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2010年3月11日木曜日

世界長者番付:メキシコのスリム氏が首位 資産4.8兆円―日本のデフレを克服するには、スリム氏の全資産をもってもしても、焼け石に水だ!!

世界長者番付:メキシコのスリム氏が首位 資産4.8兆円(この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)

カルロス・スリム氏

米経済誌フォーブスが10日発表した10年版世界長者番付によると、世界一の「富豪」は、メキシコの実業家カルロス・スリム氏で、総資産額は前年から約185億ドル増の約535億ドル(約4.8兆円)だった。通信・メディア王として知られるスリム氏は、前年の3位から初の首位に立った。米国人以外の首位は94年の西武鉄道会長(当時)の堤義明氏以来16年ぶり。

日本人からは新たに会員制交流サイトを運営する「グリー」の田中良和社長が富豪の仲間入りをした。田中社長は33歳。今回の長者番付の中では2番目に若く、総資産は14億ドルだった。

2位は昨年首位だった米マイクロソフト(MS)創業者のビル・ゲイツ氏。3位は昨年2位の米投資家ウォーレン・バフェット氏。日本のトップは衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の89位(昨年76位)で、資産は76億ドル。

同誌は保有資産10億ドル超の資産家を「富豪」としている。08年秋以降の金融危機で、昨年793人まで減っていた富豪数は、景気回復の兆候を受けて、前年比約27%増の1011人に達した。国別では中国が昨年の28人から64人に急増。インドも24人から49人に増えたほか、日本も17人から22人に増加した。

日本のデフレを克服するには、スリム氏の全資産をもってもしても、焼け石に水だ!!
一昔前まで、資産家は社会に対して、かなりの影響力を及ぼしていました。大資産家が、何かをすれば、それは社会に対して大きな影響を及ぼしました。しかし、それはとうの昔に終焉しました。なぜかといえば、世界の経済があまりにも大きくなったからです。

ドラッカーの著書には、あのビル・ゲイツの総資産をもってしても、アメリカで日々動くお金の数日分にしか相当しないと書かれていました。正しくその通りです。アメリカの経済はかなり大きくなってしまったので、ビル・ゲイツ氏の全資産をもってしても、社会に大きな影響を与えることは困難なのです。

この感覚が多くの人には未だ分かっていないようです。特に日本では。日本にはメキシコのスリム氏のような第資産家は何人いるのでしょうか?無論いませんね。では、日本人の全金融資産はスリム氏の何人分に相当するのでしょうか?それは、割り算をすれば、わかりますね。試しに昨年の9月末の日本の個人資産の合計を使って計算してみましょう。さてその結果は、約300人ということです。さて計算のもととなった数字は、日銀が昨年12月17日に発表した2009年7~9月期の資金循環統計(速報)によると、家計が保有する金融資産残高は9月末で1439兆4837億円となっています。これを、スリム氏の資産である4.8兆で割ってみたのが、この300人という数字です。

皆さんは、この数字をどうご覧になりますか?私は、かなり大きな数字だと思います。個人の金融資産でトップはアメリカです。ちなみに以下に日本とアメリカの金融資産の内容のグラフを掲載しておきます。


ここで注目していただきたいのは、現金・預金です。現金・預金では790兆とアメリカの575兆よりも多いですね。全金融資産では、日本は世界でアメリカに次いで、第2位ですが、その中の現金・預金は、アメリカよりも多く世界一です。そうして、驚くことにこれは、世界の現金・預金の半分に相当するほどの額です。日本とアメリカがこのくらいですから、世界の大半の国がこれほどの資産はないといことになります。

しかし、このよな日本のような国が、なぜ10数年にもおよんでデフレ状況の不況続きなのでしょうか?その理由に関しては、要するにバランス・シート不況によることはこのブログでも何回も掲載してきました。その詳細に関しては、ブログの過去の掲載に譲るとして、本日は、なぜバランスシート不況が起こるのかについてその背景について私の思うところを記載しようと思います。

要するに、これだけの資産を抱えているということが為政者や、一般国民にも認識されていないということが問題なのだと思います。そうして、プライマリーバランス(財政均衡)ばかり気にしていて、デフレ対策を行わないことが問題なのだと思います。日本の経済がほとんど、通常の人たちの考えが及ぶ限度を超えて、天文学的になってしまっていることが原因なのだと思います。

たとえば、メキシコのスリム氏が日本にきて、全資産をはたいて、日本のデフレ対策を行ったとすると、多くの人はかなりのことをやったと思い込むのですが、それでは焼け石に水にすぎないということに気づかないのだと思います。スリム氏が大枚をはたけば、事が成就すると思っているのではないかと思います。

それは、違います。スリム氏の5.8兆では、日本では焼け石に水なのです。しかし、これは、なかなか感覚的には分からないと思います。だから、ここで、逆の例を出してみようと思います。


昨年、中国政府によるパソコンへの「有害サイト」の検閲ソフト搭載義務化に反対するインターネットサイトが、政府の監視の目をかいくぐって作られ、一日までに約一万千九百人が反対署名をしたということがありました。

同サイトには「ネット社会に自由を」「ソフト開発に費やした約四千百七十万元(約五億九千万円)で貧困層を救え」といった書き込みが目立ち、反対論の根強さをうかがわせているという内容のニュースがサイトに掲載されていました。

普通の日本人だったら、約6億程度のお金でいったい何ができるだろうと思うのではないでしょうか。現在の中国全土の人口は1,276,270,000人です。これは、日本の10倍に相当します。こんなところで、6億のお金で何ができるというのでしょうか?さらに、中国の場合人口が10倍なのですから、中国の経済対策などそもそも日本に置き換えたら、1/10規模ということになります。この検閲ソフトの5億も、日本であれば、1/10の6千万円で何ができるでしょうか?

一般的な中国人だと、億というお金の単位は、天文学的なものであり実感できないのだと思います。これに対し日本人なら、億単位の資産を持っている人などそんなに珍しいことではありません。だから、たかだか6千万円のお金をつぎこんだからといって数多くいる貧困層を救えるなどとは誰も思わないでしょう。

しかしながら、日本も実は、ある意味で中国の一般人と同じような現象に見舞われているのではないかと思います。日本は、アメリカなどと違って、経済的に豊かになったのは、ここ数十年のことです。だから、兆というお金の単位には馴染みがないのだと思います。日本の国のデフレ基調が過去十数年にわたって克服できなかったのはまさにここにあると思います。

日本の経済は想像を絶するほど、パイが大きくなってしまったにもかかわらず、不況になったときに、数兆単位の対策では焼け石に水なのです。しかも、デフレということになれば、対策には、少なくとも数十兆単位の対策が必要なのだと思います。できれば、本当は百兆を超える対策が必要なのだと思います。

しかし、これは、あまりに大きく、日本の一般人だけではなく、為政者もピンとこないのではないかと思います。しかし、アメリカなどは、経済大国になってからの歴史も長く、それに、金融資産も株式などをはじめ多くを持っているので、本当に危機に至ったときには、プライマリーバランスはおろか、貿易収支も気にせずに、大枚をはたいて対策を打つので、それなりに回復も早いのだと思います。

日本は、本来どこかでふんぎりをつけて、実効的な対策を打つ必要があります。そのためには、直近で本当は、50兆超の政府財政支出などするべきです。できれば、100兆超でも構わないと思います。

そうして、私のこの言葉決して的外れではないと思います。このブログでも掲載しましたが、昨年、ノーべル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏が来日して、与謝野氏と対談しました。そのときに、与謝野氏の日本の経済対策をどう思うかという質問に、クルーグマン氏が次のように述べています。

「方向性としては日本の経済対策は間違っていない。ただし,政府支出が不十分だ。このままではいつ退院できるのか判らない、5年先、10年先かもしれない」と述べています。そうなんです。やはり、政府支出が少なすぎるのです。

そうして、それは、やはり為政者にも兆単位という金額は、天文学的でピンとこないということが主な原因だと思います。そうして、プライマリーバランスが、マイナスの数百兆ということにも、相当脅威を感じているのだと思います。

しかし、現在は百年に一度と言われる金融危機の余波が未だ続いている状況でもあります、さらに、長引くデフレ基調が回復するどころか、よりいっそう進み、政府がデフレ宣言をした最中にあります。デフレは、人の病気でいえば、癌のようなものです、他のことは犠牲にしても、癌を取り除く必要があります。このブログで以前にも掲載しましたが、今の日本の有様は、癌を宣告された人が、癌の治療はそっちのけで、会社の仕事がうまくいかないので悩んでいるようなものです。癌の治療のほうが、何をさておいても必要なはずです。ただし、現在の日本の場合、あまり大きな癌ではないので、早期治療すれば何とでもなる状態だと思います。しかし、放置しておけば、癌が大きくなってのっぴならない状況にもなりかねないということだと思います。

政府は、最近菅さんが、日銀に対し要望をだしているようですが、これほどのデフレで、金利が下がっている時に、日銀のできることは本当に限られています。それよりも、政府の財政支出のほうがはるかに重要で喫緊の課題です。勇気をもって、大きな追加経済対策を実施していただきたいものです。

そうして、追加経済対策をするにあたっては、国債を追加摺り増しすることも視野に入れていただきたいです。何も、永遠に摺り続けろと言っているわけではありません。今が摺りどきであるということを言っているだけです。

このままだと、第二の失われた10年に見舞われることは、火を見るよりも明らかだからです。日本のデフレを克服するには、大富豪のスリム氏の全資産をもってもってしても、焼け石に水であることを肝に銘じていただきたいものだと思います。

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