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2017年7月12日水曜日

【閉会中審査】朝日と毎日は「ゆがめられた行政が正された」の加戸守行前愛媛県知事発言取り上げず―【私の論評】前川喜平も鼻白む巨大既得権者である新聞・テレビ局(゚д゚)!




衆参両院で10日に開かれた学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐる閉会中審査から一夜明けた11日の朝刊各紙は、官邸の不当な関与を主張する前川喜平・前文部科学事務次官の発言を大きく取り上げた。一方、国家戦略特区として獣医学部設置が認められたことに関し「ゆがめられた行政が正された」などと文部科学省の過去の対応を批判した加戸守行前愛媛県知事の発言については記事で取り上げないところもあり、報道の“印象操作”が浮き彫りとなった。(今仲信博)

朝日新聞は1面トップの記事に「加計ありき 疑念消えず」の見出しで、前川氏の発言を多めに盛り込んだ。「(政府の)説明責任はなお果たされていない」と強調した記事の隣には「『首相信用できない』61%」とする同社の世論調査結果を添えた。

2面では「『丁寧な説明』なき審議」との見出しで、安倍晋三首相らがいなかったことを指摘し、3面では「加計巡り説明不足」と政府側の説明は足りないと断じた。一方、加戸氏の発言は記事では報じず、審査の詳報では加戸氏の発言を引き出した自民党の青山繁晴参院議員の質問を掲載しなかった。

毎日新聞も「加計 論戦平行線」と1面トップで大きく報じる中、加戸氏の発言はなく、これでは地元の獣医学部誘致を文科省などが阻止してきたことが読者には分からない。東京新聞は社会面で加戸氏の発言を取り上げたが、同氏の発言の肝である「ゆがめられた行政が正された」の部分を記載しなかった。

一方、産経新聞と読売新聞、日経新聞は「行政がゆがめられた」と主張する前川氏に対し、加戸氏が「岩盤規制にドリルで穴を開けていただいた。『ゆがめられた行政が正された』が正しい発言ではないか」との発言を記事で取り上げた。

加戸氏は閉会中審査で「今までたくさんの取材があったが、申し上げたいことを取り上げてくれたメディアは極めて少なかった」と訴えていた。

【私の論評】前川喜平も鼻白む巨大既得権者である新聞・テレビ局(゚д゚)!

「青山繁晴」氏の参考人質問と、それに対する元文科省官僚で前愛媛県知事の「加戸守行」の参考人発言の動画全編を以下に掲載します。

ソース:参議院文教科学委員会、内閣委員会連合審査会(2017年7月10日)
青山繁晴(自由民主党こころ)、前川喜平(参考人 前文部科学事務次官)、加戸守行(前愛媛県知事)


加戸氏は旧文部省OBで、愛媛県知事を1999年から2010年まで3期12年務めた。今治市への獣医学部誘致をスタートさせた「当事者」で、今回の閉会中審査では与党側の求めに応じて参院での審議に参考人として出席しました。

青山繁晴氏
自民党の青山繁晴議員の質問で答弁に立った加戸氏はまず、
「10年前に愛媛県知事として今治市に獣医学部の誘致を申請した当時のことを思い出して、はなもひっかけて貰えなかった問題が、こんなに多くの関心を持って頂いていること、不思議な感じがいたします」
と皮肉の効いた一言。続けて、鳥インフルエンザやBSE(牛海綿状脳症)といった感染症対策の充実を大きな目的に獣医学部の誘致に取り組んだが、文科省への申請は一向に通らなかったとして、
「(前川氏の)『行政がゆがめられた』という発言は、私に言わせますと、少なくとも獣医学部の問題で強烈な岩盤規制のために10年間、我慢させられてきた岩盤にドリルで国家戦略特区が穴を開けて頂いたということで、『ゆがめられた行政が正された』というのが正しい発言ではないのかなと思います」と述べた。
加戸守行氏
さらに加戸氏は、四国では「獣医師が確保できない」現状もあったとして、国や専門団体が獣医学部誘致に反対することは「あまりにも酷い」と感じていたと説明。その上で、
「私の知事の任期の終わりの方に、民主党(当時)政権が誕生して『自民党じゃできない、自分たちがやる』と頑張ってくれた。(中略)ところが、自民党政権に返り咲いても何も動いていない。何もしないで、ただ今治だけにブレーキをかける。それが、既得権益の擁護団体なのかと、悔しい思いを抱えてきた」
と声を震わせて訴えました。

このように獣医学部新設をめぐる経過を説明した上で、加戸氏は、自身が訴えてきた獣医師の養成が進まない中で、現在「今治は駄目、今治は駄目、加計ありき」と言われることについて「何でかなと思ってしまう」との不満を漏らした。そして、
「私は、加計ありきではありません。たまたま、今治選出の議員と加計学園の事務局長がお友達だったからこの話が繋がってきて、飛びついた。これもダメなんでしょうか。お友達であれば、全てがダメなのか」
と主張。続く質問の答弁では、「本質の議論がされないまま、こんな形で獣医学部がおもちゃになっていることを甚だ残念に思う」とも述べました。

さらに加戸氏は、加計学園問題をめぐるメディア報道にも不満を漏らしました。これまでに受けた取材について、「都合のいいことはカットされて、私の申し上げたいことを取り上げて頂いたメディアは極めて少なかったことは残念」だと指摘。

その上で、国家戦略特区諮問会議の民間議員が6月13日に開いた記者会見で、加計学園の獣医学部新設のプロセスについて「正当」と結論付けたことを、加戸氏はYouTubeの動画で見たとして、
「これが国民に知ってもらうべき重要なことなんだなと思いました。(中略)あのYouTubeが全てを語り尽くしているのではないかな、と思います」
とも話していました。
加戸氏の発言がメディアの報道で取り上げられるケースが少ないという指摘は、ブログ冒頭の新聞記事の以前から、ネット上で多くの人が指摘していました。実際、自民党の三原じゅん子参院議員は7月11日14時過ぎに更新したツイッターで、
「昨日の閉会中審査の模様が報じられていますが、どの番組も平井卓也議員と青山繁晴議員の質疑はスルー。加戸元愛媛県知事も大事な事話してるのに、、、」
との不満を漏らしていました。

三原じゅん子氏
また、閉会中審査が行われた10日夜に放送された情報番組「ユアタイム」(フジテレビ系)で、番組MCを務めるタレントの市川紗椰さん(30)は、加戸氏の答弁について、
「私が印象的だったのは、加戸前愛媛県知事です。なんか、それがすべてだったのかなって気もした。経緯を丁寧に説明していて、辻褄が合うんですよね、議事録とかを見ると。なんか、いいのかなって、納得しちゃいました」
と好意的に捉えていました。

また、同番組では、国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏が、加計学園をめぐる問題を報じるメディアへの「苦言」を漏らす場面もありました。

モーリー氏は「(加計学園問題は)そもそも様々な観点があるし、メディアは、それを能動的に一番初めに取材できたと思う」とした上で、
「ただどうしても、野党による内閣への追及ということで、ショーアップに加担して尻馬に乗ってしまったように思います。だから下手をすると、今回信頼を失うのは自民党というよりも、メディアが敗者になる可能性があります」
と指摘。続けて、「(メディアは)本来の機能を果たしてこなかったんじゃないか、エンターテインメントと報道を混同してまったのではないか。そう自戒を込めて思います」とも話しました。

こうした発言を受け、市川さんは「この問題について話す人は、目の前にある材料というよりも、安倍総理が好きか嫌いかだけでポジションを取っているような...」との感想を漏らしていました。

情報番組「ユアタイム」(フジテレビ系)で、番組MCを務める
タレントの市川紗椰さん(左)、モーリー・ロバートソン氏(右)
昨日も加計学園に関する記事を掲載しましたが、その記事の結論は以下のようなものです。
私のように、当初から議事録などの情報にあたった側からすると、現在のいわゆる加計問題の野党による追求や、マスコミの報道は、非常に腹立たしいです。ただし、最初はそうだったのですが、最近では腹立たしさなど通り過ぎて、虚脱感すら感じます。

そうでない人にとっても、マスコミの報道や野党の追求をみていても、元々何も問題のないものに関して、問題ありとしているわけですから、かなり無理があり、最初のうちは注目を浴びても、その後はかなりの消化不良気味な状況にあると思います。

野党やマスコミ、こんなことを続けていると、多くの人から完璧に飽きられてしまうか、フェイクであることを見破られ、怒りを買い、視聴率や支持率などをかなり下げてしまうことになるでしょう。
まさに、モーリー・ロバートソン氏の「下手をすると、今回信頼を失うのは自民党というよりも、メディアが敗者になる可能性があります 」ということばとこの結論は同じ方向性を指していると思います。

マスコミは、市川紗椰さんや、モーリー・ロバートソン氏のようなスタンスの人は生き残るでしょうが、そうでない人は敗残者になる可能性が濃厚です。

現在の日本で獣医学部を新設することは重要な成長戦略であるですから、どこかの大学が特区の仕組みを活用して、新設の突破口をつくる必要がありました。加計学園は、福田内閣以来、何度もはねつけられながらも規制改革提案を続けました。

開きかけた岩盤規制の穴がまた閉じられそうになった時点で、加計学園は正当な手続きを踏んで設立申請を行いました。永年続けてきた、既得権による参入規制との闘いを続行したのは、正しい選択だったと私は思います。

過去にも、国交省と総務省に規制緩和を要求して勝ち取ってきたヤマト運輸や、厚労省に対して医薬品のネット販売解禁を勝ち取ったケンコーコムといった会社があります。

このような勇敢な会社は、彼らの成果にタダ乗りした企業に比べて、社会的に大きな賞賛を受けるにふさわしいと思います。加計学園は、官僚の岩盤規制と闘ったヤマト運輸やケンコーコムと同じ社会的役割を果たしました。

岩盤規制に立ち向かっていく事業者と自治体には、大変なエネルギーと時間と行政資源が必要です。メディアがそのような努力を応援せずに、今回の加計学園が突破口をつくる努力を潰す方向に加担してしまえば、どの事業者も自治体も規制改革など要望しなくなります。そうなれば、一番不利益を被るのは国民です。

ヤマト運輸のない生活、ケンコーコムのない生活、獣医学部のない生活など一端、それが設立されて、その便利さ、有り難さを知ってしまえば、誰も元にもどることなどできないはずです。これに反対するような報道をするということ、政治に働きかけることによって利権を得続けてきた前川喜平をはじめとする、既得権者たちが、最も望むことです。

現在のマスコミの本質は、既得権益者を守ることです。それは、今回の加計問題でも顕になりました。

そもそも、新聞はメディアは日刊新聞紙法で守られています。はすごく短い法律で、正式には「日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律」といいます。名前に書いてあることがこの法律のすべてで、「株式は譲渡されない」ということしか書いていません。これは、新聞の既得権の最大のものと言って良いです。



2015年の11月に、日経新聞が米フィナンシャル・タイムズを買収したことは記憶に新しい。日経新聞が、米フィナンシャル・タイムズの親会社だった英ピアソンから株式を買収して自らのグループに組み込んだのだが、これはごく普通の企業買収と言える。しかし、日経新聞のほうは株式が譲渡できないから、決して買収されない仕組みになっています。

普通の会社で普通に働いている人たちには馴染みがないでしょうが、新聞社に務める人間ならみんな知っている法律です。

しかし、新聞社の人間でこのことを堂々と記事で書く人間はいません。新聞は企業の不祥事があった時に「コーポレートガバナンスができていない」「社内制度が悪い」などと書き連ねまずが、一番ガバナンスができていないはその新聞社です。記者も、それが分かっているから日刊新聞紙法について恥ずかしくて書けないのでしょう。

この法律が、新聞社を堕落させていることに、記者も早く気がつくべきです。自分だけ安泰な身分では、他者に厳しいことがいえるはずないです。自分には甘く他者に厳しいのはありえないです。言論で勝負する人は、やせ我慢が必要なのです。だからこそ、今回の加計問題でも、前川のような明らかな既得験者に対して厳しいことがいえないのです。

それは、テレビも同じことです。テレビ局が既得権化している理由は、地上波放送事業への新規参入が実質的に不可能になっていることにあります。

総務省の認可を受けた場合にしかテレビ放送事業はできません。「放送法」によって免許制度になっているわけなのですが、このことがテレビ局を既得権まみれにしている最大の原因です。

放送法に関しては、たびたび問題になるが、結局何も変わっていない
はっきり言いましょう。「電波オークション」をやらないことが、テレビの問題なのです。電波オークションとは、電波の周波数帯の利用権を競争入札にかけることです。

日本では電波オークションが行われないために、電波の権利のほとんどを、既存のメディアが取ってしまっています。たとえば、地上波のテレビ局が、CS放送でもBS放送でも3つも4つチャンネルを持ってしまっているのもそのためです。

電波オークションをしないために利権がそのままになり、テレビ局はその恩典に与っています。テレビ局は「電波利用料を取られている」と主張するのですが、その額は数十億円程度といったところです。もしオークションにかければ、現在のテレビ局が支払うべき電波利用料は2000億円から3000億円は下らないでしょう。現在のテレビ局は、100分の1、数十分の1の費用で特権を手にしているのです。

この有様では、既存のテレビ局や新規参入者と互いに競い合って、より良い報道をしようなどという気持ちが失せるのも当然のことです。このようなことでは、新聞業界にもテレビ業界にも、ヤマト運輸やケンコーコムのような既成概念を打ち破るような企業などでてくるわけがありません。

これを知れば、新聞社やテレビ局など既得権者の代表ともいえる前川喜平も鼻白む既得権者であり、当然のことながら、まともな報道などできないという私の主張もご理解いただけるものと思います。

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2016年3月6日日曜日

政府発表の統計を精査しない新聞の怠慢〜なぜ同じ「賃金」なのに10万円も違うのか―【私の論評】根底には、金融・雇用政策が密接に結びついているという観念がないというお粗末さが(゚д゚)!

政府発表の統計を精査しない新聞の怠慢〜なぜ同じ「賃金」なのに10万円も違うのか

経済に限らず、安全保障にも疎い新聞は平気で奇妙奇天烈で、摩訶不思議な報道を繰り返す。
たとえば、過去の政府や内閣法制局が憲法解釈をコロコロ変えてきたという事実すら知らない。

朝日と毎日、どっちが正しい?

アベノミクスの最重要課題とも言える「賃金」について、二つの統計がまったく異なる数字を算出し、波紋を広げている。

一つは、2月18日に発表された2015年の「賃金構造基本統計調査」。これを報じた毎日新聞によると、フルタイム労働者の月額賃金は前年比1・5%増の30万4000円だったという。

一方、同月8日に発表された「毎月勤労統計調査」では、2015年におけるフルタイム労働者の月額賃金は前年比0・4%増の40万8416円とされている。こちらは、朝日新聞が報じた。

どちらの統計も、まとめたのは厚労省。にもかかわらずなぜ、これほど差があるのか。

はっきり言えば、統計に違いはない。報道した新聞各社の統計の見方が間違っているのだ。

より詳細に賃金統計を調べているのが、「賃金構造基本統計調査」である。年齢や勤続年数といった労働者個々人の情報まで調査されているため、各企業内の賃金構造がわかる。従業員10人以上の事業所のうち、約6万6000事業所を抽出。大規模な調査のため、年1回、毎年6月に調査している。

続いて、「毎月勤労統計調査」。これは「賃金構造基本統計調査」の簡易版だ。毎月行われるので、短期的な動向を知ることができる。従業員5人以上の事業所のうち、約3万3000事業所を抽出。個々の労働者のことではなく、事業所全体の状況を聞くことで回答負担を軽減している。

また、「賃金構造基本統計調査」における賃金とは、「所定内給与額」のことで、ボーナスや残業代は除く。一方、「毎月勤労統計調査」における賃金は「現金給与総額」のことで、ボーナスや残業代も含まれる。当然、後者の「賃金」のほうが高く算出される。

新聞本来の機能を果たしていない

このように、二つの統計が示しているのは、違う「賃金」の概念である。そのことは統計資料をきちんと読みさえすればわかるはずだが、新聞各社はそれを怠っているのだ。彼らはこれらの統計の中身を知らずに、同じ「賃金」という用語だけに注目して報じてしまっている。

  事実、「毎月勤労統計調査」が前年比で0・4%しか上がっていないとしてネガティブに扱われたのに対し、「賃金構造基本統計調査」が出ると1・5%も上がっているとポジティブに報じられた。

  なぜ、同じ「賃金」なのにこれほど違うのか。それを踏まえてきちんと説明するのが、新聞の本来の役割だろう。政府が流す情報だけを見てその中身を精査しないのでは、「御用メディア」と言われても仕方がない。

  ちなみに、賃金についての統計には、国税庁の「民間給与実態統計調査」と人事院の「職種別民間給与実態調査」もある。前者は一人でも給与所得者がいれば調査対象になる統計で、後者は従業員50人以上の企業が対象である。

  国税庁「民間給与実態統計調査」が小さな事業所を最も多く含み、「毎月勤労統計調査」、「賃金構造基本統計調査」と続く。人事院「職種別民間給与実態調査」は大企業が多くなる。

  人事院「職種別民間給与実態調査」は、公務員の給与を決める指標として使われる統計だが、本来なら国税庁「民間給与実態統計調査」を使うべきだろう。

【私の論評】根底には、金融・雇用政策が密接に結びついているという観念がないというお粗末さが(゚д゚)!

まずは、上の記事に掲載されている毎日新聞と、朝日新聞の記事そのものを以下に掲載します。

最初に毎日新聞の、2月19日の記事を掲載します。
非正規労働者、パートなど短時間労働者賃金も過去最高

厚生労働省は18日、雇用形態別の賃金実態を調べた2015年の賃金構造基本統計調査の結果を公表した。女性や非正規労働者、パートなどの短時間労働者の賃金が過去最高となり、同省賃金福祉統計室は「女性の賃金の伸びは勤続年数の増加や役職者の増加が、非正規は労働需給の逼迫(ひっぱく)が賃上げの要因になった」と分析している。

従業員10人以上の民間事業所に、昨年6月に支払われた手当などを含む賃金額を尋ね、5万785社から回答を得た。それによると、短時間労働者以外の一般労働者(非正規含む)の平均賃金は30万4000円(前年比1.5%増)だった。うち女性は24万2000円(同1.7%増)で過去最高額。男性を100とした男女の賃金格差は、過去最小だった昨年と同じ72.2だった。

雇用形態別の平均賃金は正社員が32万1100円(同1.1%増)。非正規は過去最高の20万5100円(同2.4%増)。短時間労働者も時給1059円(同1.7%増)で過去最高だった。【東海林智
次に朝日新聞の、2月8日の記事を掲載します。
実質賃金、4年連続マイナス パート比率増加など影響

 厚生労働省が8日発表した2015年の毎月勤労統計(速報)によると、物価の伸びを超えて賃金が上がっているかどうかを見る実質賃金指数が前年を0・9%下回り、4年連続でマイナスになった。企業の好業績が賃上げにつながる経済の「好循環」がまだ広がっていない実態が示された。 
 名目賃金にあたる労働者1人平均の月間の現金給与総額は31万3856円。2年連続で増えたものの、伸び率は0・1%にとどまった。一方で、15年の消費者物価指数(生鮮食品を含む、持ち家の帰属家賃はのぞく)は、14年4月の消費増税の影響が15年1~3月に出たほか、生鮮食品が値上がりしたこともあり、1・0%上昇した。このため、くらしの実感に近い実質賃金は0・9%のマイナスとなった。マイナス幅は前年の2・8%から縮まった。 
 名目賃金を働き方でみると、フルタイム労働者は前年比0・4%増の40万8416円だった。春闘でベースアップが相次ぎ、基本給などが7年ぶりにプラスになったためだ。パート労働者も、人手不足による時給の上昇などを反映し、0・5%増の9万7818円だった。 
 それでも名目賃金全体の伸びが0・1%にとどまったのは、賃金水準が低いパートが全労働者にしめる割合が30・46%と前年より0・64ポイント高まり、平均賃金を押しさげたためだ。ボーナスを中心とする「特別に支払われた給与」も0・8%減の5万4558円で、3年ぶりに減少に転じた。 
 実質賃金は昨年7月以降、いったんプラスに転じたが、11月から再びマイナスとなり、12月(速報)も0・1%減だった。 
 労働組合の連合の集計では、春闘での定期昇給分を含む平均賃上げ率は2年続けて2%を超えたが、労働者全体でみると賃上げが力強さを欠く状況が続いている。(末崎毅
 結局「賃金構造基本統計調査」における賃金とは、「所定内給与額」のことで、ボーナスや残業代は除く。一方、「毎月勤労統計調査」における賃金は「現金給与総額」のことで、ボーナスや残業代も含まれる。当然、後者の「賃金」のほうが高く算出されるということなのですが。

いずれの新聞社も、自らが報道している賃金の統計に関して、それがどのような統計に基づいているのか、全く説明していません。これでは、購読者は両方の記事を見れば、とまどってしまうことでしょう。

統計の取り方がわかっていなければ、その統計が何を意味するのかわからなくなってしまうのが当然です。

この2つの統計を見比べていると、フルタイム労働者の「所定内賃金」が上昇していて、「現金給与総額」はそうでもないという最近の傾向が良くわかります。

これは、とりもなおさず、雇用が改善されていることを示すものだと思います。人の雇用が増えているからこのような状況になるのです。雇用が悪化していれば、「所定内賃金」は下がり、「現金給与総額」は上昇傾向になるはずです。

それは、中企業以上などのことを考えると良く理解できます。所定内賃金を上げるということは、人を雇用するためには、上げなければならないということです。「現金給与総額」があまり上がらないということは、人を採用しているため、残業が以前よりは少なくなっていることと、新人の場合はボーナスやその他の手当も少ないです。

それともう一つ気になるのは、これは、ブログ冒頭の記事のフルタイム労働者とは直接は関係ないのですが、朝日新聞が未だに実施賃金の低下についてネガティブに掲載していることです。

そうして、朝日新聞の記事には、実質賃金が低下した原因について、誤解を招くような説明してあります。

それは、「賃金水準が低いパートが全労働者にしめる割合が30・46%と前年より0・64ポイント高まり、平均賃金を押しさげたためだ」という部分です。

しかし、この説明も不十分です。就業者数全体は、直近では増えています。しかし、朝日新聞はそれを説明せず、パートが全労働者にしめる割合が30.46%と前年より0.64ポイント高まったことだけを説明しています。

これだと、これを読む人は、就業者数全体はあまり変わっていないのに、パートが全労働者にしめる割合が増えたと錯覚してしまうおそれがあります。

毎日新聞と、朝日新聞の記事を比較すると、両方とも統計数値の意味などの説明が足りないという共通点はあるものの、毎日新聞のほうはよりポジティブであり、朝日新聞のほうはよりネガティブです。

そうして、毎日新聞や朝日新聞がこのように、二つの統計が示しているのは、違う「賃金」の概念に関して無頓着で、これらの統計の中身を知らずに、同じ「賃金」という用語だけに注目して報じてしまう理由としては、両方とも雇用のことを理解していないことが大きな原因なのではないかと思います。

そうして、雇用を理解してないのは、何もこの両新聞だけではありません。他のメディアもほとんど理解していないようです。これは、メディアだけではなく、政治家、特に野党の議員で理解をしている人ほとんどいません。それに、世間から雇用問題の識者とみられている人でも理解していない人が多いです。

特に、雇用と金融政策が密接に結びついているということを知らない人があまりに多すぎです。「金融政策イコール雇用政策」であるという点について、勉強不足の人が多いです。

難しい理論などわからなくても、少なくとも政治家やマスコミは「金融政策で失業をなくせる」ことだけでも理解すべきです。

これは、フィリップス曲線など見れば明らかです。フィリップス曲線とは、縦軸にインフレ率(物価上昇率)、横軸に失業率をとったときに、両者の関係は右下がりの曲線となるというものです。これは、フィリップスが発見したものですが、彼が初めて発表した時は縦軸に賃金上昇率を取っていたのでが、物価上昇率と密接な関係があるため、最近では縦軸に物価上昇率を用いることが多いです。

以下に日本のフリップス曲線を掲載しておきます。

フィリップス曲線

このグラフは、総務省の作成したものですが、これは、別に日本でなくても、どの国でもあてはまるものです。大まかに言ってしまえば、デフレは失業を増加させます。インフレは、失業を減少させます。

日本やアメリカのように、人口が億単位以上の国であれば、インフレ率が数%あがっただけで、他には一切何もしなくても突如として、雇用が数日約万人分増えます。

これは、厳然たる事実であって、これをインチキだという人は、まともなマクロ経済学を否定することになります。

実際に、米国のFRB(連邦準備制度制度理事会、日本の中央銀行である日銀に相当)は、雇用者数を増やし、失業率を下げるために金融政策を行っています。というより、雇用の悪化の原因はFRBの責任という観念がアメリカにはあります。そうして、これは、米国だけでなく、どこの先進国でも同じことです。過去においては、日本だけがそうではありませんでした。

ただし、雇用が増えても、雇用のミスマッチなども存在する場合もありますから、それで何もかも解決というわけではありません。さらに、インフレ傾向のときに、何らかの原因で、雇用が悪化した場合、金融緩和政策をとれは、ハイパーインフレになる可能性も否定できません。

しかし、過去の日本においては、金融緩和政策が雇用枠を広げるという観念が日本人にはほとんどなかったので、デフレを放置して、雇用を悪化させてしまいました。しかし、安倍政権になってからは、金融緩和策で、雇用者数は100万人増えています。


これに対して、メディアや野党などは、「雇用が増えたと言っても非正規ばかり」などといいますが、これは全く反論になっていません。正規だろうが、不正規だろうが職があるほうが、無職よりは良いのは明白です。それに、雇用が増加に転じるときには、まずは非正規から増えるのが当たり前です。

これに関しては、何も国レベルで考えなくても、企業レベルで考えても良く理解できます。企業が業績が良くて拡大傾向にあるときには、まずはパート・アルバイトの雇用が増えます。その後に正社員を増やします。

実質賃金に関しても、企業レベルで考えても良く理解できます。企業が業績が良くで、拡大傾向にあるときには、まずはパート・アルバイトの雇用が増え、次に正社員が増えるといいましたが、その時に実質賃金はどうなるかを考えてみてください。そこかららに、業績が良くなると、役員報酬や正社員の給料を上げるので、平均賃金も上がります。

パート・アルバイトが増えると、これも含めて会社の平均賃金を計算すると、平均賃金は当然下がります。次に、正社員を増やしたにしても、正社員も入社当初は賃金が低いので、やはり会社全体の平均賃金を計算すると、低くなります。

これとは、逆に企業が業績が悪くて、縮小傾向にあるときは、まずはパート・アルバイトの雇用が減ったり、解雇するため、その時には平均賃金は上昇します。そこからさらに悪化が続けば、役員報酬をカットしたり、正社員の賃金も下げたりするので、賃金全体が下がることになります。

企業が業容を拡大するときには平均賃金は下がる(゚д゚)! 

こんな理屈もわからないで、まともな会社の取締役会で、企業業績が上がっている最中に、平均賃金が下がった大変だなどといえば、「馬鹿」といわれておしまいになると思います。今のマスコミや政治家の多くも、まともな会社の人事部員としても務まらないということです。

今まさに、雇用が増えています。だからこそ、実質賃金が下がっているのです。これもいずれ上がっていきます。そうして、金融緩和をすると、雇用状況が良くなり、実質賃金が低下傾向になるということは、まともなマクロ経済学の教科書には既定の事実として掲載されています。

毎日新聞や、朝日新聞は、このようなことさえ、知らずに報道しているのだと思います。基本的な理屈がわかっていないので、ブログ冒頭のような記事を掲載して、読者を混乱させてしまうのです。

そうして、このような基本がわかっていないと、いずれまた頓珍漢で摩訶不思議な報道をすることになります。これは、今から予言しておきます。

特に、8%増税に関しては、GDPのマイナスなどかなり実体経済に悪影響を及ぼしています。たとえ、10%増税が見送られたにしても、そのままにしておけば、今のところあまり雇用に悪影響を及ぼしていませんが、そろそろ今年の夏くらいに雇用にも悪影響を及ぼすことが十分考えられます。

本当にそのようなことになった場合、マスコミは、8%増税の悪影響が雇用に悪影響を及ぼしたことなど報道せずに、アベノミクスが頓挫したなどと報道しかねません。

それだけならまだしも、マスコミ、識者、政治家、財務官僚などが徒党を組、8%増税を既定路線にしたごとく、アベノミクス大失敗で、金融緩和策などやめて、金融引き締めに転ずることにでもなってしまえば、またぞろ日本は、デフレスパイラルに逆戻りして、円高傾向になり、雇用がとんでもなく悪化していまうことになります。

マスコミはこのような報道は厳に謹んでいただきたいものです。何を報道にするにしても、そもそも、基本的な理屈がわかっていないので、統計数値に基づいてさえ、トンデモ報道になっていることが多いです。

それが、多くの人々の判断ミスを誘発し、日本がどんでもない方向に行くことだけは、避けたいものです。

そのために、マスコミの諸君は、マクロ経済の基本だけでも知っておくべきです。いまのマスコミは、例外は少数あるものの、マクロ経済、特に金融政策、財政政策についてあまりに知らなすぎます。そのため、ブログ冒頭の記事のように、官庁発表の統計などその背景を十分に吟味せず、部分的に掲載し、読者の誤解を招くようなことを平気でするか、特定の意図に誘導するため、あえてそのようなことをしています。

こんなことでは、全くメディアの意味がなくなります。こんなことを繰り返していれば、いずれ消え去るしかなくなります。

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