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2018年3月17日土曜日

【トランプ政権】米で「台湾旅行法」成立、政府高官らの相互訪問に道 中国の反発必至―【私の論評】アジアの脅威は北朝鮮だけではなく台湾を巡る米中の対立もあり(゚д゚)!


トランプ大統領

 米ホワイトハウスによるとトランプ大統領は16日、米国と台湾の閣僚や政府高官の相互訪問の活発化を目的とした超党派の「台湾旅行法案」に署名し、同法は成立した。

 同法は、閣僚級の安全保障関連の高官や将官、行政機関職員など全ての地位の米政府当局者が台湾に渡航し、台湾側の同等の役職の者と会談することや、台湾高官が米国に入国し、国防総省や国務省を含む当局者と会談することを認めることを定めている。

 また、台湾の実質的な在米大使館である台北経済文化代表処などの台湾の組織や団体に米国内での経済活動を奨励する条項も盛り込まれている。

 米国は1979年の米台断交と台湾関係法の成立後、米台高官の相互訪問を自主的に制限してきた。台湾旅行法の成立で、トランプ大統領の訪台や蔡英文総統のワシントン訪問が理屈の上では可能になる。

 法案は1月9日に下院を通過し、2月28日に上院で全会一致で可決された。今月16日がトランプ氏が法案に署名するかどうかを決める期限となっていた。

 米国務省は、台湾旅行法が米台関係の変化を意味するものではないと説明しているが、台湾を不可分の領土とみなす中国が米台の接近に危機感を抱き、「一つの中国」原則に反するとの理由で猛反発してくるのは確実だ。

【私の論評】アジアの脅威は北朝鮮だけではなく台湾を巡る米中の対立もあり(゚д゚)!

トランプ米大統領と蔡英文台湾総統

「台湾旅行法」により、米台首脳会談も可能になりました。私は、いずれ米対首脳会談が開催されることになると思います。これは、中国にとっては一大事です。

中国側は、同法には以前から反対していました。同法が「一つの中国」の原則に反するとして強く反発していました。中国外交部の華春瑩報道官は、3月1日の定例記者会見で、「台湾旅行法のいくつかの条項は、法的拘束力はないものの、“一つのの中国の原則”、米中間の3つのコミュニケに反する。中国は強い不満と抗議を表明する」などと述べていました。

人民日報系の環球時報は、3月1日付け社説で「経済的には台湾は中国に依存している。軍事的には、人民解放軍の強さが台湾海峡の軍事的・政治的情勢を根本的に変えた」、「台湾の独立勢力は、米国が用いることのできる対中カードである。中国は、同勢力に的を絞った対応をし得る。台湾にとり、米国の中国に対する敵意に巻き込まれるのは良い選択肢ではない」などと、台湾を恫喝していました。

米国側の台湾を支持する最近の重要な動きには、台湾旅行法以外にも、昨年12月にトランプ大統領が署名し成立した、2018会計年度の国防授権法(2018国防授権法)もあります。

会見する上院多数党院内総務のマコーネル議員

2018国防授権法には、米艦船の高雄など台湾の港への定期的な寄港、米太平洋軍による台湾艦船の入港や停泊の要請受け入れ、などの提言が盛り込まれています。なお、オバマ大統領の下で成立した2017国防授権法でも、米台間の高級将校、国防担当高官の交流プログラムが盛り込まれており、今回の台湾旅行法の内容は目新しいものではありません。

2018国防授権法に関しては、在米中国大使館公使が「米国の艦船が台湾の高雄港に入港する日が、中国が台湾を武力統一する日になろう」と、異例の威嚇的発言をしています。中国側が、米国による台湾への軍事的関与に対して極めて敏感になっていることを示しています。

「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平政権にとっては、中台の「統一」は、政権の存在理由にかかわる最重要事項であると言えます。今後とも、硬軟両様で働きかけを強めていくものと考えられます。

台湾旅行法は、今後の米中関係、中台関係にとっての一つの対立点になるのは間違いないようです。

最近の米中関係を振り返っみると、昨年12月にトランプ大統領が2018国防主権法に署名してから1週間もたたない12月18日、トランプ政権は「国家安全保障戦略」を公表し、ここで中国、ロシアを米国の影響力、価値や資産への競争相手とするとともに、米国が維持する国際秩序の変更を迫る「修正主義勢力」と位置づけました。

米国はこの内容を台湾に事前通告し、米国が台湾の自衛のための武器を供与する義務を負っていることを明記しました。台湾は、これを好意的に受け止めています。さらに、同月反中派ランドール・シュライバー氏を国防総省のアジア太平洋問題担当の次官補に任命し、この1月、連邦議会に正式に通告しました。そうして、今回の「台湾旅行法案」への署名です。

ランドール・シュライバー氏

たて続けに、台湾と米国の結びつきを強化する動きを見せています。これは、トランプ大統領が中国に対する対決姿勢を明らかにしたということです。

トランプ政権の台湾の地位見直しが進むとなると、当然ながら、今後注目されるのは中国の出方です。今後、中国の台湾に対する武力統一を含めた全面的な軍事攻撃はありえないでしょう。米国が介入することは必至だからです。そのため、軍事的介入ではなく台湾の親中派を利用して、台湾が自ら中国側に帰属すように強力仕向けることでしょう。

かといって、中国が傍観することもないでしょう。立場上、習近平に傍観は許されないでしょう。もし傍観すれば、国内の反習近平派が勢いづくことになります。そのため、部分的な衝突を含め相当な緊張が予想されます。

ただし、究極的な力と力の勝負では、まだ米国の優位は疑いないです。かといって、オバマ時代の米国とは異なり、トランプ大統領がオバマ大統領のように結局中国の面子を立てて、中国が矛を収めることになるとは限りません。

1996年の台湾海峡危機で米空母2隻に圧倒された屈辱をまだ忘れていない中国にとって、さらに屈辱感を増大させる結果になるでしょう。米国側から見れば、中国は習近平の独裁国家となったことですし、従来のように親中的な勢力は弱体化しています。

中国は米国に到達するICBMを持つ核武装もしています。さらに、南シナ海や、尖閣でも、他の地域でも、手を緩めることはありません。

北朝鮮問題に目を奪われている中で、東アジアでは次なる摩擦の火種が明日にも火を吹きそうです。

北朝鮮の脅威に関しては、南北会談を行っても、米朝を仲介する韓国が結局仲人口のような結果になり、そもそも米朝会談が実現しないとか、実現しても物別れに終わる可能性も大きいです。というより、私は、たとえ米朝会談が実現して一見良い結果が出たとしても、これは数年の期間では有名無実になるとみています。

そうなると最悪、北朝鮮と米国、中国と米国の争いが、同時にアジアに緊張をもたらすこともあり得ます。

日本としては、今からこの最悪の事態に備えるべきです。

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