米国と中国の国旗 |
中国の国営英字紙チャイナ・デイリーは社説で、中国株の下落が貿易戦争での米国側の勝利を表しているとのトランプ米大統領の主張について「希望的観測」だと一蹴した。
中国の国営メディアはこれまで米国の政策への直接的な批判を控えてきたが、トランプ氏に対する攻撃的な姿勢を徐々に強めている。
人民日報海外版は6日の論説で、トランプ氏が脅迫や威嚇のドラマを演じていると批判した。
トランプ米大統領は4日、ツイッターで「関税は誰もが予想していたよりはるかに効果を上げている。中国の株式市場は過去4カ月で27%下落した」と述べた。
チャイナ・デイリーはこれに対し、米政府による関税発動の前から中国株は下落していたと指摘。中国株の下落は企業債務削減に向けた中国政府の取り組みが一因との見方を示した。
また、6月の米貿易赤字が前月比7.3%増の463億ドルと4カ月ぶりに増加しており、「関税がはるかに効果を上げている」とのトランプ氏の主張を根底から否定していると指摘した。
チャイナ・デイリーはしばしば、中国政府が国際社会に対してメッセージを発信する際に使われる。
人民日報海外版に掲載された別の論説では、中国商務省系シンクタンクの研究員が、中国は貿易摩擦を乗り切るのに十分な強さと回復力を備えていると主張。「貿易摩擦が複雑化し、国内市場に依存する状況下においても、中国が世界経済や産業システムにおける主導的地位を強化し続けることができると信じる理由がある」と述べた。
【私の論評】トランプ大統領がうつけものでないことに賭けてみる価値は十分にある(゚д゚)!
中国のチャイナ・デイリーが上記のような内容の報道をするということは、中国側は内心ではかなり脅威に感じているということです。
中国ではトランプ氏が脅迫や威嚇のドラマを演じていると報道されていますが、米国内でも、連日トランプは狂人だ、精神病だ、米国大統領としてあるまじき言動で、米国を潰してしまいそうだ。弾劾も考えるべきだと連日のテレビやTwitterで批判されています。
最近トランプがヨーロッパへ訪問した時の各国でのトランプの言動は更に混乱を巻き起こし、批判を浴びました。トランプは米国の知識人からも厳しい批判の矢を受けています。しかしトランプ自身は全く気にしていません。一体トランプの本心はどこにあるのでしょうか。
これまでの戦後のブレトンウッズ体制、GATT、WTO、IMFなどの国際的な仕組みは、米国が世界の中で圧倒的な経済力を持つことを前提にしてつくられたものでした。つまり米国の他国に比較して圧倒的に巨大な経済力をもとに、他国を自分の陣営に固定するために、多くの資本を投下し、金を使ってきたのです。
世界の警察の役も多大の金がかかっていました。米国は、自分の経済力の衰退で、それが従来ほどには出来なくなってきました。トランプは、今の仕組みは他の国のために米国が大枚を払わされ続ける仕組みになっていて、それを変えなければならないと本気で思っているようです。このような考えの上考えでトランプは多大な批判を受けるような発言をしているのです。
つまり、米国の衰退、グローバル化の行き過ぎが、これまでの国際経済の仕組みでは旨く行かず、その「制度疲労」を何とか修復しなければならない時がすで来ており、これをトランプが、「アメリカ・ファースト」と言いながら、変えようとしているのでしょう。
EU自身もその経済的・政治的に構造的な欠陥持っているのですが、誰もそれを正そうとしていません。
近年の技術的、経済的な土台の変化の中で、こうした世界的な経済社会の制度疲労が起こっていて、それを修復しなければならない時に来ているのです。そしてグローバル化の行き過ぎを是正しなければならないのです。
米国自身の「制御装置」の破壊の修復も含めて、これをトランプは模索していると考えられます。これに関して誰が正しい、誰が間違いなどということがまだはっきりわからない段階で、トランプ大統領は、本能的に動物的感覚で、何とか修正しようとしているように見えます。その方向性を、いろいろの利害関係者に暴言に近い本音で脅しをかけ、その反応を見ながら探っているというのが実体であると考えられます。
トランプ大統領は、暴言のように、利己的にみえるように直言します。しかも土建屋的な第六感で動き、相手の出方によってはすぐ前言を翻して、引き下がるか、訂正することもありません。
土建屋の「押して駄目なら引いてみろ」を地で行っているようです。彼は中国の習近平とは異なり失う面子など持っていません。こうしたトランプ大統領の動きは、意外に新しい道を探す良い探索、交渉の方法なのかもしれません。
これまでこのような振る舞いをする大統領はいませんでした。しかし現在のように前例が全く役に立たない、制度疲労した混乱の時代において、これを是正するには、こうした言動が有効なのかもしれません。
これからは古い産業が衰退し、世界はハイテク、サイエンスの開発競争になります。特に中国がこの方向で国を挙げて推し進めていることに、危惧したトランプ大統領はハイテク覇権戦争に挑んでいます。
そこでトランプ大統領は、特に中国がIP(知的所有権)を無視していることに対して、中国を攻撃しているのです。これは、単なる関税戦争、貿易摩擦戦争でありません。関税の引き上げはその暴言の一部であり、関税の引き上げは米国自身も損をすることはトランプ大統領自身もよく分かっていると思います。
1989年のベルリンの壁の崩壊で、米国の敵であったソ連が崩壊しましたが、最近ロシアが、自分の生き残りのために、ヨーロッパのあちこちで戦争屋のような動きをしています。
そのために国際社会が混乱してしまい、難民、テロが生まれています。しかしトランプは、これまでのように単にロシアを叩くのではなく、ロシアと北朝鮮を米国の対中国戦略の舞台に引き込もうとしているように見えます。
トランプ大統領はこれまで土建屋ビジネスで儲けてトランプタワーを建てたのですが、米国の悪質金融資本家の儲けに比べると、トランプ大統領の儲けはごみのようなものです。そのため彼は基本的には悪質金融資本とは一線を画しているようです。
悪質金融資本家はグローバル化を使ってぼろ儲けをしてきました。そうして現在は、グローバル化の行き過ぎを是正しなければならない時です。これは保護主義ではありません。トランプは保護主義が経済をだめにするということぐらい学校で学んできた筈です。
そもそも、貿易赤字自体が悪であるという考え方が間違いであることや、基軸通貨国の経常収支が赤字になりがちであることの理由など知っていると思います。仮に知らなかったにしても、大統領の座についてから、彼のブレーンらに聴いていると思います。
トランプ大統領は「国民中間層を救う」ということで大統領になりました。一部のエリート、金融資本家による金権政治で国民の富が収奪されたのですが、その国民大衆の貧困を救済するというのです。金権政治のエリート層に立ち向かうには、彼らを油断させるため、うつけものをよそう必要があったようです。
トランプ大統領は、米国が世界で突出した経済力を持っていないことを前提として、中国の覇権主義を廃して、米国を頂点とする新たな世界経済の新しい秩序を再び造ろうとしているようです。重要なことはグローバル化の行き過ぎでの是正です。
日米ともに過去には内需を拡大したときが安定成長した |
しかも戦争屋の仕掛けを排除することです。うつけもののトランプがそれを実現しようとしているのでしょうか。それならわれわれもトランプを応援しなければならないです。ただし、トランプ大統領が本物ののうつけものである可能性もありますが、それでも誰かが、現在の世界経済の仕組みをここで見たように変えていかなければならないことには変わりありません。
このまま、手をこまねいていては、間違いなく世界の半分は、中国が中国の価値観により、新たな新秩序を確立してしまうかもしれません。それは、世界の半分が闇になることを意味します。ただし、運が良かったことに、中国は現在の段階において、米国を頂点とする世界秩序に対して挑戦するとはっきりと公表しました。
これが、中国が「能ある鷹は爪を隠す」方式で、覇権願法など露ほどもなく、中国は経済発展すれば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をなしとげ、先進国と似たような体制になると期待させつつ、経済を拡張し、資金をたくわえ20年後あたりにいきなり、覇権主義を露わにしたとしたら、さすがの米国も太刀打ちできなかったかもしれません。
しかし、現実ではそうではありませんでした。今の段階であれば、十分に中国をまともな体制にするか、あるいは米国を頂点とする戦後秩序に対して、永遠に抗えないほど、中国経済を弱体化すすることができます。
こうしたことを考えると、トランプ大統領がうつけものでないことに賭けてみる価値は十分にあると考えます。
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