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2009年4月20日月曜日

日立、“総合”の看板下ろす 公的資金による資本注入も検討-やはり選択と集中が肝要か?

日立、“総合”の看板下ろす 公的資金による資本注入も検討(この内容すでにご存知の方は、この項は読み飛ばしてください)
 就任記者会見で、政府の新制度を活用した資本増強の検討を表明する日立製作所の川村隆社長=20日午後、東京都千代田区 左写真は、就任記者会見で、政府の新制度を活用した資本増強の検討を表明する日立製作所の川村隆社長=20日午後、東京都千代田区。

 日立製作所の川村隆社長は20日、4月1日の就任後、初めて記者会見し、「総合電機か ら軸足を移し、安定的な収益構造にする」と語り、将来的に家電から原子力発電までを手掛ける“総合”の看板を下ろす考えを表明した。また、公的資金による 資本注入について「いくつかの分野で検討している」と述べた。

 幅広い事業分野を強みにしてきたが、世界同時不況で総崩れとなり、平成21年3月期決算で7000億円の連結最終赤字に転落する見込み。不採算事業からの撤退や他社との事業統合に加え、公的支援も活用して業績の立て直しを急ぐ。


 川村社長は会見で、「赤字は悪。薄型テレビなどコンシューマー(消費者向け)事業は他社との提携も含めた抜本的改革を図る」と強調。会見後、記者団に「総合電機は重い看板。時間はかかるが、そういう方向付けをした」と“脱・総合”を明言した。

 日立は、62歳の吉川一夫前社長が退任し、7歳年上でグループ会社会長に転出していた川村氏が社長に就く異例のトップ交代による新体制となった。

  川村社長は、政府が一般企業向けに創設する資本注入制度の活用を検討している分野について「コモディティー(汎用商品)など」と述べた。今年7月 に分社化するデジタル家電事業などを念頭に置いているとみられる。また、三菱電機との共同出資の半導体子会社で、NECエレクトロニクスと経営統合交渉し ているルネサステクノロジなども対象となる可能性がある。

 ただ、日立本体への公的資金による資本注入については否定。その上で、巨額赤字の計上で財務内容が悪化することから、「増資も選択肢」と述べ、自力での資本調達も検討していることを明らかにした。

 日立はこれまで、“総合”の看板に強くこだわってきたが、不採算事業からの撤退やグループ企業の再編で後手に回ったとの批判が出ていた。未曾有の不況で、あらゆる分野の業績が悪化し赤字が膨らむという総合の弱点が露呈する中、今後は“選択と集中”へとかじを切る。

  総合電機メーカーとは…発電所などの大型電力機器や鉄道、航空などを扱う「重電事業」と、テレビや冷蔵庫などの家庭用電子機器からなる「弱電事業」の両方 を手掛ける電機メーカーの総称。日本では日立製作所、東芝、三菱電機の3社が代表格。富士電機は総合電機メーカーの看板を下ろしている。家電が主体のパナ ソニックやソニーなどは弱電メーカーと呼ばれる。

やはり選択と集中が肝要か?

日本語では、会社とひとくくりにしていいますが、英語ではコーポレートとカンパニーなどと分けていいます。コーポレートとは、判りやすく言えば統轄 会社とうことで、自らは事業はせず、複数の事業会社(カンパニー)に事業を実施させみずからは、事業会社の統轄を行います。カンパニーは、事業会社であり、文字通り事業 を遂行する会社です。カンパニーは通常あまり大きな会社ではなく、小さな統轄部門を内包しています。

日立は数年前、大規模な組織改革を行っていました。まさに、コーポレートの典型ともいうべき組織であり、コーポレートとカンパニー(事業会社)を別 組織にしていました。私自身も、将来的に会社が大きくなれば、こういう組織体にすべきであり素晴らしいお手本になると考えていました。そのため、今回の日 立の業績悪化はある意味ではショックでした。

日立の組織改革については、以下のURLを参照してください。

日立製作所の分権経営とガバナンス(2001年 (株)日立製作所)

http://www.works-i.com/pdf/hitachi_010719.pdf

コーポレート型の組織の利点は、まずは、世の中の趨勢というか、継続的な変化に十分耐えられるということと、今回の金融危機のような断続的(急激)な変化にも耐えられるということが考えられます。

コーポレートでは、いわゆる統轄や企画などを主に行い、いわゆる事業は行いません。統轄としては、複数ある事業会社への資源配分があります。人、資 金、情報などを各事業会社に割り振るということです。業績の良い事業会社には多く資源を割り振ったり、業績の悪いところには資源を少なめに割り振ったり、 ばあいによっては、資源配分を中止してその事業会社を解散して、その会社の資源を他に割り振ったりします。

また、コーポレートにおいては、事業会社の事務なども集中して行います。そのため、事業会社は、事業や営業に集中できるわけです。こういう組織にあ りがちなのは、コーポレートの肥大化です。そのため、コーポレートの人員の比率は事業会社もあわせて20%以内が望ましいとされています。

事業会社からすると、常に自己革新していかなければ、コーポレート側から存在意義を問われるようになため当該事業の枠の中でも常に自己革新を遂げるようになります。

また、コーポレートでは新たな事業の企画を行い、新たな事業会社にその事業を実施させたりします。こうすることにより、今回の金融危機などのような 急激な変化にあっても十分耐えられるはずでした。しかし、典型的なコーポレート型の組織である日立の業績が悪化してしまいしまた。

これは、どういうことなのでしょうか?まだ、詳細は明らかではないので何もいえないですが、社長が「家電から原子力発電までを手掛ける“総合”の看 板を下ろす」という考えを表明していることから、やはり、総合的な事業展開が仇となったのだと思います。継続的な変化であれば、何とかなったのでしょう が、今回の急激なしかも、それまでとは全く環境がことなってしまうような断続的な変化には総合化では対応できなかったのだと思います。

いくら、コーポレートの体制をとっていたとしても、抱える事業分野が広すぎて、十分統轄ができず、不採算事業が多すぎたということだと思います。このような状況では、いわゆるコーポレートという組織の強みが発揮できなかったのだと思います。

これに対する処方箋はやはり「集中と選択」ということだと思います。

「集中と選択とは」自社の得意とする事業分野を明確にして、そこに経営資源を集中的に投下する戦略のことをいいます。 1980年代にGE*1CEOであった、ジャック・ウェルチ氏の戦略として有名です。ウェルチ氏は複数事業会社が行っている事業のうち、ナンバー1ないしナンバー2の事業に注力する一方で、弱小事業は他企業へ売却ないし廃止等のリストラを行うというものです。GEはこの戦略に基づき、事業の再編成に伴う資源の再分配を行うことで、業績を飛躍的に向上させました。我が国企業は、1980年代バブル経済期はむしろ多角経営が是とされ、この経営手法が注目されるようになったのはバブル崩壊後の1990年代半ば過ぎでした。

今回の日立の不振は、経営陣が今回の金融危機のような急激な変化が起こった際に、どのように立て直すかを普段からシミレーションしておけば、おのず と「集中と選択」を普段から検討しておくということで防ぐことができたかもしれません。いずれにせよ、今後の日立グループの動向見守っていきたいと思いま す。

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