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2011年3月16日水曜日

円、79円台に上げ幅を縮小、一時最高値76円台前半―【私の論評】なぜ震災国日本の通過円が買われるのか?

円、79円台に上げ幅を縮小、一時最高値76円台前半


17日朝方の東京外国為替市場で、円相場は伸び悩み。9時時点は前日17時時点に比べると1円78銭の円高・ドル安の1ドル=79円14~17銭近辺で推移している。円は早朝に一時76円25銭近辺と最高値を記録した後、上げ幅を縮めている。円の最高値圏で輸入企業などが円売り・ドル買いを出しているという。

野田佳彦財務相が財務省内で記者団に対し為替介入について「神経質な動きが出ている。しっかりとマーケットを注視していく」と述べた。政府・日銀による円売り介入についてはコメントしなかったが、市場では介入警戒感が強い。

玉木林太郎財務官は「日本の投資家には本国送金の動きがない」と述べ、国内勢が海外資産を売って外貨を「円転」するとの市場の思惑をけん制した。

(注:この記事自体は、16日に書いたのですが、円相場に関しては、17日の朝の最新のものに差し替えました)

【私の論評】なぜ震災国日本の通貨円が買われるのか?
日本は、大震災にあったことは、誰もが否定できないと思います。しかし、こうした大災害に見舞われた日本の円が高騰しています。これは、一体どういうことなのでしょう?

結論からいいます。大前研一氏や、他の多くの人々がいうように、日本国は財政破綻の瀬戸際にあるという認識は間違っています。もし、そうであれば、今頃急速な円安に見舞われているはずです。

本日は、日本が財政破綻の淵にあり、今回の震災での復旧のために政府が巨大な支出をすれば、財政に大きな悪影響を与えるから、地震増税をすべしという主張には、正統な根拠がないことを掲載します。日本が財政破綻の淵にあるという認識は、3月11日に大震災にあっていないと主張することとほんど同じくらい間違っています。

まずは、以下の大前氏の動画をご覧になってください。原発のことについて、語っていますが、それに関してはまさに、正鵠を射た素晴らしい発言だと思います。


しかし、この動画の最後のほうの「1%増税」という発言は全くいただけません。大前研一氏も、日本が財政破綻の淵にあるという考えからこうした意見を述べているいます。しかし、この発言は、その前提からして間違いです。別な側面からみれば、これは、人々を惑わしていると思います。ある意味では、災害直後におこる流言飛語などとあまり変りないかもしれません。

大前氏のように世界的な権威が、自信たっぷりに、こうした増税を主張すれば、それに抗える人など滅多にいないでしょう。こうした、主張をする大前氏には、なぜ現在円高になっているのか、その背景を説明していただきたいです。

大前研一氏は、現在は経営コンサルタントとしての側面ばかりが強調されますので、もともとは、高速増殖炉を設計をしていた人であり、技術的な側面に関しては上の動画でもわかるように、素晴らしい慧眼の持ち主ですが、こと経済になるとそうではないという事だと思います。

さて、似たような事例では、どのようなことになったか、アメリカの事例をみてみましょう。

震災とは違いますが、2001年9月11日に発生した「米同時多発テロ」事件後の米ドルの急落でした。

そこで、この「9・11」後の動きをみてみましょう。

米国が震えたこの「9・11」の後、株式市場は1週間の休場を決めましたが、世界中で取引されている為替市場は閉じるわけにはいかず、米ドルは売り浴びせられました。


これに対して、米国は米ドルの防衛介入に動き、日本なども参加した「協調米ドル買い介入」が実現しました。

この違いはどこからでてくるのでしょうか?


最近では、1月のオーストラリアの洪水が記憶に新しいです。このときも、結局豪ドルはあげています。経済的悪影響が懸念され、対米ドルで1.02ドルから一時は0.98ドル台まで売られた豪ドルでしたが、下のグラフのように、最近は1.02ドル近くまで戻していました。

このように、被災国通貨が急落するのではなく、むしろ上昇することも多い理由として、復興需要を期待した買いや、不透明感が警戒されて資本取引が手控えられる中で、貿易取引の影響が大きくなるためといったことが、よく指摘されるところです。


このような理由もありますが、日本が震災直後からこのような円高になったのは、日本は経常黒字国であり、対外債権国だからです。さらに、3月末決算が目前に迫っているタイミングでもあり、国内への資金引き揚げ、キャッシュ化による円買いが発生しやすいという条件も重なったものと考えられます。

アメリカは、経常赤字国である、対外債務国です。経済からみれば、アメリカは日本とは全く反対の立場にあるわけです。いずれにせよ、日本が財政破綻の淵にあるというのなら、今の時点で、円高ということは全くあり得ないということです。

このブログでは、過去に何回も、日本は財政破綻の淵になどあるという考えは大間違いであることを掲載してきました。同じことを何回も書くことには、気も引けるのですが、上記のような大前研一氏のような方もでてきていますし、最近では、菅総理と、谷垣総裁が会談し、時限増税を行うことも視野に入れていることを聞き及び、かなりの危機感を感じたため敢えて再掲します。


このような、間違いは、日本国を一つの経済主体として全体をみることなく、企業であれば、そのPL(損益計算書)の一部分や、BS(貸借対照表)の一部分をみているからに他なりません。特に、日本国全体のBSをみればすぐに理解できる筋合いのものです。日本国が財政破綻の淵にあるなどという人は、政府の歳入・歳出だけをみて、財政危機などと叫んでいるだけで、これを人体にたとえると、指に大怪我をして、このままいけば、指を切り落とさなければならないかもしれないと大騒ぎしているのに似ています。指は、切り落とさないにこしたことはありませんが、たとえ指を切り落としたとしても、命に別状はないのに、さもさも、危篤状態にあるかのように騒ぎ立てているのと似ています。




上の図で、まずは、政府の【金融純負債】=【負債】―【資産】=1,001.8兆-481.9兆=519.9兆です。日本の2010年度のGDPは、約540兆円ですから、政府の純負債は、GDPの半分以下ということになり、これは、他の国と比較して、確かに金額ベースではかなり大きいですが、GDP比ではさほど大きくもなく、普通といっていいくらであり、財政破綻すると騒ぎたてるほどのことではありません。ちなみに、金融資産をこれほど持っている政府は世界でも稀であり、そのような統計はないのですが、おそらく、日本国政府が世界一でしょう。家計も、【金融純資産】=【資産】-【負債】=1,452.8兆-373.5兆=1,079.3兆という水準です。

それから、きわめつけは、対外金融純資産が、263.4兆円ということで、これは、過去20年間で世界一のレベルです。要するに、海外に貸し付けている金融資産が、どこの国よりも多いということです。

こんな国が財政破綻の淵にあると言えるのでしょうか?

現在原発が被災して、とんでもない状況にあるにもかかわらず、円高傾向にあるということは、市場では、この被災もいずれ終息するし、仮に最悪の事態を招いたとしても、日本は復旧するし、経済も復活することを予測しているのだと思います。

さて、日本は、ご存じのようにここ20年ほど、デフレの状況にあります。というより、デフレスパイラルの最中にあります。デフレスパイラルとは、以下にウィキペディアからその内容を

経済全体で供給過多・需要不足が起こって物価が低下する。商品価格が低下すると生産者の利益が減り、利益が減った分だけ従業員の賃金が低下する。また企業の利益が減ると雇用を保持する余力が低下するので、失業者が増える。従業員と家族は減った賃金で生活をやりくりしようとするため、あまり商品を買えなくなる(購買力の低下)。その結果商品は売れなくなり、生産者は商品価格を引き下げなければならなくなる。物価が下がっても名目金利は0%以下に下がらず、実質金利が高止まりし、実質的な債務負担が増す。債務負担を減らすために借金返済を優先する企業個人が増え、設備投資や住宅投資が縮小される。投資の縮小は総需要の減少へつながり、物価の低下をもたらす。
上記のような循環がとどまることなく進むことを「デフレスパイラル」と呼ぶ。政府による買い入れや物価統制など直接的な手段が有効であるが、現代の経済においては消費者物価の継続的な低下に対して金融緩和や量的規制緩和、為替介入などの金融政策で対処することが多い。所得税の累進性や社会保障はビルト・イン・スタビライザーの機能を持つため、物価の安定に機能するとされている。
一方で1980年代のレーガノミックス、サッチャリズムによる小さな政府政策以降、ワシントン・コンセンサスに見られる新自由主義や市場原理主義が先進主要国の政策に導入されており、ビルト・イン・スタビライザーの中心でもあった累進課税と失業者救済制度が「自由競争を損ない、経済活動を萎縮させる」と批判の対象とされて機能しなくなつつあり、2007年金融危機発生後の現在では世界規模でのデフレスパイラル発生が懸念されている。

世界的にみて、デフレスパイラル発生が懸念されている最中で、今の日本の状況で、減税をするというのなら、わかりますが、増税するというのは全く理解に苦しみます。

私は、地震が発生した直後に、このブログに日本の実体経済の見通しについて以下のように記載しました。

現在、災害のため企業活動も滞りがちになると想定され、経済にも悪い影響を及すと思います。しかし、先ほどは、地震が発生したばかりであるため、不謹慎であるため、述べはしませんでしたが、復旧がはじまれば、経済も上向くと思います。 
なぜなら、復旧に向けた公共工事で雇用も増えるからです。そのため、市中に出回るマネーも増え、デフレ克服のきっかけになるかもしれません。 
今後、1~2年くらいは、もともとアメリカあたりの景気が上向くこともあり、上記のようなこともあるので、景気も上向き、日本経済も堅調になることでしょう。 
それにつれて、税収も増えることになるでしょう。ここまでは、経済音痴の民主党がなにも考えずとも、成り行きで、そうなることでしょう。しかし、それから、先が問題です。 
復旧工事に目鼻がついた後の対応が問題です。先程述べたように、その時点で今回地震がなかったところの工事も着手すれば、本格的にデフレ克服の目はなもつくかもしれません。そうして景気が上向くどころか、インフレそうしてバブル傾向になるかもしれません。そうなれば、増税や緊縮財政をすれば良いわけです。 
しかし、ここで、それをしなければ、どうなるかといえば、せっかく上向きかけた景気がまた元にもどることになるでしょう。それどころか、民主党は、このタイミングで増税をすることでしよう。

そうなると、景気は、悪くなるどころか、ふたたび深刻な、デフレスパイラルになるでしょう。そうして、失われた20年の再来ということになると思います。
さて、以上のようなことを考えると、地震の復旧には、増税ではなく、地震国債などを発行すべきです。国債というと、おおかたのマスコミなどは赤字国債であると騒ぎ立てていますが、そんなことはないことをこのブログでは再三掲載してきました。このことを象徴するようなことが、本日もありました。

東日本大震災を受け、先進7カ国(G7)が財務相・中央銀行総裁による緊急の電話会合を週内にも開催する方向で調整に入ったことが16日、分りました。日本への支援策や世界的な市場の混乱回避が主な議題となる見通しです。

ロイター通信によると、G7議長国であるフランスのラガルド経済・財政・産業相は同日、記者団に対し「日本の国債発行にどのような形で貢献できるかを判断するため協議を要請した」と述べました。

ただし、日本国債は震災後も順調に消化されており、長期金利は安定(というより下がっているくらい)しているため、短期的には日本が金融面での支援を必要とする可能性は低いです。一方、外国為替市場では円高が進んでおり、一層の円高進行をけん制するG7のメッセージを期待する声もあります。

さて、本当に日本の国債が赤字国債であるとすれば、上記のようなことがあり得るでしょうか?これに関してもこのブロクでは、再三にわたって掲載してきています。特に、昨年の菅総理の海外デビューであるG20においての記事で、それに関して掲載しました。

要するに、日本の国債は、その96%を国内の機関投資家や、個人に購入してもらっているので、これを家庭にたとえると、国債を発行するということは、家の人からお金を借りているということと同じで、世帯では借金とはなりません。要するに、国単位では借金をしていることにはならないということです。世界の中で、国債を購入する国内の比率が高いのは日本をのぞけば、カナダくらいのものです。

これが、ギリシャあたりだと、日本と全く反対で、対外金融負債がかなりあり、国債も国内ではなく、外国から買ってもらっていたということです。日本とは、全く異なるということです。

先ほど述べたように、地震が発生した後でも、国債の金利は安定しています。そうであれば、今回の地震における復旧ば増税などとんでもないことで、地震国債によって賄うべきという結論になります。

もし、増税するということなれば、デフレスパイラルにまた巻き込まれることになってしまいます。さて、日本国民はどういう道を選択するでしょうか?ヒントになるものとして、最近の名古屋市議選で、減税日本が大躍進しています。

これは、象徴的です。これは、地震が起きた直後の選挙です。おそらく、日本は、地震の復旧にあたっては、減税、地震国債の発行でのぞみ、急速な復旧を目指し、さらには、デフレ克服まで狙っていくことが、最も良い方法であると考えます。増税は最低の下策です。

以上のように、財政破綻する国の通貨が、どんなことがあっても、高くなるなどという矛盾はあり得ないなど、今回の地震により、マスコミなどがほとんど報道しなかったようなことや矛盾が、明るみに出てくると思います。


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