国連安全保障理事会は先週末、11月末に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮に対する新たな制裁を決議した。石油精製製品の対北輸出上限を年間50万バレルに引き下げることが主な内容だ。
本欄は国連安保理が8月に決めた上限枠200万バレルは中国の2016年の対北供給量に匹敵することから制裁効果に疑問を呈してきたが、トランプ政権も同じ見方を持っていたのだろう。今後の問題は、中国の習近平政権がきちんと履行するかどうかだ。
米政府は中国などの対北石油製品輸出は年間450万バレルと推定し、今回の決議でその9割が削減されるという。50万バレルまで削減するためには、ロシアや中東など中国以外からの石油製品の対北積み出しルートを全面封鎖するのに加えて、中国も16年比で4分の1以下まで出荷量を抑えるしかなくなる。
北朝鮮と国境を挟んで陸ルートで結ばれている中国からは闇取引で石油製品が高い価格で供給されてきたが、これからは習政権がそうした裏ルートを厳しく取り締まらない限り、米国から対中制裁を受ける恐れがある。
中国は核実験やミサイル発射を繰り返す北に対し、今年春までは貿易を拡大してきた。国連制裁そのものが「大甘」だったからだ。グラフは中国の対北石油製品輸出と、北の最大の外貨獲得源である石炭の対北輸入の推移である。一目瞭然、オバマ米政権までは北京の対応はまさに馬耳東風といったところだった。
グラフは中国側が発表する税関統計が基本になっており、闇ルートは含まれないが、正式ルート上は中国の対北石油製品輸出、石炭輸入とも、3月頃から急減傾向にある。米フロリダでの米中首脳会談を機に、中国側の対北政策が徐々に変化したことをうかがわせる。
トランプ大統領は習氏に対し、大統領選で公約していた対中高関税の適用を棚上げする見返りに対北朝鮮政策での対米協力を強く求める一方で、国連制裁破りの中国企業や地方金融機関に対し、制裁を科してきた。口先だけで、ほとんど対中制裁しなかったオバマ前政権と違って、トランプ政権は強硬策を辞さない態度を鮮明にしている。
年明けの焦点は中朝国境の緊迫化だ。北がさらに核実験・ミサイル発射を繰り返すようだと、トランプ氏は石油製品に続き原油の対北供給禁輸を習氏に強く迫るだろう。習氏がそれに応じない場合や、制裁の抜け穴封じをしないときは、トランプ氏は中国の国有大手商業銀行への金融制裁カードを切るだろう。追い込まれるのは金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記ばかりではない。習氏もそうだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)
【私の論評】習近平が米国の要求を飲むのは時間の問題(゚д゚)!
中国は、米国のトランプ大統領の言うことを最後には絶対に受け入れることになります。それには、主に2つの理由があります。まず一つは、中国は米国と絶対に戦争できなということがあります。二つ目は、米国が実質的に世界の金融を支配しているということです。
一つ目の中国は米国と絶対に戦争ができない理由は明らかです。軍事力では、中国は米国の足元にも及ばないということがあります。
米国のあらゆる軍事情報からも、中国が米国と戦争する能力を持っていないことは明白です。
米海軍は、中国が南沙諸島付近で軍事的な挑発行動を行った場合、米海軍のイージス艦から発射するクルージングミサイル1発で人工島を木っ端みじんにするでしょう。
米海軍は、中国が南沙諸島付近で軍事的な挑発行動を行った場合、米海軍のイージス艦から発射するクルージングミサイル1発で人工島を木っ端みじんにするでしょう。
米海軍イージス艦 |
中国が本土の海南島にある海軍基地から潜水艦を送り込もうとすれば、米国がフィリピン海溝に展開しているロサンゼルス型原子力攻撃潜水艦の餌食になるだけです。
中国は、「空軍部隊を南沙諸島に進出させる」と言っています。しかし、グアム島と沖縄に配備された米空軍のステルス性戦闘爆撃機F22数機が管制機E3Cの制御のもと迎撃を行えば、中国空軍の航空機が数十機、束になってかかっても撃ち落とされます。
中国は、「尖閣諸島は自国の領土である」と主張し、東シナ海に防空識別圏と称する不法な空域をもうけて外国の航空機の進入を阻止すると主張しました。しかし、米軍はほぼ毎日、B2爆撃機と新型B52をグアム島から発進させ、防空識別圏の上空をこともなげに往復していました。
中国が、米国の空母を西太平洋から追い出すために開発した「空母キラー」と称するクルージングミサイルDF21も速度が遅く、米国のイージス艦が容易に撃墜できることが判明しました。
DF21 |
DF21はマッハ10で米軍は撃ち落とせないなどと喧伝されていましたが、実際には大気圏突入後の着弾場所の最終調整として最終段階で減速する必要があり、米艦隊側の迎撃が困難となるマッハ10での空母突入等を行えるわけではありません。最終段階で減速するというのであれば、マッハ10のミサイルなど日米ともに開発可能です。
ロシアから買い入れて改造し、鳴り物入りで登場させた空母「遼寧」は、南シナ海で試運転を一回しただけで、エンジン主軸が壊れて使い物にならなくなりました。その後何とか改修したようですが、未だに中国の工業力では、空母を動かす二十数万馬力のエンジンを製造できないのです。
日本では、最近護衛艦「いずも」を空母化する話もでていますが、中国は「いずも」のような護衛艦をつくる能力もないのです。
次に、米国が実質的に世界の金融を支配していることも、中国にとってはかなりの脅威です。
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。
当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。
当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。
米国の金融街 ウォール・ストリート |
米国に金融制裁を実施されたら、最近は輸入も多くなっている中国の食料事情は逼迫するでしょうし、食料以外にも様々な物資の供給に支障をきたすことになります。
だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。
米国に本格的に金融制裁をされると、中国は資源を購入することもできず、戦闘機や軍艦を出動させることもできなくなります。これでは、最初から勝ち目はありません。
これは米国の脅威になるなどドヤ顔で吹聴する人もいますが、これも中国の大きな弱みとなります。米国がこれを凍結すれば、一気に中国は127兆円を失うことになります。
そもそも、元に信用があれば、中国は米ドルを大量に保有したり、米国債を保有する必要などもありません。逆のほうからみれば、中国元は中国が米ドルや米国債を大量に保有しているからこそ、一定の信用が保たれているのです。
その原則が崩れれば、元の信用は一気に崩れ、中国の金融は崩壊します。
以上の2点からいって、中国は米国の要求をいずれ聴くしかなくなります。
今年も今日を残すのみとなりました。本年中はお世話になりました。良いお年をお迎え下さい。
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