シャープの町田勝彦会長 |
12月1日時点の大学生の就職内定率が過去最低の68.8%となったことなどへの感想として述べた。4月に定期採用を行う慣行についても「海外では新卒とかは関係ない。拠点が海外に移って現地採用が増えるなかで、国内での定期採用が何人かと聞かれても、そういうことは考えなくなった」と話した。
来年度の税制改正で、法人税減税が研究開発減税の縮小とセットになったことについては、手代木功副会頭(塩野義製薬社長)が「国内に雇用を残すなら国際競争力のある分野しかないが、研究開発減税を減らされると『研究も米国で』となる」と語った。
【私の論評】本当の国際競争力をつけるには今や日本国内の内需を拡大すること、消費拡大をすることにつきるだが・・・・・?!
法人税減税が、研究開発減税とセットになったことについては、あまり知らない人も多いのではないかと思います。もともと、法人税や、研究開発減税など中小企業などにはあまり縁がない事なので、無理もない事だと思います。
しかし、民主党のやること、何でも似通っているようです。子供手当てなども、マニフェストで公言しておきながら、結局財源不足で満額支給しないとか・・・・。昨年暮に出された、税制改正大綱に関しても非常に評判が悪かったです。将来に向けた改革の姿を描けていないため、場当たり感が強いです。
「とりやすいところを狙った」との批判も多いです。
政府税制調査会が「格差是正」を掲げ、こうして税による所得再分配の機能を生かそうとしていますが、法人税の5%幅引き下げの財源も、なお5千億円ほど不足したまま、見切り発車のような税制改正大綱の決定となりました。これは、今回の税制改正の大きな欠陥の表れであるといえます。
税制は国民生活の重要な基盤です。どんな社会にするために、どのような税制をめざすかがあいまいなままでは、社会保障の将来像も描けません。
その場しのぎでツギハギを重ねる手法は、いよいよ限界に来ました。やはり抜本改革と 正面から向き合うしかないことは、もはや明らかです。
こんな様子をみていて、多くの経営者が上記のシャープの会長のような考えを持つことは、ある意味致し方のない事だと思います。
しかし、このままでは、雇用もますます悪化、さらには、本来日本の良さを活かして、中国などの新興国にはできない、先進国でありそのなかでも、特に基本的インフラが整っている日本国内での内需拡大、消費拡大などをするなどのことができなくなります。
私は、確かに、多くの企業が海外を志向することになるのは、無理からぬところがあると思いますが、本来的には、もし海外、しかも中国などの新興国での市場にばかり目を向けていては、結局その市場は先進国の50年前の市場のようなものであり、いくら市場を獲得できたとしたって、結局は先進国にとっての新たな展開やイノベーションの機会はなくなる事と思います。
先進国が、仮に、新興国の市場のすべてを席巻できたとして、それが良いことかといえば、決してそうとはいえません。仮に、それに成功したとしても、技術的にはすでに陳腐化したものを展開できるだけで、21世紀の先進国の社会を変える大きな展開を期待することはできません。それに、新興国の市場のみが、先進国が成長できる唯一の市場になったとすれば、新興国の都合などによって、いつも振り回されることになります。
さらには、新興国も技術力をつけてきているので、いずれ自分の国の市場に必要なものは、先進国に頼らなくても、自前で市場に投入できるようになるし、そうすることでしょう。そうなれば、新興国のほうが、はるかに人件費が安いですから、いずれその分野で、逆に、先進国に進出してくることになります。そうなれば、先進国は新興国の後塵を拝するしかなくなります。このことは、このブログでも、再三にわたって掲載してきました。
現在では、先進国は自国の内需拡大、消費拡大を行うべきです。そうすることによって、先進国の進んだ社会におけるイノベーションを期待することができます。
私は、こうしたイノベーションについては、具体的にこのブログで掲載したことはありませんが、少し思いつくだけでも、そのような分野はたくさんあると思います。高度に進んで、ユビキタス化したITを活用して、さらに、家電などスマート化するとか、家屋自体をスマート化、交通システムをスマート化するなど、夢のような分野は沢山あります。さらに、先進国で顕著な少子高齢化に対応することで、大きなイノベーションが期待できると思います。
たとえば、検針メーターなどすべて、スマート化した場合、電気もガスも検針業務がいらなくなるばかりではなく、リアルタイムで、電気の使用量、ガスの使用料がわかるため、地域や、日本全体での電力やガスの供給に対して様々な手を即座に打つことが可能になり、これによってもたらされる、利益は計り知れません。しかし、21世紀のイノベーションは、20世紀末から変化していて、21世紀に顕著になった先進国の大きな社会的大変化に対応する形でなければ、進めることはできないでしょう。このことに、ついては、再度このブログにも掲載していくつもりです。
しかし、新興国の市場では、まだまだ、これを導入するなどの域に達していません、たとえば、中国などでは、沿岸部のごく一部では、その域に達しつつあるところもありますが、少しでも奥地に入ってしまえば、まだまだ、遅れていてその域には達していません。このようなところで、スマート化するといっても、無理があります。部分的スマート化などをするしかないでしょう。
というより、多くの人が、先進国では当たり前になっている、情報端末なども持っていないというのが、実情だと思います。こうしたことに対処して、いわゆるBOPビジネスを展開するのも企業のありかたとして、まともな生き方のひとつである事には違いないと思います。
しかし、本来であれば、日本にこそ、21世紀の特に都市社会のイノベーションの中心となるべき、挑戦の場が至るところにあるはずです。本来であれば、政府はこのようなことのために税制をも含む、インフラを整備すべきです。
私自身は、目先のことを考えて、多くの企業が新興国などにシフトするのは致し方ないことであると考えますが、それでも、日本の市場での開発なども着実に進めていくところが、次代の覇者になると思います。それを忘れた企業には、明日はないでしょう。
それから、かねてから、大企業の経営者の方々の発言にも疑問に思うことがしばしばあります。その典型は、中国幻想であったりしますが、それよりも何よりも、日本国政府に対して、直裁に、マクロ経済学的見地や社会的な観点から、大規模な財政出動をしろ、大規模な金融緩和措置をとれと言わないのでしょうか?なぜ、法人税減税程度のチマチマしたことしか言わないのでしょうか?仮に、法人税減税がたとえば、研究開発促進税制などが廃止されないで、実現したとしても、このデフレ基調ままでは、企業にとっても何らの抜本的解決にはならないはずです。
なぜ、消費税増税など、このデフレ基調が続いている最中に実施するとか、、財政再建をするのは間違いだとはっきり言わないのでしょうか?今の日本では、過去20年間も、失われた20年ということで、基本的にデフレがつづいていて、これは、財政再建などよりもよほど深刻な、人間でいえば癌のような病状にあります。少しでも、デフレ解消の方に傾けば、国内景気も今よりは良くなり、日本国内での、事業展開はやりやすくなるし、それに、雇用も改善できるはずです。本来、このような声が、産業界の大勢を占め、ことあるごとに政府に大して厳しい要求があっても良いはずなのにそうはならないというのはどうしてでしょうか?
残念ながら、大企業の経営者の方も、企業という枠の中では、ものが考えられても、マクロ経済や世界規模の経済などまでには目が向かないということなのでしょうか?不思議です。
最近『ハーバードの「世界を動かす授業」』がビジネス書としては日本国内で7万部以上と破格の売れ筋となった著者のリチャード・ヴィトー氏も最近WBSに取り上げられていて、日本に対して、以下のような提言をしていたことは、このブログでも以前に掲載しました。
日本国内の消費を拡大する。
海外の事例をみること。この言葉の持つ意味は深いです。ヴィトー氏は、やはり、日本国内の消費を拡大することを強調しています。そうして、これは、現状のままでは困難なことです。やはり、政府による手助けも必要でしょう。財政再建ばかり注目している場合ではないということです。それに、個々の企業や、経営者の努力も必須であると思います。
それから、海外の事例を見るということは、各国の経済、社会を具体的な数字を見て全体像を理解するということです。そこから、たとえば、その国でビジネスをどのうよにすれば良いのか全体像がみえてくるということです。無論、外国の事例をそのまま日本で実施するわけには、いきませんが、根本を見ることにより、日本での事業も理解できるようになるということだと思います。
逆説的ではありますが、私は、このようなことを通じて、大手企業が日本国内で何をすべきか、それこそ、政治や経済、社会なども含めて、さらに海外のそれをも具体的に理解し海外、特に新興国の市場に進出すれば、成功することもあると思いますが、それなしに海外に短期的利益を求めて進出しても、長期的には成功はおぼつかないと思います。ヴィトー氏の、MBAで教える教科書は、最初の頃から、そうして今日に到るまで、日本の奇跡の経済成長から始まっています。このことは、今日の私たち日本人に意義深いものであり、示唆に富んでいると思います。
こうしたことから、私は、日本国政府に対して厳しい注文をつけない、大企業の経営者の物の見方には疑問を持たざるをえません。現在の大企業の経営者の多くは、80年代までの考え方から変わっていないのではないかと懸念しています。無論、例外はありますし、さらには、あまり報道もされないこともあって、私も含めて、多くの人が気がつかないだけで、実は優秀な企業経営者が沢山いて、もう海外の事例や日本のそれなどの研究など十分にしていて、日本での消費拡大の機会を虎視眈々と狙っているのかもしれません。あるいは、海外の優れた經營者がそれを狙っているのかもしれません。一昔前の、明治維新や、終戦直後の日本のように、近い将来新興勢力が旧い勢力にとって変わるのかもしれません。政治も、産業も本格的な新旧交代(年齢、経験を意味するのではなく、新たな考えと旧い考えの交代という意味)の時代を迎えているのかもしれません。
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