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2020年7月4日土曜日

82日連続!中国尖閣侵入で暴挙続く 分散行動や追い回しなど“新たな手口”も 一色正春氏「このままでは日本はやられ放題」―【私の論評】尖閣での中国の暴挙は、未だ第一列島線すら確保できない焦りか!(◎_◎;)

82日連続!中国尖閣侵入で暴挙続く 分散行動や追い回しなど“新たな手口”も 一色正春氏「このままでは日本はやられ放題」

中国武装公船

 沖縄県・尖閣諸島の周辺海域で、中国の武装公船による暴挙が続いている。領海侵犯や接続水域への侵入を連日繰り返すだけでなく、日本漁船を追い回したり、複数艦船による「分散行動」といった“新たな手口”で、海上保安庁による警備態勢をすり抜けようとしているのだ。4日午前も、中国公船2隻が領海侵犯を行った。日本政府には「遺憾砲」以外に、中国側を阻止する方法はないのか。元海上保安官の一色正春氏が読み解いた。

 「東京と北京双方の外交ルートで、(中国側に)厳重に抗議している」「(接近の)動きを直ちにやめ、速やかに領海から退去するよう強く求めている」「引き続き、冷静に毅然(きぜん)として対応していきたい」

 菅義偉官房長官は3日の記者会見で、こう語った。

 海上保安庁によると、4日朝の時点で、尖閣周辺で中国公船4隻が確認できるといい、うち2隻が領海内に入ったため、退去を命じたという。尖閣周辺での領海侵入は3日連続となり、今年で15日目。尖閣周辺への侵入も82日連続となる。

 民主党の野田佳彦政権が2012年9月、十分な配慮もなく尖閣諸島を国有化して以降、同海域の緊張は日に日にエスカレートしている。

 関係者によると、中国側は日本側を上回る軍艦並みの「大型船」を続々と就役させているうえ、公船4隻が2隻ずつに分かれて航行する「分散行動」を繰り返しているという。

 第11管区海上保安本部(那覇)は「(中国公船が)まとまっていても、分散していても、こちらは必要な隻数を配備して対応している」と語るが、現場の負担が増えるのは間違いない。

 前出の一色氏は「中国側が、尖閣周辺海域での行動を増やせば練度は上がる。分散行動をとれば、海上保安庁は基本的に警戒に当たることは難しくなり、より高度な守備を求められる」と解説した。

 日本政府は対抗策として、中国公船が日本漁船を追い回した卑劣な映像の公開を検討している。衛藤晟一領土問題担当相は「尖閣諸島をめぐる情勢の情報発信をより一層、効果的に行っていかなければならない」と語ったが、外務省などが慎重姿勢を崩していないという。

 尖閣沖中国漁船衝突事件(10年9月)後、当時の民主党政権が公開を渋るなか、一色氏は動画サイト「ユーチューブ」に映像を流出させ、国民に「中国の脅威」を伝えた。

 日本政府の対応について、一色氏は「このままでは具体的に止める手段もなく、日本はやられ放題になりかねない」と警鐘を鳴らした。

【私の論評】尖閣での中国の暴挙は、未だ第一列島線すら確保できない焦りか!(◎_◎;)

かつて当時の石原慎太郎・東京都知事が主導して魚釣島などを東京都が購入して恒久施設を建造しようとしました。すなわち「誰の目にも明らかな形で」日本の領有権を示そうとしたのです。

沖ノ鳥島に上陸した石原都知事(当時)

その際には、日本政府は慌てて尖閣諸島を国有化して、東京都の企てを阻止しました。 その後も日本政府は、「誰の目にも明らかな形で」日本の領有権を示すような努力をしていません。そうして、海上保安庁巡視船による尖閣周辺海域のパトロールを強化して、日本国民による魚釣島への上陸を禁止し、接近すら制限している状態が続いていました。 米国政府も日本政府が中国側を刺激するような行動をとらないことを暗に支持している状態が続いていました。

たとえば米海軍は、沖縄返還(1972年5月15日)以前より、尖閣諸島の黄尾嶼(こうびしょ)と赤尾嶼(せきびしょ)を射爆撃場に指定し、かつては砲爆撃訓練などに使用していました。沖縄返還後、日中間での尖閣諸島をめぐる紛争が表面化したものの、1978年8月12日に日中平和友好条約が締結されると、米国政府も尖閣諸島での砲爆撃訓練を実施することによって中国側を刺激することを差し控える方針に転換しました。

そのため日中平和友好条約が締結される前後から今日に至るまで、黄尾嶼と赤尾嶼の射爆撃場は全く使用されていません。 そして過去10年来、中国の海洋戦力が飛躍的に強化されてきたのに対抗して、日米海洋戦力の結束をアピールするために、尖閣諸島周辺海域での日米合同軍事訓練を実施すべきであるという声が、米海兵隊や米海軍の対中強硬派から上がることが少なくありませんでした。ところが、米国政府はそのような中国側を刺激する行動を許可することがない状態が続いていました。

米国政府がそのような立場を取っている理由は推測可能です。尖閣問題の一方当事者が同盟国の日本であるとはいえ、第三国間の領域紛争に巻き込まれたくないからです。米国の伝統的外交方針の一つが、第三国間の領域紛争には中立を保つことを鉄則としている以上、当然といえました。

実際に米国政府は、これまで尖閣諸島が日本領であると明言していません。ただし、日米安全保障条約が存在しているため、尖閣諸島に対して全く言及しないわけにもいきませんでした。。そこで歴代の米政府高官たちは、「アメリカ政府は尖閣諸島に対して日本の施政権が及んでいるとの認識を持っている。そして、施政権を日本が保持している以上は、尖閣諸島も日米安保条約がカバーしていると解釈している」と語るのが常となっていました。

ところが、最近風向きが変わってきました。「日本の尖閣諸島への中国の領有権を認めてはならない」「中国の尖閣海域への侵入には制裁を加えるべきだ」このような強硬な見解が米国議会で超党派の主張として改めて注目され始めたのです。

先にも述べたように、尖閣諸島(沖縄県石垣市)に関して、これまで米国政府は「領有権の争いには中立を保つ」という立場を保ってきました。ところが、中国が米国にとって最大の脅威となったことで、東シナ海での膨張も米国は阻止すべきだとする意見が米国議会で広まってきたのです。しかも、その意見が上下両院での具体的な法案として打ち出されています。

中国の尖閣諸島領有の主張に対する明確な反対は、6月中旬にワシントンで公表された連邦議会下院の共和党議員13人による政策提言報告書で改めて強調されました。 13人の議員は「下院共和党研究委員会・国家安全保障と外交問題に関する作業グループ」を形成し、「アメリカを強化してグローバルな脅威に対抗する」という報告書を作成しました。この報告書は、米国主導の既存の国際秩序を侵食し破壊しようとする脅威として中国、ロシア、イランなどの動向を分析しています。

120ページほどの報告書のなかで、最も多くの部分は中国の脅威について記されていました。南シナ海と東シナ海における中国の軍事志向の膨張は、国際合意にも、地域の安定にも、米国やその同盟諸国の国益にも反する危険な動きであると断じています。そうして、日本が領有権を宣言し施政権を保有する尖閣諸島に対する中国の攻勢についても、「平和と安定を脅かす」として反対を表明し、中国の領有権主張を否定する立場を明確にしました。 また同報告書で注目されるのは、「南シナ海・東シナ海制裁法案」への支持を打ち出していることです。

2019年5月に、ミット・ロムニー(共和党)、マルコ・ルビオ(共和党)、ティム・ケイン(民主党)、ベン・カーディン(民主党)など超党派の14議員が「南シナ海・東シナ海制裁法案」を上院に提出しました。6月には、下院のマイク・ギャラガー議員(共和党)とジミー・パネッタ議員(民主党)が同じ法案を下院本会議に提出ました。

ミット・ロムニー(共和党)議員
今回の下院共和党研究委員会の報告書は、その法案に米国議会の立場が表明されているとして、法案への支持を明確にしました。

なお上院でも下院でも法案は関連の委員会に付託されましたが、まだ本格的な審議は始まっていません。今回、下院共和党研究委員会は改めてこの法案の重要性を提起して、その趣旨への賛同と同法案の可決を促したのです。

今回、新たな光を浴びた「南シナ海・東シナ海制裁法案」の骨子は以下のとおりです。
 ・中国の南シナ海と東シナ海での軍事攻勢と膨張は、国際的な合意や規範に違反する不当な行動であり、関係諸国を軍事的、経済的、政治的に威嚇している。
・中国は、日本が施政権を保持する尖閣諸島への領有権を主張して、軍事がらみの侵略的な侵入を続けている。この動きは東シナ海の平和と安定を崩す行動であり、米国は反対する。
 ・米国政府は、南シナ海、東シナ海でのこうした不当な活動に加わる中国側の組織や個人に制裁を科す。その制裁は、それら組織や個人の米国内での資産の没収や凍結、さらには米国への入国の禁止を主体とする。
同法案は、中国に対する経済制裁措置の実行を米国政府に義務付けようとしています。つまり、米国は尖閣諸島に対する中国の領有権も施政権も否定するということです。米国政府は、中国当局の東シナ海での行動は、米国の規準でも国際的な基準でも不当だとする見解をとり、従来の「他の諸外国の領有権紛争には立場をとらない」という方針を変更することになります。

最近の、82日連続の中国尖閣侵入で暴挙は、このような米国の動きへの反発もあると思います。さらには、最近日本では、中国の潜水艦が日本近海を潜航しているのを日本に発見され、それを河野防衛大臣に公表されてしまったこととも関係していると思います。

河野太郎防衛相は23日の記者会見で、18日に鹿児島・奄美大島沖の接続水域内を潜ったまま西進した外国潜水艦について、「中国のものだと推定している」と述べました。潜水艦の国籍や種類の情報は自衛隊の把握能力(対潜水艦哨戒能力等)に関わるため、公表は異例です。

河野氏は「尖閣諸島をはじめ、さまざまな情勢に鑑みて、潜水艦の国籍を公表すべきと判断した」と強調。接続水域の潜航自体に問題はないとの認識を示すとともに、「外務省から中国に対して『関心表明』は行っている。中国の意図を明確に推し量っていく必要がある」と指摘しました。

私自身は、日本側は潜水艦の音紋などを取得しているため、この潜水艦の型名も分かっていたと思います。ただ、さすがにそこまでは公表しなかったのでしょう。なぜなら、そこまですれば、中国の恥の上塗りをすることになるからです。

そもそも潜水艦は中国の潜水艦はもとより、世界中のいかなる国の潜水艦も隠密行動をするのが常です。敵はもとより、味方にも動向を探られることがあってはなりません。だから、日米の潜水艦などは、東シナ海や南シナ海や、もしかすると黄海など中国の領海なども潜航しているかもしれませんが、一度も中国側に探知され、中国のメディアで報道されたことはありません。無論、日米メディアにもその動向は知られていません。

ところが、中国の潜水艦は日本側に易々と発見され、しかも日本のメディアで報道されているのです。これは、中国の対潜水艦哨戒能力が日本に比較して遥かに劣っていることを示しています。

さらに、中国の潜水艦が日本側に発見されるということは、中国の潜水艦いまだに、ステルス性において性能が低く、日本側に簡単に発見されてしまうということを意味しています。

中国海軍には、明確なロードマップがあります。それは以下のようなものです。
  • 「再建期」 1982-2000年 中国沿岸海域の完全な防備態勢を整備 ほぼ達成済み
  • 「躍進前期」 2000-2010年 第一列島線内部(近海)の制海権確保。
  • 「躍進後期」 2010-2020年 第二列島線内部の制海権確保。航空母艦建造
  • 「完成期」 2020-2040年 アメリカ海軍による太平洋、インド洋の独占的支配を阻止
  • 2040年 アメリカ海軍と対等な海軍建設

ロードマップによれば、2020年に「躍進後期」であり第二列島線まで、確保することになっていますが、現在の中国はそれどころか、尖閣を含む第一列島線すら確保できていません。

そこにきて、米国による南シナ海、東シナ海での中国に対する対抗の表明と、自国の最新鋭潜水艦が日本にいまだに簡単に発見されてしまうという事実を見せつけられ、中国海軍としてはかなり焦っていると思います。

その焦りの現れが、82日連続中国尖閣侵入と暴挙なのではないでしょうか。中国としては。何とかして、第一列島線をわがものにしたいので、艦艇を分散したり、漁船を追い回したりしているのでしょうが、彼らも命がけでしょう。

何しろ、日米の潜水艦がどこに潜んでいるのか、彼らには発見できないのですが、中国の潜水艦はすぐに日米に発見されてしまうのですから、味方の潜水艦はいざというときには、ほとんど用を為しません。

自分たちが、暴挙を繰り返せば、日米の潜水艦に撃沈される恐れもあるのです。ただ上層部からは、日本がどの程度まで暴挙に耐えるのかを確認するように、命令されているのだと思います。

ただし、私自身は、このような状況にあるから中国の暴挙を放置しておけというつもりは全くありません。

日本としては、せっかく米国が、中国の領有権主張を否定する立場を明確にしたわけですから、米軍に黄尾嶼と赤尾嶼の射爆撃場の使用を再開してもらうとか、尖閣諸島に日米のブイなどを設置するなどのことをしたり、あるいは日米合同で、尖閣諸島そのものを用いて、尖閣奪還作戦の訓練をすることなどが考えられます。

そのような訓練をすれば、当然のことながら、中国潜水艦やその他の艦艇や航空機を派遣するなどして、その訓練を監視するでしょうが、彼らの目の前で、模擬の中国侵略軍の艦艇を撃沈するところを見せたりすれば、かなり効果的でしょう。

何しろ、彼らは、いずれの航空機か、艦艇なのかも全く発見できないにも関わらず、模擬の中国の艦艇が次々と撃沈されていくの見て、恐怖に駆られることになるでしょう。次は、自分の番かもしれないと恐怖に慄くかもしれません。

それでも、中国が諦めなければ、彼らが発見できない潜水艦からソナーを発信して、すぐに離脱して姿をくらますようなことをするとか、模擬魚雷を発射したり、本物の魚雷を故意に艦艇の近くで爆発させるとか、やり方はいくらでもあります。それも、一隻二隻ではなく、複数の潜水艦で実施するとか、本当にやり方は、無尽蔵にあると言っても過言ではありません。

ただ、米国が覚悟を決めた現在、日本が覚悟を決めず、いつまでもグズグズしていれば、米国から見放されることもあり得ます。そうなると、ますます中国は増長して、最終的には尖閣を奪取してしまうかもしれません。私としては、そちらのほうが不安です。

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