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2013年2月28日木曜日

左脳がアナタに仕掛ける「5つの罠」―【私の論評】 あなたは分析麻痺に陥っていないか? ポスト・モダンの現在において最も重要なのは、知覚だ!!

左脳がアナタに仕掛ける「5つの罠」:



アナタの独創的なアイデアは、自分の左脳によって奪い取られているかもしれません。 たいていの人は、これまでの経験をもとにして、段階的にものごとに取り組むほうが安心できます。整然とコントロールされ、秩序立った状況、論理的な世界が好きなのです。そして、バラバラで統制がとれていないと不安になります。

「たしかな裏付けがある枠組み」の外へと踏み出すなんて、非生産的で時間の無駄だ、と思うわけです。自分はそういうタイプだというアナタは、これまで多くの場面で、そうした考え方が役に立ってきたのでしょう。ただし、そこには創造性という要素が抜け落ちています。 実際のところ、左脳型の直線的思考に慣れ親しんだアナタは、自分は創造的な人間ではないと信じ込んでいるのではないでしょうか? 左脳の仕掛ける罠についてお話しする前に、右脳vs左脳という理論について紹介しましょう。

この記事の続きはこちらから!!


【私の論評】 あなたは分析麻痺に陥っていないか? ポスト・モダンの現在において最も重要なのは、知覚だ!!



上の記事では、左脳、右脳の働きを軸にして、創造性に関して述べていました。そうして、創造性を妨げる左脳の罠について説明しています。詳細については、上の記事をご覧いただくものとして、その罠を以下に掲載します。
■ 左脳がアナタにしかける5つの罠
1.視野を狭める
2.直線的=安全
3.論理と直観
4.パーツと全体像
5.「クリエイティブな人間ではない」と信じさせる
そうして、最後はこのように締めくくっています。
左脳人間の皆さん、騙されてはいけません。右脳思考を呼び込んでくれる行動に、積極的に挑みましょう。左脳型思考パターンの長所にクリエイティブな右脳思考が加われば、鬼に金棒。今の社会で成功するための、なくてはならない秘密兵器になるはずです。
さて、この締めくくり確かに重要な示唆をしているとは思うのですが、私達は、右脳と左脳を自由自在に使い分けることなどできません。では、どのようにして右脳を使ったり、活性化させるかについては具体的な示唆はないと思います。

私は、これに対する具体的な示唆を試みようと思います。

これに対する具体的な示唆としては、やはりマネジメント的なアプローチが良いと思います。このブログでも、以前にも指摘したように、心理学や脳科学における最新発見のようなものに関しても、実は学問的には証明されていないことでも、実務的にそのようなことに注目して実務的な解決方法が編み出されている場合が多いです。

ポスト・モダンの建築物

そんなことから、昔からマネジメント上でいわれてきた、モダンとポスト・モダンの考え方を掲載します。

ポストモダン(英: Postmodern)とは、「モダン(近代)の次」という意味であり、モダニズム(近代主義)がその成立の条件を失った(と思われた)時代のことです。ポストモダニズム(Postmodernism)とは、そのような時代を背景として成立した、モダニズムを批判する文化上の運動のことです。主に哲学・思想・文学・建築の分野で用いられる言葉です。ポスト・モダンそのものについては、ここでは本題ではないので、詳細を知りたいかたは、下に参考図書をあげますので、それを購読されるか、ネットで調べていただきたいと思います。

さて、会社などで仕事をするにしても、モダニズム的な仕事の仕方、ポスト・モダニズム的な仕事の仕方があると思います。これは、まさに上記でいうところの、左脳による仕事の仕方、右脳による仕事の仕方に相当するものと思います。どちらが欠けても、仕事はうまくいきません。

ポストモダンのアート アンディ・ウォホール

モダニズム的仕事の仕方としては、仕事上で何かを改善・改革するときに、対象を見る場合に、分析を丹念に行うというアプローチです。分析とは、何かの対象を細かく分けて、仔細に調べて、最終的にそれを統合すれば、すべてを理解できるという考え方です。

たとえば、時計を持ってきて、それを細かく分解し、全部を調べてしまえば、その時計のすべてを理解できるということです。確かに、時計ならば、細かく分解して、どのような部品で成り立っているかを知ることができます。このような考え方がモダニズムであり、確かにこのアプローチはかなり成果をあげ、現在の西洋文明の礎になったと思います。

しかし、時計や物体の運動のような場合は、いくら複雑に見えてもこのようなアプローチでその本質を知ることはできますが、複雑な社会現象や、人体などの複雑で高度なシステムではそのようなわけにはいきません。たとえば、人がつくった半分のパンはなりたっても、そうではない半分のあかちゃんはなりたちません。

人体をいくら細かく分析しても本質はみえてこない

人体を細かく分解して、仔細に調べたとしても、複雑なシステム体系としての人体は理解できません。人体を解剖して、皮膚、欠陥、爪や、内蔵などを細かく調べただけでは、総体としての人体の本質を知ることはできません。爪や内蔵レベルではなくさらに細かく、分子レベルで調べる方法として、分子生物学なども現在はありますが、分子生物学だけで、人体の本質を知ることはできません。だからといって、さらに細かく、人体を構成している原子や量子を調べたとしても、人体の本質はみえてきません。ますます、わからなくなることでしょう。

では、複雑な社会現象を理解したり、人体を理解したりするには、どうしたら良いのでしょうか?それは、知覚です。ポスト・モダニズムでは分析ではなく、この知覚が重要視されるようになったのです。

では、知覚とは何かといえば、動物が外界からの刺激を感じ取り、意味づけすることです。 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、体性感覚、平衡感覚などの感覚情報をもとに、「熱い」「重い」「固い」などという自覚的な体験として再構成する処理です。人間の場合だと、さらに、文脈を構成するとか、さらに高度な概念を構成する処理をすることです。

それでは、マネジメトでは知覚に関してどのようなことがいわれているのか、マネジメントの大家ドラッカー氏論考を以下に紹介させていただきます。

ポストモダン(脱近代)社会の七つ作法・論理ですべてが分かるわけではない

ドラッカー氏は彼の著書『変貌する産業社会』において、モダンからポストモダンへの重心の移行を宣言したとき、「新たなポストモダンが、手段と道具を持ち合わせることなく、われわれの行動を事実上支配している」と語っています。

しかし、多少なりとも丁寧に見ていくならば、その後のドラッカー氏の著作の多くが、われわれにこのポストモダンのための手段と道具を与えるための作業だったことがわかります。

実に、3分の2世紀以上にわたって書かれた全著作において、折に触れドラッカー氏が教えてくれたポストモダンのための方法論をまとめてみるならば、次の七つの作法ということになるでしょう。これは、以前のブログにも掲載したことなのですが、本日は再び装いを新たに掲載させていただきます。

1.見る 
第一に、「見る」ことです。全体を「見る」ことです。全体を命あるものとして「見る」ことです。しかも緻密に「見る」ことです。しらみ潰しに見ていくことです。 
イノベーションの種としての機会を探るべく、ドラッカーは1000件を越える成功事例を調べたといいます。それは、ニューヨーク大学大学院の夜のセミナーで行われました。しらみ潰しのローラー作戦でした。 
そして、見ることの補完として、「聞く」ことです。人は同時に2点に立つことはできません。他の者が「見る」ものを「聞か」なければなりません。自らの強みさえ、誰かに「聞か」なければわかりません。アウトサイド・インサイダーとしてのコンサルタントとしての値打ちも、ここにあります。
2.わかったものを使う 
第二に、「わかったものを使う」ことです。とくに、当初予期せずにわかったことを使うことです。原因や理由はわからないままでもよいのです。学者に付き合って原因の解明を待っている暇はありません。いずれにせよ、理論を体系化したとしても創造することはできません。重要なことは、わかったことを使って行動することです。 
「何が起こりそうか」を考えて行動してはならないのです。「すでにわかったこと、すなわち起こったことをもとに行動せよ」ということなのです。「そのわかった事に自らの強みを合わせよ」ということです。ということは、「トレンドを使え」ということでもあります。 
さらにもっと重要なこととして、「すでに起こった未来を使え」ということです。何事にも、インパクトをもたらすにはリードタイム、あるいはタイムラグがあります。このリードタイムが未来を教えてくれるのです。
3.基本と原則を使う  
第三に、基本あるいは原則となるものを知って使うことである。 
ただし、それらのものを一律に適用すべき万能の原理としてではなく、補助線として使うことである。あらゆる事業に、「世のため人のため」という補助線を引いてみることである。あらゆる意思決定に「世のため人のため」という補助線を引くことである。組織構造についても、透明さ、平板さという補助線を引いてみることである。
4.欠けたものを探す  
第四に、欠けたものを探すことです。キャップを探し、ニーズを見つけることです。「宇宙には何らかの秩序があるはず」との確信をもつことです。「すべては目的が規定する」と楽観することなのです。 
元素の周期律表を発見したメンデレーエフは、見えないものの存在とその位置づけを明らかにしただけでなく、そこから、すでに見えているものの位置づけを明らかにしました。すなわち、全体の形態を明らかにしました。 
未知なるものは無数にあります。解決が喫緊であるにもかかわらず、その全容が知られていない問題はたくさんあります。大事なものの多くは目に見えません。現実は目に見えない大事なものによって支えられています。それらのものを、いま見えるものとの関係のもとに明らかにしていくことが、「未知なるものの体系化」です。 
それは、見えないものを明らかにするのみならず、見えるものの意味を示します。ドラッカーのイノベーション論の根底にあるのは、この方法にほかなりません。そして、ドラッカーによる最初にして最大のイノベーションがマネジメントの発見でした。 
加えて、ドラッカーのマーケティング論の根底にあるものも、この方法にほかなりません。ドラッカーが事業の先を見るうえでカスタマー(顧客)よりも大事だといっているノンカスタマー(非顧客)こそ、そもそも体系化すべき未知なるものだったのではないでしょうか。
5.自らを陳腐化させる 
第五に、あらゆるものが陳腐化するがゆえに、自らが陳腐化の主導権を握ることです。とくに乱気流の時代にあっては、自らがチェンジ・リーダーとなることです。 
デュポンは品質、用途、価格において、自らの製品を陳腐化していくことにより、業界リーダーの地位を不動にしてきました。 
この自らを陳腐化させるという努力を怠ったために、他社によって陳腐化させられてしまった企業や事業は枚挙にいとまがありません。しかも、他社を陳腐化させることに成功した企業が、その成功に自ら学ぶことをせず、今度は第三の企業によって陳腐化させられつつあります。
6.仕掛けをつくる 
第六に、「仕掛け」をつくっておくことです。しかも成功に焦点を合わせ、成功を慣習化してしまうことです。今日一般に目にする失敗と不調についての報告に加えて、成功と好調についての報告をまとめ、それらについて検討することです。 
あるいは、「あらゆる事業活動について目標を定め、結果と参照する」というフィードバック分析を習慣化することです。
さらには、理想を現実化するために、「何をもって憶えられたいか」を考えることを日常化することです。 
ドラッカーは「ぜひともアクションプランをつくれ」といいます。「緻密にアクションプランをつくり、状況の変化に一歩先駆けて修正していけ」といいます。歴史上、ナポレオンのアクションプランほど緻密な作戦計画はなく、ナポレオンのアクションプランほど修正されたものはありませんでした。 
ただし、この「仕掛けをつくる」という作法には、「拘束衣や足枷になりかねない仕掛けはつくらない」という心得が付随します。アメリカ建国の父たちは、当初、憲法の草案に人権条項を入れていませんでした。それは、人権条項を抜きでは批准せずとの各植民地からの要求があって、仕方なく入れたものでした。ただひとえに後世を縛りたくないからでした。 
ドラッカーは『産業人の未来』において、「アメリカはこの戦争に参戦するだろう。そして勝つだろう。しかし、勝つためだからといって国家統制的なことは何もしてはならない。それは戦後も続くから」と書いていました。 
「戦争が終わる日とは、一つの旅が終わる日でも、一つの旅がはじまる日でもないのだから」といっていました。「それは馬を替える日にすぎないから」といっていました。日本では戦争が終わって半世紀もたってから、戦争中にはじめたものの見直しを行っています。
7.モダンの手法を使う
チャップリンのモダンタイムズより
そして第七に、限界をわきまえつつ、モダンの方法を使うことです。論理と分析を使うことです。何しろ350年間磨きをかけてきた方法です。それも単に think するだけではありません。 Think through すること、つまり徹底して考えることです。ドラッカーの口癖が、この think throughです。 
これらがポストモダンの作法です。しかし当然のこととして、このポストモダンの作法も人それぞれのものです。人それぞれにドラッカー直伝のものです。しかもそれぞれに発見、発展、蓄積していくべきものです。
七つにまとめる人もいれば、九つの人もいるでしょう。それぞれがそれぞれの作法を武器に、「世のため人のため」に行動することが、組織社会における新しい慣習の形成をもたらすことになります。
ポストモダンの作法は手間暇のかかるものばかりです。そもそも、ポストモダン自体を論ずることが困難です。ポストモダンが意識されて50年、あるいは70年にすぎないからか、それとも本質的に論じにくいものなのかはわかりません。

しかし、この世界とは、もともとがそのようなものと覚悟すべきであると思います。因果の太い線だけをさぐるというモダンの方法が、そもそも無精者のする仕事だったのかもしれません。解析幾何学で普遍学を開拓しようとすることに無理がありました。世の中、捨象してよいものはありません。大雑把にくくってよしとすることのできるものはありません。


とにかく、論理の世界だけで、分析だけを重視していたのでは、分析麻痺に陥るだけです。たとえば、あなたが清涼飲料水を売る会社に勤めていたとして、過去に売れたものだけを分析することは簡単ですが、それだけではオロナミンCや、ポカリスエットや、最近売れているエネジー系ドリンクもトクホ系のコーラも、生まれてこなかったでしょう。分析も大事ですが、分析だけではイノベーションは生まれてこないのです。やはり、知覚が重要なのです。分析と知覚は、イノベーションの両輪であり、どちらが欠けても満足なイノベーションはできないということです。


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