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2019年4月9日火曜日

英海軍と日本の海上自衛隊、東シナ海で「瀬取り」北船舶摘発―【私の論評】韓国が北朝鮮と同じ扱いを受けるようになる日が近づいている(゚д゚)!

英海軍と日本の海上自衛隊、東シナ海で「瀬取り」北船舶摘発


米沿岸警備隊(USCG)所属の大型警備艦「バーソルフ」

 北朝鮮による違法な海上での積み替え「瀬取り」を監視するために派遣された米沿岸警備隊(USCG)所属の大型警備艦「バーソルフ」(バーソルフ級カッター、4500トン級)が6日、釜山作戦基地に入港した。

 これは、済州民軍複合港に先月末入港し、韓国海洋警察庁と北朝鮮の制裁違反船舶に対する検問の合同訓練を実施してから約1週間後のことだ。

 外交消息筋は7日、「これは『バーソルフ』が韓半島(朝鮮半島)周辺を巡航していることを意味する。制裁違反を日常的に行っている北朝鮮と、これを黙認する周辺国に、米国が強い警告メッセージを送ったものだ」と語った。

 韓国海軍関係者は同日、「『バーソルフ』の釜山入港は乗組員の休息や物資補充のためのものだ」と説明した。先月の済州入港時のように合同訓練は予定されていないということだ。しかし、外交関係者たちは「バーソルフ」が1週間後に再び韓国の港に停泊したこと自体に注目しているようだ。

 外交消息筋は「『バーソルフ』は米国の徹底した制裁履行の意志を象徴している。文在寅(ムン・ジェイン)政権が開城工業団地や金剛山観光再開などの制裁緩和を推進している中、これに対する遠回しの警告メッセージが含まれている」と話した。

 現在、釜山・甘川港には瀬取りにより少なくとも4300トンの軽油を北朝鮮に供給した疑いで韓国籍の船舶が6カ月間抑留されている。

 「バーソルフ」は今年1月、母港の米カリフォルニア州アラメダ海軍基地を出港、この2カ月間、韓半島周辺を巡航して対北朝鮮制裁違反の船舶を監視・摘発してきた。米本土の沿岸警備を任務とする沿岸警備隊の警備艦が東アジアにまで移動してきて作戦を展開するのは異例だ。

 こうした中、国際社会は北朝鮮制裁監視網を強化するため、「連合海上作戦」に乗り出すなど、協力システムの構築に力を入れている。

 日本の外務省が6日に明らかにしたところによると、英海軍は先月、東シナ海で日本の海上自衛隊と連合作戦を展開、瀬取りをしていたと疑われる北朝鮮タンカー「セビョル」と船籍不明の船を摘発した。毎日新聞は外務省関係者の話として、「海上自衛隊とイギリス海軍が連携して制裁違反が疑われる北朝鮮船舶を摘発したのは初めてだ」と報道した。

【私の論評】韓国が北朝鮮と同じ扱いを受けるようになる日が近づいている(゚д゚)!

上の記事にあるように、海上自衛隊が英国軍と協力して北朝鮮のタンカーと船籍不明の船を摘発しました。日英の連携による瀬取りの摘発は史上初とのことで朝鮮日報の報道には焦りが感じられます。

このことに加え米国の沿岸警備隊所属の大型警備艦が韓国に入港したことも文在寅政権を怯えさせる材料になります。

そのような兆候は他にもあります。

最悪に突き進む韓国と日本の外交的不和が経済界にも広がる兆しが現れています。昨年貿易規模が850億ドルで3位に達するほど経済的に緊密な両国関係が揺らぎ続ければ両国ともに大きな影響を受けるだろうという懸念が出ています。

韓日財界によると昨年11月の韓国大法院(最高裁)の徴用被害者賠償判決後、日本企業と取引する韓国企業が通関と決済遅延など大小の影響を受けています。地方のある金属加工メーカーは2月から日本の取引企業からの代金を1カ月ずつ遅く受け取っています。この会社の関係者は「10年以上取引しているが入金遅延は今回が初めて。取引先が『韓国に警告すべき』という日本政府のメッセージを聞いたという」と話したといいます。

日本国内の韓国企業支社の相当数も「貿易と本国への送金作業が複雑になった」と口をそろえています。主要空港と港湾で要求する通関書類が普段より2倍近く増え、件別審査もやはり細かくなったといいます。大企業のある日本法人長は「日本で20年近く働いたがいまほど厳しかったことはなかった」と話しました。

日本の国税庁の動きも尋常でないという話が出ています。日本で旅行会社を運営する社長は「最近韓国人が社長の中小企業のうち1000万円以上の追徴金命令を受けた業者もいる」と話しています。駐日韓国企業連合会の金正洙(キム・ジョンス)会長は「韓国企業家は毎日悪化する雰囲気を体感している」と伝えました。

韓国でも「戦犯企業」のレッテルが付けられた三菱など日本製品の不買運動の動きまで起きています。京畿道(キョンギド)議会は小中高校が保有する日本製の備品に「戦犯企業が生産した製品」と書かれたステッカーを付着する条例案を推進したりこともしました。仁荷(インハ)大学国際通商学科のチョン・インギョ教授は「韓日が互いに報復を始めれば両国ともに回復しにくい影響を受けるだろう」と警告しました。

◇日本、韓国企業に税務調査や入金遅延…外交破裂音に新規取引に影響

「過去には韓日対立が起きても両国経済系は水面下で根強い関係を維持していました。いまは日本の財界だけでなく知韓派すら冷淡な反応を見せており心配です」(A経済団体会長)

政界で始まった韓日対立が経済分野に拡散し企業家の不安が大きくなっています。日本政府が相次いで警告した「経済報復」が可視化する兆しを見せているためです。過去最悪の韓日関係にともなう打撃は韓国側が大きいだろうという分析が多いです。

◇日本「経済報復」可視化するか



先月、麻生太郎副首相兼財務相が韓国に対する報復措置に言及してから日本の公務員が忖度に出たという解釈が出ています。また、日本製鉄(旧新日鉄住金)、三菱重工業など日本の代表企業が「戦犯企業」と呼ばれ韓国世論のターゲットになっただけに日本財界が反韓戦線を共同構築しているという観測もあります。

日本との日常的な貿易取引ですら送金遅延や書類補完指示が急増しているのが代表的な事例です。主要韓国企業の日本国内新規取引は事実上「オールストップ」状態です。早稲田大学国際教養学部の朴相俊(パク・サンジュン)教授は「韓国は米国、中国の次に大きい日本製品購入者だが、韓国企業と似た条件を掲げる外国企業が現れれば現在の雰囲気では韓国の代わりに第三国の企業を選ぶ可能性がある」と雰囲気を伝えました。

NHKや読売新聞など主要日本メディアは徴用被害者判決後続措置が出るたびに主要ニュースとして扱っています。ヤフージャパンなどオンライン上に公開された韓国関連ニュースには「韓国と断交すべき」などのコメントが数千件ずつ書き込まれています。

韓国では半導体価格の下落等により、輸出の減少傾向が4カ月間続いている

輸出の割合が高い韓国企業は揺らぐ韓日関係のため戦々恐々としています。工場稼動に必須である日本の先端部品素材を調達するのに支障が生じかねないためです。石油化学業界では生産工程に使われる触媒技術を日本が保有しており関連技術を輸入する際に困難がないかと懸念する雰囲気です。

触媒は低付加価値原料を高付加価値商品に変えるのに核心的な役割をします。業界関係者は「日本の技術を基に工場を作ったならば触媒も日本の技術が入ったものを使わなければならない。日本政府が強制的に技術供給を中断すれば韓国での生産に支障が生じかねない」と心配しています。

携帯電話に使われる高付加価値化学素材も「弱点」です。電子情報素材企業が日本から原料を輸入できなければ生産問題に直結するというのが業界の懸念です。ディスプレー企業の懸念も小さくないです。キヤノントッキなど有機EL工程の必須部品を供給する日本企業への依存度が絶対的であるためです。

自動車業界では過去最悪である韓日関係がルノーサムスン釜山(プサン)工場にも致命打を与えかねないという指摘を出しています。ルノーサムスンは日産のスポーツ多目的車(SUV)「ローグ」を受託生産しています。

日産は先月年間委託台数を従来の10万台から6万台に減らしました。日産が掲げた公式の理由は釜山工場の労使対立だが、一部では悪化した韓日関係のせいもあると解釈しています。

委託契約が終わる9月以降どれだけの生産を任せるかもまだ決まっていません。ルノーと同盟関係の日産が最後まで反対すれば釜山工場で日産車両を受託生産するのは事実上不可能という観測が支配的です。

凍りついた韓日関係が現代(ヒョンデ)重工業の大宇(デウ)造船海洋買収過程に障害として作用しかねないとの観測も出ています。両社が合併するには各国政府の企業結合審査を通過しなくてはならないですが、特に日本の公正取引委員会の審査を通過するのが容易でないかもしれないと指摘されています。

韓日経済人間交流は「ひとまず中断」状態です。来月ソウルで開く予定だった韓日経済人会議は突然9月以降に延期されました。韓日経済人会議は両国の最高経営責任者300人が参加する交流の場で1969年から1年も欠かさず開かれてきました。

全国経済人連合会の権泰信(クォン・テシン)常勤副会長は「主に政治次元で議論された多様な韓日問題が経済と民間交流に転移しており心配になる」と話しています。



さらに、日本が韓国に対してTPPに加入させないというのも、報復の一つと考えられます。日欧EPAが発効して、韓国がTPPに加入していないという状況は韓国にとってはかなり不利です。

2019年2月1日、日本とEU(欧州連合)のEPA(経済連携協定)が発効しました。これを受け、韓国・聯合ニュースは「韓国に緊張が走っている」と伝えました。

記事は「EPA発効により、世界の国内総生産(GDP)の3分の1を占め、人口6億3500万人の世界最大規模の自由貿易地帯が誕生した」とし、「EUはEPAが完全に履行されれば、EUから日本に輸出される物品の97%の関税が撤廃され、年間1兆3000億ウォン(約1266億円)相当の関税免除を受けられる」と説明しています。

日欧EPAが発効する前は、韓国とEUは、EPAを締結していたため、日本製品には関税がかかっていましたが、韓国製品にはかからず、相対的に有利でしたが、日欧EPAが発効した後には、日本製品にも関税がかからず、日韓は対等に競争ができるようになりました。さらに、日韓は産業構造が似ているということもあります。

TPPに関しては、TPP加入国同士では非関税もしくは低関税で取引できますが、韓国はTPPに加入していないので相対的に不利になります。

韓国が、北朝鮮への擦り寄せ姿勢を改めず、中国に対しての従属姿勢を改めなければ、これは米国に対する裏切り行為であり、米国は「バーソルフ」を派遣するだけではなく、さらに強力な制裁に踏み切るでしょう。

米国は一方的に北朝鮮との融和を推し進めようとする韓国を、本当の意味で信用できなくなりつつあります。そうした状況が進むと、米国は韓国と連携して北朝鮮政策を進めることは難しくなります。米国政府内では、北朝鮮との融和を目指す韓国の前のめり姿勢への不安が高まっています。韓国が北朝鮮と同じ扱いを受けるようになる日が近づいていると言えます。

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2018年8月12日日曜日

洋上での裏取引…北の「瀬取り」阻止へ極東監視 英海軍揚陸艦「アルビオン」 ―【私の論評】覇権・侵略国家中国を囲い込み追い詰める、日米英三国同盟(゚д゚)!

洋上での裏取引…北の「瀬取り」阻止へ極東監視 英海軍揚陸艦「アルビオン」 


晴海埠頭に入稿した英海軍揚陸艦「アルビオン」写真はブログ管理人挿入 以下同じ

 英海軍揚陸艦「アルビオン」が3日、東京・晴海埠頭(ふとう)に入港した。国民的アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズに、同名の強襲揚陸艦が登場することから、駐日英国大使館は「ガンダム0083は搭載していませんが、たくさんの皆さんのお越しをお待ちしています」とツイートし、話題を集めた。その効果もあってか、4、5日に行われた一般公開には約6000人が見学に訪れた。

 今春から、英国海軍は極東地域で大規模な活動を行っている。

 米海軍横須賀基地に4月11日、英海軍フリゲート艦「サザーランド」が入港した。同月27、28日の2日間にわたり、海上自衛隊と共同訓練を実施している。「アルビオン」もこれに続き、5月から極東展開し、任務の合間に、沖縄や横須賀、そして晴海に寄港している。

4月11 日米海軍横須賀基地に入港した英海軍フリゲート艦「サザーランド」

 英国海軍遠征の目的は「北朝鮮に対する経済制裁の実効性を強める」ことにある。

 国連安保理事会は、北朝鮮が「核・ミサイル開発」を行えないよう、根本となる資金を断つことを決めた。これで表の貿易はできなくなったが、洋上で貨物船などと合流し、燃料などを受け取る裏取引「瀬取り」を行っている。違法取引の中には、武器に転用できる物品が含まれている疑惑すらある。

 そこで、日本と米国、英国、オーストラリア、カナダは、監視活動を強化している。日本政府は今年に入り、4件の「瀬取り」の事例を公表したが、実際は何十倍もの取引が行われている。

 中国・上海の東方約250キロの場所に、「瀬取り銀座」と呼ばれる海域があったが、監視の目が厳しくなったため、分散してしまった。

 ドナルド・トランプ米政権は、6月の米朝首脳会談後、話し合いを重視する立場をとった。北朝鮮の不法行為に対し、強硬な対応を取れない事情もある。

 そこで、英国海軍がイニシアチブを取ろうとしている。フリゲート艦「アーガイル」も加えた3隻体制で、極東地域をパトロールしている。

 英海軍が数ある保有艦艇の中から、「アルビオン」を派遣してきた意味も大きい。

 多数の装甲車や最大約700人もの海兵隊などを輸送できる。水陸両用戦を得意とする揚陸艦が極東エリアを動き回ることは、中国にとっても面白くない。今月中には、陸上自衛隊と島嶼(とうしょ)防衛訓練を実施する計画もある。

 昨年より日英防衛協力は確実に進んでいる。今後は、新世代戦闘機や空対空ミサイルJNAAMの開発などを、日英が協力していく方針だ。

英国の航空母艦HMSクイーン・エリザベス号(手前)

 2020年までには、英空母「クイーン・エリザベス」の太平洋展開も予定されている。そのころまでには、日英防衛協力体制はさらに深化していることだろう。

 ■菊池雅之(きくち・まさゆき) フォトジャーナリスト。1975年、東京都生まれ。講談社フライデー編集部を経てフリーに。陸海空自衛隊だけでなく、米軍やNATO軍、アジア各国の軍事情勢を取材する。著書に『自衛隊の戦力-各国との比較』(メディアックス)、『陸自男子-リクメン』(コスミック出版)など。

【私の論評】覇権・侵略国家中国を囲い込み追い詰める、日米英三国同盟(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事にある、英海軍揚陸艦「アルビオン」の日本への寄港は、新日英同盟の復活を象徴するものだといえます。

現代の世界は第一次世界大戦前と酷似しているという英国の歴史家は多いです。大国が衰退を始め、それに乗じて別の国家が膨張し、混沌(こんとん)と不確実性が世界中に蔓延しています。

欧州では統合を率いてきた英国がEU(欧州連合)からの離脱を決めました。ロシアはウクライナ領のクリミアを事実上併合、第二次世界大戦後初めて中東に軍事介入し、バルト海では軍の活動を活発化させています。

一方、アジアでは中国が南シナ海の島々に軍を駐屯させ、空母の建造を推進、太平洋の西部にまで海軍を展開させ、海のシルクロード構想のもと海洋進出を着々と進めています。

そして、米国のオバマ前政権は、世界の警察官としての座から退くことを表明、海外の紛争に関わることに消極的になっていました。

こうした時代にあって、最も重要なことは同盟の相手を増やし、安全保障の傘を大きく広げることです。19世紀の英国の著名な政治家であり、2回にわたって首相を務めたヘンリー・ジョン・テンプルは1848年、英国下院での演説の中で、「英国には永遠の味方もいなければ、永遠の敵もいない。あるのは永遠の利益だけだ」と述べました。

混沌とした時代の中で国家が生き抜くためには敵と味方を峻別(しゅんべつ)し、堅固な戦略的自律を維持することだとテンプルは説いたのです。

そして、その言葉は現代の日本に対して同盟関係の再編を宿題として提起しています。

2017年8月30日、英国のテリーザ・メイ首相が日本を訪問しました。アジア諸国の歴訪でもなく、メイ首相はただ日本の安倍晋三首相らと会談するためにだけ、日本にまで出向いて来たのです。その目的は、英国と日本の安全保障協力を新たな段階に押し上げることにありました。

安倍総理と日本を訪問したメイ首相(右)  訪日のためだけにユーラシアを
越えるほど、メイ英首相にとって日本との安全保障協力は重要だ

 英国は1968年、英軍のスエズ運河以東からの撤退を表明しました。以来、英国はグローバルパワー(世界国家)の座から退き、欧州の安全保障にだけ注力してきました。

ところが、その英国は今、EUからの離脱を決め、かつてのようなグローバルパワーへの返り咲きを目指しています。そして、そのために欠かせないのが、アジアのパートナー、日本の存在です。日本と英国は第二次世界大戦前後の不幸な時期を除いて、日本の明治維新から現代に至るまで最も親しい関係を続けてきました。

日本の安倍首相とメイ首相は「安全保障協力に関する日英共同宣言」を発表し、その中で、「日英間の安全保障協力の包括的な強化を通じ、われわれのグローバルな安全保障上のパートナーシップを次の段階へと引き上げる……」と述べ、日英関係をパートナーの段階から同盟の関係に発展させることを宣言しました。

そして、「日本の国際協調主義に基づく『積極的平和主義』の政策と英国の『グローバルな英国』というビジョンにより」と述べ、英国がグローバルパワーとして、日本との同盟関係を活用して、インド太平洋地域の安定に関与していく方針を明確にしました。

この方針は、2017年12月にロンドンで開催された日英の外務・防衛担当閣僚会議、通称2プラス2に引き継がれ、両国間で詳細に協議されました。協議の後に発表された共同声明によれば、日英両国はインド太平洋地域の安定のため、英国が近く配備する予定の最新型空母をこの地域に展開させることや、北朝鮮の脅威に対して協調して対処すること、自衛隊と英軍との共同演習を定例化し、部隊間の交流を深めていくこと、さらに、将来型の戦闘機の共同研究を進めることなど23項目について合意しました。

昨年末にロンドンで開催された日英の外務・防衛担当閣僚会議

河野太郎外相は会談後の記者会見で、「英国がスエズの東に戻ってくることを大いに歓迎する」と述べ、英国のグローバルパワーへの復帰を強く促したのである。

このように2017年は日英の安全保障関係がパートナーの関係から同盟国の段階へと劇的に進展した年となりました。日英が互いを「同盟国」と公式に呼び合ったのは、1923年に日英同盟が解消して以来、おそらく初めてのことでしょう。

ただ、多くの人にとっては日英関係が突然接近したかのように思えたことでしょうが、実はかなり以前から日英の安全保障面での接近は始まっていました。

例えば、英国政府と関係の深いシンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)は2012年1月、日英安全保障協力を側面支援するため、東京にアジア本部を開設し、活動を始めました。

そして13年10月、英国からエリザベス女王の次男であるアンドルー王子を招聘(しょうへい)して、東京で初めての日英安全保障会議を開催しました。この会議には日本から安倍首相が参加し、日本が英国との安全保障協力を強化していく方針を表明しました。この日英安全保障会議は、以後、ロンドンと東京で定期的に開催されています。

また、歴史的につながりの深い海上自衛隊と英海軍は、先達(せんだつ)を務めるように日英の部隊間の交流を活発化させました。15年2月、横須賀の海上自衛隊自衛艦隊司令部に英海軍から連絡将校が派遣され、常駐するようになりました。

英海軍から連絡将校が派遣されるのはかつての日英同盟解消以来、初めてのことでした。また、ソマリア沖で、海賊対策の任務に当たっている多国籍の海軍部隊、第151統合任務部隊(CTF−151)の司令官に海上自衛隊の海将補が着任するときは、慣例のように英海軍から補佐役として参謀長が派遣されるようになりました。

この動きは16年から一気に加速しました。10月、英空軍の戦闘機、ユーロファイターの部隊が日本の三沢基地に飛来し、航空自衛隊と共同訓練を行いました。米国以外の空軍戦闘機の部隊が、日本本土に展開して、自衛隊と共同訓練を実施したのはこれが初めてでした。

同じ時期、陸上自衛隊富士学校のレンジャーが英国のウェールズの基地で、英陸軍や米海兵隊の部隊といっしょに偵察活動の共同訓練を実施しました。17年5月には、陸上自衛隊、英陸軍、米海兵隊、それにフランス海軍が参加した日米英仏の共同演習も初めて実施されました。多国籍の演習ではありましたが主導しているのは日英でした。

三沢基地から飛び立つ英空軍のユーロファイター。手前は航空自衛隊のF2

そして、18年、英国陸軍の部隊が日本の富士山麓の自衛隊演習場に派遣され、陸上自衛隊との初めての共同演習を行うことや、海上自衛隊と英海軍の対潜水艦共同演習も予定されています。

一方、こうした部隊間の交流を進めるための法整備も順調に進められ、17年1月、日英の部隊同士で互いの補給物資を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)が結ばれたほか、部隊が相手国を訪問する際の法的地位を定めた訪問部隊地位協定(VFA)の締結についても現在、日英間で作業が進んでいます。

このように急ピッチで進む日英協力ですが、「復活」とは言っても、厳密に言えば、かつての旧日英同盟とはその目的も構造もまるで違います。21世紀の世界にふさわしい新しいタイプのものです。

旧日英同盟はユーラシアのランドパワー(内陸国家)であるロシアが領域外に拡大しようとするのを、シーパワー(海洋国家)である英国と日本が連帯してこれを阻止しようとする軍事同盟でした。1902年に最初の条約が調印され、その後2回、条約が更新され、23年に解消されるまで、20年余りにわたって続きました。

当時の日本はロシア牽制のため、大陸への進出を果たしたいと考えており、ロシアが満州に関心を示していることを警戒していました。他方、英国もロシアが中国や中東地域へ進出を図ろうとしていることを警戒していました。

しかし、当時の英国は南アフリカでの戦争に注力しており、アジアに力を注ぐ余裕がなかったため、新興国だった日本の力を借りる必要があったのです。それは、日本にとって国際社会での日本の地位を高めるという効果が期待されましたし、事実、そのようになりました。

04年に起きた日露戦争で日本が勝利すると、日本は史上初めて欧州を下したアジア国家として世界から注目を集めるようになりました。ただ、その後、米国が日本の台頭を警戒するようになり、旧日英同盟は23年、解消しました。

日本が近代国家として初めて結んだ旧日英同盟が極東の新興国、日本をアジアの大国に押し上げ、日本の国際社会での地位を揺るぎないものにした歴史的意義は極めて大きいです。

これに対して、21世紀の新日英同盟は戦争に備える軍事同盟ではありません。海洋安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティ、インテリジェンス、人道災害支援、平和維持活動、防衛装備品開発など、多様化する安全保障のあらゆる分野で包括的に協力し合う関係づくりを目指すものです。

それでは、日英が同盟を結び、安全保障面での協力を強化することは、世界の安定にとって、どのような意義があるのでしょうか。

東西冷戦時代から今日に至るまで、アジア太平洋地域では、米国を中心に、日本、韓国、フィリピン、タイ、オーストラリアがそれぞれ別個に同盟を結んでいました。

それは「ハブ・アンド・スポークの同盟」と呼ばれ、米国が常にハブであり、スポークがその相手国でした。これに対して、欧州のNATOのように複数の国が互いに同盟を結び、協力し合う関係を、「ネットワーク型の同盟」と呼びます。

ハブ・アンド・スポーク同盟の最大の問題は、協力し合う相手が常に一国しかないために、国同士の利害が一致しない場合、機能不全に陥ることです。また、二国間の力のバランスに大きな差があると、弱い側が常に強い側に寄り添う追従主義に陥りがちであり、スポークの国は戦略的に自律するのが難しいです。そのため、2000年代以降、スポークの国同士の協力が急速に進展してきました。

具体的には、日本では安倍政権発足以来、政府の首脳陣がほとんど毎月のように東南アジア、南アジア、さらに欧州諸国に足を伸ばし、安全保障協力を拡大しようとしていましたし、自衛隊も、オーストラリア、インドなどと定期的に共同の演習を実施しています。

また、日米とオーストラリア、日米と韓国、日米とインドといった三国間での安全保障協力も進んでいます。米国との同盟関係を共有する国同士が個別に同盟関係を築き、米国との同盟を支えようとしているのです。

ただし、このようなネットワーク型の同盟には、NATOにとっての米英がそうであるように、コア(中軸)となる二国間関係が必要です。日英同盟はまさにそのコアになりうるものです。

以前このブログでも述べたように、日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っています。

ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本

日本は中国の海洋進出を警戒していますし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙(たいじ)しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのす。

また、日英はともに米国の重要な戦略的パートナーです。日英はそれぞれ米国と深い同盟関係で結ばれ、情報や軍事、外交などあらゆる分野で深い協力関係にあります。つまり、日英が今、同盟関係に進もうとするのは歴史の偶然ではなく、地政学的な必然です。

英国は核保有国であり、国連安保理の常任理事国であり、米国と肩を並べる最強最大の情報機関を持ち、ロイターやBBCのような世界に影響力のある報道機関があり、国際石油資本を持ち、ロイズ保険機構のような世界の保険料率を決定する機能を持ち、さらに、世界の金融センターであるシティーを持ちます。日本が、このような国家と「同盟国」と呼び合える関係を築くことは極めて大きな国益です。

ただ、そこで重要なのは、日英共にその関係を既存の米国との同盟関係とどう調和させるかという問題です。そして、それは結局、日英米の三国による同盟関係の追求に発展するでしょう。

それは覇権の三国同盟ではなく、新しい安全保障の枠組みとしての「平和と安定の正三角形」でなくてはならないのです。そこにこそ、新日英同盟の本当の意味があり、それが実現すれば、日本の国際的地位と外交力は飛躍的に向上することになるでしょう。

他方、それは日本にとって、日米同盟だけに依存してきた現状から脱し、第二次世界大戦後初めて戦略的自律を手に入れることを意味します。日本は安全保障や外交面で常に独自性を問われることになるでしょう。

英国はNATO、EU、英連邦など多層的に同盟を維持し、これらを使い分けながら自律を維持してきました。日本も米国、英国との「正三角形」を軸に、アジア太平洋諸国との同盟をバランス良く組み合わせ、多層的に同盟を構築、運用しなくてはならないでしょう。

そうして、現代の日米英同盟は、中国の海洋進出を防止するものでもあります。

米国はすでに中国に対して貿易戦争を開始しました。これは、武力にはよらないものの、現在の国際秩序を破壊して、世界の少なくとも半分を自らの価値観によって傘下におさめようとする中国の野望を挫こうとするものです。

日米英同盟に対抗するために、中国はさらに軍事予算を増やすなどの対抗措置が必要になります。さらに大きな軍事予算を費やすことになり、それがさらに貿易戦争ともあいまって、中国を弱体化することになります。

日本はこれからも、日米英同盟を強化し、それを軸として、周辺諸国との同盟・協力を強化し、徹底的に中国を追い込むべきです。

中国が現体制を変えるというのなら、これ迎え入れるべきですが、そうでないというのなら、経済的にも安全保障の面でも、日米英同盟は、徹底的に中国を追い込み、経済的に弱体化させ、中国が海洋進出しようにもできないようにすることになるでしょう。

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