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2020年4月12日日曜日

「マスク戦争」の戦犯は誰なのか 中国、日本から“奪った”マスクを政治利用!? 有事に備え「中国依存」の脱却が急務だ―【私の論評】安倍政権は、中国から生産拠点を国内や第三国に移転する企業への支援を表明(゚д゚)!

「マスク戦争」の戦犯は誰なのか 中国、日本から“奪った”マスクを政治利用!? 有事に備え「中国依存」の脱却が急務だ

マスク姿の習近平

 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)はさらに加速しており、米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、死者が10日、世界全体で10万人を超えた。2日に5万人を上回って約1週間で倍増したかたちだ。日本でも同日、新たに過去最多となる634人の感染者が確認された。累計は6159人。無症状でも他人に感染させるリスクが指摘されるなか、日本だけでなく世界各国で「マスク不足」が深刻化しており、強奪・盗難事件まで発生している。前代未聞の「マスク戦争」を引き起こした戦犯は一体誰なのか。国際投資アナリストの大原浩氏が緊急寄稿で解き明かす。


日本政府が、「1世帯あたり2枚」の布マスクを郵送すると発表したことに対して、「アベガ-」などを中心に激しい反発が起こった。「アベノマスク」などという言葉も登場したようだ。

 これについては、中身のないウソを国民に広げるためにプロパガンダが洗練されているファシズム国家や共産主義国家と違って、日本人の伝統的考えである「良い仕事をすればみんな分かってくれる」という政府・官僚の広報対策の不備が責められるのは、ある意味仕方がない。しかし、この「布マスク2枚」は国家の全体戦略のあくまで一部だということを考えるべきであろう。

 現在有事にある日本国民は、ジョン・F・ケネディ大統領の「国があなたのために何ができるかを問わないでほしい。あなたが国のために何ができるかを問うてほしい」という名言を思い出すべきだ。

 特に悲しいのは、日本人同士がいがみ合うことである。

マスク不足の原因として、転売屋やドラッグストアに行列する高齢者などがやり玉にあげられる。それが事実である部分もあるが、根本的原因は「中国」または「中国依存」にある。


 新型コロナウイルスの感染が拡大する前、日本のマスクの年間生産・輸入量は約55億枚だったが、そのうち約44億枚が輸入品(=ほとんど中国製)で、国内の生産量は約11億枚しかなかった。つまり国産比率が20%程度なので、(輸入が止まって)国産だけで過去の需要を満たそうと思えば、これまでの5倍を生産しなければならない。政府の要請で国内各社が増産しても、5倍というのは厳しいハードルだ。

 しかも、現在はほとんどの国民がマスクを使用しているので、全国民の8割程度の1億人が毎日マスクを使用すれば、年間では365億枚と過去の需要の約7倍にも膨らみ、到底調達できない。

 だから、新型コロナウイルスの感染拡大が長期化するなか、日本政府が(病院などに医療用マスクを回すために)再使用が可能な布マスクを国民に送付して、有効利用を要請するのは理にかなっているのだ。

 気になるのは、過去44億枚あった輸入品の行方である。AFP通信(7日)などは「中国は医療用物資の輸出を制限しているのか」などと報じている。

 検証可能な数字はないのだが、現在の中国からの輸入は週に1000万枚程度ともいわれるから、単純計算で年間5億枚程度で、過去の輸入量から比べれば雀(すずめ)の涙だ。

 しかも、そのようにして事実上日本企業=日本国民から奪ったマスクを、中国側がマスク不足に苦しんでいる各国にもったいぶって売りつけるという政治利用を行っているとすれば許しがたいことである。

 例えば、フランスには、マスク10億枚の供給と引き換えに、第5世代(5G)移動通信システムについて、中国の華為技術(ファーウェイ)の導入を求めたと伝えられた(=中国側は否定)。

 日本国民が怒りをぶつけるべき相手は、初期に日本からのマスクの寄贈を受けたにも関わらず(=そもそも、寄贈には問題があったが)、恩をあだで返す(人の足元を見る)中国共産党だとしか思えない。

 輸入依存で危険なのはマスクだけではない。

 在宅医療現場で使用されている人工呼吸器の約98%が輸入製品である。その他の医療製品も輸入比率がかなり高い。世界中で医療製品の取り合いが起こっており、この状況は非常に危険だ。

 食糧調達にも暗雲が立ち込めている。日本農業新聞によれば、4月3日時点でロシア、カンボジア、カザフスタンなど11の食糧輸出国が、自国への供給を優先する輸出規制を行っている。

 世界の穀物供給センターである米国でも状況は厳しい。新型コロナウイルス感染症の広がりによる国境封鎖・都市封鎖などによって外国人を始めとする労働者の確保が難しくなっているほか、配送トラック・配送センターの業務にも大きな支障が出ている。

 新型コロナウイルス感染は早く終息してほしい。もしそれが実現されなければ、われわれはまさに「戦時」の中で暮らさなければならないのだ。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】安倍政権は、中国から生産拠点を国内や第三国に移転する企業への支援を表明(゚д゚)!

中国への過度の依存について、政府も手を拱いているわけではありません。これに対応スべく安倍総理は行動を開始しています。

日本政府は、新型コロナウイルスの感染拡大で製造業のサプライチェーンの分断を受け、中国などから生産拠点を国内や第三国に移転するための支援を表明しました。米上院議員らはこの報道を受けて、米国もこの動きに追従すべきだと発言しました。脱中国依存の流れの始まりとしています。

この移転支援策は、4月7日に発表された緊急経済対策の一つとして盛り込まれました。総額は2435億円で、国内回帰分が2200億円、残り235億円が第三国への移転分として用意されます。

安倍首相は3月5日、官邸で開かれた未来投資会議でこの支援策について、次のように述べています。「中国などから日本への製品供給の減少による我が国のサプライチェーンへの影響が懸念される中で、一国への依存度が高い製品で付加価値の高いものは、我が国への生産拠点の回帰を図る。そうでないものも、一国に依存せず、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国などへの生産拠点の多元化を図る」


マスクがなくなったということで、マスクに関しては中国に依存していることが、多くの人に知られるようにはなりました。しかし、日本がどの程度中国に依存しているのかも明らかにしておく必要があります。

中国の主要な輸出先(2017年)は、1位米国、2位香港、3位日本、4位韓国の順。トップ4の顔触れは、20年前の1997年と全く同じです。ただ、日本は低下しており、輸出先としてのシェア(同)は6%と10年間で3分の1に低下しました。

急浮上したのが5位ベトナムです。同国への輸出額は過去20年間で約70倍、同10年間で6倍に急増、中国の対世界輸出額が各々13倍、2倍だったのに比べ大きな伸びを記録しました。この結果、ベトナムは中国の輸出先として10年前(2007年)の22位から急上昇しました。

世界貿易に占める中国の中国のシェア
上のグラフからすると、中国の対日輸出・輸入のしエアは年々減っていたことがわかります。この流れを加速することは、十分できそうです。米国もドイツも低下傾向です。

さらに、GDPに占める貿易の割合は、日本は29.3%、米国は20.56%です。韓国は、70.31%です。日本や、米国は元々貿易依存度が低いので、中国依存をやめることは比較的簡単です。とはいいながら、コロナ禍においては、マスクなどが品薄になるわけですから、早急にすすめるべきでしょう。

米国においては、ジョシュ・ホーリー(Josh Hawley)米上院議員は4月9日、日本政府が中国市場から撤退する企業を支援するとの報道をリツイートして、「米国も同じことをすべきだ」(1万8千いいね)と主張しました。トム・コットン(Tom Cotton)上院議員もまた、同記事を共有して「今後、世界でもっと中国に反旗を翻す動きが出てくるだろう」(3万5千いいね)とコメントしました。

中共ウイルス(武漢肺炎)の大流行は経済に大きな打撃を与え、多国籍企業は全体主義体制下にある中国市場からの撤退の動きが強まっています。調査会社によると、米国人の7割以上が米国のビジネスの中国市場撤退を予想しています。米国の上院議員は、米国も日本を見習って、米国のビジネスマンの復帰を支援するための資金を配分すべきだと考えています。

グローバル製造業コンサルティング会社・カーニー(Kearney)が4月7日に発表した第7回目の年次「回帰指数」(Reshoring Index)によると、2019年の米国国内製造業のシェアは、中国を含むアジア14カ国の生産品のシェアを大幅に上回りました。中国からの輸入が減り、自国生産品の流通が増加したことを示しています。

回帰指数は、アジア14カ国からの輸入品と、米国製品の変化を調査しています。 中国、台湾、香港、マレーシア、インド、ベトナム、タイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、バングラデシュ、パキスタン、スリランカ、カンボジアの14カ国を含めます。

報告書を作成したパトリック・バン・デン・ボッシェ氏は、回帰指数の高まりについて次のように分析しました。米国の生産者は30年前、国内のコスト高を理由に生産と製造、調達を中国に移したましたが、米中貿易戦によって高関税のリスクにさらされています。また、中共ウイルス(COVID-19)の流行が非常事態宣言を招く危機的な状況にあるなか、米国企業は予測不能な経済ショックに対応できるかどうかを考慮しています。

カーニーの年次報告書は、中国発のウイルス肺炎の蔓延により、海外企業の中国生産活動や貿易の縮小、撤退が加速しており、パンデミック前の状態に戻る可能性は低いと指摘しています。また、パンデミックの影響で大きな打撃を受けた企業は、リスクを分散し、中国市場への依存から脱出するために「購買戦略とサプライチェーンを真剣に考え直すことになる」と書いています。

中国は世界の自動車部品、玩具、電子製品だけでなく、ペニシリン、抗生物質、鎮痛剤、手術用マスク、医療機器など多くの医薬品や医療品も生産しています。

ドナルド・トランプ大統領の貿易顧問ピーター・ナバロ(Peter Navarro)氏は2月、フィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、今回のウイルス蔓延の発生は米国が中国やその他の国からの医薬品や医療品の輸入への依存度を減らすための「警鐘」(wake-up call)であると語りました。

企業活動においても、物品の購入先が一箇所の会社に集中していれば、その会社が業績不審になったり、倒産した場合はもろに影響を被ることになります。分散するか、企業にとって必要不可欠なものは、内製化も検討すべきです。

国と国との関係も同じことです。中国一国に依存しすぎると、これからも何が起こるかわかりません。早急に改めるべきです。ただ、そうはいっても、中国に進出している企業がそれを実行するつもりがなければ、それは実現できません。

中国政府としては産業の高度化を進めるためにも日本企業にもっと来てもらいたいという意向は非常に強いでしょうから、日本政府の補助金に対して、「中国政府もAI(人工知能)や5Gなどハイテク分野において日本企業に補助金を出し、中国にとどまるようインセンティブを付けることも想定されます。

そうなると、対中国冷戦を挑んでいる米国は、そのような日本企業に対して直接制裁を加えるようになるかもしれません。いずれの企業にとっても、対中国依存は危険であると自覚すべきです。

そんなことはないだろうと、高をくくっている企業もあるかもしれませんが、予めコロナ禍も予想できなかったように、コロナ禍後の世界も何が起こるかは全く予想できません。とはいいながら、世界秩序は大きく変わるのは間違いないです。リスクはなるべく減らしておくべきです。

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