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2017年11月18日土曜日

潜水艦の時代は終わる? 英国議会報告書が警告―【私の論評】水中ドローンが海戦を根底から覆す(゚д゚)!


大量のドローンから潜水艦は逃げられない

海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」
 質・量ともに圧倒的な中国の軍拡と、自衛隊の予算・人員の無駄遣いによって、日本の対中軍事優位性が日々減少している。そうした中、残された数少ない対中優位性の1つが日本の潜水艦戦力である。中国は対潜水艦作戦能力が低く、一方、日本の潜水艦は静粛性が高いので、日本がこの点では有利というわけだ。

 しかし、英国のシンクタンクが議会の要請に応じて作成した報告書によれば、小型偵察ドローンが潜水艦の優位性である「ステルス性」を無力化していく可能性が出てきているという。今回はその内容を紹介しつつ、意味するところを論じたい。

何千もの無人機が潜水艦を探索

2016年3月、英国の英米安全保障情報会議(BASIC)は、科学ジャーナリスト、デイビッド・ハンブリング氏による「対潜戦における無人兵器システムの網」と題する報告書を発表した。報告書の作成を求めたのは英国議会である。英国が潜水艦型核ミサイルシステムを維持すべきかどうかを検討する材料として用いるためだった。

 ハンブリング氏の報告書の概要は、以下の通りである。

 これまでの「対潜水艦戦」(以下、ASW)は、少数の艦艇および有人機によって実行されていた。これらの仕事は、広大な荒野で逃亡者を探す少人数の警察のようなものだった。最も可能性の高い逃走ルートや隠れ家に戦力を集中させて、幸運を祈るだけであった。

 しかし、安価な無人機の登場によって、逃亡者の逃走は不可能になる。一人ひとりの探知能力は低いものの何千人もの応援が警察の側につき、隅から隅まで全域を探索するようになるからだ。

 小型偵察ドローンが米軍を中心に増加している。精密攻撃が可能な小型無人機もイスラエルなどで登場してきている。

 しかも最近の米国防総省は、大量の小型ドローンを「群れ」として使う研究を進めている。例えば、米海軍は「コヨーテ小型偵察無人機」というASW対応の小型無人機を開発した。コヨーテ小型偵察無人機は哨戒機から投下されるや飛行形態に変形し、熱センサーで水温を測定し、風速・圧力などの様々なデータを収集可能する。

 そもそも偵察機を飛ばす必要はなくなるかもしれない。米海軍が開発した小型水上無人機「フリマ―」は、今までASWの主力であったソノブイ(対潜水艦用音響捜索機器)の代替になる可能性がある。

 また、やはり米海軍が開発した「セイル・ア・プレーン」は、飛行機であると同時に偵察時は水上で帆を使って帆走し、太陽発電と波力発電で充電できる偵察機である。

 水中グライダー式の小型無人機もある(水中グライダーは推進機を持たず、浮力を調整することで水中を上下しながら移動する)。大阪大学の有馬正和教授が開発した「ALEX」は低コストの水中グライダーである。有馬教授は、1000ものALEXのような無人機の群れで構成される巨大な共同ネットワークで海洋研究調査を行うことを提唱している。

 なお、現在、水中グライダー研究でもっとも重要な国は中国である。中国は世界初の水中無人グライダー「シーウィング」を瀋陽研究所で開発している。また天津大学のプロジェクトでは、リチウム電池により年単位で稼働するとされる水中グライダーを開発した。西安工科大学も、波力発電で稼働する水中グライダーの開発に成功している。

 しかも問題なのは、近年は水中センサーの発達が目覚ましく、小型無人機がソナー、磁気探知、熱センサー、光センサー、レーザー探知装置など、あらゆるセンサーを搭載できるようになったことである。しかも、米中が開発しているタイプはいずれも何時間、何日も行動可能だからである。

 現在の「コヨーテ小型偵察無人機」の稼働時間は90分だが、燃料電池技術の進捗によりこれは近い将来に5倍になるだろうし、そのほかの技術は無限に小型無人機の飛行時間を延ばすだろう。例えばいくつかの小型ドローンは既に太陽発電や波力発電機能を備えており、80時間以上の飛行に成功したタイプもある。これは昼夜連続で飛行できるということである。また、海鳥が何千時間も連続飛行するメカニズムを応用し、風速を利用した研究も進んでいる。

きわめて遅れている日本のドローン対策

以上のハンブリング氏の論考は一体なにを意味しているのだろうか。

 それは、「National Interest」誌のマイケル・ペック氏が指摘するように、「高コストで壊れやすい潜水艦」と「低コストな小型無人機の群れ」という兵器システム間における争いが起こりつつあるということだ。

 この争いで、潜水艦が優位性を保つのは難しい。例えば、ヴァージニア級攻撃型原潜の価格は30億ドル(約3386億円)だが、小型無人機は5000ドル(約56万円)、30機の群れでも15万ドル(約1680万円)にすぎない。しかも、ヴァージニア級潜水艦は撃沈させられると乗員134名の被害が出るが、小型無人機は何機叩き落されても人的損失は出ない。どう見ても、中長期的に潜水艦システムが費用対効果で不利なのは間違いない。

 そして、これは我が国にとっても深刻な影響をもたらす。海上自衛隊の潜水艦が中国のドローンに追い回され、攻撃される日が来るかもしれない、ということだ。

【私の論評】水中ドローンが海戦を根底から覆す(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、ドローンと表現していますが、これに関してはシーグライダーという名称でこのブログに以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。これをご覧いただければ、いわゆる小型の水中ドローンのイメージがつかめると思います。
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さて、空中のドローンに関しては、まだ、想像の域を超えていない(ブログ管理人注:数ヶ月から数年空中を飛び続けるドローンという意味)のですが、それに良く似たものである、水中ドローンに関しては、すでに日本は開発を終えています。

それは、シーグライダーと呼ばれています。その外観はロケットに似ています。その小さな翼で水中を進み、毎時1キロメートル未満で非常にゆっくり移動します。電力消費量は極めて少ないです。
分解したシーグライダー ワシントン大学応用物理研究室が、
地球温暖化による氷河の変化を観察するため開発したもの
結果として、それは一度に何ヶ月も海中にとどまることができます。2009年には、一挺のシーグライダーが、一回のバッテリー充電のみで大西洋を横断しました。横断には7ヶ月かかりました。
シーグライダーのおかけで、科学者たちは、以前には不可能だった多くの事ができるようになっています。シーグライダーは、海底火山を観察することができます。氷山の大きさを測ることができます。魚の群れを追うことができます。
さまざまな深度で水中の汚染の影響を監視することができます。科学者たちは、シーグライダーを利用して海底の地図を作成することまでも始めています。
シーグライダーはすでに、数ヶ月も継続する任務を遂行することが可能になっています。ところが、日本の研究者は現在、SORAと呼ばれる太陽光発電を使ったグライダーを開発中で、この船は再充電のために2、3日間海面に出れば、その後作業を続けられます。結果として、必要な何年も海に留まることができます。
現在、シーグライダーを製造するにはおよそ15万ドル費用 (ブログ管理人注:当時の計算であり、現在はもっと安価に作成可能)がかかるとされていますが、それがなし得ることを考えれば、その費用は非常に小さいです。シーグライダーを使えば、企業は石油とガスの探索のために海底調査ができますし、政府は軍事情報を収集できます。

上で掲載したシーグライダーを水中に投下するところ
シーグライダーは敵に見つかることなく海面にいる船舶や、近くを通り過ぎる有人潜水艦を特定できます。日本では、軍事転用はまだのようですが、日本の技術をもってすれば、容易にできることです。
ブログ冒頭の記事では、日本がこのような水中ドローンを開発していることは全く触れられていませんでした。おそらく、これは軍事目的のものではないので、 日本では全く開発されていないかのような報道になってしまったのだと思います。

しかし、ドローンに積載する観測装置などを軍事用に変えればすぐにも軍事用にも使えます。それを考えると、日本のドローン対策が極めて遅れているとはいえないと思います。

それに、ブログ冒頭の記事では、海上自衛隊の潜水艦が中国のドローンに追い回され、攻撃される日が来るかもしれないなどとして、脅威を煽っていますが、一つ忘れていることがあります。いくら、ドローンで探査が簡単になったとはいえ、ソナーなどの観測装置が優れていないと、潜水艦の発見は難しいです。

ソナーに関しては、日米のほうが中国より未だかなり勝っていますから、すぐに「海上自衛隊の潜水艦が中国のドローンに追い回され、攻撃される日が来る」わけではありません。それよりも、ステルス性にかなり劣る中国の潜水艦のほうが先に発見されて、攻撃される可能性のほうが高いです。

さらに、掃海能力は日本は世界一です。掃海とは機雷などを除去することです。これは、以前このブログでも掲載したことがあります。水中ドローンなども掃海できるようになれば、日本にとって中国の水中ドローンの脅威も取り除ける可能性が高いです。一方中国の掃海能力はかなり低いので、日本が軍事ドローンを開発した場合、それを掃海することはできないでしょう。

ちなみに、海自は、すでに水中航走式機雷掃討具「S10」や機雷処分具「S7」といった水中無人機を使用して、掃海を行っています。これは、機雷を除去するための水中ドローンです。

日本の掃海母艦「うらが」
しかし、かつて大艦巨砲主義の時代から、航空機と航空母艦の時代に変わったように、現在兵器にもかつてないほどの大きな変化が起こりつつあることは認識しなければならないでしょう。

確かに、いずれ現在の潜水艦の任務のほとんどを水中ドローンが果たす時代がくるかもしれません。ドローンそのものが魚雷や爆雷になっているとか、偵察用ドローンと、攻撃用ドローンが共同するということも考えられます。そうなると、かつての潜水艦はいらなくなるのかもしれません。

水中ドローンだけではなく、空中のドローンのほうも、数ヶ月から数年も空を飛び続けることができるようになることでしょう。実際、Googleが数ヶ月空を飛び続けるドローンを開発中です。

Googleが太陽光で発電して自動飛行する大型のドローンの飛行試験をしています。このドローン飛行試験のプロジェクトは「Project Skybender」と呼ばれており、ミリ波による通信試験も並行して行っている模様です。

Googleが開発中の太陽光で発電して自動飛行する大型のドローン
運送用のドローンを開発していることでも知られるGoogleですが、Skybenderプロジェクトでは4Gの最大40倍高速な5Gの超高速モバイル回線をミリ波を使って空から提供することを狙っていると考えられています。

このようなドローンも軍事転用できます。軍事転用すれば、たとえば、日本であれば、常時数機の軍事偵察用のドローンを空中に待機させ、迎撃や地上のミサイルと連動すれば、北朝鮮のミサイルを常時迎え撃つ体制を築けます。

また、中国の尖閣への空域侵犯にも素早く対応できます。日本列島のまわりに、水中ドローンや空中ドローンを常時待機させて、それらを従来の海軍力と空軍力と結びつけることができれば、かなり防衛力が増すことが期待できます。

また、攻撃型空中・水中ドローンを開発することができれば、さらに防衛力を増すことができます。特にこれは、北朝鮮には有効です。北朝鮮は、防空能力や、対潜哨戒能力などほどゼロに等しいといわれています。狙った目標をかなりの確率で攻撃する事が可能になります。尖閣などを狙う中国に対しても有効です。

潜水艦や航空母艦は今でも有効な兵器ですが、いずれその優位もゆらぎ新たな時代に入ります。航空母艦は今でもステルス潜水艦に簡単に撃沈されてしまう恐れがあります。

地上から発射できる対空ミサイルによって、かつて航空兵力は存在意義を失いました。地上から発射できる比較的安価なミサイルによっても撃墜されるようになったからです。

かつて、敵が対空ミサイルを装備しているとの想定の軍事訓練行ったところ、敵地を攻撃した戦闘機のパイロットは一回の攻撃で、全員が平均で6回から7回も撃墜されたというシミレーションの結果がでた程です。

地上の対空ミサイルの発達によって、戦闘の様相が全く変わってしまったのです。このようなことから、先進国は脅威を感じ、ステルス戦闘機の開発に走り、今日に至っているのです。
携帯型地対空ミサイルM171ショルダー・ランチャーを構える兵士
水中ドローン、空中ドローンの発展はこれに似たようなことになるかもしれません。陸戦においても、小型ロボットが人のかわりをするようになります。

オスプレイや、F35など、数機購入することをやめて、このようなドローンの研究開発に振り向ければ、日本は十分に開発できる能力をもっています。

また、かつて日本の空母打撃群による攻撃や島嶼攻撃が、米軍の手本になったように、これにより日本が再び軍事力で世界の手本となれるチャンスかもしれません。高性能のドローンを開発し、それらを既存の兵力と組み合わせることにより、従来にはなかった高度な軍事力を開発できる可能性があります。

いずれにせよ、水中ドローンが海戦を根底から覆すのも間近になった今日、これから兵器に対する考えを根本的に改めなければならなくなったことだけは確かなようです。

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2016年3月6日日曜日

政府発表の統計を精査しない新聞の怠慢〜なぜ同じ「賃金」なのに10万円も違うのか―【私の論評】根底には、金融・雇用政策が密接に結びついているという観念がないというお粗末さが(゚д゚)!

政府発表の統計を精査しない新聞の怠慢〜なぜ同じ「賃金」なのに10万円も違うのか

経済に限らず、安全保障にも疎い新聞は平気で奇妙奇天烈で、摩訶不思議な報道を繰り返す。
たとえば、過去の政府や内閣法制局が憲法解釈をコロコロ変えてきたという事実すら知らない。

朝日と毎日、どっちが正しい?

アベノミクスの最重要課題とも言える「賃金」について、二つの統計がまったく異なる数字を算出し、波紋を広げている。

一つは、2月18日に発表された2015年の「賃金構造基本統計調査」。これを報じた毎日新聞によると、フルタイム労働者の月額賃金は前年比1・5%増の30万4000円だったという。

一方、同月8日に発表された「毎月勤労統計調査」では、2015年におけるフルタイム労働者の月額賃金は前年比0・4%増の40万8416円とされている。こちらは、朝日新聞が報じた。

どちらの統計も、まとめたのは厚労省。にもかかわらずなぜ、これほど差があるのか。

はっきり言えば、統計に違いはない。報道した新聞各社の統計の見方が間違っているのだ。

より詳細に賃金統計を調べているのが、「賃金構造基本統計調査」である。年齢や勤続年数といった労働者個々人の情報まで調査されているため、各企業内の賃金構造がわかる。従業員10人以上の事業所のうち、約6万6000事業所を抽出。大規模な調査のため、年1回、毎年6月に調査している。

続いて、「毎月勤労統計調査」。これは「賃金構造基本統計調査」の簡易版だ。毎月行われるので、短期的な動向を知ることができる。従業員5人以上の事業所のうち、約3万3000事業所を抽出。個々の労働者のことではなく、事業所全体の状況を聞くことで回答負担を軽減している。

また、「賃金構造基本統計調査」における賃金とは、「所定内給与額」のことで、ボーナスや残業代は除く。一方、「毎月勤労統計調査」における賃金は「現金給与総額」のことで、ボーナスや残業代も含まれる。当然、後者の「賃金」のほうが高く算出される。

新聞本来の機能を果たしていない

このように、二つの統計が示しているのは、違う「賃金」の概念である。そのことは統計資料をきちんと読みさえすればわかるはずだが、新聞各社はそれを怠っているのだ。彼らはこれらの統計の中身を知らずに、同じ「賃金」という用語だけに注目して報じてしまっている。

  事実、「毎月勤労統計調査」が前年比で0・4%しか上がっていないとしてネガティブに扱われたのに対し、「賃金構造基本統計調査」が出ると1・5%も上がっているとポジティブに報じられた。

  なぜ、同じ「賃金」なのにこれほど違うのか。それを踏まえてきちんと説明するのが、新聞の本来の役割だろう。政府が流す情報だけを見てその中身を精査しないのでは、「御用メディア」と言われても仕方がない。

  ちなみに、賃金についての統計には、国税庁の「民間給与実態統計調査」と人事院の「職種別民間給与実態調査」もある。前者は一人でも給与所得者がいれば調査対象になる統計で、後者は従業員50人以上の企業が対象である。

  国税庁「民間給与実態統計調査」が小さな事業所を最も多く含み、「毎月勤労統計調査」、「賃金構造基本統計調査」と続く。人事院「職種別民間給与実態調査」は大企業が多くなる。

  人事院「職種別民間給与実態調査」は、公務員の給与を決める指標として使われる統計だが、本来なら国税庁「民間給与実態統計調査」を使うべきだろう。

【私の論評】根底には、金融・雇用政策が密接に結びついているという観念がないというお粗末さが(゚д゚)!

まずは、上の記事に掲載されている毎日新聞と、朝日新聞の記事そのものを以下に掲載します。

最初に毎日新聞の、2月19日の記事を掲載します。
非正規労働者、パートなど短時間労働者賃金も過去最高

厚生労働省は18日、雇用形態別の賃金実態を調べた2015年の賃金構造基本統計調査の結果を公表した。女性や非正規労働者、パートなどの短時間労働者の賃金が過去最高となり、同省賃金福祉統計室は「女性の賃金の伸びは勤続年数の増加や役職者の増加が、非正規は労働需給の逼迫(ひっぱく)が賃上げの要因になった」と分析している。

従業員10人以上の民間事業所に、昨年6月に支払われた手当などを含む賃金額を尋ね、5万785社から回答を得た。それによると、短時間労働者以外の一般労働者(非正規含む)の平均賃金は30万4000円(前年比1.5%増)だった。うち女性は24万2000円(同1.7%増)で過去最高額。男性を100とした男女の賃金格差は、過去最小だった昨年と同じ72.2だった。

雇用形態別の平均賃金は正社員が32万1100円(同1.1%増)。非正規は過去最高の20万5100円(同2.4%増)。短時間労働者も時給1059円(同1.7%増)で過去最高だった。【東海林智
次に朝日新聞の、2月8日の記事を掲載します。
実質賃金、4年連続マイナス パート比率増加など影響

 厚生労働省が8日発表した2015年の毎月勤労統計(速報)によると、物価の伸びを超えて賃金が上がっているかどうかを見る実質賃金指数が前年を0・9%下回り、4年連続でマイナスになった。企業の好業績が賃上げにつながる経済の「好循環」がまだ広がっていない実態が示された。 
 名目賃金にあたる労働者1人平均の月間の現金給与総額は31万3856円。2年連続で増えたものの、伸び率は0・1%にとどまった。一方で、15年の消費者物価指数(生鮮食品を含む、持ち家の帰属家賃はのぞく)は、14年4月の消費増税の影響が15年1~3月に出たほか、生鮮食品が値上がりしたこともあり、1・0%上昇した。このため、くらしの実感に近い実質賃金は0・9%のマイナスとなった。マイナス幅は前年の2・8%から縮まった。 
 名目賃金を働き方でみると、フルタイム労働者は前年比0・4%増の40万8416円だった。春闘でベースアップが相次ぎ、基本給などが7年ぶりにプラスになったためだ。パート労働者も、人手不足による時給の上昇などを反映し、0・5%増の9万7818円だった。 
 それでも名目賃金全体の伸びが0・1%にとどまったのは、賃金水準が低いパートが全労働者にしめる割合が30・46%と前年より0・64ポイント高まり、平均賃金を押しさげたためだ。ボーナスを中心とする「特別に支払われた給与」も0・8%減の5万4558円で、3年ぶりに減少に転じた。 
 実質賃金は昨年7月以降、いったんプラスに転じたが、11月から再びマイナスとなり、12月(速報)も0・1%減だった。 
 労働組合の連合の集計では、春闘での定期昇給分を含む平均賃上げ率は2年続けて2%を超えたが、労働者全体でみると賃上げが力強さを欠く状況が続いている。(末崎毅
 結局「賃金構造基本統計調査」における賃金とは、「所定内給与額」のことで、ボーナスや残業代は除く。一方、「毎月勤労統計調査」における賃金は「現金給与総額」のことで、ボーナスや残業代も含まれる。当然、後者の「賃金」のほうが高く算出されるということなのですが。

いずれの新聞社も、自らが報道している賃金の統計に関して、それがどのような統計に基づいているのか、全く説明していません。これでは、購読者は両方の記事を見れば、とまどってしまうことでしょう。

統計の取り方がわかっていなければ、その統計が何を意味するのかわからなくなってしまうのが当然です。

この2つの統計を見比べていると、フルタイム労働者の「所定内賃金」が上昇していて、「現金給与総額」はそうでもないという最近の傾向が良くわかります。

これは、とりもなおさず、雇用が改善されていることを示すものだと思います。人の雇用が増えているからこのような状況になるのです。雇用が悪化していれば、「所定内賃金」は下がり、「現金給与総額」は上昇傾向になるはずです。

それは、中企業以上などのことを考えると良く理解できます。所定内賃金を上げるということは、人を雇用するためには、上げなければならないということです。「現金給与総額」があまり上がらないということは、人を採用しているため、残業が以前よりは少なくなっていることと、新人の場合はボーナスやその他の手当も少ないです。

それともう一つ気になるのは、これは、ブログ冒頭の記事のフルタイム労働者とは直接は関係ないのですが、朝日新聞が未だに実施賃金の低下についてネガティブに掲載していることです。

そうして、朝日新聞の記事には、実質賃金が低下した原因について、誤解を招くような説明してあります。

それは、「賃金水準が低いパートが全労働者にしめる割合が30・46%と前年より0・64ポイント高まり、平均賃金を押しさげたためだ」という部分です。

しかし、この説明も不十分です。就業者数全体は、直近では増えています。しかし、朝日新聞はそれを説明せず、パートが全労働者にしめる割合が30.46%と前年より0.64ポイント高まったことだけを説明しています。

これだと、これを読む人は、就業者数全体はあまり変わっていないのに、パートが全労働者にしめる割合が増えたと錯覚してしまうおそれがあります。

毎日新聞と、朝日新聞の記事を比較すると、両方とも統計数値の意味などの説明が足りないという共通点はあるものの、毎日新聞のほうはよりポジティブであり、朝日新聞のほうはよりネガティブです。

そうして、毎日新聞や朝日新聞がこのように、二つの統計が示しているのは、違う「賃金」の概念に関して無頓着で、これらの統計の中身を知らずに、同じ「賃金」という用語だけに注目して報じてしまう理由としては、両方とも雇用のことを理解していないことが大きな原因なのではないかと思います。

そうして、雇用を理解してないのは、何もこの両新聞だけではありません。他のメディアもほとんど理解していないようです。これは、メディアだけではなく、政治家、特に野党の議員で理解をしている人ほとんどいません。それに、世間から雇用問題の識者とみられている人でも理解していない人が多いです。

特に、雇用と金融政策が密接に結びついているということを知らない人があまりに多すぎです。「金融政策イコール雇用政策」であるという点について、勉強不足の人が多いです。

難しい理論などわからなくても、少なくとも政治家やマスコミは「金融政策で失業をなくせる」ことだけでも理解すべきです。

これは、フィリップス曲線など見れば明らかです。フィリップス曲線とは、縦軸にインフレ率(物価上昇率)、横軸に失業率をとったときに、両者の関係は右下がりの曲線となるというものです。これは、フィリップスが発見したものですが、彼が初めて発表した時は縦軸に賃金上昇率を取っていたのでが、物価上昇率と密接な関係があるため、最近では縦軸に物価上昇率を用いることが多いです。

以下に日本のフリップス曲線を掲載しておきます。

フィリップス曲線

このグラフは、総務省の作成したものですが、これは、別に日本でなくても、どの国でもあてはまるものです。大まかに言ってしまえば、デフレは失業を増加させます。インフレは、失業を減少させます。

日本やアメリカのように、人口が億単位以上の国であれば、インフレ率が数%あがっただけで、他には一切何もしなくても突如として、雇用が数日約万人分増えます。

これは、厳然たる事実であって、これをインチキだという人は、まともなマクロ経済学を否定することになります。

実際に、米国のFRB(連邦準備制度制度理事会、日本の中央銀行である日銀に相当)は、雇用者数を増やし、失業率を下げるために金融政策を行っています。というより、雇用の悪化の原因はFRBの責任という観念がアメリカにはあります。そうして、これは、米国だけでなく、どこの先進国でも同じことです。過去においては、日本だけがそうではありませんでした。

ただし、雇用が増えても、雇用のミスマッチなども存在する場合もありますから、それで何もかも解決というわけではありません。さらに、インフレ傾向のときに、何らかの原因で、雇用が悪化した場合、金融緩和政策をとれは、ハイパーインフレになる可能性も否定できません。

しかし、過去の日本においては、金融緩和政策が雇用枠を広げるという観念が日本人にはほとんどなかったので、デフレを放置して、雇用を悪化させてしまいました。しかし、安倍政権になってからは、金融緩和策で、雇用者数は100万人増えています。


これに対して、メディアや野党などは、「雇用が増えたと言っても非正規ばかり」などといいますが、これは全く反論になっていません。正規だろうが、不正規だろうが職があるほうが、無職よりは良いのは明白です。それに、雇用が増加に転じるときには、まずは非正規から増えるのが当たり前です。

これに関しては、何も国レベルで考えなくても、企業レベルで考えても良く理解できます。企業が業績が良くて拡大傾向にあるときには、まずはパート・アルバイトの雇用が増えます。その後に正社員を増やします。

実質賃金に関しても、企業レベルで考えても良く理解できます。企業が業績が良くで、拡大傾向にあるときには、まずはパート・アルバイトの雇用が増え、次に正社員が増えるといいましたが、その時に実質賃金はどうなるかを考えてみてください。そこかららに、業績が良くなると、役員報酬や正社員の給料を上げるので、平均賃金も上がります。

パート・アルバイトが増えると、これも含めて会社の平均賃金を計算すると、平均賃金は当然下がります。次に、正社員を増やしたにしても、正社員も入社当初は賃金が低いので、やはり会社全体の平均賃金を計算すると、低くなります。

これとは、逆に企業が業績が悪くて、縮小傾向にあるときは、まずはパート・アルバイトの雇用が減ったり、解雇するため、その時には平均賃金は上昇します。そこからさらに悪化が続けば、役員報酬をカットしたり、正社員の賃金も下げたりするので、賃金全体が下がることになります。

企業が業容を拡大するときには平均賃金は下がる(゚д゚)! 

こんな理屈もわからないで、まともな会社の取締役会で、企業業績が上がっている最中に、平均賃金が下がった大変だなどといえば、「馬鹿」といわれておしまいになると思います。今のマスコミや政治家の多くも、まともな会社の人事部員としても務まらないということです。

今まさに、雇用が増えています。だからこそ、実質賃金が下がっているのです。これもいずれ上がっていきます。そうして、金融緩和をすると、雇用状況が良くなり、実質賃金が低下傾向になるということは、まともなマクロ経済学の教科書には既定の事実として掲載されています。

毎日新聞や、朝日新聞は、このようなことさえ、知らずに報道しているのだと思います。基本的な理屈がわかっていないので、ブログ冒頭のような記事を掲載して、読者を混乱させてしまうのです。

そうして、このような基本がわかっていないと、いずれまた頓珍漢で摩訶不思議な報道をすることになります。これは、今から予言しておきます。

特に、8%増税に関しては、GDPのマイナスなどかなり実体経済に悪影響を及ぼしています。たとえ、10%増税が見送られたにしても、そのままにしておけば、今のところあまり雇用に悪影響を及ぼしていませんが、そろそろ今年の夏くらいに雇用にも悪影響を及ぼすことが十分考えられます。

本当にそのようなことになった場合、マスコミは、8%増税の悪影響が雇用に悪影響を及ぼしたことなど報道せずに、アベノミクスが頓挫したなどと報道しかねません。

それだけならまだしも、マスコミ、識者、政治家、財務官僚などが徒党を組、8%増税を既定路線にしたごとく、アベノミクス大失敗で、金融緩和策などやめて、金融引き締めに転ずることにでもなってしまえば、またぞろ日本は、デフレスパイラルに逆戻りして、円高傾向になり、雇用がとんでもなく悪化していまうことになります。

マスコミはこのような報道は厳に謹んでいただきたいものです。何を報道にするにしても、そもそも、基本的な理屈がわかっていないので、統計数値に基づいてさえ、トンデモ報道になっていることが多いです。

それが、多くの人々の判断ミスを誘発し、日本がどんでもない方向に行くことだけは、避けたいものです。

そのために、マスコミの諸君は、マクロ経済の基本だけでも知っておくべきです。いまのマスコミは、例外は少数あるものの、マクロ経済、特に金融政策、財政政策についてあまりに知らなすぎます。そのため、ブログ冒頭の記事のように、官庁発表の統計などその背景を十分に吟味せず、部分的に掲載し、読者の誤解を招くようなことを平気でするか、特定の意図に誘導するため、あえてそのようなことをしています。

こんなことでは、全くメディアの意味がなくなります。こんなことを繰り返していれば、いずれ消え去るしかなくなります。

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安倍政権に奪われた雇用政策 日銀法改正を主張する気概を 民主党代表選 ―【私の論評】日銀の金融政策は雇用と多いに関係あること、中央銀行の独立性とは目標ではなく、手段の独立性であるべきことを理解できない政党・政治家は結局何もできずに破滅するものと心得よ!!






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2015年11月19日木曜日

パリ同時多発テロの根底にある100年の歴史―【私の論評】本当の歴史を知らなければ、今の世界も日本国内の難民・移民問題も見えなくなる(゚д゚)!


同時多発テロがあったレストラン前に集まり、ろうそくに火をともす市民ら
終わらぬ根深い憎しみの連鎖発端は第一次世界大戦

今月13日、パリで130名近くもの死者を出すテロが起こった。直後に「イスラム国」から犯行声明が出され、フランス空軍による報復爆撃が行われたというニュースも流れている。

ちなみにテロが起こった11月13日は、1918年、英仏軍がオスマン帝国のイスタンブールを制圧した日である。つまり聖戦を掲げるイスラム国にとっては、キリスト教徒にイスラム教徒が侵略された恥辱の日であり、復讐にふさわしい日と見ることもできる。

首謀者にはヨーロッパ国籍をもつイスラム国シンパも含まれているといい、戦争の歴史が作り出してしまったヨーロッパ移民社会の複雑さ、暗部をも垣間見るようである。

根深い憎しみの連鎖は、まだまだ終わりそうもない。卑劣きわまりないテロの犠牲者に対しては、哀悼の念を強くするばかりである。

ただ地政学的に見れば、1916年のサイクス=ピコ協定でわかるように、ヨーロッパ諸国がアラブ世界を民族無視で勝手に分割したこと、さらにその後、しっかりコントロールしきれなかったことが、さまざまな形をとって現在にまで及んでいる。例えば、アメリカがイラク民主化のためにフセイン政権を倒したが、その残党が「イスラム国」を作った。このたびのパリのテロもまた、それらがもたらした大きな悲劇の一つであると見るべきだろう。

こうした現代の難問を理解するには、高校レベルの世界史をおさらいしておくといい。

発端は第一次世界大戦である。

中東問題の大元を作ったイギリスの「三枚舌外交」

第一次世界大戦後にドイツの力が弱まり、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国、ロシア帝国が崩壊したことで、バルカン半島から東欧にかけての地域には小さな独立国家が乱立した。

ドイツの同盟国として参戦したオスマン帝国の解体では、現代にまで続く中東問題が芽生えてしまった。それを説明するには、第一次世界大戦中のイギリスの多重外交にまで遡らなくてはならない。

1915年、イギリスはフサイン・マクマホン協定によって、オスマン帝国からの独立をアラブ人たちに約束した。

「オスマン帝国との戦いに貢献し、勝利した暁には自分たちの領土を持てる」とアラブ人たちに思わせることで、イギリス陣営への協力を取り付けたわけである。

しかし、これが虚構であったことは、その直後にイギリスがフランス、ロシアと結んだ協定を見れば明らかだ。

1916年、オスマン帝国領アジアをイギリス、フランス、ロシアとで分割、パレスチナは国際管理下に置くというサイクス=ピコ協定が結ぼれる。下図で、青がフランス、赤がイギリス、緑がロシアである。


これは、オスマン帝国の支配下にあるアラブ人が独立できるという、フセイン=マクマホン協定と明確に食い違っている。しかも、定規で引いたような人為的な国境線が後で火種になる。

さらに1917年には、イギリスは、パルフォア宣言によってユダヤ人がパレスチナに独立国家を築くことを認めた。アラブ人にしたように、「独立国家を持てる」と約束することで、ユダヤ人からの協力も得ようとしたのだ。

このようにイギリスは、戦争を有利に進めるために、それぞれの利害関係者に異なる言質を与える「三枚舌外交」を行った。そして、今日にまで続く中東問題の大元を作ってしまったのである。

統治国の勝手が生み出したクルド人問題とパレスチナ問題

ちなみに、サイクス=ピコ協定でオスマン帝国の分割案に参加していたロシアは、戦中にロシア革命が起こったため、単独でドイツと講和条約を締結していた。

ロシアはバルカン半島で勢力拡大し、オスマン帝国までも分割統治することで黒海方面への南下を狙っていたが、その野心は、自国内の革命という足元から崩れることになったのである。

ロシアが途中で戦線離脱したことで、オスマン帝国はイギリスとフランスの決定によって分割統治されることになった。

そこで生じた中東問題の一つは、クルド人問題だ。イギリスとフランスが勝手にそれぞれの委任統治領を決めたせいで、クルド人の地域は、トルコと、イギリス、フランスの勢力下にあるイラクとシリア、イランなどに分断されてしまった。

実は、最初に結ぼれたセーブル条約ではクルド人の独立国家の建国が認められていた。ところが、トルコ共和国の領土回復が認められたローザンヌ条約で、取り消されてしまったのだ。

自分たちの国を持たないクルド人は、各国では少数派だが、全体を合わせれば約3000万人にもなると推定されている。彼らの独立問題は、第一次世界大戦以降、今も中東における最大懸念の一つとなっている。

第一次世界大戦が元となった中東問題は、パレスチナ問題だ。現在のヨルダンを含むパレスチナは、第一次世界大戦後、イギリスの委任統治領となり、パルフォア宣言に基づいてユダヤ人たちはパレスチナに向かった。といっても、この当時は、もともとパレスチナに住んでいたアラブ人と移植してきたユダヤ人は、比較的穏やかに共存していたとされる。とごろが、ユダヤ人入植者が増えるにつれて、次第に土地争いなどが起こりはじめ、バレスチナ人との対立が強くなっていく。

それを、統治国であるイギリスはコントロールしきれなかった。困り果てた末、第二次世界大戦後に責任放棄して国連に丸投げにしたために、パレスチナ問題はますます混迷を極め、いまだ解決されていない。

テロは決して認められないだが100年間の歴史も知っておこう

ひとくちにイスラム教徒といっても、内側は非常に複雑である。彼らの帰属意識は国よりも部族に対してのほうが強く、しかも、先に挙げたクルド人に代表されるように、国境と部族が必ずしも一致していない。

さらに、イスラム教にはスンニ派とシーア派という二大宗派があり、多数派のスンニ派と少数派のシーア派が対立を続けているという長い歴史がある。この宗派とは別に、トルコ主義、アラブ民族主義、ペルシャ主義といった、少しずつ異なる民族意識もある。

宗派や民族意識が異なっても、最大概念であるイスラム共同体「ウンマ」への帰属意識は共有している。しかし、イラン・イラク戦争のように、同じイスラム教国同士で起こった戦争には、スンニ派とシーア派の歴史的対立が絡んでいる場合もある。

こうした背景をいっさい斟酌しようともせず、戦勝国が勝手に勢力図を決め、分け合ってしまったのが、第一次世界大戦の一つの結果だった。アラブ世界の人々は、宗教心や帰属意識もろとも、列強の手前勝手な領土欲に振り回されたのである。

現在では中東は、かつてのバルカン半島をしのぐといってもいいほどリスクの高い「火薬庫」となってしまった。目下、最大の懸案は、やはりイスラム過激派組織「イスラム国」の台頭である。「イスラム国」は、サイクス=ピコ協定の終焉を目指している。

ヨーロッパでは、今回のパリのテロ以外にも、これまでにロンドンやマドリードで一般市民をターゲットにしたイスラム過激派によるテロが起こっている。また言うまでもなく、それ以上の数、規模のテロが、中東の国々では今や日常茶飯事となっている。

この問題は簡単に解決しない。以上で見たように、100年前の話が発端になっていて、100年間も解決されなかったからだ。

テロはいかなる理由があっても認められない。ただ、この100年間の歴史も同時に頭に入れておこう。

(以上は、まもなく出される拙著「世界のニュースがわかる! 図解地政学入門」からの一部抜粋である。詳しくは同書を参考にしていただきたい)。


【私の論評】本当の歴史を知らなければ、今の世界も、日本国内の難民・移民問題も見えなくなる(゚д゚)!

上の記事では、サイクス・ピコ条約による分割を示した地図が掲載されていました。この地図のもっと詳細なものを以下に掲載します。


さて、以上のように過酷な過去の100年の歴史を持つ中東ですが、このあたりのことを良く理解していないと、なぜこれらの地域で騒乱が絶えないのかなかなか理解できないと思います。

このあたりの歴史は現代史の範疇となると思いますが、世界史の教科書では後ろの方になります。私自身は、世界史で勉強した記憶がありましたので、ブログ冒頭の記事を読む前から、当然のこととし100年前のこの地域の歴史を習った記憶があり、これが今のパリ同時多発テロの根底にあることも理解していました。

それにしても、なぜこの地域の歴史を鮮明に覚えているかといえば、大学受験のとき、世界史で受験したということもありますが、それ以外にも『アラビアのロレンス』という映画を観た記憶と鮮烈に結びついているからだと思います。

この映画を観た後で、世界史の教科書や参考書を見直し、さらにいろいろと書籍を購入するなりして、自分なりに調べてみて、当時から内紛などが酷かった中東情勢の真の原因がイギリスの三枚舌にあることが理解できました。そうして、当時のフランスやロシアなどのエゴむき出しの国益優先の結果であることも理解しました。

トマス・エドワード・ロレンス
さて、この映画のことを簡単に以下に触れておきます。
この映画は、実在のイギリス陸軍将校のトマス・エドワード・ロレンスが率いた、オスマン帝国からのアラブ独立闘争(アラブ反乱)を描いた歴史映画であり、戦争映画です。日本での公開は1963年12月でした。 
上映時間は227分。主人公の交通事故死で幕が開く衝撃的な冒頭から、彼が失意の内にアラビアを離れる余りに悲痛な終局までを、雄大に描いています。その中でも、ロレンスがマッチの火を吹き消した後に砂漠に大きな太陽が昇る場面や、地平線の彼方の蜃気楼が次第に黒い人影となるまでの3分間、敵の要塞を陥落したロレンスが、ラクダに乗って夕日が照らす海岸を悠々と歩く場面、そして延々と続く広大な白い砂漠と地平線を背景にロレンスが跨ったラクダが駆ける場面等が名シーンとされています。 
冒頭と休憩と終わりの黒画面に音楽が流れるところは、当時の映画では一般的であった 序曲、休憩、終曲です。 オリジナル版制作から実に四半世紀以上が経過した1988年に、再編集を行って完全版が制作されました。オリジナル版の上映時間は、207分でした。粗筋は、以下のようなものです。 
1914年、第一次世界大戦が勃発し、アラビアはドイツと結んだトルコ帝国の圧政下に­あった。英国は、ドイツ連合軍の勢力を分散させるため、稀代の天才戦略家ロレンスをア­ラビアに派遣する。 
アラビ王族のファイサル王子の軍事顧問となったロレンスは、ハリト­族のリーダー、アリや黄金を探し求めるアウダらとともに、独自のゲリラ戦法を駆使して­反乱軍を指揮し、アラブ国民から砂漠の英雄とうたわれるようになる。 
だが次第に自分が­軍上層部に利用されていることを知り、アラブ民族もまた、部族間の対立からロレンスを­裏切っていく・・・。 (原作 - Lawrence of Arabia) 1962, renewed 1990 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
この映画は、現在でもYouTubeでご覧いただくことができます。以下にそのリンクを掲載しておきます。



この映画などご覧いただき、さらに歴史の書籍など読まれると、現在の中東情勢が理解できるとともに、パリ同時多発テロの背景が理解でき、イギリスがなぜ厳戒態勢にはいつてるのかを良く理解いただけるものと思います。

また、過去にこのブログにも掲載したように、なぜトルコが親日的なのかその背景をさらに、良くご理解いただけるものと思います。そのブログ記事のリンクを以下に掲載します。
【中韓サヨナラ…世界の親日国】100年前エルトゥールル号の恩返しトルコ―【私の論評】中韓は両方ともステルスしよう!トルコのような、まともで親日的な国と付き合おう!なにしろ、世界では反日馬鹿国家は希少な存在に過ぎないのだから\(◎o◎)/!
五輪招致で敗れたトルコのエルドアン首相(右)は安倍首相を祝福した
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事からトルコがいかに親日的であるかを示すエピソードを以下に掲載します。
1980年から始まったイラン・イラク戦争は85年にエスカレートし、イラクの独裁者フセインは3月17日に突然、「今から48時間後、イラン上空を飛行する航空機はすべてイラク空軍の攻撃対象となる」と一方的に宣言した。 
日本政府の対応は機敏さを欠き、救援機派遣のタイムリミットはたちまち過ぎてしまった。各国民が続々と救援機で救出されてゆくのを、在イランの日本人は横目で見送るしかなかった。イランの首都テヘラン北部にはイラクのミサイルが着弾する状況で、一刻の猶予も許されない。 
この時、日本が最後の望みを託したのがトルコであった。日本側を代表して、伊藤忠商事の森永堯イスタンブール事務所長は、旧知のオザル首相(後に大統領)に電話をかけ、懇願した。 
しかし、トルコも多数の自国民を救出しなければならない。断られても当然の依頼であった。「今、日本が頼れる国はトルコしかありません」と迫る森永氏に、オザル首相は長い沈黙の後、ついに「オーケー」と答えてくれた。トルコ航空の2機のDC10がイランに飛び、215人の日本人は無事救出された。
このブログでは、トルコが親日的なのは、100年前のエウトール号の恩返しであることも掲載しました。その部分を以下に掲載します。

写真はオスマン帝国海軍「エルトゥール」。
エルトゥールル号は1890年、明治天皇に勲章を贈呈するために来日したトルコの軍艦であった。しかし、帰国途上、紀伊半島沖で台風に襲われ、座礁して乗組員650人中587人が亡くなる大惨事となった。 
この時、遭難者の救出・看護に自己犠牲的な働きをしたのが、地元・紀伊大島の島民だった。この年は漁獲量も少なく、また米価の暴騰もあり、食糧の乏しい大島ではあったが、島民は貴重な米を供出し、最後の非常食の鶏まで潰して遭難者にふるまった。 
生存者63人(一説に69人)は日本政府の厚遇を受け、2隻の軍艦により丁重に母国へ送り届けられた。この話はトルコの歴史教科書に載っており、トルコ人なら誰でも知っている。トルコはこの遭難事件の恩返しを95年後にしてくれたのだ。
エウトール号の遭難のときの厚遇が、トルコ人を親日にしているのは事実ですが、さらにトルコ人を親日にすることがこの後に起きています。

そのヒントは、ブログ冒頭の高橋洋一氏の記事の中にあります。それは、以下のくだりです。
ちなみに、サイクス=ピコ協定でオスマン帝国の分割案に参加していたロシアは、戦中にロシア革命が起こったため、単独でドイツと講和条約を締結していた。 
ロシアはバルカン半島で勢力拡大し、オスマン帝国までも分割統治することで黒海方面への南下を狙っていたが、その野心は、自国内の革命という足元から崩れることになったのである。 
ロシアが途中で戦線離脱したことで、オスマン帝国はイギリスとフランスの決定によって分割統治されることになった。
トルコからすれば、帝国分割案に参加していたロシアが途中で戦線離脱したことは不幸中の幸いでした。なぜなら、ロシアがそのまま居座って、この地域で勢力を拡大すれば、不凍港獲得を目指したロシアが、さらにロシアに近い、港のあるトルコ領を狙ったかもしれません。

しかし、この野望は日本によって砕かれました。そうです。日本が、ロシアを日露戦争で破ったからです。そうして、日本はロシア革命を煽り立てていました。明石(当時の階級は大佐)は日露戦争中に、当時の国家予算は2億3,000万円程であった中、山縣有朋の英断により参謀本部から当時の金額で100万円(今の価値では400億円以上)を工作資金として支給されロシア革命支援工作を画策しました。

これにはさすがのツアーも参ったことでしょう。以後ロシアは、中東どころの騒ぎではなくなり、上記にあるように帝国分割案から、戦線離脱せざるを得なくなったのです。

それどころか、日本は日露戦争で勝利を収めたわけですから、トルコの人々からすれば、トルコへのロシアの影響を葬り去り、さらに日本がロシアと互角に戦ってロシアに勝利を収めたのですから、憎きロシアをコテンパンにやつけた日本というわけで、親日的になるのもうなずけます。

日露戦争のモンタージュ写真
日本では、上記の歴史にあまり詳しくない人が、中東の難民を日本が受け入れないことに関して非難したりしています。しかし、日本は、現在の中東の問題を英国のような三枚舌で複雑にしたこともなければ、当時のトルコ帝国の領域(現在の中東地域をかなり包摂)を分割して、併合するなどのことはしていません。

さらに、イスラエル建国に関してもノータッチです。そのような日本が、中東難民を真っ先に受け入れなければならないなどということはありません。まずは、イギリスやフランスなどが最初に受け入れるのは当然のことです。

さらに、多くの日本人は、日本には移民問題は全くないと単純に信じ込んでいますが、それは全くの間違いです。多くの日本人は、移民というと、中東人とか南米人、黒人などを思い浮かべると思います。これもちろん移民ですが、日本には在日とか、中国からの移民がすでに多数存在しています。本当は移民なのに移民と呼んでいないだけです。

その実体を以下に坂東忠信氏のブログから転載します。

前回は難民について、未だ発生していない「環境難民」を含めお伝えしておりましたが、今日は移民について。
この移民受け入れに関しても、受け入れ国では様々な障害が発生していますが、実は日本もすでに移民大国なのですよ。
自覚ないでしょ?
・・・移民なんていうと、南米人とか白人黒人なんかをイメージしていませんでしたか? (^_^;)
まず、国連人口部の定義では、移民とは
「市民権(つまり国民としての主権)のある母国から1年以上離れて外国に暮らしている人」
を指し、一般的には留学生技能実習生はもちろん、特別永住者なんか言うに及ばず、1年以上の正規滞在者不法滞在者、さらに帰化した初代「移民」と定義づけられています。

日本にはすでに大東亜戦争以前から滞在している朝鮮人を中心とした移民がいて、朝鮮動乱では済州島から難民が来て定着、さらに国際化する過程で多数の移民が定着して政治活動まで展開しており、現在も難民対策の抜け道が放置されている、移民歓迎難民失敗大国なのですよ。

おまけに他国や多民族に帰属したまま、世襲で日本への滞在を黙認するという、世界に類例のない超人権偏重の「特別永住者」制度を継続中。

さらに今やこの特別永住者は国際結婚で世代を重ね、世襲滞在が可能な朝鮮系外国人とそうでない外国人の「身分格差」や「国籍ロンダリング」を生み出しているのです。
↓ 特別永住者の国籍をご確認ください。http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/187/touh/t187067.htm
その日本で民族紛争が起きなかったのはなぜか?
私達日本人がやられっぱなしだからですよ。
しかもそれを報じるマスコミが機能していないどころか、非難を恐れて正論を封じるヘタレ共が幹部に混在するからですよ。

今回も11月14日にはネットで発生が伝えられていたパリのテロについて、その報道が遅れている上に少ないのは、この情報が移民や難民の流入を阻害するであろうことが明白だからでは?
「ヘイトに繋がる」という、ヘイトの意味も知らないヘタレどもは国家の神経麻痺状態を促進させ、国民が感じるべき傷みや恐怖を伝えず、このため政府も具体的対策を講じることがないのです。

日本では特定民族による爆弾テロこそまだありませんが、個々に殺されている日本人が多数存在します。
警察庁が発表している「来日」外国人の犯罪検挙情況は、「在日」外国人犯罪を除外しているため、外国人犯罪全体の3分の2も公表していません。
(下図 上段の「在日」については、毎年発表される「来日外国人犯罪の検挙情況」に計上されていません 

↑ クリックすると大きくなります。

おまけに既遂の殺人事件に至っては全体の半分しか公表されていません。
これ↓も計上されていませんし、公表されていませんでした。(殺人未遂、傷害致死、強姦致死、過失致死は含まれていません。)



これらの犯罪の比率は外国人の人口比を完全に超えております。
さらに、かろうじて報道された事件の多くは通名報道のため、人々は国民としての傷みを自覚できず、足を貫いている棘がこれを壊死させているのです。

(ブログ管理人注:坂東氏のブログの上記図のリンクは切れていますので、詳しくは以下のリンクを参照してください)

https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kokusaisousa/kokusai/H26_rainichi.pdf

はからずも命をもって移民や難民の安易な受け入れに警告を発しているフランスの犠牲者方々のご冥福を祈るとともに、日本はすでに移民国家であり、今も難民失敗国で在り続けていることを自覚しましょう。

そして、無策の政治家は政界から葬り、平和だ平等だなどの耳に心地よい偽善を疑いエセ有識者の「無識」を指摘して、国と家族を守れる政治家に、議席を与えましょう。

世界はとどまることなく流れ、前例のない事態への対処こそが明日の前例となる現在、私は前例がなくとも外国人への入国規制により、日本人の生命・身体、財産を守ることを提唱しております。
~~~~~~~~~~~~
国民と善良な外国人を保護するための入国制限法(案:仮称)」
1「国家防犯」のための入国制限  前年中における警察庁その他政府機関が発表する統計に基づき、以下の各項目における上位3カ国からの入国は、制限する。(1)犯罪検挙率 (2)犯罪検挙数(3)犯罪検挙人口
2「国家防衛」のための入国制限 過去10年間以内に以下の各項目のいずれかに該当する国からの入国は、制限する。(1)日本に到達可能なミサイルでの攻撃を示唆している(2)根拠なき反日教育や反日プロパガンダを国内もしくは国外に行っている(3)我が国に対し明確な武力を示して領土、領空、領海を侵犯している
3「国家防災」のための入国制限 ダム、発電所、その他国民や環境に重大な災害を及ぼす恐れのある施設や地形を破壊し、または人や家畜の生命および動植物生態系を損なうと疑うに足りる相当な理由がある国からの入国は、制限する。

・・・これはヘイトでしょうか?
長くなると嫌われますので(^_^;)詳細は坂東学校もしくは拙著にて。
さて、中東移民・難民が発生する要因を創りだしたのは、あくまで西欧諸国です。そうして、日本には、坂東氏が語るように、そうとは認識されない難民・移民問題が厳然として存在しています。

このようなことは、国際的にはある程度周知されていて、だからこそ、西欧諸国も日本に難民・移民の受け入れを強く要請することはないのでしょう。

中東の状況、そうしてパリ同時多発テロの根底にある100年歴史に関しては、歴史の教科書でもひもとけば、記載は少ないものの、掲載はされています。

しかし、日本の難民・移民問題についいては、坂東氏も述べているように、それを報じるマスコミが機能していないどころか、非難を恐れて正論を封じるヘタレ共が幹部に混在するせいでまるでなきが如くに扱われています。そうして、日本では教育機関も、移民問題を扱わないため、教科書を読むだけでは日本の難民・移民問題を認識することはできません。

中東のことはある程度わかるのに、なぜか日本の移民問題を明らかにしないマスコミや教育機関は、問題だと思います。

いずれにしても、本当の歴史を知らなければ、今の世界を、そうして日本を理解できないのは確かです。

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