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2019年5月28日火曜日

最低賃金引き上げの「公式」 韓国のやり過ぎは反面教師! 日本経済に有効な3%路線 ―【私の論評】驚くべきことに、政府財政諮問会議、文韓国大統領、枝野立憲民主党代表の頭の中には、NAIRUという概念がない(゚д゚)!


経済諮問会議に参加した安倍総理

最低賃金について、政府は毎年3%程度を目途に引き上げる方針を掲げているが、14日の経済財政諮問会議では、内需の下支えに向けて、それを上回る5%程度を目指すべきだという意見が出たという。現状の日本でどの程度引き上げるのが妥当なのだろうか。

 最低賃金の水準については、「あるべき論」が強調されがちだ。最低賃金が高ければ、その分消費支出が増えるので、経済成長にプラスだという意見すらある。

 もっとも最低賃金の引き上げによる消費増の恩恵がどの企業に還元されるかは定かではない。引き上げは企業のコスト増だが、それが企業収益増に直結するかどうかも分からない。

 このため、最低賃金引き上げは労働の逼迫(ひっぱく)に対応する程度にとどめた方が経済全体には好都合なことが多い。最低賃金も賃金の一種であるので、労働市場の状況と無関係に決めるのは無理だという、至極妥当な話だ。

 この原理を具体的にいえば、最低賃金は前年の失業率を受けた無理のない水準にし、賃金は雇用確保の後からついてくるという経済原則を曲げないようにさえすればいい。大ざっぱな計数であるが、最低賃金の上昇率は、5・5から前年の失業率を差し引いた数値程度が結果としていい。

 この点、安倍晋三政権はかなり狡猾(こうかつ)だといえる。雇用を増やし、失業率が下がるような環境を作っておき、最低賃金は失業率の低下に合わせて、毎年上がっていくように調整してきた。

 3%程度というこれまでの最低賃金の引き上げ方針も、NAIRU(インフレ率を加速しない失業率。事実上最低の失業率)が2%台半ばから考えると経済合理的である。

 安倍首相は、このメカニズムを「政治的」にうまく利用してきた。「政労使会議」を利用し、あたかも首相主導で最低賃金を引き上げたように見せ、政治的なプレゼンスを高めているようだ。

 要するに、最低賃金の引き上げは、雇用創出の成果であるが、その果実を安倍政権は政治的に生かしたといえる。

 この観点からみると、経済財政諮問会議での5%引き上げの議論には首をかしげざるを得ない。今の諮問会議は事実上、霞が関の役人が主導しており、消費増税も賛成だし、そもそもマクロ経済を理解しているのか疑問だ。最低賃金の議論でもマクロ経済オンチの部分が出たようにみえる。

     文在寅大統領による最低賃金の引き上げすぎで古窯が激減した韓国の
     テレビ報道。しかし、なせか金融政策については全くふれない

 隣国の韓国で、文在寅(ムン・ジェイン)政権は最低賃金を引き上げすぎて雇用の創出に失敗した。最低賃金を野放図に上げる失政は、マクロ経済学が分からないまま政治的な成果を求める左派政権によくある話だ。

 この程度の経済政策を分からない経済財政諮問会議はもはや不要ではないか。存在感が少なかったのでパフォーマンスに必死なのかもしれないが、「5%」の議論は無視し、これまでの安倍政権による政治的・実務的な「3%」の方が、日本経済のためになるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】驚くべきことに、政府財政諮問会議、文韓国大統領、枝野立憲民主党代表の頭の中には、NAIRUという概念がない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、NAIRU(インフレ率を加速しない失業率。事実上最低の失業率)という言葉がでてきていますが、これに対する解説がでていませんので、簡単にこれを補っておきます。

この言葉については以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方―【私の論評】日本経済にはまだまだ、まだ!量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!
NAIRUを理解するには、この記事にも掲載した以下のグラフを理解することが必須です。労務ではなくて、雇用のことがわからないのは下のグラフが頭に入っていないからです。これを理解すれば、マクロ的な雇用に関しては、大概のことは理解できます。


 

経済財政諮問会議のメンバーは、このグラフが頭からすっかり欠落しているのだと思います。だから、最低賃金のことでも、増税のことでも頓珍漢なことをいい、存在意義をなくしているのでしょう。

このグラフからは、NAIRU(2.5%)並びにインフレ目標2%を達成するためには、積極財政と金融緩和が必要であることがわかります。

韓国の分在寅大統領は、金融緩和をせずに最低賃金を上げるというとんでもないことをしたため、雇用が激減したのです。韓国でも、日本とは経済のファンダメンタルズなどが異なるので、NAIRUやインフレ目標の値そのものは異なるかもしれませんが、それにしても、韓国でもインフレ率、失業率、NIRU、インフレ目標の関係は変わりません。このような関係は、どこの国でも変わりません。

そのことは、まともなマクロ経済学のテキストで当たり前に教えていることです。雇用が悪化したときには、まずは金融緩和と積極財政をして、NAIRU、インフレ目標を達成すべきなのです。金融感をせず、最低賃金だけを増やせば、雇用が激減するのは当たり前のことです。

金融緩和をしないで、最低賃金だけをあげるというのは、同じパイの中で賃金を上げるというのと同義です。そうなれは、雇用が減るのは当然の理屈です。

最低賃金をあげるのは、やはりブログ冒頭の高橋洋一の言っている通り、まずは金融緩和をしつつ、前年の実績をみながら、決めるというのが妥当です。現状では、3%が妥当です。

3%というと誤差のように感じる人もいますが、デフレでなかった他の国々もこのようなものです。ただし、これが20年、30年と続くと給料が2倍から、3倍になるという当たり前の状態になるのです。

韓国の大失敗の事例があるにも関わらず、政府の財政諮問会議は、最低賃金5%アップを低減しているだけではなく、消費税にも賛成というのですから、本当に首を傾げざるを得ません。

立憲民主党代表枝野氏

そうして、このようなことは不幸なことに日本では与党だけではなく、野党もおなじようなところがあります。たとえば立憲民主党の枝野氏も、韓国で文在寅が大失敗した後の今でもあいかわらず、金融緩和などお構いなしに最低賃金をあげることを主張しています。

彼の頭の中には、NAIRUなどはないのでしょう。ひたすら、最低賃金の上昇だけ主張して、文在虎の主張する雇用悪化への道を提唱しています。

それにしても、経済諮問会議、文在虎大統領、枝野代表の頭の中にもNAIRUという観点が全くないということは驚くべきことです。これは、政治家なら当然わきまえていないければならないことのはずです。

雇用と労務は、違います。多くの政治家は、労務のことを雇用と勘違いしているのでないでしょうか。そもそも、雇用の主務官庁はどこと聴かれて、厚生労働省と答えるのは間違いです。厚生労働省は労務の主務官庁です。この質問には「日銀」と答えなければなりません。このように答えられる政治家が一体日本には何人いるのでしょうか。

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