[伊藤 博敏]
絶体絶命のピンチを迎えたシャープは、なりふり構わぬリストラと台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業との資本・業務提携、及びそれを条件とした銀行支援で、なんとか乗り切ろうとしている。
【私の論評】まともな金融政策で、さっさと円高・デフレを終わらせろ!!
上の記事の結論を以下に掲載しておきます。
不況の処方箋は「財政政策」と「金融政策」
実は、この構造不況からの脱出には、処方箋がある。
米経済学者のポール・クルーグマンは、最近、上梓した『さっさと不況を終わらせろ』のなかで、「不況期には財政政策と金融政策の二つを大胆に発動せよ!」と、繰り返し述べている。話を金融政策に限れば、大胆に金融緩和、円の流通量を増やし、相対的な円安に持って行けばいい。
日銀批判の急先鋒の高橋洋一・嘉悦大学教授は、「5年前の1ドル=120円、せめて100円くらいの為替レートにすれば、国際市場で活動する日本企業は復活できる」(『夕刊フジ』8月24日付)と書く。
相対的な円安に持っていくことができれば、シャープもソニーもパナソニックも海外メーカーと互角に戦え、しかも為替デリバティブに悩む中堅・中小企業も激減する。
処方箋は明らかだが、健全財政の財務省は野田佳彦首相を口説いて「不況下の増税」を達成、日銀は白川方明総裁のもと円高政策を継続する。
政局にしか興味のない政治家の体たらくもあって、このままでは日本は、奈落の底に落ちるしかない。
今日本がやらなければならないことは、はっきりしすぎています。あまりにも簡単すぎて、高校生にも理解できるくらいです。高校の政治経済の教科書には、不況の際の処方箋は、政府による積極財政政策と、中央銀行による金融緩和策です。クルーグマンの『さっさと不況を終わらせろ』に関しては、このブログにも掲載しましたが、クルーグマンも結局当たり前のことをせよと説いているだけです。
後に、50円札の肖像ともなった高橋是清 |
第二次世界大戦中のアメリカの戦意高揚ポスター |
日本は、統計上では、平成10年より、完璧にデフレ状況になっています。デフレ傾向の期間も含めるとすでに20年デフレ傾向にあります。その間、政府が緊縮財政を行なってきましたが、日銀が、金融引締めばかりやってきたことも事実です。
日本では、特に日銀による金融引締めは、異常ともいえる状態です。爆走状態です。リーマン・ショックで、他国が大幅に増刷しても、日銀はしませんでした。他国が、増刷して、日本だけが増刷しなければなにが起こるかといえば、円高です。何も難しいことはありません。簡単な理屈です。
さらに、昨年の大震震災があって、復興需要が高まり、円の需要が高まっている最中でさえ、日銀は、増刷しませんでした。円需要が高まっている最中に、増刷しなければ何が起こるかといえば、円高です。これも、何も難しいことはありません。全く簡単な理屈です。小学生にも判る簡単明瞭な理屈です。
増刷すると、ハイパーインフレになると主張する愚かな、リフレ反対論者がいますが、デフレとは、貨幣流通量が減っているいるということです。そのときに、増刷して、貨幣の流通量を増やしたら、インフレ傾向になるのは当然ですが、それをもって、ハイパーインフレになるというのは、全くおかしな理屈です。実際、多くの国が、リーマン・ショックのときに、大増刷を行いましたが、これらの国々がハイパーインフレに見舞われたという事実はありません。
第一次世界大戦後のドイツでのハイパーインフレ(道路にお札が捨てられている) |
これだけ、日本国内の産業を痛めつけても、なお、増税、円高、デフレ政策にひた走る、政府、日銀を評して、経済評論家の上念氏は、大東亜戦争に突入したときの政府である政府にたとえ、「近衛政権末期症状」と揶揄しています。
私も、その通りだと思います。現在、米国も、EUも中国も、景気が下向き、当面よくなりそうもありません。まさに、世界同時不況目前という状況です。世界同時不況にみまわれて、それでも、日銀が、円高・デフレ金融政策にひた走るというのであれば、これは、外国に対して、日本の富の簒奪を幇助するということであり、もう国民に対する反逆行為と断定せざるをえません。
そう思うのは、私だけでしょうか?それから、増税に関しては、天の声があり、増税推進派に対する鉄槌がくだされた模様です。これは、何かといえば、あの最大の増税推進派の財務次官の勝栄二郎氏の9月退任が決まったことです。
最近の国会の動き、私は、こうした動きとは無関係ではないと思います。とにかく、来年の時点で再来年の増税阻止が時の政府によって、なされるべきです。勝氏退任は、これに連動した動きであると思います。勝氏が来年も財務次官を続けていれば、さらに、増税の正当性を強調することになるため、これを排除する動きがあったものと思います。
今後、世界同時不況に見舞われたときにも、日銀が、デフレ・円高政策を堅持すれば、大変なことになります。そんなことは、とうてい許容されるものではなく、勝財務次官にくだされたような、鉄槌が、日銀および、白川総裁にも下されることになると思います。
そうして、私たちは、次の選挙では、増税反対、日銀法改正を訴える政党や、政治家に対して票を投じるべきと思います。
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