が、次世代に負担を先送りしない安定的財源の確保です。公正で便利なサービスを提供するため、社会保障と税の共通番号制度の創設も必要です。これら五つの基本原則を具体化し、国民生活の安心を高める。そのためには、国民の皆さまに、ある程度の負担をお願いすることは避けられないと考えます。内閣は、今年6月までに社会保障改革の全体像とともに、必要な財源を確保するための消費税を含む税制抜本改革の基本方針を示します。国民の皆さまに十分に考えていただくため、検討段階からさまざまな形で議論の内容を発信していきます。
(国民参加の議論に向けた提案)
負担の問題は、触れたくない話題かもしれません。負担の議論に当たって、行政の無駄を徹底排除することは当然の前提であります。それに加え、議員定数削減など国会議員も自ら身を切る覚悟を国民に示すことが必要だと考えます。国会で議論し、決定すべき問題であることは言うまでもありません。本日は、一政治家、そして一政党の代表として、この問題を与野党で協議することを提案致します。そうした努力を徹底した上で、今の現実を直視し、どう乗り越えるか、国民の皆さまにも一緒に考えていただきたいのです。1年半前、自公政権下で設置された「安心社会実現会議」は、持続可能な安心社会の構築のため、社会保障給付と負担の在り方について、「与野党が党派を超えて討議と合意形成を進めるべき」と提言しました。
さらに昨年12月、自民党は、「税制改正についての基本的考え方」において、税制の「抜本改革の検討に当たっては、超党派による円卓会議等を設置し、国民的な合意形成を図る」としています。同じ時期に公明党が発表した「新しい福祉社会ビジョン」の中間取りまとめは、「健全な共助、健全な雇用こそ、福祉の原点」とした上で、充実した「中福祉・中負担」の実現を主張し、制度設計を協議する与野党の「社会保障協議会」の設置を提案しました。問題意識と論点の多くは既に共有されていると思います。国民の皆さまが最も関心を有する課題です。各党が提案する通り、与野党間で議論を始めようではありませんか。経験したことのない少子化・高齢化による生産年齢人口の減少は、かなり前から予測されていました。この大きな課題に対策を講じる責任は、与野党の国会議員全員が負っている。その認識を持って、熟議の国会を実現しましょう。よろしくお願いします。
(生き生きと暮らせる社会の形成)
こうして、社会保障の枠組みをしっかり築くとともに、国民の皆さまが生き生きと暮らせる社会の形成に向け、具体策を充実させていきます。子どもたちに夢を実現する力を与えるため、幼保一体化をはじめ子ども・子育て支援と教育を充実させます。小学1年生は、1学級35人以下にします。高校授業料の実質無償化を着実に実施し、奨学金も拡充します。
女性の積極的な社会参加も応援します。育児などで就労をちゅうちょする女性が200万人います。そこで、内閣の特命チームは、2万6000人に上る待機児童を解消するプロジェクトを用意しました。これに沿って、来年度は、認可外保育施設の補助など、柔軟で多様な保育サービスの整備に200億円を投じます。家庭を持つ女性や子育てを経験した女性が、働く意欲を持って職場に参加する。あるいは、仕事人間だった男性が、家庭に参加する。どちらも得られることがたくさんあります。男女が共同で参画できる社会に向け、職場や家庭の環境を整えていきましょう。
暮らしの安全強化も重要です。サイバー犯罪や国際犯罪の取り締まり強化、消費者行政の体制強化、さらに防災対策の強化を進めます。また、児童虐待防止に向けた民法改正も提案します。
(「新しい公共」の推進)
こうした「最小不幸社会の実現」の担い手として「新しい公共」の推進が欠かせません。苦しいときに支え合うから、喜びも分かち合える。日本社会は、この精神を今日まで培ってきました。そう実感できる活動が最近も広がっています。われわれ永田町や霞が関の住人こそ、公共の範囲を狭く解釈してきた姿勢を改め、こうした活動を積極的に応援すべきではないでしょうか。そこで来年度、認定NPO法人など「新しい公共」の担い手に寄付した場合、これを税額控除の対象とする画期的な制度を導入します。併せて、対象となる認定NPO法人の要件を大幅に緩和します。
【4・不条理を正す政治 -第3の国造りの理念-】
「平成の開国」、「最小不幸社会の実現」と並ぶ、私の三つ目の国造りの理念は「不条理を正す政治」です。これは、政治の姿勢に関する理念です。私がかつて薬害エイズ問題に全力で立ち向かった原動力は、理不尽な行政で大変な苦しみが生じている不条理への怒りでした。当時、この問題に共に取り組んだ一人が山本孝史議員でした。山本さんは、カネのかからない選挙を展開して国政に飛び込み、「命を守るのが政治家の仕事」と社会保障問題に一貫して取り組みました。5年前に胸腺がんに襲われた後も、抗がん剤の副作用に耐え、痩せ細った身を削りながら、がん対策基本法、そして自殺対策基本法の成立に尽くしました。党派を超えて信頼を集めた彼の行動力、そして世の中の不条理と徹底的に闘う情熱。私はそれを引き継いでいかなければならない。先月、山本さんの3回目の命日を迎え、決意を新たにしました。
(特命チームによる不条理の解消)
この国には見落とされた不条理がまだまだ残っています。一人でも困っている人がいたら、決して見捨てることなく手を差し伸べる。その使命感を抱き、いくつかの特命チームを設置しました。
成人T細胞白血病(ATL)ウイルス(HTLV-1)対策の特命チームは、この問題が長年解決されていないことを菅付加代子さんをはじめとする患者の皆さまから伺い、直ちに設置しました。その3カ月後、妊婦健診時の検査・相談や治療研究を進める総合対策をまとめることができました。このウイルスが原因の病気と闘う前宮城県知事の浅野史郎さんは、「特命チームに感謝し、闘病に勝利を収めたい」とメッセージを送ってくれました。
また、硫黄島遺骨帰還の特命チームは、4年前に硫黄島を訪問して以来、温めてきた構想でした。国内であるにもかかわらず、硫黄島には今も1万3000柱ものご遺骨が収容されずに眠っています。そのご帰還は国の責務として進めなければなりません。特命チームが米国で大量の資料を調べ、ご遺族や関係者のご協力をいただいた結果、新たな集団埋葬地を見つけることができました。
(「社会的孤立」の問題への取り組み)
そして先週、「社会的孤立」の問題に取り組む特命チームを、現場の実務家も参加して設置しました。「無縁社会」や「孤族」と言われるように、社会から孤立する人が増えています。これが、病気や貧困、年間3万人を超える自殺の背景にもなっています。私は、内閣発足に当たり、誰一人として排除されない社会の実現を誓いました。既に、パーソナル・サポーターの普及や、自殺・うつ対策を強化しています。新しい特命チームでは、改めて孤立の実態と要因を全世代にわたって調査します。そして、孤立した人を温かく包み込む「社会的包摂戦略」を進めます。
(政治改革の推進)
国民の皆さまは、政治改革に対して不断の努力を求めています。政治家、そして政党は、この要求に応える責任があります。政治資金の一層の透明化、企業・団体献金の禁止、そして個人寄付促進のための税制改正は、多くの政党が公約に掲げています。与野党がそれぞれの提案を持ち寄って、今度こそ国民が納得する具体的な答えを出そうではありませんか。
【5・地域主権改革の推進と行政刷新の強化・徹底】
(地域主権改革の推進)
以上の国造りの三つの理念を推進する土台、それが内閣の大方針である地域主権改革の推進です。改革は、今年大きく前進します。地域が自由に活用できる一括交付金が創設されます。当初、各省から提出された財源は、わずか28億円でした。これでは地域の夢は実現できません。各閣僚に強く指示し、来年度は5120億円、2012年度は1兆円規模で実施することとなりました。政権交代の大きな成果です。そして、われわれの地域主権改革の最終目標はさらに先にあります。今国会では、基礎自治体への権限移譲や総合特区制度の創設を提案します。国の出先機関は、地方による広域実施体制を整備し、移管していきます。既に、九州や関西で広域連合の取り組みが始まっています。こうした地域発の提案で、地域主権に対する慎重論を吹き飛ばしていきましょう。
(行政刷新の強化・徹底)
地域主権改革を進め、そしてまた、「平成の開国」や「最小不幸社会の実現」の具体策を実施するため、政治主導を強化した上で、行政刷新は一段と強化・徹底します。一昨年の政権交代以降、行政刷新、とりわけ無駄の削減には、従来にない規模と熱意で取り組んできました。しかし「もういいだろう」という甘えは許されません。1円の無駄も見逃さない姿勢で、事業仕分けを深化させます。さらに、公務員制度改革や国家公務員の人件費2割削減、天下りや無駄の温床となってきた独立行政法人や公益法人の改革にも取り組みます。また、規制仕分けにより、新たな成長の起爆剤となる規制改革を実現します。マニフェスト(政権公約)の事業については、既に実現したものもありますが、公表から2年を一つの区切りとして、国民の皆さまの声を伺いながら検証していきます。透明で公正な行政に向け、情報公開法改正により「国民の知る権利」の強化を図るとともに、検察改革を進めていきます。
【6・平和創造に能動的に取り組む外交・安全保障政策】
一方、世界に視点を移せば、国際社会が大きく変化している中、わが国周辺には依然として不確実性・不安定性が存在します。こうした情勢にあって平和と安定を確かなものとするためには、現実主義を基調にして世界の平和創造に能動的に取り組む外交・安全保障政策の推進が不可欠です。
(日米同盟の深化)
日米同盟は、わが国の外交・安全保障の基軸であり、アジア太平洋地域のみならず、世界にとっても安定と繁栄のための共有財産です。既に、オバマ大統領とは、安全保障、経済、そして文化・人材交流の3本柱を中心に、日米同盟を深化させることで一致しています。これを踏まえ、今年前半に予定される私の訪米時に、21世紀の日米同盟のビジョンを示したいと思います。また、米国とは、アフガニスタン・パキスタン復興支援など世界の平和をけん引する協力も強化します。
(沖縄の振興強化と基地負担軽減)
沖縄には今、若者の活力があふれており、観光の振興や情報通信産業の集積などを通じ、日本で最も成長する可能性を秘めています。その実現を沖縄振興予算で支援するとともに、沖縄に集中する基地負担の軽減に全力を尽くさなければなりません。本土復帰から約40年が過ぎましたが、沖縄だけ負担軽減が遅れていることはざんきに堪えません。昨年末の訪問で沖縄の現状を自ら確かめ、この思いを新たにしました。米国海兵隊のグアム移転計画を着実に実施し、米軍施設区域の返還、訓練の県外移転をさらに進めます。普天間飛行場の移設問題については、昨年5月の日米合意を踏まえ、沖縄の皆さまに誠心誠意説明し、理解を求めながら、危険性の一刻も早い除去に向け最優先で取り組みます。
(アジア太平洋諸国との関係強化)
アジア太平洋諸国との関係強化にも努めます。中国の近代化の出発点となった辛亥革命から、今年で100年になります。革命を主導した孫文には、彼を支える多くの日本の友人がいました。来年の日中国交正常化40周年を控え、改めて両国の長い交流の歴史を振り返り、幅広い分野での協力によって戦略的互恵関係を充実させることが重要です。同時に、中国には、国際社会の責任ある一員として建設的な役割を果たすよう求めます。韓国とは、昨年の首相談話を踏まえ、韓国の意向を十分尊重しつつ、安全保障面を含めた協力関係を一層強化し、これからの100年を見据えた未来志向の関係を構築していきます。ロシアとは、資源開発や近代化など経済面での協力、そして、アジア太平洋地域および国際社会における協力を拡大します。一方、北方領土問題を解決して平和条約を締結するとの日ロ関係の基本方針を堅持し、粘り強く交渉していきます。東南アジア諸国連合(ASEAN)、豪州、インドなどとも関係を深め、開かれたネットワークを発展させていきます。
(欧州・中南米諸国との関係強化)
基本的価値を共有するパートナーである欧州諸国とは、引き続き緊密に連携します。また、国際社会で存在感を高めるブラジル、メキシコなど新興国をはじめとする中南米諸国とは、資源開発を含む経済分野を中心に関係を深めていきます。
(北朝鮮)
北朝鮮に対しては、韓国哨戒艦沈没事件、延坪島砲撃事件やウラン濃縮活動といった挑発的行為を繰り返さないよう強く求める一方、日米韓の連携を強化していきます。わが国は、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決を図るとともに、不幸な過去を清算し、国交正常化を追求します。拉致問題については、国の責任において、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するため、全力を尽くします。
(平和創造に向けた貢献)
国際社会が抱えるさまざまな問題の解決にも、世界の不幸を最小化する観点から貢献します。私が協力をお願いした延べ26人の非核特使の皆さんが、被爆体験を語るため世界各国を訪れています。唯一の被爆国として、核軍縮・核不拡散の重要性を引き続き訴えていきます。環境問題、保健・教育分野での協力やアフリカなどの開発途上国に対する支援、包括的な中東和平、テロ対策や国連平和維持活動(PKO)を含む平和維持・平和構築にも、各国と連携して取り組みます。国連改革・安保理改革も主導していきます。
(防衛力や海上保安の強化)
現在の日本を取り巻く安全保障環境を踏まえ、昨年末、安全保障と防衛力の在り方に関する新たな指針として「防衛計画の大綱」を決定しました。新大綱では、日本の防衛と並び、世界の平和と安定や、人間の安全保障の確保に貢献することも、安全保障の目標に掲げています。この新大綱に沿って、即応性や機動性などを備え、高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力の構築に取り組み、いかなる危機にも迅速に対応する体制を整備します。その際、南西地域、島しょ部における対応能力を強化します。また、海上保安強化のため、大型巡視船の更新を早めるなど体制の充実を図ります。海上警察権の強化も検討します。(ブログ管理者注:本日ブログの冒頭の写真に相当する部分。以下同じ)
【7・結び】
本日、国会が開会しました。この国会では、来年度予算と関連法案を成立させ、早期のデフレ脱却により、国民の皆さまに安心と活気を届けなければなりません。また、前国会では、郵政改革法案や地球温暖化対策基本法案、日韓図書協定など、残念ながら、多くの法案・条約が廃案や継続審議となりました。これらの法案などについても十分な審議をお願いすることとなります。
国民の皆さまは、国会に何を期待しているのでしょうか。今の危機を脱し、将来の日本をどう築いていくのか、建設的に議論することを求めていると思います。先送りせず、結論を出すことを求めていると思います。国会質疑や党首討論を通じ、その期待に応えようではありませんか。今度こそ、熟議の国会となるよう、国会議員の皆さんに呼び掛け、私の施政方針演説と致します。
【私の論評】まさしく、お粗末で勉強不足がありありの演説!
菅さんの施政方針演説など読む人はほんどいないでしょうが、読んでみると、突込みどころ満載です。皆さんも、是非読んでみてください。
少し読んだだけでも、おかしく感じられるとこがいくつもあります。
菅さん第1の国造りの理念として平成の開国をあげていて、日本は150年間に、明治の開国と戦後の開国を成し遂げてきており、第三の開国平成の開国に挑むとしていますが、この開国という言葉が奇異です。
明治の開国という概念は、多くの人が一般的としていますが、最近の歴史研究ではこの認識は間違いであるとしています。江戸時代の日本は鎖国していたのではなく、江戸幕府が一手に、貿易と日本人の渡航管理をになっていたというのが、最近の歴史研究が教えていることです。このような大事な演説に古い認識のままというのは大変疑問を感じるところです。
それに、戦後の開国とは、一体どういうことなのでしょうか?明治に開国したものが、明治、大正、昭和の間のいつにまた鎖国したのでしょうか?もし、昭和期の日本が鎖国していたというなら、戦争など起きるはずがないではありませんか?
日本が戦争が負けたことによって、進駐軍からいろいろなシステムを持ち込まれたという事実はあったとしても、開国したということは断じてありません。これを開国と呼ぶのは、菅さんによる独自の珍説であると考えられます。
さらに、平成の開国に至っては、珍説の域を超えて、これはもう、異説の類です。敗戦直後の日本は、海外貿易で生きてきました。戦後の開国どころではなく、昔から大開国しているわけです。
それでも、菅さんの考えを善意に解釈すれば、農業分野では鎖国だったとでも、いいたいのかもしれませんが、これも世界を見渡せば、その認識がおかしいことはだれでもわかることだと思います。日本だけではなく、EUでも、アメリカでも、農業は政府によって徹底的に守られています。
日本と違うのは、消費者の負担において行うのか、政府の負担によるかであって、日本においては、消費者の負担によるところが大きかったということです。それが論議になっているわけで、日本が農業分野で鎖国をしてきたという事実はありません。
基本理念の内容が、あまりに独自すぎて、というより一般の説とはかけ離れた異説になっていて、広く国民がうなずけるものになっていません。まさに、民主党の勉強不足を露呈しています。
基本理念に関してはこのくらいにして、今の社会の関心事は、雇用だと思います。特に若い人の就職に関することだと思います。ところが、菅さんの施政方針演説は、雇用のところに入ると、突然話が細かくなって、新卒者を応援するために、ジョブサポーター制度のサポーターを2000人に倍増したため、去年12月までに1万6000人が就職することができました、などと語っています。しかし、このような内容は、施政方針演説で語るような内容ではないです。
そうして、その後に続く新卒だけではなく、全体の雇用をどう考えるかという段になると、急に話が抽象的になって、雇用をつなぐ、雇用をつくるとか、雇用を守る、といって、さらっとおえてしまって、何も具体的な話はありません。
そうして、その後に続くのは、新卒だけではなく、全体の雇用をどう考えるかという段になると、急に話が抽象的になって、雇用をつなぐ、雇用をつくるとか、雇用を守る、といって、さらっとおえてしまっている。
以前このブログにも掲載しましたが、ジョブサポーターを設置したからといって、急に雇用が増えるわけではありません。まず、当面の雇用を改善するためには、景気を回復させるというのが常道です。でも、菅さんの演説ではそんなことには微塵も触れていません。
まずは、景気を良くするこにより、短期的に雇用も問題は解消されますが、長期安定的に日本の雇用を守ったり作ったりするためには、国内の産業構造を変えていかなければないらないはずです。大量に生産して、大量に販売するような製商品では、もう日本国内では売る場があまりありません。それに、こうしたものは、中国などの新興国がやっていることです。
良く日本国内で、グローバル企業がもてはやされていますが、今の日本でグローバル企業だけが儲かっても雇用には全く影響はありません。グローバ企業は海外で生産するので、国内の雇用にはつながりません。これは、日本の若者や、働く人を外に出してしまうということにつながります。そうなると、さらに日本の景気が落ち込み、日本国内の雇用は摩耗することになります。日本国内で、高くても、あるい少量でも、売れて、利益がしっかりでる製商品をつくる産業構造に転換することが肝要なはず。そうでなければ、長期的に日本で雇用を守ったり新しくつくっていくことはできない。そんなことは、菅さんの演説には、どこにも触れられていません。
さら、外交・安保となると、多くの人の関心事は、最近尖閣問題もあったので、中国とはどうするのかということです。しかし、菅さんは、こうした問題には何も語らず、ただひとこと、中国には、国際社会の責任ある一員として、建設的な役割を求めますというだけです。
ジョブサポーターのことは、詳細に話しても、尖閣問題に全く触れないということは、今の日本の女医を考えれば、驚きですし、国民の重大関心事に正面きって向かい合っているとはいえません。
北朝鮮に関しても、「不幸な過去を精算し」とさらりとのべていますが、これにもとづいて、北朝鮮は現金を要求してくることになると思います。これは自民党政権時代から大きな問題ですが、菅さんこれを施政方針演説の内容に盛り込むことによって、自民党を取り込むために活用しているような気配があります。
日本はこれまで、拉致問題が解決されない限り、日朝国交正常化はありえないとしてきたのが、菅さんの今回の演説は、それを切り替えるものと受け取られても仕方のない内容で。さらに、この演説に先立って、すでに前原外務大臣が、北朝鮮との水面下の接触を認めたという報道もありました。
菅さんの施政方針演説、突っ込みどころ満載です。私は、いい加減なところでやめましだか、皆さんも、よく読んで、新たな突っ込みどころがあれば、是非コメントなど入れてください。それにしても、こうした演説に必要であると思われる打てば響くような言葉が全くありませんね。
このブログには、わずか2年前の同じ月に当時の麻生総理の施政方針演説を掲載したことがあります。麻生内閣短命に終わりましたが、このブログにも再三掲載してきたように、ここ20年間、歴代の内閣のほとんどが、いろいろと理由や理屈を並べ立てながら、緊縮財政ばかりやってきました。その例外は、小渕氏と麻生氏の二人のみで、今読み返して見ると、麻生さんが、“景気回復を最優先”強調していました。当時としては、当然のことだと思います。
しかし、あの頃から今にいたるまで、日本経済が浮揚しそうな気配が見えた時期もありますが、それに関しては民主党は全く関係ありません。麻生氏による経済対策が奏功しかけていたというのが実態です。景気対策は本日を手を打ったから、すぐに効果が出るというものではありません、1年や2年くらいはかかるのが普通です。しかし、その効果も当然ながら、最近では薄れています。
今年においては、来年、アメリカでは大統領選挙があります、そのため、オバマ大統領は本年中に手を打ちせがひでも、来年の頭あたりには景気を良くして、雇用なども改善しなければなりません。その前の年である今年は、強力な手を打って、経済を上向かせるでしょう。そのため、日本もそれに引きずられて景気が若干上向くと思います。しかし、それは、アメリカの景気にひきづられて、輸出などによって、上向くということであって、日本国内の経済や、産業構造が変わるということではなく、金融危機直前に言われていた゛実感なき好景気"と同様なものとなります。残念ながら、雇用はほとんど改善されないでしょう。
これでは、長続きしないとは誰の目から見てもあきらかです。いま振り返ると、この二人の総理大臣の政権が短命だったことが、残念でなりません。ご存知のように、小渕さんは、総理大臣であったときに、お亡くなりになり結局短期政権で終わりました。麻生氏は、ご存知のように、麻生おろしにあっても最後まであきらめずに、総選挙まで持ちこたえましたが、短命政権であったことには変わりありません。
政権交代がなく、麻生総理が任期をまっとうしていれば、少なくとも日本経済はいまごろ復活基調となり、次の展開を考える余裕ができていたはずです。しかし、そんなこととは、つゆ知らず、大部分の国民は、政権交代の道を選んでしまったということです。とても残念なことです。これは、麻生氏が良いとか、悪いとか、自民党が良いとか悪いとか、左、右がどうのということは全く関係なしに、マクロ経済的にみたものの道理を述べているにすぎません。
どうしようもありませんね。いずれにせよ、この有様では、菅政権も長いことはないでしょうし、とてもじゃないですが、長い間政権を担わせてはいけません。
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