2015年11月22日 14時6分 サーチナ
内閣府は16日、2015年7-9月期の国内総生産(GDP)が物価変動の影響を除いた実質で前期比0.2%減、年率換算で0.8%減となったことを発表した。2四半期連続でマイナス成長となったことで、欧米の基準で言えば「景気後退(リセッション)」の局面に入ったとされる。
中国メディアの財新網は17日、日本経済は再びリセッション入りしたと伝えたうえで、中国経済も減速していることについて触れ、「少なくとも日本は中国経済の減速を喜んではいない」と論じる記事を掲載した。
記事は、日本国内では消費が伸びていないことから安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」に対して疑問の声が高まっているとする一方で、日本経済が成長できないもう1つの理由として、欧米メディアからは「中国経済の成長鈍化」が挙げられていることを紹介した。
財務省の貿易統計によれば、日本の9月の対中輸出は前年同月比3.5%減の1兆1139億円にとどまり、2カ月連続での減少となった。鉱物性燃料や自動車部品などの減少が目立った。
記事は、米紙ニューヨーク・タイムズが、「中国への輸出が減少したことで経済活動が停滞し、先行きに対する不安が広まった」と報じたことを紹介。また、英紙フィナンシャル・タイムズが「消費の伸び悩みおよび中国経済の成長鈍化が日本経済の成長を危険に晒している」と報じたことを伝えた。
さらに、日本企業はこれまで中国に対し、インフラ建設や工業生産に必要な資材や機械を輸出してきたと指摘する一方、中国でインフラ建設が鈍化するなかで建設機械メーカーなどの日本企業が危機に直面することは必然と主張。また、日本を訪れる中国人旅行客が年々増加し、日本に大きな経済効果をもたらしていることを指摘する一方、中国経済の成長鈍化によって日本企業が被る損失や直面するリスクを補填できるほどではないと論じた。
【私の論評】主要な原因は8%増税によるGDPギャップの放置!中国向け輸出減少は軽微(゚д゚)!
上のサーチナの記事の記者、日本のマスコミと同様に、日本のマクロ経済を理解していないことを如実に示していると思います。まあ、それにしても所詮外国の記者なのですから、日本経済をあまり知らないというということも無理もないところがあります。
しかし、日本のマスコミは、この中国の記事のようにやれ中国の不況が、日本経済不振の原因だとか、アベノミクスは失敗とか、頓珍漢で奇妙奇天烈な論理を振り回していますが、これは日本のマスコミとしては、絶対に許されないことです。以下に、この中国の見方が完璧に間違いであることと、今後の日本経済の立て直しのためにすべきことを掲載します。
まずは、2015年7-9月期の国内総生産(GDP)に関する内閣府の統計資料を以下に掲載します。
マイナス成長は2四半期連続。物価の影響を反映し、生活実感に近い名目GDPは前期比0.01%増、年率0.1%増でした。
上のグラフの外需依存度、内需依存度などご覧いただければ、ブログ冒頭の記事は誤りであることが良く理解できます。本当に一目瞭然です。
7-9月期の内需寄与度はマイナスですが、外需寄与度はプラスです。そうして、内需寄与度のマイナス幅は、外需寄与度のプラス幅よりもかなり大きいです。
ということは、中国への輸出が減ったにしても、他国への輸出などで、どちらかといえば輸出はGDPにプラスの影響を及ぼしていたということです。しかし、内需はかなりマイナスに寄与していたということです。
これは、やはり消費税増税の悪影響で、内需が減ったということでしょう。個人消費はプラス傾向にはありましたが、それにしても、増税しなければ本来はまだ伸びていたかもしれません。そんなこともあり、企業の設備投資などが減っているということもあります。
いずれにせよ、7-9月期の日本経済がマイナス成長になったのは、外需の減少によるものではなく、内需の減少によるものであることは、はっきりしており、ブログ冒頭のサーチナ記事のように、中国への輸出が減少したことで経済活動が停滞したためという見方は完璧に間違いであることが理解できます。
甘利明経済再生担当相は「緩やかな回復基調にある」との見解ですが、これはまったくの誤りとはいえませんが、欧米のマスコミでは、はっきりと景気後退と言い切っており、甘利氏の説明のみを伝える日本のマスコミとはかなりの温度差があります。
前年同期比プラスといっても、消費増税によって大きく落ち込んだときと比べればややマシというレベルにすぎません。現状でも、GDPギャップ(潜在GDPと現実との差)は、少なく見積もっても10兆円程度はあります。
しかし、政府は、2014年4月からの消費増税を失敗と位置づけることはせずに、本格的な景気対策も打たないまま効き目が期待できない景気回復シナリオを繰り返してきまた。そうして、またしても政府の見通しが崩れ去りました。
ところで、マクロ経済学では、景気後退とは2四半期連続のマイナス成長と定義しています。これに従えば今の日本は景気後退局面に入ったことになります。ただし、前期比ではなく前年同期比、つまり、3カ月前ではなく1年前と比較すれば、4~6月期は1・0%増、7~9月期も1・0%増です。
前年同期比プラスといっても、消費増税によって大きく落ち込んだときと比べればややマシというレベルにすぎません。現状でも、GDPギャップ(潜在GDPと現実との差)は、少なく見積もっても10兆円程度はあります。
しかし、政府は、2014年4月からの消費増税を失敗と位置づけることはせずに、本格的な景気対策も打たないまま効き目が期待できない景気回復シナリオを繰り返してきまた。そうして、またしても政府の見通しが崩れ去りました。
ところが、秋の臨時国会も開催せずに、年開けに国会を開くそうですが、肝心要の補正予算は3兆円程度と報道されている。これでは完璧に焼け石に水です。これについては、このブログでも以前予測したことがあります。その記事のURLを以下に掲載します。
【次世代の党ニュース】経済の現状を踏まえた緊急提言を提出―【私の論評】野田聖子も、稲田朋美もまとな政治家の器ではない!まともなのは輝きを増す中山恭子氏だ(゚д゚)!
自民党に政策提言をした次世代の党 |
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では3兆円規模の予算では、焼け石に水に過ぎないことを掲載しました。
その根拠としては、平成14年度に決められた、今年度の補正予算も3兆円規模でしたが、上記にも示したように、結局のところ二期連続の赤字成長で、今更ながら結局何の役にもたたず、赤字成長になってしまいました。
現状ののGDPギャップを解消しないと、日銀が金融緩和をしても物価は上がらず、失業率も下がりません。いずれ、雇用状況も悪化し始めることになります。
GDPギャップを放置することは、労働力の有効利用を放棄したも同じです。これでは、政府が完全雇用状態(働く意思と能力がある人が全員雇用されていること)を作るという責務を果たすことを放棄したようなものです。
10兆円規模の補正予算というと、必ず巻き起こるのが、財源論争です。結局政府が、国債をさらに発行して、政府の借金を増やすのかという論争です。私自身は、国債を擦り増ししても、10兆円規模の補正予算を組むべきと思います。なぜなら、これによって10兆円の経済対策を行ったとしても、そのお金がこの世から消えるわけではなく、それはまわりまわって政府に再度税金という形でもどってきます。
さらに、補正予算でGDPギャップがいくぶんかでも解消されれば、その分税収が増えることになります。しかし、百歩譲って一時的に政府の借金を増やす国債を擦り増ししなくても、財源はあります。
それは、政府が保有する金融資産です。今の日本は過去の日本とは異なり、アベノミクスの金融緩和によって、円安傾向となったため、外国為替資金特別会計の含み益20兆円があります。さらに、雇用状況が良くなったため、労働保険特別会計の資産負債差額5兆円があります。これらを補正予算の財源として用いることができます。
外為特会の仕組み |
そもそも、外為特会は、円高になったときの対策のための積立です。今の日本は、金融緩和によって、円安傾向ですから、外為特会を現状のように積み立てておく必要性は全くありません。であれば、含み益20兆円全部を補正予算に組み入れても良いくらいです。しかし、その半分で良いから、これを補正予算に組み入れるべきです。
場合によっては、労働保険特別会計の資産負債差額5兆円を組み入れても良いと思います。なぜなら、10兆円規模の補正予算を組んだ場合、それはGDPギャップを縮小させ、完全雇用に近づくことになるからです。
いずれにせよ、これらの金融資産は、政府が貯めこんで遣わなければ、単なる死蔵になってしまい、せっかくの資産が有効に遣われないことになってしまいます。
これらのアベノミクス効果の最大の享受者は政府です。その恩恵をどのように国民に還元するかについて、是非とも国会で真摯に議論していただきたいものです。
そうして、その際には、意外にも次世代の党が大活躍するかもしれません。なぜなら、上で私が述べたような政策をすでに、次世代の党は自民党に政策提言として、提出しているからです。
それについては、先にリンクを掲載したブログ記事にその詳細を掲載してあります。おそらく、次世代の党は、次の国会でこのことをさらに国会で話題にするものと思います。
今、経済でまともな政策を掲げるのは、残念ながら次世代の党のみです。自民党は、安倍総理とその側近は、まともなことを考えているようですが、それにしても他の自民党議員は、ほとんどがマクロ経済オンチでまともな経済対策など期待できません。
さらに、民主党などの野党のほとんども経済オンチのオンパレードです。
それにしても、次世代の党とはいっても、あの経済オンチの石原慎太郎氏や、天下国家論を強調した田母神氏などが表看板になっていた頃とは、随分変わりました。特に、従来と異なるのは、マクロ経済に関しては、非常にまともであり信頼できる政策を打ち出す政党に変身しました。
安倍総理とその側近並びに、次世代の党が先頭にたって、日本の経済をまともな方向に導いていって欲しいものです。
私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?
【関連記事】
【関連図書】
高橋 洋一
祥伝社 (2014-06-12)
売り上げランキング: 141,429
祥伝社 (2014-06-12)
売り上げランキング: 141,429
高橋 洋一
小学館
売り上げランキング: 127,710
小学館
売り上げランキング: 127,710
倉山 満 杉田 水脈
ヒカルランド (2015-12-08)
売り上げランキング: 756
ヒカルランド (2015-12-08)
売り上げランキング: 756