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2016年1月11日月曜日

露の国家基金「2019年初めに底つく」 資源頼み、欧米制裁…プーチン政権さらに窮地―【私の論評】小国ロシアの底が見え始めた最近のプーチンが、軍事的存在感の増加に注力するわけ?


ロシア プーチン大統領

2008年のリーマン・ショック時にロシア経済を下支えた、石油や天然ガスの税収を基盤とする露政府の基金が19年にも枯渇する見通しであることが明らかになった。財政赤字を補填(ほてん)するための基金からの支出に歯止めがかからないことが原因だが、資源収入頼みの経済政策の行き詰まりが背景にある。欧米の制裁で基金に要請が急増している企業支援も困難になる可能性があり、プーチン政権にも痛手となりそうだ。

露政府は石油・ガスの採掘・輸出税収が潤沢な際にその一部を積み立てており、赤字補填に使う「予備基金」と、景気刺激策に利用する「国民福祉基金」の2つの国家基金を抱えている。ロシアはリーマン・ショックの直撃で09年には経済成長率がマイナス7.9%に落ち込んだが、その後政府が実施した巨額の景気対策の原資となったのが、これらの基金だ。

しかし露中央銀行がこのほど発表したリポートによると、政府は15年1~10月に赤字の埋め合わせに予備基金から1兆5600億ルーブル(約2兆4400億円)を使い、16年にはさらに2兆1370億ルーブルを使うと予測。このペースで支出を続ければ、17年には国民福祉基金も赤字補填が必要となり、「19年初めには両者が底をつく」と指摘した。

露政府の見通しの甘さも事態の悪化に拍車をかけた。政府が昨年10月に承認した予算原案は原油価格を1バレル=50ドルに設定。現在は同30ドル台で推移し、この水準が維持されれば、石油・ガス関連の税収が想定を大幅に下回るのは確実だ。

さらに基金には欧米の経済制裁で資金調達が困難になった企業から「次々に支援要請が来ている」(日露貿易筋)状況とされる。制裁発動後、国営石油最大手ロスネフチや独立系天然ガス企業ノバテクなどが相次ぎ露政府に支援を要請。ドボルコビッチ副首相は「石油や輸送、農業分野の企業まで支援の原資として基金に言及しているが、すべてに足りる訳がない」と警告したが、企業や金融機関向けの複数の支援が承認されたもようだ。経営危機にある政府系の開発対外経済銀行(VEB)も、基金からの支援が見込まれている。

融資は返済を前提としているが、金額が増大すれば基金の運用が圧迫されるのは必至。基金の存続が困難になれば国家による企業支援も難しくなり、露経済には大きな痛手となる。

【私の論評】小国ロシアの底が見え始めた最近のプーチンが、軍事的存在感の増加に注力するわけ?

衰退するロシアのGDP

ロシアの国旗柄の水着
上の記事を見ていて、気になるのかGDPです。どのような状況にあるのか、以下に掲載します。まずは、以下にロシアの最近のGDPの推移などについて掲載します。

ロシア政府は昨年11月15日までに、昨年7~9月期(第3四半期)の国内総生産(GDP)は前年同期比で4.1%減少したと報告していました。3四半期連続のマイナス成長で、同国経済が深刻な後退局面にあることを改めて示していました。

ただ、今年第2四半期の4.6%減と比べ、下げ幅は改善しており、最悪の不況期は脱したとの見方もエコノミストの間に出ていました。第3四半期の改善は製造業の盛り返しが要因とも見ていました。

ロシア経済は2014年以来、ウクライナ危機などに伴う欧米諸国の経済制裁発動や原油価格の低下に伴って悪化していました。ロシアのメドベージェフ首相は昨年4月、経済制裁の影響で同国は1000億米ドルを超える損失を被るとの推定数字も明らかにしていました。

ロシアが主要な歳入減としている原油価格は昨年半ば以降、60%も急落。自国通貨ルーブルもドルに対し暴落しており、同年初期以降、半値の水準となっています。インフレ率も急騰していました。

国際通貨基金(IMF)はロシアのGDPは昨年通年で3.8%のマイナス成長になると予測。今年は0.6%縮小するとも予想していました。インフレ率については今年が15%増、来年は平均で8.6%増とし、国民の家計に打撃を与えると見ていました。

今年も引き続き、厳しい状況に見舞われるのは確実のようです。

一方世界比較ではどのような状況なのか、以下に掲載します。このデータは、2014年年末のものです。

2014年度のGDPランキングには例年と比較して2つの特徴がありました。1つは、それまで著しくGDPを伸ばしてきて、それがブーチン人気にもつながっていたロシアが、ウクライナ問題により、西側諸国による経済制裁の挟み撃ちを受け、世界第8のエコノミーとしての 座から後退し、世界トップ8から転落する兆しを見せたことです。もう1つは、日本と中国のGDP差が拡大し、日本のGDPが中国の半分に満たなく なっていることでした。

ロシアのGDPのランクには、国際原油価格の下落と西側諸国による制裁が主に影響していいました。さらに、ロシア国内の消費需要にも落ち込みが見られました。

この時期日本と中国のGDP差が広がっていた主な要因としては、日本円の対ドルレートがそれまでの2年で大きく下がったことによるものです。 アベノミクス実施の2年で日本のGDPは1兆2000億ドル(約140兆9000億円)縮小しました。さらにご存知のように、8%増税の悪影響もありました。
▽2014年GDPランキングトップ10(単位は兆ドル)

(1)米国 17.4
(2)中国 10.4
(3)日本 4.8
(4)ドイツ 3.8
(5)フランス 2.9
(6)英国 2.8
(7)ブラジル 2.2
(8)イタリア 2.13
(9)ロシア 2.06
(10)インド 2.05
日本のGDPが下がったことには、残念に思う人も多いと思います。中国の半分以下ということにショックを受けた人もいたかもしれません。

しかし、金融緩和政策を継続しつつ、8%増税をしたということで、円安になり、経済はマイナス成長をしたということが響いていると思います。本来、増税をしなけはれマイナス成長ということはなかったはずです。

しかし、日本の場合は輸出がGDPに占める割合は、15%程度ですし、円安ということになれば、輸出産業にとっては黙っていても、価格競争力がつくということで、良いことです。

さらに、円安ということになれば、日本は過去20年以上も対外金融資産(外国に貸し付けているお金)が世界一でしたが、円安ということで、これらの資産が日本国内に投資されるようになります。

さらに、従来輸入していたものも、国内から調達したほうが安上がりということで、国内産業が盛んになり、景気も良くなります。

日本の場合は、あまりにも長い間デフレだったので、それを治すための調整過程にあるということです。だから、これをもって日本の実力とするのはまだ時期尚早です。ましてや、これをもってアベノミクス大失敗などというのは大きな間違いです。

それと、中国の経済統計はかなりでたらめなので、実際の中国のGDPはかなり低く、現実にはドイツ以下の可能性すらあると指摘する経済学者もいるほどです。

話が横道にそれてしまいましたが、14年度においても、ロシアのGDPをみると、日本の半分以下です。2010年には、ロシアのGDPは世界10位にも入っておらず、インド以下でした。それが、最近の経済成長で、インドを追い越しました。しかし、2014年には伯仲しています。

2015年の統計はまだですが、おそらくインドに追い抜かれているどころか、世界10位の座からも落ちている可能性が濃厚です。

さらに、ロシアの経済は、日本のようにこれから良くなるという兆しも全く見られません。

ロシアは領土が広大なので、なぜか今でも大国と見られがちですが、その見方は間違いです。日露戦争の頃のロシアは確かに超大国でした。当時のロシアのGDPは日本の8倍でした。

しかし、そのロシアも今では、GDPは日本の半分以下です。円安の影響を勘案すると、実際には半分どころか、1/4程度とみなすのが、妥当だと思います。

日本より深刻なロシアの人口問題




そのロシアですが、人口は1億4千万人ほどです。日本の人口が約1億2千万人ですから、日本より2千万人ほど多い程度です。あの広大な領土と比較すると、本当に少ないです。

さらに、ロシアには大きな人口問題があります。日本の人口問題も深刻ですが、ロシアのそれは、日本のそれに輪をかけて深刻なものです。

2005年、日本の人口は1899年以来初めて減少し、人口減少社会が現実のものとなりました。今後は人口減少の問題が少しずつ深刻化してくると予想されます。

人口の減少は、日本をはじめとする一部の先進国に限られた問題ではありません。実はBRICsの一角を構成するロシアも同じ問題に直面しています。つい最近までのロシアは原油など資源価格が高騰していたので、資源供給国のロシアは高成長を謳歌していましたが、資源価格が下落したこれからは、人口減少の問題がロシア経済を直撃する恐れがあります。

ロシアの人口は、1950年代から80年代までは増加を続けていましたが、92年に1億4870万人近くでピークに達し、その後は減少傾向で推移しています。直近の2005年は1億4320万人(前年比マイナス0.46%)となっています。


今後は人口減少のスピードがさらに加速するとみられ、2050年には1億1180万人と90年時点の4分の3程度まで人口規模が縮小する見込みです。2005年時点でロシアの人口は日本の1.1倍となっていますが、今後人口減少が日本よりも各段に速いスピードで進むため、2050年には人口が日本(1億1120万人)と同程度の水準になります(図表)。

では、なぜロシアで人口の減少が進んでいるのでしょうか。その理由として、出生率の低下と死亡率の上昇が同時に進行、自然減少に歯止めがかからないことが挙げられます。

まず、出生率の低下ですが、これは1955年に妊娠中絶が合法化され、また70年代に子供を1夫婦につき2人までに制限することを推奨する政策がとられて以降顕著となりました。当時の政府は、人口爆発が発生して飢饉になることを恐れていたのです。

80年代には政府が出産を奨励する政策へと方向転換したため、出生率にやや改善の動きがみられましたが、90年代に入ると、旧ソ連崩壊後の混乱もあって経済的理由により出産を自主的に抑制する夫婦が増え、再び出生率の低下に直面しています。

また、平均寿命の短縮化も人口減少に拍車をかけています。もともとロシアは広大な国土に恵まれていながらも人間が生活していくにあたっての自然環境が厳しく、平均寿命はそれほど長くはなかったのですが、近年ではそれがさらに短くなってきています。

ロシアでは1965~66年平均の69.5歳をピークに寿命の低下が進行しており、90年に69.2歳、2000年に65.36歳、そして2002年には64.8歳となりました。平均寿命が今でも伸び続けている日本とは対照的です。

2002年では、日本人男性の平均寿命が78.4歳、米国人男性の平均寿命が74.6歳ですから、ロシア人男性は日本人男性に比べて20歳、米国人男性に比べて16.2歳も寿命が短いことになります。このまま平均寿命の短縮化傾向が続けば、ロシア人男性の寿命は、「人生50年」とのたまっていた織田信長の時代まで遡ってしまう恐れがあります。

男性の平均寿命の短縮化は、成人男性の死亡率上昇によるところが大きいと考えられます。背景には、健康に害を及ぼすアルコール濃度の高いウォッカの摂取量が増加していることがあります。実際、アルコール中毒による男性の死亡者は毎年相当数に上っており、夫婦の離婚の原因についても、最多の理由は夫のアルコール中毒です。

さらに、自殺率の上昇も男性の平均寿命を縮めています。世界保健機関(WHO)の調査によると、ロシアの自殺率は、90年の10万人あたり26.5人から95年に同41.5人と急上昇した後、2000年が同39.4人、2002年が同38.7人と高原状態にあります。2002年の年間自殺者数は5万5330人にも及びました。とくに男性の自殺率が高く、95年が10万人あたり72.9人、2000年が同70.6人、2002年が同69.3人となりました。2002年の国際比較をすると、ロシアはリトアニア(自殺率は44.7)に次いで世界で2番目に自殺率が高くなっています。

以上は少し古い資料ですが、今でも趨勢に変化はありません。

プーチンが、軍事プレゼンスに注力するわけ?


モスクワの独立空挺団に所属する24歳の女性兵士、Yulia Kharlamovaさん
経済でも、人口でも陰りの見えるロシアが今でも持てる力としては、軍事力が最大のものです。特に軍事技術に関しては今でもトップ水準にあります。

だからこそ、プーチンは、これを最大限に活かして、ロシアの優位を保とうと躍起になっているのだと思います。だからこそ、ウクライナや最近では中東で軍事的な行動に出て、ロシアの存在感を高めようとしているのだと思います。

とはいいながら、今のロシアは仮に経済が落ち込まなくても、すでにEUと軍事的にまともに対峙することはできません。無論、アメリカとは問題外です。

そうして、ご存知のように隣には、人口13億人の中国が控えており、中ロの国境は世界で最も長い国境線で接しています。

これらを守備するだけでも、とてつもない経済力と努力を必要とします。今や大国ではなくなった、ロシアには問題が山積しています。

日本は、今や小国と成り果てたロシアを等身大に見て、北方領土問題の返還など、強力に推し進めていくべきです。今後、5年くらいが、最大の山場かもしれません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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