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2018年12月4日火曜日

国民の理解得られる対中防衛「2つの秘策」 トランプ氏の影響で防衛費GDP1%超―【私の論評】日本のあるべき防衛論を組み立て、それに見合った防衛予算を組め(゚д゚)!

国民の理解得られる対中防衛「2つの秘策」 トランプ氏の影響で防衛費GDP1%超

永田町・霞が関インサイド

海上自衛隊最大のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」

安倍晋三政権は12月中旬、新しい「防衛計画の大綱」(防衛大綱)を閣議決定する。日本を取り巻く東アジア情勢の激変に基づくもので、5年ぶりである。これに伴い、防衛装備品などの導入計画「中期防衛力整備計画」(中期防)も大きく見直される。

 それだけではない。これまで日本政府が防衛費を国内総生産(GDP)比で1%以内に収めてきた「原則」も変更する。防衛費とは、防衛装備品の取得費や自衛隊の人件費など、防衛省が所管する予算のことである。

 これにも、実はドナルド・トランプ米大統領の存在が影響している。トランプ氏はこの間、フランスや英国、ドイツなど、北大西洋条約機構(NATO)の主要加盟国に対し、繰り返し防衛費の増額を求めてきた。

 ちなみに、2017年度の米国の防衛費6100億ドル(約69兆1600億円)はGDP比3・1%に対し、フランスの578億ドル(約6兆5500億円)は同2・3%、英国の472億ドル(約5兆3500億円)は同1・8%、ドイツの443億ドル(約5兆200億円)は同1・2%。

 日本は5兆1911億円の0・92%(18年度)であり、トランプ氏が求める「応分の負担」の対象国になっている。つまり、防衛省所管以外の旧軍人遺族らの恩給費や国連平和維持活動(PKO)分担金などを合算して、NATO基準にするということである。これでGDP比1%超となり、安倍首相はトランプ氏に顔が立つ。

 これだけではない。防衛大綱の閣議決定を経て19~23年度の中期防に超高額な防衛装備品の取得方針を盛り込む。

その目玉が、米ロッキード・マーチン社の最新鋭ステルス戦闘機「F35」の購入だ。それも半端ない数である。これまでに導入が決まった42機に加えて、1機100億円超を100機追加購入するというのだ。総額1兆5000億円に達する。これもまた、トランプ政権が強く求める対日貿易赤字解消を念頭に置いたものだ。

 新防衛大綱と次期中期防は、トランプ氏のために策定するのではと勘繰りたくなる。それはともかく、筆者が注目する防衛装備品が2つある。

 1つは最新の早期警戒機「E2D」(ノースロップ・グラマン社)の9機導入。中国が配備した最新ステルス戦闘機「J20」を意識したものだ。

 2つ目は、産経新聞が報じた「中国空母2020年末にも進水-国産2隻目、電磁式射出機を導入」に関係する。海上自衛隊のヘリ搭載型護衛艦「いずも」の空母化を新防衛大綱に明記することである。この2つは国民の理解が得られるはずだ。(ジャーナリスト・歳川隆雄)

【私の論評】日本のあるべき防衛論を組み立て、それに見合った防衛予算を組め(゚д゚)!

防衛費に関しては、他国との相対的な要素が強い点が大きいことに留意しなければならないです。一国の防衛費が増加したからといって、その周辺国との比較の上で、その増加がどういう意味を持つのかを考える必要があります。そこで防衛費の質的な比較・検討が重要となるが、まずは防衛費の総額そのものを主眼において解説します。

防衛費の総額といっても、各国の防衛費の考え方や組織の違いもあり、単純な比較が難しいです。例えば、中国で公表されている防衛費には、技術開発関連の費用は含まれていないとされている。また、現在の日本では、海上の警備・水路業務は海上保安庁が担当しているが、独自の沿岸警備隊を有さず海軍がその職務を行っている国もあり、そうした国々とは単純に比べることはできないです。

そこで、国際紛争研究で著名なストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が集計・公開しているデータベースを用いて、日本周辺国の防衛費の20年分(1997年~2016年)の推移を見ていこう。SIPRIのデータを元に、日本、中国、韓国、台湾、ロシアといった日本周辺国(北朝鮮はデータ無しなので除外)の防衛費の推移をグラフ化したものを以下に掲載します。

出典:SIPRI Military Expenditure Database

一見して明らかなのは、2000年代に入ってから中国の防衛費が各国を引き離していることと、韓国・ロシアの増加傾向、そして日本・台湾の横ばい傾向です。1990年代の一時期、日本はアメリカに次ぐ世界2位の防衛費であった時期もあったのですが、今や周辺国の間では中程度と言っても良いです。

今や、経済成長を背景に中国の防衛費が周辺国を圧倒している状況にあります。周辺国の増加ペースを遥かに超えており、2016年の段階で日本の防衛費の5倍以上になっています。昨年の防衛費から1%程度増えて過去最大と騒がれる日本の状況とは、天と地ほどの開きがあるかもしれないです。

残念ながら上のグラフでは中国の伸びが他国を引き離しすぎて、中国以外の伸びが分かりにくいです。そこで、中国を除外した各国のグラフを見てみます。

出典:SIPRI Military Expenditure Database

1990年代に防衛費が大きく落ち込んでいたロシアは、原油高を背景とした経済立て直しにより持ち直し、2000年代後期には日本を抜いています。また、韓国も右肩上がりの増加を続けており、日本の防衛費を抜くのは時間の問題です。

韓国の防衛費が日本を上回ることは、多くの人に意外性を持って受け止められるかもしれないです。しかし、これはある意味必然なのです。この20年間、日本のGDPに占める防衛費の割合は1%で推移しており、同じく韓国のGDPに占める防衛費の割合は2%台で推移しています。

その他、韓国とロシアについては、もう一つ意外な側面があります。それは、韓国のGDPは東京都と同程度ということです。ロシアのGDPは韓国を少し下回る程度です。

ロシアは例外としても、GDPが東京都程度の韓国の防衛費が、日本のそれを上回る日も近いかもしれないという事実は多くの人々にとって衝撃的だと思います。

一方、「失われた20年」と呼ばれる経済停滞の真っ只中にあった日本に対し、韓国は経済危機を経たものの成長を続けています。今後、日本の経済が停滞しGDPが伸び悩む中、日本の防衛費の支出割合が変わらない以上、韓国のGDPが日本の4割近くに達した時点で、韓国が日本の防衛費を抜くのは必然なのです。

恐らく、このペースでいけば、10年以内に韓国が日本の防衛費を抜くことは十分に考えられることでしょう。結局のところ、日本が抱える多くの問題と同様に、日本の経済停滞に根本要因があります。「過去最大の防衛費」とはいいつつも、実態としては日本の相対的な退潮を示していると見ることもできます。

日本の防衛費の個々の項目を見てみます。

本年3月28日、参院本会議で平成30年度予算が可決・成立しました。この予算に関するマスメディアの報道を見ると、過去最大の97兆7000億円にものぼる一般会計総額とともに、陸上設置型ミサイル防衛システムのイージス・アショアや長距離巡航ミサイルの取得費が計上され、過去最大となる5兆1911億円となった防衛費に言及がされていることが多いです。

この防衛費の中でも新規に行われる事業として目新しいものは、多様な任務に対応しつつコンパクト化を両立させた3,900トンの新型護衛艦2隻の建造(992億円)、イージス艦に搭載する新型対空ミサイルのスタンダードSM-6の試験弾の購入(21億円)、長距離を飛翔する巡航ミサイルであるスタンド・オフ・ミサイルの導入(22億円)、将来の経空脅威・弾道ミサイルに対応する次期警戒管制レーダ装置の開発(87億円)などがあります。

ここで、新規事業の中で主だったものをリスト化してみます。


こうして改めて新規事業とその費用を見てみると、メディアで注目されたイージス・アショアや長距離巡航ミサイル導入が今年度予算に与えた影響自体は実は小さく、金額だけ見れば新型護衛艦2隻の金額が大きいです。しかし、組織別に見れば海上自衛隊の今年度予算は29年度予算より減額しています。新規事業全体を見ると、今年度以降に大きな出費を伴うものもありますが、今年度予算に与えるインパクトはそれほどでもありません。

今年度の防衛予算を見渡すと、従来からのミサイル防衛・島嶼防衛の重点化が継続していると言えます。イージス・アショアやスタンド・オフ・ミサイルなど、具体的な装備品の名前が出ただけで、実質的には従来路線のままといえるでしょう。

一方で、重要項目とは言われつつも、2年連続で減額された項目があります。それがサイバー関連経費です。29年度に124億円だったサイバー関連経費は、今年度は110億円に減少しています。大幅な増額があった28年度は監視機材・分析装置といった費用のかかる機材整備が行われたのですが、それが落ち着いた29年度の減額はまだ理解できるものでした。しかし、今年度も引き続き減額になった点は解せないです。

今年度はサイバー防衛隊の隊員を110名から150名へ増員する計画である。その一方、北朝鮮でサイバー戦に携わる兵士は2016年の推計で6,800人を超え、近い将来1万人に達するとみられている。実際、北朝鮮が関与しているとみられるサイバー攻撃が世界で相次いで発生している中、日本のサイバーの分野の取り組みが明らかに遅れてはいまいか。

今年度の防衛予算をめぐる報道を見ても、イージス・アショアのような目で見える・実態のあるものに注目が集まりやすい。だが、目に見えない部分での戦いが深刻化している今、目に見えない部分がもっと注目されてもいいと思うのですが・・・・・。

さて、来年以降の防衛予算についても掲載しておきます。

財務省は24日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開き、平成31~35年度の5年間の中期防衛力整備計画(中期防)について、調達改革によるコスト削減の推進を提案しました。5年間で最低でも1兆円の削減が可能だとみています。北朝鮮による弾道ミサイルの脅威などを受け、第2次安倍晋三政権発足後の25年度以降、毎年度増加を続けている防衛費ですが、無駄の排除や効率化の徹底でさらなる財源を捻出するとしています。

中期防は防衛力の整備、維持、運用に関する基本指針「防衛大綱」に基づき5年ごとに部隊規模や経費を明示するものです。政府は年末までに、31年度からの計画を策定します。 

26~30年度の中期防でも5年で計7千億円のコスト削減を行う計画で、すでに計画を上回る7710億円が削減できる見通しです。特に防衛装備庁が発足し、調達改革が本格化した29、30年度は年2千億円程度の削減ができていることから、財務省は「(次期中期防でも)この水準は最低限達成したうえで、さらなる上乗せを目指すべきだ」とし、5年で1兆円以上のコスト削減を求めました。

財務省が調達コストの大幅削減を提案するのは、市場価格がなく、原材料費なども不透明な防衛装備品には、まだコストを削減する余地が残されているとみているからのようです。

特に防衛装備品の取得単価をみると、計画段階の価格と比べて高額になっているものも少なくないです。一般的に量産が進めば生産効率が上がるため価格は下がるのが普通ですが、財務省が調査したところ、26~30年度の5年間で87両を購入した機動戦闘車は1両あたり4億8千万円の計画だったのですが30年度に実際に購入した際の単価は7億6千万円と58%も上昇。地対艦誘導弾も計画では85億2千万円だったのですが同年度の取得単価は129億4千万円に上ったといいます。

部品の輸入単価の上昇や原材料費の高騰などが要因と考えられますが、詳細は公表されていません。財務省は「計画単価を公表し、取得単価が計画を上回った場合は優先順位を決め、調達計画を見直すことも必要だ」と提言。世界の防衛産業が大規模化していることを踏まえ、国内防衛関連企業の再編の必要性も指摘しました。

過去の防衛費の推移や、今回の「5年間で最低でも1兆円の削減が可能」という発言からみても、どうも財務省は防衛費を増やしたくないようです。

なぜ財務省主計局は国防費削減に拘るのでしょうか。答えは簡単です。それが仕事だからです。財務省主導の与太話で、財政赤字で日本は破産するのではなどとまことしやかなことが言われています。

そうなると、建前上緊縮財政で少しでも予算を削らなければならないことになります。そうなると国防費を削るのは主計官の仕事になってしまうのです。少なくとも、余程の条件、たとえば戦前の満洲事変以降の事態のようなものがない限り、国防費増額などまともには無理でしょう。主計官にとって「過去につけた予算をいかに削るか、無駄な予算を認めないか」が腕の見せ所になるのです。

なぜ他の予算と違って、防衛予算は一方的に削られやすいのでしょうか。理由は二つあります。一つは額が大きいからです。戦車一台約十億円、戦闘機一機約百億円、軍艦一隻数千億円。分割できない一つの単位でこれなのですから、額が小さい予算を細かく見るより効率の良い査定ができます。

こういうと、しかしダムや道路だって規模が大きいではないか、他にも公共事業など色々あるではないか、という疑問をお持ちの方も居るでしょう。そこで二つ目の理由であり、表題の疑問への解答です。

結局抵抗力が弱いからです。額が大きくて抵抗力が弱い、これほど削りやすい項目が他にあるでしょうか。例えば公共事業費や農林関係費を削ろうとすると、国土交通省や農水省の応援団である族議員があの手この手で圧力をかけたりしつこく陳情に来たり、と説得が大変なのです。

福祉予算を削ろうものなら同じく社労関係族議員が押しかけてきたり、マスコミに人でなし呼ばわりされたり、と大義名分を探すだけでも一苦労になります。あと社労関係は法律が特に難解で、という大変さもあります。

それに引き換え、防衛省はどうでしょうか。経済財政諮問会議に呼ばれていましたか。何を主張していましたか。

官僚はしばしば権限争奪に奔走しすぎると、批判されます。しかしこと防衛省自衛隊に関してはそれは当てはまらないでしょう。

これだけ周辺諸国の脅威がある中で、防衛費の増額を実現できない防衛省自衛隊、官僚機構の論理としては無能者の烙印をおされてしかるべきでしょう。

その代わり、先に再反論しておきます。「今の予算で間に合っているのですか。あなた方がまともな防衛費を獲得できないことで日本の国防は危機に瀕していないと言えますか。99条や国民の無理解無関心は同情に値しますが、それを改善するためにどれだけの努力をしましたか」と。

田母神騒動以来、防衛省自衛隊は、ただでさえ設立以来肩身が狭いのに、ますます萎縮しています。しかしそれに関しては私は納得できません。

内局の背広組はもちろん、将校以上の高級軍人は政治のことも認識していなければならないのは古今東西自明の理です。ましてや官僚機構の論理を知ってしかるべきです。戦前の陸海軍は予算獲得が自己目的化して組織がおかしくなりましたが、戦後の自衛隊はまともな予算を取れずに組織がおかしくなっています。

高速道路を走る自衛隊の車輌

ちなみに、上記の予算の折衝の話の中には、含めませんでしたが、自衛隊では高速道路の料金を削減する努力をしているそうです。そもそも、高速道路の料金を自国防衛の重要機関である自衛隊が支払ってるってことですら呆れてしまいます。

米軍では、公用であるということで、高速代金は無料になっています。当然自衛隊の公用もそのように扱うべきです。

自衛隊が高速道路代をゼロとするとどうなるでしょうか。演習や訓練にいく日程のほとんどが下道を走り、演習場にたどりつくっ時間に費やされ、演習や訓練時間が短縮されてしまいます。何をするにしても迅速に対処したくても移動に時間がかかるので早く対処はできません。

演習や訓練にたどりついたころには長時間の下道移動でクッションのない自衛隊車両での移動で足腰がガタガタになっていて、ふらふらになるわけです。元気いっぱい訓練するということもできないのです。

ちなみに自衛隊の訓練場や演習に使う場所など自衛隊の土地も、予算削減のために売り払われているので演習地もどんどん遠くになり不便になっていっています。それも含めて予算を削減し、安くすませるために自衛隊の能力をどんどん削ってしまうのがこの高速道路代削減です。

デフレ脱却について自民党の「日本の未来を考える勉強会」が提言書を7月6日に出しました。この中には、防衛予算を増やすことも明記されています。

防衛予算については、上記で示した通り、まだまだ足りない状況ですが、それでも増やせることについてきちんと言及してくれる存在は嬉しいです。

消費税増税などとんでもないです。消費税増税をすれば、個人消費が冷え込み、景気が低迷し、税収が減り、ますます防衛予算の削減に拍車がかかりかねません。今、必要なのは財政支出の拡大ですし、最も重要な国の安全についてはしっかりお金をかけるべきです。

中国は全力でありえないほどの防衛予算を費やし、領土拡大に本気で準備しているのに国そのものがなくなったら財務省の大好きな節約もできなくなります。

現状は、中国の脅威、北朝鮮の脅威など、誰にでも理解できる脅威が日本に迫っています。今の自衛隊で、本当に日本を守れるのでしょうか。

安易に核武装論を唱える論者にも一言いいたいです。財務省主計局を説得できる理論武装をしましょう。政治家や国民を煽るのも結構ですが、核を何発か持てば国防は終わり、ではないのです。むしろそこから先が大変なのです。

最後に、クラウゼヴィッツ「戦争は、国民と軍隊と政府が三位一体で行うものである」と語っています。誰かのせいにするのではなく、今後どうあるべきかを禁忌抜きで議論すべきなのです。

「九条への批判は許さない」と同様、「自衛隊は可哀想だから批判するな」も禁忌にしてはいけないでしょう。戦後の特殊事情というあらゆる呪縛から自由な議論こそが求められるでしょう。

そこから、日本のあるべき防衛論を組み立て、それに見合った防衛予算を組むべきなのです。

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