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2018年8月12日日曜日

洋上での裏取引…北の「瀬取り」阻止へ極東監視 英海軍揚陸艦「アルビオン」 ―【私の論評】覇権・侵略国家中国を囲い込み追い詰める、日米英三国同盟(゚д゚)!

洋上での裏取引…北の「瀬取り」阻止へ極東監視 英海軍揚陸艦「アルビオン」 


晴海埠頭に入稿した英海軍揚陸艦「アルビオン」写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 英海軍揚陸艦「アルビオン」が3日、東京・晴海埠頭(ふとう)に入港した。国民的アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズに、同名の強襲揚陸艦が登場することから、駐日英国大使館は「ガンダム0083は搭載していませんが、たくさんの皆さんのお越しをお待ちしています」とツイートし、話題を集めた。その効果もあってか、4、5日に行われた一般公開には約6000人が見学に訪れた。

 今春から、英国海軍は極東地域で大規模な活動を行っている。

 米海軍横須賀基地に4月11日、英海軍フリゲート艦「サザーランド」が入港した。同月27、28日の2日間にわたり、海上自衛隊と共同訓練を実施している。「アルビオン」もこれに続き、5月から極東展開し、任務の合間に、沖縄や横須賀、そして晴海に寄港している。

4月11 日米海軍横須賀基地に入港した英海軍フリゲート艦「サザーランド」

 英国海軍遠征の目的は「北朝鮮に対する経済制裁の実効性を強める」ことにある。

 国連安保理事会は、北朝鮮が「核・ミサイル開発」を行えないよう、根本となる資金を断つことを決めた。これで表の貿易はできなくなったが、洋上で貨物船などと合流し、燃料などを受け取る裏取引「瀬取り」を行っている。違法取引の中には、武器に転用できる物品が含まれている疑惑すらある。

 そこで、日本と米国、英国、オーストラリア、カナダは、監視活動を強化している。日本政府は今年に入り、4件の「瀬取り」の事例を公表したが、実際は何十倍もの取引が行われている。

 中国・上海の東方約250キロの場所に、「瀬取り銀座」と呼ばれる海域があったが、監視の目が厳しくなったため、分散してしまった。

 ドナルド・トランプ米政権は、6月の米朝首脳会談後、話し合いを重視する立場をとった。北朝鮮の不法行為に対し、強硬な対応を取れない事情もある。

 そこで、英国海軍がイニシアチブを取ろうとしている。フリゲート艦「アーガイル」も加えた3隻体制で、極東地域をパトロールしている。

 英海軍が数ある保有艦艇の中から、「アルビオン」を派遣してきた意味も大きい。

 多数の装甲車や最大約700人もの海兵隊などを輸送できる。水陸両用戦を得意とする揚陸艦が極東エリアを動き回ることは、中国にとっても面白くない。今月中には、陸上自衛隊と島嶼(とうしょ)防衛訓練を実施する計画もある。

 昨年より日英防衛協力は確実に進んでいる。今後は、新世代戦闘機や空対空ミサイルJNAAMの開発などを、日英が協力していく方針だ。

英国の航空母艦HMSクイーン・エリザベス号(手前)

 2020年までには、英空母「クイーン・エリザベス」の太平洋展開も予定されている。そのころまでには、日英防衛協力体制はさらに深化していることだろう。

 ■菊池雅之(きくち・まさゆき) フォトジャーナリスト。1975年、東京都生まれ。講談社フライデー編集部を経てフリーに。陸海空自衛隊だけでなく、米軍やNATO軍、アジア各国の軍事情勢を取材する。著書に『自衛隊の戦力-各国との比較』(メディアックス)、『陸自男子-リクメン』(コスミック出版)など。

【私の論評】覇権・侵略国家中国を囲い込み追い詰める、日米英三国同盟(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にある、英海軍揚陸艦「アルビオン」の日本への寄港は、新日英同盟の復活を象徴するものだといえます。

現代の世界は第一次世界大戦前と酷似しているという英国の歴史家は多いです。大国が衰退を始め、それに乗じて別の国家が膨張し、混沌(こんとん)と不確実性が世界中に蔓延しています。

欧州では統合を率いてきた英国がEU(欧州連合)からの離脱を決めました。ロシアはウクライナ領のクリミアを事実上併合、第二次世界大戦後初めて中東に軍事介入し、バルト海では軍の活動を活発化させています。

一方、アジアでは中国が南シナ海の島々に軍を駐屯させ、空母の建造を推進、太平洋の西部にまで海軍を展開させ、海のシルクロード構想のもと海洋進出を着々と進めています。

そして、米国のオバマ前政権は、世界の警察官としての座から退くことを表明、海外の紛争に関わることに消極的になっていました。

こうした時代にあって、最も重要なことは同盟の相手を増やし、安全保障の傘を大きく広げることです。19世紀の英国の著名な政治家であり、2回にわたって首相を務めたヘンリー・ジョン・テンプルは1848年、英国下院での演説の中で、「英国には永遠の味方もいなければ、永遠の敵もいない。あるのは永遠の利益だけだ」と述べました。

混沌とした時代の中で国家が生き抜くためには敵と味方を峻別(しゅんべつ)し、堅固な戦略的自律を維持することだとテンプルは説いたのです。

そして、その言葉は現代の日本に対して同盟関係の再編を宿題として提起しています。

2017年8月30日、英国のテリーザ・メイ首相が日本を訪問しました。アジア諸国の歴訪でもなく、メイ首相はただ日本の安倍晋三首相らと会談するためにだけ、日本にまで出向いて来たのです。その目的は、英国と日本の安全保障協力を新たな段階に押し上げることにありました。

安倍総理と日本を訪問したメイ首相(右)  訪日のためだけにユーラシアを
越えるほど、メイ英首相にとって日本との安全保障協力は重要だ

 英国は1968年、英軍のスエズ運河以東からの撤退を表明しました。以来、英国はグローバルパワー(世界国家)の座から退き、欧州の安全保障にだけ注力してきました。

ところが、その英国は今、EUからの離脱を決め、かつてのようなグローバルパワーへの返り咲きを目指しています。そして、そのために欠かせないのが、アジアのパートナー、日本の存在です。日本と英国は第二次世界大戦前後の不幸な時期を除いて、日本の明治維新から現代に至るまで最も親しい関係を続けてきました。

日本の安倍首相とメイ首相は「安全保障協力に関する日英共同宣言」を発表し、その中で、「日英間の安全保障協力の包括的な強化を通じ、われわれのグローバルな安全保障上のパートナーシップを次の段階へと引き上げる……」と述べ、日英関係をパートナーの段階から同盟の関係に発展させることを宣言しました。

そして、「日本の国際協調主義に基づく『積極的平和主義』の政策と英国の『グローバルな英国』というビジョンにより」と述べ、英国がグローバルパワーとして、日本との同盟関係を活用して、インド太平洋地域の安定に関与していく方針を明確にしました。

この方針は、2017年12月にロンドンで開催された日英の外務・防衛担当閣僚会議、通称2プラス2に引き継がれ、両国間で詳細に協議されました。協議の後に発表された共同声明によれば、日英両国はインド太平洋地域の安定のため、英国が近く配備する予定の最新型空母をこの地域に展開させることや、北朝鮮の脅威に対して協調して対処すること、自衛隊と英軍との共同演習を定例化し、部隊間の交流を深めていくこと、さらに、将来型の戦闘機の共同研究を進めることなど23項目について合意しました。

昨年末にロンドンで開催された日英の外務・防衛担当閣僚会議

河野太郎外相は会談後の記者会見で、「英国がスエズの東に戻ってくることを大いに歓迎する」と述べ、英国のグローバルパワーへの復帰を強く促したのである。

このように2017年は日英の安全保障関係がパートナーの関係から同盟国の段階へと劇的に進展した年となりました。日英が互いを「同盟国」と公式に呼び合ったのは、1923年に日英同盟が解消して以来、おそらく初めてのことでしょう。

ただ、多くの人にとっては日英関係が突然接近したかのように思えたことでしょうが、実はかなり以前から日英の安全保障面での接近は始まっていました。

例えば、英国政府と関係の深いシンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は2012年1月、日英安全保障協力を側面支援するため、東京にアジア本部を開設し、活動を始めました。

そして13年10月、英国からエリザベス女王の次男であるアンドルー王子を招聘(しょうへい)して、東京で初めての日英安全保障会議を開催しました。この会議には日本から安倍首相が参加し、日本が英国との安全保障協力を強化していく方針を表明しました。この日英安全保障会議は、以後、ロンドンと東京で定期的に開催されています。

また、歴史的につながりの深い海上自衛隊と英海軍は、先達(せんだつ)を務めるように日英の部隊間の交流を活発化させました。15年2月、横須賀の海上自衛隊自衛艦隊司令部に英海軍から連絡将校が派遣され、常駐するようになりました。

英海軍から連絡将校が派遣されるのはかつての日英同盟解消以来、初めてのことでした。また、ソマリア沖で、海賊対策の任務に当たっている多国籍の海軍部隊、第151統合任務部隊(CTF−151)の司令官に海上自衛隊の海将補が着任するときは、慣例のように英海軍から補佐役として参謀長が派遣されるようになりました。

この動きは16年から一気に加速しました。10月、英空軍の戦闘機、ユーロファイターの部隊が日本の三沢基地に飛来し、航空自衛隊と共同訓練を行いました。米国以外の空軍戦闘機の部隊が、日本本土に展開して、自衛隊と共同訓練を実施したのはこれが初めてでした。

同じ時期、陸上自衛隊富士学校のレンジャーが英国のウェールズの基地で、英陸軍や米海兵隊の部隊といっしょに偵察活動の共同訓練を実施しました。17年5月には、陸上自衛隊、英陸軍、米海兵隊、それにフランス海軍が参加した日米英仏の共同演習も初めて実施されました。多国籍の演習ではありましたが主導しているのは日英でした。

三沢基地から飛び立つ英空軍のユーロファイター。手前は航空自衛隊のF2

そして、18年、英国陸軍の部隊が日本の富士山麓の自衛隊演習場に派遣され、陸上自衛隊との初めての共同演習を行うことや、海上自衛隊と英海軍の対潜水艦共同演習も予定されています。

一方、こうした部隊間の交流を進めるための法整備も順調に進められ、17年1月、日英の部隊同士で互いの補給物資を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)が結ばれたほか、部隊が相手国を訪問する際の法的地位を定めた訪問部隊地位協定(VFA)の締結についても現在、日英間で作業が進んでいます。

このように急ピッチで進む日英協力ですが、「復活」とは言っても、厳密に言えば、かつての旧日英同盟とはその目的も構造もまるで違います。21世紀の世界にふさわしい新しいタイプのものです。

旧日英同盟はユーラシアのランドパワー(内陸国家)であるロシアが領域外に拡大しようとするのを、シーパワー(海洋国家)である英国と日本が連帯してこれを阻止しようとする軍事同盟でした。1902年に最初の条約が調印され、その後2回、条約が更新され、23年に解消されるまで、20年余りにわたって続きました。

当時の日本はロシア牽制のため、大陸への進出を果たしたいと考えており、ロシアが満州に関心を示していることを警戒していました。他方、英国もロシアが中国や中東地域へ進出を図ろうとしていることを警戒していました。

しかし、当時の英国は南アフリカでの戦争に注力しており、アジアに力を注ぐ余裕がなかったため、新興国だった日本の力を借りる必要があったのです。それは、日本にとって国際社会での日本の地位を高めるという効果が期待されましたし、事実、そのようになりました。

04年に起きた日露戦争で日本が勝利すると、日本は史上初めて欧州を下したアジア国家として世界から注目を集めるようになりました。ただ、その後、米国が日本の台頭を警戒するようになり、旧日英同盟は23年、解消しました。

日本が近代国家として初めて結んだ旧日英同盟が極東の新興国、日本をアジアの大国に押し上げ、日本の国際社会での地位を揺るぎないものにした歴史的意義は極めて大きいです。

これに対して、21世紀の新日英同盟は戦争に備える軍事同盟ではありません。海洋安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティ、インテリジェンス、人道災害支援、平和維持活動、防衛装備品開発など、多様化する安全保障のあらゆる分野で包括的に協力し合う関係づくりを目指すものです。

それでは、日英が同盟を結び、安全保障面での協力を強化することは、世界の安定にとって、どのような意義があるのでしょうか。

東西冷戦時代から今日に至るまで、アジア太平洋地域では、米国を中心に、日本、韓国、フィリピン、タイ、オーストラリアがそれぞれ別個に同盟を結んでいました。

それは「ハブ・アンド・スポークの同盟」と呼ばれ、米国が常にハブであり、スポークがその相手国でした。これに対して、欧州のNATOのように複数の国が互いに同盟を結び、協力し合う関係を、「ネットワーク型の同盟」と呼びます。

ハブ・アンド・スポーク同盟の最大の問題は、協力し合う相手が常に一国しかないために、国同士の利害が一致しない場合、機能不全に陥ることです。また、二国間の力のバランスに大きな差があると、弱い側が常に強い側に寄り添う追従主義に陥りがちであり、スポークの国は戦略的に自律するのが難しいです。そのため、2000年代以降、スポークの国同士の協力が急速に進展してきました。

具体的には、日本では安倍政権発足以来、政府の首脳陣がほとんど毎月のように東南アジア、南アジア、さらに欧州諸国に足を伸ばし、安全保障協力を拡大しようとしていましたし、自衛隊も、オーストラリア、インドなどと定期的に共同の演習を実施しています。

また、日米とオーストラリア、日米と韓国、日米とインドといった三国間での安全保障協力も進んでいます。米国との同盟関係を共有する国同士が個別に同盟関係を築き、米国との同盟を支えようとしているのです。

ただし、このようなネットワーク型の同盟には、NATOにとっての米英がそうであるように、コア(中軸)となる二国間関係が必要です。日英同盟はまさにそのコアになりうるものです。

以前このブログでも述べたように、日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っています。

ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本

日本は中国の海洋進出を警戒していますし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙(たいじ)しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのす。

また、日英はともに米国の重要な戦略的パートナーです。日英はそれぞれ米国と深い同盟関係で結ばれ、情報や軍事、外交などあらゆる分野で深い協力関係にあります。つまり、日英が今、同盟関係に進もうとするのは歴史の偶然ではなく、地政学的な必然です。

英国は核保有国であり、国連安保理の常任理事国であり、米国と肩を並べる最強最大の情報機関を持ち、ロイターやBBCのような世界に影響力のある報道機関があり、国際石油資本を持ち、ロイズ保険機構のような世界の保険料率を決定する機能を持ち、さらに、世界の金融センターであるシティーを持ちます。日本が、このような国家と「同盟国」と呼び合える関係を築くことは極めて大きな国益です。

ただ、そこで重要なのは、日英共にその関係を既存の米国との同盟関係とどう調和させるかという問題です。そして、それは結局、日英米の三国による同盟関係の追求に発展するでしょう。

それは覇権の三国同盟ではなく、新しい安全保障の枠組みとしての「平和と安定の正三角形」でなくてはならないのです。そこにこそ、新日英同盟の本当の意味があり、それが実現すれば、日本の国際的地位と外交力は飛躍的に向上することになるでしょう。

他方、それは日本にとって、日米同盟だけに依存してきた現状から脱し、第二次世界大戦後初めて戦略的自律を手に入れることを意味します。日本は安全保障や外交面で常に独自性を問われることになるでしょう。

英国はNATO、EU、英連邦など多層的に同盟を維持し、これらを使い分けながら自律を維持してきました。日本も米国、英国との「正三角形」を軸に、アジア太平洋諸国との同盟をバランス良く組み合わせ、多層的に同盟を構築、運用しなくてはならないでしょう。

そうして、現代の日米英同盟は、中国の海洋進出を防止するものでもあります。

米国はすでに中国に対して貿易戦争を開始しました。これは、武力にはよらないものの、現在の国際秩序を破壊して、世界の少なくとも半分を自らの価値観によって傘下におさめようとする中国の野望を挫こうとするものです。

日米英同盟に対抗するために、中国はさらに軍事予算を増やすなどの対抗措置が必要になります。さらに大きな軍事予算を費やすことになり、それがさらに貿易戦争ともあいまって、中国を弱体化することになります。

日本はこれからも、日米英同盟を強化し、それを軸として、周辺諸国との同盟・協力を強化し、徹底的に中国を追い込むべきです。

中国が現体制を変えるというのなら、これ迎え入れるべきですが、そうでないというのなら、経済的にも安全保障の面でも、日米英同盟は、徹底的に中国を追い込み、経済的に弱体化させ、中国が海洋進出しようにもできないようにすることになるでしょう。

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