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2015年9月2日水曜日

五輪エンブレム撤回に追い詰めた「ネット捜査」の功罪 森元首相に責任論も… ―【私の論評】現代の高度知識社会に適応できない人々(゚д゚)!

五輪エンブレム撤回に追い詰めた「ネット捜査」の功罪 森元首相に責任論も… 

佐野氏デザインによる五輪エンブレムのポスターを剥がす自治体職員

新国立競技場に続く、五輪エンブレムの使用中止。公表から約1カ月で国家的事業の組織決定を覆したのは、ネット社会の徹底した疑惑追跡だった。ネット上には「ネット民大勝利!」との言葉が踊る一方、制作者の佐野研二郎氏(43)に対する個人攻撃も過熱し、ネットの功罪が浮き彫りに。決断を遅らせ傷を広げた運営側の責任は明確にされず、新国立問題とうり二つの玉虫色の決着となった。

「ネット民大勝利!」「ネットがマスメディアと大手広告代理店に勝利した」…。1日に使用中止が報じられると、ネット上のサイトには、歓喜ともいえるコメントが次々と書き込まれた。

新潟青陵大学大学院の碓井真史(まふみ)教授(社会心理学)は、「ネット上で、類似作品や写真の無断使用など次から次と発覚した。検証には相当多くの人が参加したとみられる。それなりの専門性を持った人もいたと思うが、素人でも力を合わせると、プロでも簡単にできないことができてしまうということ。ネットの集合知で、事実が明らかになったのはすごいことだ」と話す。

検索サイト「グーグル」では画像ファイルを入力すると、類似の画像が表示される機能があるなど技術の進歩もあった。「STAP細胞論文問題でもネットが先行した。リアルな世界では権威ある人を批判することはリスクを伴うが、ネット上は権威に関係なく自由に発言でき、その成果だ」と碓井氏は続ける。

一方で、個人攻撃がエスカレートしたことも事実だ。佐野氏は1日、メディアへの批判とともに「もうこれ以上は、人間として耐えられない限界状況」と深刻なネット被害を訴えた。個人の会社のメールアドレスが話題となり、連日中傷のメールが送られてきたほか、記憶にないショッピングサイトやSNSから入会確認のメールも届いたという。家族や無関係の親族の写真がさらされる事態にもなった。

佐野研二氏


碓井氏は「この人は悪い人となると、何を言っても構わないとリンチのような状況が起きる。リアルな場面では警察が介入して止めることができるが、ネット上ではある方向に動き出すと、止められない怖さがある」と指摘する。

佐野氏にはもちろん非はあるが、対応が後手に回った運営側の責任はうやむやのままだ。

「結局、誰に責任があるのか」。1日の大会組織委員会の会見ではたびたび質問が飛んだが、元財務次官で組織委の武藤敏郎事務総長は、「さまざまな人がかかわった。どこか一カ所に責任を負わせるべきではないと思うし適切ではない」と歯切れの悪い回答に終始。「選んだのは審査委員会。状況に対処して新しいものを作っていくのがわれわれの責任」と繰り返した。

遠藤利明五輪相は2日の衆院文科委員会で、「組織委、審査委員会、デザイナー、三者三様の立場で責任がある」との見解を示した。

そんな中“戦犯”にあげられているのは、元首相で組織委の森喜朗会長だ。関係者の間では、新国立問題に続き、エンブレムまで白紙撤回することで森氏に恥をかかせられないとの配慮が働いた、とする見方が少なくない。森氏は1日、取材陣に囲まれ「残念な結果になった」と問われると「何が残念なんだ」とムッとした表情で語った。

森氏の辞任を求める声は高まっており、スポーツ評論家の玉木正之氏は「遅きに失したが、新国立問題に続いて見直しの方向に進むのは評価できる。国家的プロジェクトで問題が相次いだのだから、森氏は責任をとるべきだ」と語る。

エンブレムのデザインは今後、公募をやり直して選考する。迷走を続ける東京五輪が再び国民の支持を得られる日はくるのか。

【私の論評】現代の高度知識社会に適応できない人々(゚д゚)!

今回の、この出来事は、現代がもうすでに知識社会に突入しているというのに、まだまだ多くの人々がそれに気づいていないことを象徴しているように思えます。

われわれの社会は、もうすでにかなり知識社会に突入しています。これについて、ドラッカーは、歴史の転換期であるとしています。彼は、『ポスト資本主義社会』(1993年)において、この転換期は、1965年から1970年の間のどこかで始まり、2020年頃まで続くと語っていました。

私たちは、そのまっただ中にいて、すでにかなり知識社会に移行わけです。知識社会とは、平たくいうと、富の源泉が、従来のようにモノや、カネ、情報ではなく、知識となる社会のことをいいます。



知識社会に入ってから、知識という言葉の意味も変わりました。従来の知識といわれていたものと、現在の知識といわれるものとの意味あいは異なります。従来の知識ある人とは、とにかくモノを知っている人という意味でした。だから本をたくさん読んで、その中にあるものを記憶しているだけでも、知識人といわれました。

しかし、知識社会における、知識とは、成果を生むための高度に専門化された知識のことです。書籍などに書かれている内容は、知識ではなく情報です。

そうして、この意味での知識は高度化するほど専門化し、専門化するほどに単独では役に立たなくなります。他の知識と連携してはじめて役に立つものになります。知識は、他の知識と結合したとき爆発します。

得意な知識で一流になると同時に、他の知識を知り、取り込み、組み合わせることで大きなパフォーマンスをあげられようになります。だからこそ、現代は必然的に組織社会ともなります。無論、組織とはいっても、従来の知識社会でなかった社会のそれとは随分異なったものになります。

しかしながら、知識社会においては、知識そのものを競争力要因とするわけにはいかないのです。今日の知識社会は、情報の伝達力飛躍的な向上が前提となっています。だから、知識そのものは瞬時に伝播するようになりました。

今日新たな知識であっても、従来と比較するととんでもない速さで陳腐化して、時代遅れとなります。だからこそ、この知識社会において30年、40年にわたって手にすることのできる競争力要因は知識労働者しかないのです。

そうです。知識そのものよりも、より高度な新たな知識を生み出す知識労働者を抱えているかいなかが、現代社会における企業などの組織間競争の中で、勝利を収め続けるための重要な要素となるのです。

このことに佐野研二郎氏はもとより、大会組織委員会の人々も気づいていないのだと思います。彼らは、まだ知識社会になる以前の社会常識で物事に対処しようとしているのです。だからこそ、五輪エンブレム撤回という事態を招いてしまったのです。

ここで、話をもっと具体的にしましょう。知識社会の前提となる、情報化は随分前から整うようになりました。この最初の革命は、印刷技術でしたが、前世紀においては、コンピュータならびにそのネットワークが発展して、今日はさらに高度になりました。

知識そのものが従来と比較すると、かなりのスピードで伝播するようになりました。この恩恵は素晴らしいもので、今日のわたしたちは、コンピュータの前に座っているか、タブレット端末や、スマートフォンであれば、どこにいても、世界中のありとあらゆる、デザインを見ることができます。

これによって、多くの人々が恩恵をうけました。佐野氏もその例外ではなかったことでしょう。デザインでも、その他のアートでも、他の分野でも、最初は先人のつくったものを参考にして、模倣したり、模倣するだけではなく、そのコンセプトを学んだり、その技能や技術を学び、自らの知識を高め、新たな知識を創造していくことが、かなりやりやすくなりました。

そうして、様々な分野の知識を模倣して、自らの素早く事業を展開する人々も現れました。たとえば、iPadやiPhoneを開発したあのスティーブ・ジョブズも模倣の天才した。

これに関しては、以前このブログでも、リミックスという言葉でこのことを掲載しました。ここで解説していると非常に長くなるので、以下にその記事のリンクを掲載します。


Remixの概念は音楽業界からきている
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、いわゆる世間一般でいわれている新しいものなど、実は大部分がリミックスという手法で作成されていることを掲載しました。リミックスに関する部分のみ以下に掲載します。 
家電の開発もそうですが、何か新しいものをつくることの近道、特に私を含めた凡人にとっての近道は、リミックス(REMIX)です。REMIXとは、copy(複写)、transform(変形)とcombine(結合)です。これらをそれぞれ、単独で行うこと、あるいはいくつかを組み合わせて行うことすべてを含みます。音楽の世界でも、テレビ番組でも、映画でも、政治の世界でも、文学でも、アートでも同じです。ただし、Remixということが良くいわれるようになったのは、音楽の世界からです。しかし、ここでは、本題ではないので、詳細はのべません。しかし、皆さんも、古いアーティストとの楽曲など、リミックス版として発売されいることもあることは、よくご存知だと思います。音楽界でいう、リミックスについては、wikipediaなどで調べていただけたら、幸いです。 
あの、アップルコンピュータのOSも、マイクロソフトのOS(ウインドウズ)も同じことです。これらには、ゼロックスが開発したOSがもとになっています。マイクロソフトのwindowsは、アップルからパクったという話しがありますが、そうではありません。あのiPhoneや、iPadもリミックスから成り立っています。これらには、市場に投入する時期に失敗した、ノキアのスマートフォン、タブレット端末の手本がありました。おどろくなかれ、これらは、iPhoneか発売される5年前に原型が完成しており、iPhoneや、iPadの持っているすべてまでとはいいませんが、特徴的な機能はすべて網羅していました。 
このremixの実態については、アメリカの高画質動画サイトvimeoに4回シリーズが投稿されている「Everyghing is a Remix」にあますところなく表現されています。これだけ、分かりやすく、豊富な事例で誰もが短時間で納得できるものを私はいまだかつて見たことがありません。まさに、秀逸な動画です。

以上で、リミックスが何を意味するかお分かりになったものと思います。

ただし、この動画に関しては、英語バージョンなので、日本語バージョンもしくは、日本語字幕のついているものはないかと探してみましたが、ありませんでした。

ただし、TEDには、この動画の作成者が、リミックスについて語っていて、字幕もついているものがありましたので、そのリンクを以下に掲載しておきます。
さて、知識社会である現在では、このようなリミックスがかなり広範にありとあらゆる分野で行われていて、様々なモノ・コトが素早く市場に投入されるようになっています。市場に投入するのが遅くなれば、携帯電話の雄であったねノキアのように昨日の、トップが敗者になってしまうということも頻繁にあります。

今やインターネットで、ありとあらゆるデザインを見ることができるし、そのコンセプトも容易に理解できることが多いですかから、これはデザイン業界の世界も例外ではありません。

上の記事では、「検索サイト「グーグル」では画像ファイルを入力すると、類似の画像が表示される機能がある」と掲載してありますが、これは本当です。

以下はGoolge画像検索の画面です。

検索のキーワードを入れても画像を探しますが、カメラのアイコンをクリックすると、自分のパソコンなどに保存してある写真もしくは、サイトで探した写真のURLを入れることによって、似たような画像を多数検索できます。

本日テレビをみていたら、佐野氏がエンブレム使用例として出した、他者の撮影した、成田空港の写真のことが話題になっていました。

成田氏のエンブレム使用例は、下の写真です。

クリックすると拡大します
上の写真の右の写真は、海外のブログの以下の写真を転用したものです。エンブレムの部分のみ、切り貼りしたものです。

クリックすると拡大します
現在なら、フォトショップという写真編集用のソフトがありますから、この程度のことはインターネットで写真をダウンロードして、それをもとに加工することはそんなに難しいことではありません。

これは、リミックスの初歩的なやりかたということができると思います。東京オリンピックエンブレムに関しても、佐野氏もしく佐野氏部下などが元々のデザインをインターネットで見て、それを元にして作成した可能性は十分にあります。

それにしても家電製品などでは、リミックスなど当然行われていますがの、部品は他の製造業者から仕入れたり、ただたんに模倣するだけではなく、他の様々な要素をとりいれたりして差別化をはかっています。

また、差別化を図らないと、すぐに陳腐化してしまいます。スマートフォンの場合などは、アンドロイド端末と、iPhoneを比較すると圧倒的にiPhoneのシェアが高いそうで、やはり様々機能や、デザインが独自路線でかなり差別化されているからでしょう。それに比較すると、アンドロイドフォンは最初からGoogleに規格など決められていますから、このような結果になっているのかもしれません。

iPhoneのシェアは日本でも60%近いとする調査もある

このリミックスという考えから言うと、デザインの世界でもリミックスは当然のこととして行われているでしょうから、佐野氏を盗作だとして一概に非難することもできないと思います。

ではなぜこのようなことが起こってしまったのでしょうか。それは、このブログの冒頭の記事のようなことも無論あると思います。ただし、私はこれは本質ではないと思います。

やはり、本質は上で述べたように、佐野氏や大会組織委員会の人々が、現在が高度な知識社会になりつつあることに気づいてないことが本質なのだと思います。

知識社会の現在は、誰もが知識を得ることがたやすくなっています。インターネットをみれば、誰もが簡単に世界中の類似デザインを見ることができます。

昔なら、デザイン見比べるにしても、かなり費用と時間がかかりましたが、今では本当に簡単に瞬時でできます。

デザインなども、リミックスするにしても、ただ単純に模倣するだけでは、すぐに多くの人が知ることになってしまいます。インターネットに何らかの形で掲載されてしまえば、あっという間です。

今では、デザイナーの卵のような人や、デザインを学ぶ学生なども、当然のこととして、インターネットで普段から様々なデザインを検索して見ていることでしょう。一般の人も、ネット検索は無論のこと、ピンタレストなどのSNSで普段から様々なデザインを見ている人は珍しくありません。

ピンタレストの画面 ありとあらゆる写真を関連付けてピンすることができる

最終的に出来上がったデザインも、これを知識とみなせば、知識社会の現在、従来と異なり情報として、様々なデザインが頭の中に入っている人は質、量とも段違いです。

そんな環境の中で、簡素なリミックスをするのでは、とてもプロとはいえません。簡素なリミックスなら、現在では素人でもできるようになっています。たとえば、映像技術など今では、10年、20年前と比較すると、かなり高度な知識をネットからほとんど無償で得ることができます。それを活用して、特にそのための学校にも行かず、ブロの仕事場に弟子入りすることもなく、自分で学んで短期間でブロになっている人も大勢います。

そうして、若いときにプロになった人でも、時がたつと過去の技能はすぐに陳腐化してしまい、自ら新たな知識を獲得して、活用できるようにしなければなりません。

そんな時代には、どんな仕事も過度に競争的にならざるをえません。一昔前の時代とは競争環境が全く異なるのです。

そんな時代には、デザインの技法もかなり高度にならざるをえません。コンセプト形成にはじまり、そのコンセプトを実現すべく、色、形、配置様々な要素の高度な知識に基づいて、高度なデザインを仕上げる必要があります。

その過程でむろん、リミックスが適用されることはあると思いますが、それにしても、佐野氏のリミックスは低次元でした。この低次元なリミックスのため、佐野氏のデザインは、ネットで公開されるや、あっという間に多くの人たちに見透かされ、あっと言う間に陳腐化してしまったのだと思います。

そうして、このデザインを選定した大会組織委員会もそのような認識はなかったと思います。おそらく、佐野氏から提出されたデザインで、似たようなものがないかどうか、画像検索もあまりしていなかったと思います。

このようなことから、私は大会組織委員会のメンバーも現代の高度な知識社会に適合しているとは思えないので、メンバーを差し替えた上で、新たなデザインを選定すべきものと思います。そうしなければ、これからも似たような事例が頻繁に起こることになると思います。

それに、過去の日本はデフレのどまんなかにあったので、デフレ圧力により過度に競争することにあまり意味がなくなってしまっていましたが、今後デフレが解消されるにおよび、ふたたびインフレ圧力により、どのような分野でも商品やサービスに付加価値をつけることが求められ、さらに競争は激烈になることを忘れるべきではありません。

私はそう思います。皆さんは、どう思われますか?

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