2017年3月15日水曜日

「正直者」トランプが約束していた100日間の行動―【私の論評】これを読めない、読もうとしない日本のメディア関係者は機能的非識字者?


米ペンシルベニア州ゲティスバーグのアイゼンハワーホテルで行った選挙イベントで
演説する米大統領選共和党候補のドナルド・トランプ氏(2016年10月22日撮影)。
日本のマスコミはトランプ大統領のどんな発言、小さな動作にも一喜一憂し、大統領が繰り出す新しい政策に驚きの反応をみせる。日本では、トランプ大統領の政策は予測が不可能だという認識が定着しつつあるようだ。

 ところが現実は異なる。トランプ大統領が進めている政策はすべてすでに発表済みの公約であり、それらを順番に実行に移しているだけである。

 トランプ氏は選挙戦の終盤に「米国有権者たちとの契約」という声明を公表した。もし自分が大統領になったら、就任の当日あるいは100日以内にこういうことを実行する、と約束したリストである。その内容を知っていれば、トランプ大統領の施策に驚かされることはない。すべてそのシナリオ通りだからだ。

 この「米国有権者たちとの契約」の具体的な内容は日本のニュースメディアではほとんど報道されていない。そこで、今回はその全容を紹介しよう。その内容を知れば、トランプ政権の今後の動きもみえてくるはずだ。

 あの歴史的演説の場所で政策を表明

 トランプ氏はこの「米国有権者たちとの契約」を2016年10月22日、ペンシルベニア州ゲティスバーグにおける演説の中で発表した。

 ゲティスバーグといえば、1863年にエイブラハム・リンカーン大統領が「人民の、人民による、人民のための政治」をうたった有名な演説をした場所である。リンカーンと同じ共和党の大統領候補だったトランプ氏は、リンカーンにあやかるかのようにゲティスバーグを演説の場所に選び、自らの政策を大々的に表明した。

 10月22日は、大統領選投票日の11月8日まで残りわずか16日だった。自陣営の世論調査などにより、トランプ氏は自分が米国の大統領になることをすでに確信していたのだろう。具体的な政策がぎっしりと盛りこまれた演説は、そんな自信を強く感じさせた。

 トランプ氏は演説の冒頭で、まず次ように述べた。

「私はいま、米国国民のみなさんに、破たんした政治の混乱を乗り越えて、米国の国民性の中核である強い信念と楽観を抱きしめることを求めます。大きな夢を抱いてほしいのです」

「これから明らかにするのは、『米国を再び偉大にする』ための100日間の私の行動計画です。ドナルド・トランプと米国の有権者との契約です」

 そしてトランプ氏は大統領としての具体的な政策をいくつかのカテゴリーに分けて提示していく。

 ワシントンDCを浄化する6つの措置

 まずトランプ氏は、「大統領就任の初日、私の政権はワシントンDCの腐敗と特権の癒着を浄化するために、即時に6つの措置をとります」と宣言した。それは以下の6つの措置だった。

(1)連邦議会のすべてのメンバーの任期を制限する憲法修正案の提案

(2)軍事、公共安全、公衆衛生を除くすべての連邦職員を自然減の形で減らすための新規採用凍結

(3)連邦政府の新規制を1つ作る際には必ず既存の規制を2つ撤廃することの義務づけ

(4)ホワイトハウスや議会のメンバーが退官後にロビイストになることを5年間禁止

(5)ホワイトハウスの職員が退官後に外国政府ロビイストになることを禁止

(6)外国ロビイストが米国選挙に資金を提供することを禁止

 米国の労働者を守る7つの行動

 トランプ氏はさらに、大統領就任の初日に始める「米国の労働者を守るための7つの行動」を以下のように挙げた。

(1)北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉、あるいは撤退の意図を表明する

(2)環太平洋パートナーシップ(TPP)からの離脱を発表する

(3)中国を通貨レート不正操作国に指定するよう財務長官に指令する

(4)米国人労働者に不当な影響を及ぼす、すべての外国の貿易不正慣行を認定し、商務長官と米通商代表にそれらの不正慣行を即時に終わらせることを命令する

(5)シェールオイル、石油、天然ガス、精炭などを含む米国エネルギー資源の生産に対する規制を解除する

(6)キーストーン・パイプラインのような重要なエネルギ―・インフラ計画を承認し、それを阻んできたオバマ・クリントン陣営による障害を取り除く

(7)国連の気候変動対策への数十億ドルの資金提供を止めて、その資金を米国の水資源や環境インフラの是正のために使う

 安全保障と憲法の統治制度を回復させる5つの行動

 トランプ氏はさらに演説を続け、「大統領就任の初日、私は安全保障と憲法上の法の統治を回復するために5つの行動をとります」と語った。5つの行動とは以下の通りである。

(1)オバマ大統領が発した違憲の執行令、覚書、指令のすべてをキャンセルする

(2)最高裁判所の故スカリア判事の後任を、私がリストアップした20人の判事たちの中から選ぶプロセスを開始する

(3)「聖域都市」(違法入国者の取り締まりをしない米国内の地方自治体)への連邦資金の供与をすべて停止する

(4)米国内の200万人以上の犯罪歴のある違法入国者を国外に追放する。それら違法入国者を自国に受け入れない国には、米国への入国査証を発行しない

(5)身元審査を適切に行えないテロ懸念地域からの米国入国を一時停止する。同時に今後米国入国者へのすべての身元審査を厳重に行う

 100日以内の成立を目指す10の法案

 トランプ氏は最後に、「私は議会と協力して次の立法措置案を議会に提出し、政権の最初の100日以内にその成立を目指します」と断言した。その立法措置案として挙げたのが、以下の10項目である。

(1)中間所得層の税金の負担救済と簡素化(4%の経済成長率、2500万人分の雇用の創出を目指す減税措置をとる)

(2)企業外国移転法の撤廃(米国企業が海外移転のために米国内の従業員を解雇することなどに特別税をかける)

(3)米国エネルギー・インフラ法の制定(今後10年間に官民共同で合計1兆ドルのインフラ建設投資を実現する)

(4)学校自由選択・教育機会法の制定(子供を通わせる学校の種類を両親に自由に選ばせる)

(5)オバマケアの撤廃と代替法の制定(オバマ大統領の医療保険改革制度を全廃し、政府の介入の少ない制度に代える)

(6)適正子供医療保険法と高齢者医療保険法の制定(子供と高齢者の公的医療保険を、税制面での優遇と組み合わせて制度化する)

(7)違法入国停止法の制定(メキシコとの間に違法入国を防ぐ壁を建設し、メキシコ政府に経費を負担させるとともに、違法入国常習者への刑罰を重くする)

(8)共同社会安全回復法の制定(麻薬や暴力の犯罪を減らすために、連邦、地方での捜査や検挙の活動を厳しくする)

(9)国家安全保障回復法の制定(オバマ政権時代の財政赤字削減のための国防費削減措置を撤廃する)

(10)ワシントン腐敗浄化法の制定(特別利益団体に絡む腐敗を撲滅する)

 以上が、トランプ候補が掲げた「選挙公約」である。公約をすべて発表した後に、トランプ氏は以下のように訴えた。

「これが私の誓いです。もし私たちがこれらの通りに進めば、もう一度、人民の、人民による、人民のための政府を作り上げることができるのです」

 トランプ氏は、まさにリンカーン大統領の演説を模して演説を終えた。トランプ氏はこの「米国有権者との契約」を、選挙に勝利した翌日の11月9日の演説でもそのまま繰り返した。

 実は非常に手堅いトランプ政治

 トランプ大統領の就任から約2カ月が過ぎたいま、この公約の内容を点検すると、その多くが驚くほど着実に実行されていることが分かる。

 オバマケアの撤廃、メキシコとの壁の設置、TPPからの離脱、NAFTAの見直し、テロ懸念国家からの米国への入国の一時禁止、違法入国者への取り締まり強化、インフラ建設、米国企業の外国移転の抑制・・・反対も激しく意外性のあるこうした新措置は、いずれもトランプ氏の大統領就任前に具体的に誓約されていたのだ。誓約に記されていたのにまだ手がつけられていない主要政策は、中国の通貨レート不正操作国指定ぐらいであろう。

 この「契約」リストをみながらトランプ大統領の新政策、新措置を追ってみると、破天荒にみえるトランプ政治が実は非常に手堅く、当初の計画に沿って進められていることが分かるのである。

【私の論評】これを読めない、読もうとしない日本のメディア関係者は機能的非識字者?

上の記事では、トランプ氏はこの「米国有権者たちとの契約」を2016年10月22日、ペンシルベニア州ゲティスバーグにおける演説の中で発表したとされています。そうして、これに関してはこのブログでも掲載したことがあります。

その記事のリンクを以下に掲載します。
トランプはかくも賢く、計算高い! メディアが知らない「真の実力」―【私の論評】新大統領のしたたかな戦略・戦術!日本の保守も見習え(゚д゚)!
この記事は、1月30日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくもとして、この記事より100日の行動を掲載した部分を以下に掲載します。

この記事では、100日の行動が掲載されているサイトのリンクと、そのサイトの一部分を画像としてそのまま引用しました。それが以下です。
O-TRU-102316-Contractv06.indd - O-TRU-102316-Contractv02.pdf(PDFファイル)https://assets.donaldjtrump.com/_landings/contract/O-TRU-102316-Contractv02.pdf


当然のことですが、ブログ冒頭の記事に掲載されている100日アクションの内容はすべて掲載されています。

これを読んでいたので、私自身はトランプ大統領の様々な大統領令などに関して出鱈目とか、予測がつかないなどと考えたことは一度もありません。すべてこの100日間の行動の通りに実行されています。トランプ大統領は公約を守っているだけなのです。

これだけ、はっきりとプランを打ち出し、それに基づいて実行している大統領は過去に存在しなかったのではないでしょうか。まったくブレずに、首尾一貫してこの100日間の行動を実行しています。

このようなことを着実に実行しているせいでしょうか、2月7日、米エマーソン大学が発表した世論調査の結果は衝撃的でした。米国ではメディアよりもトランプのほうが支持されている実態が明らかになったのです。
メディアを信用できる人――39%トランプ政権を信用できる人――49%
トランプ米大統領は就任以前から事あるごとに主要メディアを批判し、支持者から喝采を集めてきました。就任後も、ニューヨーク・タイムズ紙やCNNテレビなど、トランプ政権に批判的な有力メディアを締め出していますが、それに対して国民の多くが非難の声を上げることもありません。

トランプ大統領は2月16日の会見で、「テレビをつけ、新聞を開くと(政権が)大混乱しているとの記事を目にする。だが、実態は正反対だ。この政権はよく整備された機械のように動いている」と述べましたが、トランプ大統領はいくら自分に都合の悪いニュースが報じられてもお構いなしです。やはり、上の100日間の行動を誠心誠意実行しているという自負があるのだと思います。

米国メディアには根本的な問題があることをこのブログには何度か掲載してきました。その大きな問題とは、米国のメディアはその90%をリベラル・左派が占め、保守は10%程度に過ぎないということです。

日本でいえば、大手新聞は朝日新聞、毎日新聞のようなリベラル・左派系の新聞ばかりで、米国には産経新聞のような保守系の新聞は存在しません。

大手テレビ局もほとんどが、リベラル・保守系で占められていて、かろうじてFOXTVが唯一の保守系テレビ局です。

そのため、本来は人口比でいえば、半分程度は存在するはずの米国の保守の声がすっかりかき消されてきたという事実があります。しかし、この保守の存在がトランプ大統領誕生の原動力になったのはいうまでもありません。

リベラル左派メディアを槍玉に挙げるトランプ大統領
こうした傾向は、米国社会の隅々に影を落としています。リベラル左派、マスコミにおよばず、民主党や教育機関、映画などの大衆娯楽を乗っ取ってしまった結果保守派の価値観は一方的に踏みにじられるか、有名無実にされてしまったのです。

リベラル・左派は幼稚園のころから「資本主義の邪悪さ」と「社会主義への同情」を刷り込まれ洗脳されてきたので、自由主義や資本主義の象徴であるトランプ氏は彼らにとって「叩きのめすべき敵」なのです。

米国のリベラル左派が、トランプ氏を政治的に貶めようとすればするほど、それが逆効果になっています。米国民の多くは「抗議団=米国を3等国に転落させたい連中」とみています。

そうして、大手メディアはニューヨークやワシントンといった都市部を中心に記事を作成し、保守派の存在する広大な地方の問題には目を配ってきませんでした。というより、無視してきたのです。

メディアはリベラル左派が幅を利かせる都会の現象ばかり報じて、保守層の多い『ラストベルト』(かつての工業地帯。ラストは錆のことで、使われなくなった工場や機械を表現している)で何が起きているのかをきちんと報道しませんでした。
このように、これまで保守派の苦悩や価値観を見過ごしてきたことが、メディアが軽蔑される理由となっているのです。

米国主流メディアが報じる米国の姿と、実際に起きている事実の間には大きな断絶があるのです。米国メディアは反省して、保守派との断絶がどういうものかを理解する努力をするべきなのです。それができなければ、米国のリベラル左派は衰退の一途をたどることになることでしょう。

そうして、日本のメディアも反省すべきです。そもそも、大統領選挙のときの日本のメディアの報道は、米国のリベラル左派の報道をそのまま鵜呑みにして報道するだけで、結局大誤報の連続でした。

そうして、トランプ大統領が誕生した後は、上記で述べているような米国の実情を分析することもなく、トランプ氏の100日間の行動を吟味するでもなく、日々頓珍漢な報道を続けています。

私からすれば、字が読めないレベルなのではないかと思ってしまうほどです。無論、字は読めて、字を読んでその内容を口で発語することはできるのでしょうが、100日間の行動など読んでも、その意味するところが理解できないのではないかと思います。

このような症状を機能的識字というそうです。機能的非識字(きのうてきひしきじ、英語:Functional illiteracy)とは、個人が日常生活において、読み書き計算を機能的に満足に使いこなせない状態を指します。機能的文盲ともいいます。 

読み書き計算を機能的に使いこなせる状態である機能的識字、機能的リテラシー(Functional literacy)と対義語的に用いられます。これに対して、簡単な読み書きや計算のみできる状態を識字、ごく簡単な文章の読み書きや計算もできない状態は非識字、といいます。

非識字者は、読み書きが全くできません。これとは対照的に、機能的非識字者は、母語における読み書きの基本的な識字能力は有していながら、さまざまな段階の文法的正確さや文体などが水準に及ばないのです。

つまり、機能的非識字の成人は、印刷物に直面しても、現代社会において機能する行動ができないし、たとえば 履歴書を書く、法的な契約書を理解する、指示を書面から理解する、新聞記事を読む、交通標識を読みとる、辞書を引く、バスの運行スケジュールを理解する、などの基本的な社会行動をとることができないのです。

機能的非識字の場合はまた、情報技術にかかわることが難しいのです。たとえばパソコンで文書作成やウェブ閲覧をしたり、表計算ソフトの利用ができない、携帯電話を効果的に使えない、などの弊害もある。

無論、メディア関係の人は、ここまで酷い機能的非識字ではないのでしょうが、それにしても、印刷物に直面しても、現代社会において、たとえばマクロ経済のまともな書籍を読んでも、それに対して機能する行動ができず、デフレのときに増税すべきなどというとんでもない記事を書いたり、報道したりするのでしょう。あるいは、そもそも、経済記事を書いていても、マクロ経済に関する知識を得る必要性など感じず、ただただ、財務省などの発表をそのまま記事にするなどの行動に出るのだと思います。

米国大統領選挙で大誤報をしたという認識もなく、米国メディアの垂れ流す報道をそのまま鵜呑みして、100日間の行動の意味するところも理解できず、まともに読むこともせず、トランプ大統領のどんな発言、小さな動作にも一喜一憂し、大統領が繰り出す新しい政策に驚きの反応をみせ、トランプ大統領の政策は予測が不可能だと認識してしまうのでしょう。

機能的非識字者は自分で文字を書けるのですから、一見、自立しているように思えます。しかし彼らは、例えば保険の約款を理解できない。新聞に掲載されている記事の意味も分からないし、文章の要点をつかんだり、感動したりすることができません。図表を読み取ることができないのです。したがって、自分が生きている社会の構造を解釈し、把握することができないのです。報道関係社が、このような機能的非識字者であれば、まともな報道などできるはずがありません。

このような分析能力では、複雑さを忌避するのみならず、複雑な出来事(経済危機、戦争、国内もしくは国際政治、金融取引のスプレッド)を前にしても基本的な理解すら得ることができません。

したがって、機能的非識字者は、自身の直接的経験と比較することによってのみ、世界を解釈します。

日本人には読みづらいElectroharmonixという
欧文フォントのアルファベット。非識字者気分になれるかも?
「ビジネス」誌によれば、アメリカでは1500万人の機能的非識字成人が21世紀の初めに職についていた。American Council of Life Insurersの報告では フォーチュン誌による全米トップ500企業の75%が自社の労働者に何らかの補習トレーニングを提供していました。全米で、3000万人(成人の14%)が単純な日常的識字活動ができない状態だそうです。日本でもこの問題は大きいのではないかと思います。特に、信じがたいことにメディア関係でこれが、大きな問題になっているのではないかと危惧の念を持ってしまいます。

以下にメディア関係者の機能的非識字症状の例をあげてみます。

金融政策と雇用の間に密接な関係があることを理解できない、そのため、自分自身もしくは自分の家族に雇用に関する問題が生じたとき初めて問題となります。そうでなければ、いつまだたっても、気づきません。その一方で、新卒者の空前の雇用状況の良さには、無頓着です。そもそも、金融政策と雇用の間に密接な関係があることを理解していないので、単なる偶然としか思えないのです。

増税は自身の購買力の減少でしかありません。8%増税が実施されて、個人消費がかなり落ち込んでも、自分の給料はさして下がっていないので、その悪影響に関して、無頓着。そして、貿易赤字などに一喜一憂し、その時々でのその数字の持つ意味合いに思いがいたらない。安全保障の問題や、実質賃金、社会現象などについて、長期的な結果を考慮に入れた分析を練り上げる能力をもたず、目の前のことに一喜一憂します。

これでは、米国のリベラル左派のメディアと同様、まともな報道ができるはずなどありません。まともな報道ができなければ、そのようなメデイアはいずれ消え去るしかありません。

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