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2016年9月25日日曜日

【コラム】ナチスを震え上がらせたスイスの「精神防衛」に学べ―【私の論評】『頭の中のお花畑』から『精神防衛』への転換が重要な課題(゚д゚)!

【コラム】ナチスを震え上がらせたスイスの「精神防衛」に学べ


先月、訓練中のスイス空軍の戦闘機がアルプスで消息を絶った。「アルプス山脈のどこかに墜落したものとみられる」というニュースを読んだが、戦闘機が飛び回る「アルプスの国」を思い浮かべるのはおかしな気分だった。スイスは平和な永世中立国ではないか。しかし、それはイメージだけだ。安全保障の観点から見ると、意外に堅固な国だということが分かる。

スイスは、ドイツ・イタリア・フランス・オーストリアなど大国に囲まれた、巡り合わせの悪い国だ。第2次世界大戦時、ナチス・ドイツはスイス侵攻説を流し続けて政治的・経済的・軍事的に脅しをかけることで、スイスを心理的に圧迫した。しかし、スイスを攻撃することはついにできなかった。スイスの断固たる対応が、ドイツの侵攻の意思をくじいたからだ。

帝国議会でナチス式敬礼を受けるヒトラー(白い演壇の一つ下、黒い演壇で敬礼に
応えている)、ベルリン、1941年。写真はブログ管理人挿入以下同じ。
 豊かな国になった現在も、それは変わらない。スイスの情報機関「連邦情報部」(NDB)は、今年の年次報告書で「スイス国内でますます大きくなる中国の経済的、イデオロギー的影響力に警戒すべき」と警告した。そして、ジュネーブやバーゼルにある中国の「孔子学院」を要注意リストに載せた。NDBのマルクス・ザイラー長官は「中国への経済的依存度が高まる状況はスイスにとって脅威になっており、孔子学院は影響力拡大を狙った中国の戦略の一つ」と分析し「世界2大国へと浮上する中国の外交的・安全保障的影響力は南シナ海を超え、いずれ全地球的なレベルで影響を及ぼすだろう」という見方を示した。

ザイラー長官の警告は、ちょうどスイスにチャイナ・マネーが流れ込みつつある時点でなされた。このところ、スイスは中国との自由貿易協定(FTA)締結で貿易額が激増し、観光客も流れ込んでいる。中国からほぼ8000キロ離れたスイスの対応は、安全保障とは銃剣だけでやるものではない、ということを教えている。中国とは地球の反対側にある国ですらその脅威を警戒する姿は、韓国人に真剣な問いを投げ掛ける。韓国はこれまで中国の急成長がもたらす利益に酔い、政府・企業・国民問わず、国を挙げて自ら弱点をつくり上げてきたのではないかと。

杭州の主要20カ国・地域(G20)サミットで習近平国家主席は、韓国と米国に向けて、高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に反対する意向を明らかにした。中国のTHAAD攻勢は、どのような形にせよ、再開されるだろう。あちこちの集会で司会者として登場するある芸能人は、THAAD反対の集会で「なぜ安全保障問題の代案を国民に要求するのか。それをやらせるために、大統領と国会議員を選んだのではないか?」と主張した。国民の決意に満ちた態勢こそ安全保障の核心と考えるスイス人がこの言葉を聞いたら、何と言うだろう。

人口も軍事力も貧弱なスイスが見せつけたのは、「精神防衛」という価値の下、がっちり一団になった国民の気勢だった。「国民全てが軍人であり、自分が立っている場所が要塞(ようさい)」「侵攻するならしてみるがいい。スイスは、勝つことはできないだろうが、お前たちも壊滅に近い損害を被るだろう」というメッセージを投げ掛けた。ドイツは、その覚悟が口先だけの脅迫と考えることはできなかった。貧しい祖国を食べさせていくため、他国の雇い兵として馳(は)せるときにスイス人が見せる勇猛さを、よく知っていたからだ。はっきり目に見える「戦略的損失」を前に、ドイツは野望を引っ込めることしかできなかった。「ハリネズミ戦略」とも呼ばれるスイスの防衛態勢は、「自分たちのほかは誰も信用できない」という安全保障面での覚醒があったから可能だった。

李吉星(イ・ギルソン)北京特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

【私の論評】『頭の中のお花畑』から『精神防衛』への転換が重要な課題(゚д゚)!

日本では、スイスは永世中立国で、専守防衛の国だとして、リベラルの方々が褒めそやすくにですが、実像は上の記事をみてもわかるように全く違います。


スイスは、日本のように「軍事力の放棄」することなく、「軍事力を保つ」ことによってその独立と平和を守っています。しかもそれだけではありません。常に独立と平和を守れるように、「民間防衛」というマニュアルを、スイス政府自らが編集し、全スイス国民に配布しています。

この本の範囲は、戦時中の避難方法から、占領された後のレジスタンス活動方法まで非常に多岐に渡ります。その中でも、「戦争のもう一つの様相(P225~P272)」は、現在の日本に非常に参考になります。

なぜなら、最近の日本と周辺国(中国、韓国、北朝鮮)の状況が、この本に記述されている「敵に武力以外による攻撃を受け、破滅へと導かれる状態」と非常に良く似ているためです。以下に『民間防衛』というスイス政府が編纂した書籍の日本語訳の書籍の表紙の写真を掲載します。

民間防衛―あらゆる危険から身をまもる

日本が、集団的自衛権をやめて、専守防衛をするというのなら、スイスのようにならなければ、とても日本を守り切ることなどできません。

『民間防衛』に関しては、その内容を簡潔にまとめているサイトが存在しました。そのサイトから以下にリンクを掲載します。

■メインコンテンツ
「民間防衛」からの引用とその解説です。時間がなければ「重要」の部分だけでも目をとおしてください。 
・はじめに・敵は同調者を求めている1 / 眼を開いて真実を見よう・敵は同調者を求めている2 / 社会進歩党は国を裏切るだろうか・外国の宣伝の力 / 不意を打たれぬようにしよう重要敵はわれわれの抵抗意志を挫こうとする / 警戒しよう・敵は意外なやり方で攻めてくる / 自由と責任・敵はわれわれを眠らそうとする / われわれは眠ってはいない・スポーツも宣伝の道具 / 真のスポーツ精神を守ろう・われわれは威嚇される / 小鳥を捕らえる罠・経済的戦争 / 経済も武器である重要革命闘争の組織図・中まとめ・敵はわれわれの弱点をつく / スイスは、威嚇されるままにはならない・混乱のメモ / 健全な労働者階級はだまされない重要危機に瀕しているスイスに、人を惑わす女神の甘い誘いの声が届く/ 心理戦に対する抵抗重要政府の権威を失墜させようとする策謀1 / 政府と国民は一致団結している重要政府の権威を失墜させようとする策謀2 / それにもかかわらず、国民と政府は一致団結している重要政府の権威を失墜させるための策謀 / 国民と政府は動揺しない・内部分裂への道 / 自らを守る決意をもっていれば重要滅亡への道……… / 法と秩序が保たれれば・スイスが分裂していたら / スイスが団結していたら
・首に縄をつけられるか / われわれは他国に追随しない・終局 / スイスにはまだ自由がある・おわりに
さて、このようなマニュアルを配布し、国民皆兵制のスイスでは日本では決してお目に書かれない、非日常的な風景が普通にみられます。その写真を以下に掲載します。

自宅に対空機関砲を備える人。いざとなったら、これで
迎え撃つ。機関砲を構えてご満悦。替え銃身も揃えていそう。
それと以下にネットで拾った、スイスのスーパーマーケットの写真を掲載します。

スイスでは、日常風景のこの写真。写真の方は、予備役の軍人だそうですが、銃を持った軍人がスーパーで普通に買い物している国がスイスです。

一方韓国への高高度防衛ミサイル(THAAD)配備は、韓国にとって北朝鮮からの攻撃に対する韓国防衛の要になるはずです。むろん、これは中国に対する牽制にもなるのは明らかです。

韓国は、もともと輸出がGDPの40%程度を占めるとか、その中で対中国輸出が一番大きいということで、中国依存の国です。

しかし、経済と安全保障は切り分けて考えるべきですし、それに将来のことを考えれば、はやめに内需を拡大して、輸出にたよる経済運営はやめるべきです。日本は、輸出がGDPに占める割合は、十数%に過ぎず、アメリカに至っては数%に過ぎません。

輸出がGDPに占める割合が高いことは、少し前までは、国際競争力があるなどとして良いことのように受け止められていましが、今やその認識は改めるべきです。ここ数年では、国際貿易そのものの伸びがかなり鈍化しています。さらには、輸出が大きいということは、反対のほうからみれば、外国の情勢に左右されやすいということです。

日米は元々内需が大きいことから、韓国のように経済が外国の情勢に左右される割合は少ないです。日本をはじめとする先進国は、個人消費がGDPに占める割合は60%以上です。米国に至っては、70%です。韓国は、安保的な観点からも、早急に個人消費を高める政策をとるべきです。それに関しては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事をご覧いただくものとして、ここでは解説しません。

しかし、経済の面では、安全保障の観点からみれば、韓国よりははるかに良い状態の日本なのですが、他方「精神防衛」という観点からみれば、韓国と同等かそれ以下です。

頭の中のお花畑
そもそも、スイスでは自宅に機関砲を備えたり、スーパーに自動小銃を携えて買い物に行く予備役がいるというのは、さすがに世界的にもあまり見ない風景ですが、軍服を着た軍人が町を歩いていたり、移動していたりするのは、普通の風景です。

しかし、日本ではそのような風景ですら滅多に見ません。集団的自衛権を行使することを標榜する日本では、さすがに集団的自衛権を行使せず、専守防衛の方針を貫き、民間防衛で国を守ろうとするスイスのようにする必要はないです。

しかし、昨年の集団的自衛権の行使をめぐる安保法制の審議過程における、あの騒動を考えると、では安保法制反対の方々は、専守防衛をするということは、スイスのようになることであることを理解しているのかと問いたくなります。


集団的自衛権を行使するにしても、専守防衛にしてもやはり「精神防衛」がなっていない、ようするに「頭の中がお花畑」ではまともな安全保障論議はできません。

安全保障論議をするなら、少なくとも頭の中の「お花畑」を葬り去らなければなりません。過去の日本は集団的自衛権の行使によって、米軍に基地を提供する一方で、アメリカの核の傘の下に入り、防衛に関してあまり考える必要はありません。しかし、世界の警察官をやめた米国は今後も日本の防衛を今までどおり守ってくれるかどうかなど定かではありません。

今こそ『頭の中のお花畑』から『精神防衛』に転換すべき時です。

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2015年5月14日木曜日

【安部総理記者会見】安全保障の関連法案を閣議決定、国会論戦へ―【私の論評】戦争法案などというのは中国スパイだけ!中国の嫌がる立法をこれからもどんど実施しよう(゚д゚)!


本日記者会見が発言する安部総理
【動画】安倍首相の会見: https://www.youtube.com/watch?v=x77WRvJXBdo
【動画】質疑応答: https://www.youtube.com/watch?v=f6NqLbQjnww

政府は14日夕、集団的自衛権の行使などを可能にする安全保障の関連法案を閣議決定した。安倍晋三首相がこのあと会見し、狙いを説明する。自公両党と政府の間で昨年5月に始まった法制化に向けた作業は、国会に論戦の場を移す。政府は会期延長を視野に、今夏の法案成立を目指す。

一定の条件を満たせば集団的自衛権の行使が可能になるほか、他国軍の後方支援、国際的な平和協力活動での役割が拡大する。掃海艇を派遣した1991年の湾岸戦争以降、海外での活動が徐々に増えてきた自衛隊の任務は大きく広がる。

<後方支援、随時可能に>

法案の名称は「平和安全法制」。現行法の改正案10本と、新法案1本で構成される。

改正する現行法のうち、武力攻撃事態対処法は、他国が攻撃された場合でも、日本の存立にかかわるなどの要件を満たせば、自衛隊が武力行使できるように改める。

朝鮮半島有事を念頭にした周辺事態法は、後方支援の対象を米軍以外に広げるとともに、自衛隊の活動範囲も制約をなくす。弾薬の提供や、発進準備中の戦闘機への給油も可能にする。

国連平和維持活動(PKO)協力法も改正し、国連以外が行う平和協力活動に参加できるようにする。武器使用の権限を拡大、治安維持任務も可能にする。

新たに作る国際平和支援法案は、日本の安全に直接影響がない場合でも、アフガン戦争時に自衛隊がインド洋で多国籍軍に給油をしたような後方支援を随時可能にする。例外なく国会の事前承認が必要であることなどを歯止めとして盛り込んだ。

<治安出動の手続き迅速化>

政府はこのほか、日本への武力攻撃かどうか判断できない「グレーゾーン事態」が起きた場合に、警察権に基づく自衛隊の出動を迅速化する方策についても閣議決定する。

武装勢力が離島に上陸したり、外国軍艦が領海に侵入した場合に、自衛隊による「治安出動」や「海上警備行動」を電話閣議で発令できるようにする。

【私の論評】戦争法案などというのは中国スパイだけ!中国の嫌がる立法をこれからもどんど実施しよう(゚д゚)!

この会見は、歴史にも残るものと考えますので、歴史の記録という意味合いで、安部首相による会見ならびに、質疑応答の全部を以下に文章で掲載させていただきます。

安倍首相による会見

安倍総理:いかなる事態にあっても、国民の生命と平和な暮らしは守り抜いていく。内閣総理大臣である私には、その大きな責任があります。その覚悟の下、本日、新しい安全保障法制の整備のための基本方針を、閣議決定致しました。自民党・公明党の連立与党が濃密な協議を積み重ねてきた結果です。協議に携わった全ての方々の、高い使命感と責任感に心から敬意を表する次第であります。 
集団的自衛権が現行憲法の下で認められるのか。そうした抽象的、観念的な理論ではありません。現実に起こりえる自体において、国民の生命と平和な暮らしを守るため、現行憲法の下で何を為すべきか、という議論であります。 
例えば海外で突然紛争が発生し、そこから逃げようとする日本人を同盟国であり、能力を有する米国が救助・輸送しているとき、日本近海において、攻撃を受けるかもしれない。我が国自身への攻撃ではありません。しかしそれでも、日本人の生命を守るため、自衛隊が米国の船を守る。それを出来るようにするのが、今回の閣議決定です。 
人々の幸せを願って作られた日本国憲法が、こうした時に、国民の生命を守る責任を放棄せよ、と言っているとは、私にはどうしても思えません。 
この想いを与党の皆さんと共有し、決定しました。 
ただし仮に、そうした行動を取る場合であっても、それは他に手段が無いときに限られ、且つ、必要最小限度でなければなりません。現行の憲法解釈の基本的な考え方は、今回の閣議決定においても、何ら変わることはありません。 
海外派兵は一般に許されない、という従来からの原則も、全く変わりません。自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありません。 
外国を守るために日本が戦争に巻き込まれる、という誤解があります。しかし、そのような事もあり得ない。日本国憲法が許すのはあくまで、我が国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置だけです。 
外国の防衛それ自体を目的とする武力行使は、今後とも行いません。むしろ、万全の備えをすること自体が、日本に戦争を仕掛けようとする企みを挫く、大きな力を持っている。これが抑止力です。 
今回の閣議決定によって、日本が戦争に巻き込まれる恐れは、一層無くなっていく、そう考えています。日本が再び戦争をする国になるというようなことは、断じてあり得ない。今一度、その事をはっきりと申し上げたいと思います。 
二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。その痛切な反省の下に、我が国は戦後70年近く、一貫して平和国家としての道を歩んできました。しかしそれは、「平和国家」という言葉を唱えるだけで、実践したものではありません。 
自衛隊の創設、日米安保条約の改定、そして国連PKOへの参加。国際社会の変化と向き合い、果敢に行動してきた先人たちの努力の結果であると考えます。
憲法制定当初、我が国は自衛権の発動としての戦争も放棄した、という理論がありました。しかし吉田(茂)総理は、東西冷戦が激しさを増すと、自らの手で自衛隊を創設しました。その後の自衛隊が、国民の生命と暮らしを守るため、いかに大きな役割を果たしてきたかは、言うまでもありません。 
1960年には日米安全保障条約を改定しました。当時、「戦争に巻き込まれる」という批判が随分ありました。まさに批判の中心は、その論点であったと言ってもいいでしょう。 
強化された日米同盟は、抑止力として、長年に渡って、日本とこの地域の平和に大きく貢献してきました。 
冷戦が集結し地域紛争が多発するなか、国連PKOへの自衛隊参加に道を開きました。当時も、「戦争への道だ」と批判されました。しかしカンボジアで、モザンビークで、そして南スーダンで、自衛隊の活動は世界の平和に大きく貢献し、感謝され、高く評価されています。 
これまでも私たち日本人は時代の変化に対応しながら憲法が掲げる平和主義の理念の下で最善を尽くし、外交、安全保障政策の見直しを行って参りました。
決断には批判が伴います。しかし、批判を恐れず、私達の平和への願いを、責任ある行動へと移してきたことが、平和国家・日本を創りあげてきた。その事は間違いありません。 
平和国家としての日本の歩みは、これからも決して変わることはありません。むしろその歩みを更に力強いものとする。そのための決断こそが、今回の閣議決定であります。
日本を取り巻く世界情勢は一層厳しさを増しています。あらゆる事態を想定して、国民の命と平和な暮らしを守るため、切れ目のない安全保障法制を整備する必要があります。もとより、そうした事態が起きないことが最善であることは、言うまでもありません。 
だからこそ、世界の平和と安定のため、日本はこれまで以上に貢献していきます。さらに、いかなる紛争も力ではなく、国際法に基づき外交的に解決すべきである。私は、「法の支配」の重要性を、国際社会に対して繰り返し訴えてきました。その上での、万が一の備えです。そしてこの備えこそが、万が一を起こさないようにする、大きな力になると考えます。 
今回の閣議決定を踏まえ、関連法案の作成チームを立ち上げ、国民の生命と平和な暮らしを守るため、直ちに作業を開始したいと考えています。充分な検討を行い、準備が出来次第、国会に法案を提出し、ご審議いただきたいと考えています。私たちの平和は、人から与えられるものではない。私たち自身で築きあげる他に、道はありません。 
私は今後とも、丁寧に説明を行いながら、国民の皆さまの理解を得る努力を続けて参ります。そして、国民の皆さまと共に、前に進んでいきたいと考えております。私からは以上であります。
質疑応答
記者:北海道新聞のウノと申します。今回閣議決定した内容については、日本への攻撃の抑止力を高めるという見方がある一方、武力行使(の)要件として、「国民の生命などが根底から覆される明確な危険がある場合」とするなど、抽象的な表現に留まった感があります。これでは時の政権の判断で、いかようにでも拡大解釈でき、明確な歯止めにならない、との指摘もありますが、総理はいかがお考えでしょうか? 
また、自衛隊の活動については、世界の警察官としての役割を果たそうとしないアメリカに、尖閣諸島をはじめ、東アジア地域に求められる役割の、より適切な実行を促すとの期待がある一方、隊員が戦闘に巻き込まれ、血を流す可能性がこれまで以上に高まる可能性も指摘されています。総理はこの点をどうお考えでしょうか? 
安倍総理:今回の「新3要件」も、今までの3要件と基本的な考え方はほとんど同じと言っていいと思います。そしてそれが、武力行使の条件であったわけでありますが、今回、「新3要件」としたところであります。繰り返しになりますが、基本的な考え方はほとんど変わっていない、表現もほとんど変わっていないと言っていいと思います。 
今回の閣議決定は、現実に起こりえる事態において、国民の生命と平和な暮らしを守ることを目的としたものであります。武力行使が許されるのは、自衛のための必要最小限度でなければならない。このような従来の憲法解釈の基本的な考え方は、何ら変わることはありません。 
従って、憲法の基幹性を何ら変更するものではなく、新3要件は、憲法上の明確な歯止めとなっています。また、この閣議決定で、集団的自衛権が行使できるようになるわけではありません。国内法の整備が必要であり、改めて国会のご審議をいただくことになります。これに加えまして、実際の行使にあたっても、個別的自衛権の場合と同様、国会承認を求める考えであります。 
民主主義国家である我が国としては、慎重の上にも慎重を期して判断をしていく、というのが当然だろうと思います。今回の閣議決定を受けて、あらゆる事態に対処できる法整備を進めることによりまして、隙間のない対応が可能となり、抑止力が強化されます。我が国の平和と安全を、そのことによって、抑止力が強化されたことによってですね、一層確かなものにすることが出来る、と考えています。 
記者:フジテレビのニシガキと申します。お願い致します。北朝鮮問題についてお伺い致します。本日、北京で日朝局長級協議が行われました。北朝鮮による特別委員会につきまして、拉致被害者の方を含めて、包括的・全面的な調査を行うという、その実行性の担保というのがどのようになされているのか。また日本の独自の制裁解除に値するようなものになるのかどうか、総理のご認識をお願い致します。
また合わせまして、韓国のユン・ビョンセ外相が30日に韓国の国会での答弁で、日本の制裁解除を含む拉致問題解決に向けた交渉が、核問題についての日米間の協調に影響を与えるのではないか、との認識を示されていますが、総理のお考えはいかがでしょうか? 
安倍:日朝政府間協議については、現在も北京において開催されている最中であります。私としては、代表団が帰国後に、北朝鮮側の特別調査委員会に関する説明についてきちんと報告を受けた後に、しっかりと見極め、適切に判断をしていく考えであります。現時点で今後の対応についてお答えすることは、適切ではないと思います。 
日朝関係を含め、北朝鮮をめぐる問題については、平素から米国や韓国と緊密に連携をとってきています。我が国としては、今後も引き続き連携していく考えでありまして、日朝政府間協議の開催によって、日米韓の関係に悪影響が出ることはない、と考えています。 
記者:時事通信のヤマグチと申します。よろしくお願いします。今回の集団的自衛権を容認する、という決定は、日本の国防政策の大きな転換になると思います。これによって総理は今後、日本をどのような国にされていくお気持ちでしょうか。 
それから、抑止力を高め、世界貢献が出来るという国になる、ということはまた、平和を守るためにはもしかすると犠牲を伴うかもしれない、という可能性もあると思いますが、国民はどのような覚悟を保つ必要があるのでしょうか。(その後聞き取り不明) 
安倍総理:今回の閣議決定は、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しさを増すなか、国民の生命と平和な暮らしを守るために何を為すべきか、との観点から、新たな安全保障法制の整備のための基本方針を示すものであります。これによって、抑止力の向上と地域及び国際社会の平和と安定に、これまで以上に積極的に貢献していくことを通じて、我が国も平和と安全を一層確かなものに出来る、と考えています。 
憲法が掲げる平和主義、これからも守り抜いていきます。日本が戦後一貫して歩んできた平和国家としての歩みは、今後も決して変わることはありません。今回の閣議決定は、むしろその歩みを力強いものにしていくと考えています。また、今回閣議決定を致しました基本的な考え方「積極的平和主義」につきましては、私は首脳会談の度に説明をしています。そしてそれを簡単にした説明書、英語やフランス語やスペイン語、ポルトガル語など様々な言葉に訳したものをお渡しをし、多くの国々から理解を得ていると承知をしています。 
また自衛隊の皆さんはですね、今この瞬間においても、例えばソマリア沖で海賊対処行動を行っています。あるいは東シナ海の上空、また海上において、様々な任務を担い活動しているわけでありますが、それぞれ、時には危険が伴う任務であるなかにおいて、国民の生命を守るために彼らはこの任務を粛々と果たしているわけであります。私は彼らに感謝をし、そして彼らの勇気ある活動に敬意を表したい。彼らは私の誇りであります。今後とも、彼らは日本国民の生命を守るために活動していただける、と確信をしております。 
記者:毎日新聞のタケシマです。先ほどのご発言で、関連法案の作業チームを立ち上げたいというお話があったと思うんですが、今回示された基本方針が国会でどのように議論されていくのかっていうのは、国民の関心もかなり大きいと思います。グレーゾーン、国際協力、集団的自衛権、この3つについてどのようなスケジュールで法改正に臨まれるお考えでしょうか? 
安倍総理:法改正についてはただちに取り組んでいく必要があると思います。今回の閣議決定において、今おっしゃったようなグレーゾーンにおいて、あるいは集団的自衛権において、あるいは集団安全保障において。自衛隊が活動できるようになるわけではありません。そのための法整備を、先ほど申し上げたようにスタートしていくわけでありますが、この法整備についても与党とよくスケジュールも含めて連絡をして、緊密な連携をしていきたいと思っています。
今の段階では、いつまでにということについては、これからスタートするところでありますから、まだ申し上げる状況ではないというふうに思います。 
記者:日本テレビのタケウチです。そもそもなんですが、この集団的自衛権の問題というものに、総理が問題意識を持って取り組もうと思ったきっかけとか原点みたいなものはなんでしょうか? これをお聞かせください。 
安部総理:いわゆる有事法制、あるいは国民保護法の制定をおこなったわけでありますが、当時私は官房副長官でありました。あのときあらためて、戦後60年近く経つ中において、そうした日本の独立、そして国民の命を守るための法令には不備があるという現実と向き合うことになりました。 
その中において、残された宿題がまだあった。それが今回のグレーゾーンであり、たとえば集団安全保障の中において、PKO活動をする中において、いっしょに活動する他国の部隊に対して、自衛隊がもし襲撃をされたときには、助けてもらうことになるけれども、逆はないということで果たしていいのか。あるいはNGOの人たちが実際に危険な目に遭っている中において、自衛隊が彼らを守ることができないというのが。 
そしてまた、何人かの米国の高官から、米軍あるいは米国は日本に対して日本を防衛する義務を安保条約5条において果たしていく考えであると。しかしたとえば日本を守るために、警戒にあたっている米国の艦船が、もし襲われて、近くにいて守ることのできる日本の自衛艦がそれを救出しなくて、あるいはまたその艦を守るために何の処置も取らなくて、アメリカ国民の日本に対する信頼感、あるいは日本に対して、共に日本を守っていこうという意志が、ついていくかどうか、真剣に考えてもらいたいと言われたことがありました。 
だんだんと安全保障環境が厳しくなるなかで、まさにそうした切れ目のないしっかりとした体制をつくることによって、抑止力を強化し、まったくスキのない体制をつくることによって、日本と地域はより平和で安定した地域となっていく。そう考えたわけでございました。 
今時、その意味においては、閣議決定ができました。私は総理大臣として、国民の命を守り、平和な暮らしを守るために、さまざまな課題に対して目を背けずに、正面から取り組んでいく責任があります。その責任において、今回閣議決定を行いました。 
(以上)

さて、上の記者会見について皆さんはどう思われたでしょうか。本日は、札幌市内の中心部に赴く用事があり、歩いていると、どこかの団体が安全保障の関連法案に反対と、シュプレヒコールをしていました。見る限りで、この団体の人たちが叫んでいるだけで、その周りを囲む通行人などいるわけでもなく、街を歩いている人たちはほとんど無関心のようでした。

世界の中で集団的自衛権が行使できない国は、永世中立を標榜するスイスなどを除けば日本だけです。しかし、そのスイスもかなり強力な軍隊を持っていますし、山岳地帯であることから、この地形を活用して、国自体を要塞のようにして国を守る体制を整えています。

スイスの守りは鉄壁!
また、現役の軍人の他にも予備役が相当数存在していて、平素から訓練を行い、いざというときには投入できる体制をとっています。昔は、一般家庭に武器があるのが普通でした。集団的自衛権を行使しないかわりに、かなりの軍事力を持つことで、スイスは安全保障を確実なものにしています。このようなことがあるので、あのヒトラーですら、スイスを侵略するというようなことは最初から考えていませんでした。

スイスは、このように単独で自国を守りぬく構えが十分に整っています。だからこそ、集団的自衛権など行使しなくても良いのです。

しかし、スイス以外の国は、すべて集団的自衛権を行使できるようになっています。それは、多くの国が、スイスとは異なり、他国との国境の大きな部分が、平地であったり、海洋であったりで、用意に攻めこまれやすい地形になっているからです。

大国日本が他の国が普通に出来ることができないのはおかしいと思います。安全保障のためには、何でも出来るようにしておいて、のです。

そうでないととんでもないことになります。日本が侵略を受けていて、自衛隊が劣勢になっていたとしても他国はおいそれと手を出せないという、とんでもないことになります。それ以外にも、安部総理の上の記者会見でも述べられていたような、対策をとることができます。しかし、集団的自衛権を行使できなければ、これらは実行できないのです。

スイスとは異なり四方が、海に囲まれ、島国である我が国。多くの都市が、平野に位置していて、さらには海に面してる日本においては、集団的自衛権が行使できないことのほうが、はるかに危険です。

最近では、テレビで盛んに「日本は平和国家なのに集団的自衛権を行使するのはおかしい」というような一般の人のインタビュー映像が流されていました。この人たちは、全く安全保障について理解していないようです。

テレビ局は集団的自衛権の行使反対をこれらの映像で訴えたかったのでしようが、このような報道は多くの国民を間違った方向に誘導することになります。

テレビ局のようなマスコミこそ、集団的安全保障を行使しないスイスの安全保証の実態や、スイス以外の他国集団的安全保障に関する考え方などを報道すべきと思うのですが、そうではありません。これから、国会での論戦となるわけですが、この論戦では、安倍政権は多く国民にも理解できるように、説明をしていただきたいものです。

今回の安全保障の関連法案を閣議決定を世界で最も嫌がるのは、中国であるのは明らかです。他国は、米国をはじめ中韓以外の全部の国が賛成しているか、反対はしていません。

これを嫌がるのは中国スパイだけです。中国の嫌がる立法はこれからもどんどすべきです。

私は、そう思います。皆さんはどう思われますか?

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2012年6月20日水曜日

欧州金融危機の中で、非ユーロ国「スイス」の景気が沸騰中―【私の論評】経済は、循環するということを知らない日本人というより、政治家と財務省・日銀?!!

欧州金融危機の中で、非ユーロ国「スイス」の景気が沸騰中



6月17日にギリシャで行われた再選挙では、緊縮財政支持派の新民主主義党(ND)が第1党となり、3位の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と連立を組んで、議会の過半数を抑え、組閣することとなった。両党は欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)との間で支援協議にあたってきた旧連立与党。緊縮策が実施に移されることでギリシャがユーロから離脱するという懸念は遠のいた。

ドイツ・マネーの流入

ドイツの金貨


ギリシャのように通貨統合による「歪み」に苦しんでいる国がある一方で、恩恵を享受している国もある。物事には表があれば必ず裏もあるものだ。

その典型がドイツでユーロ安による輸出増によって輸出企業の好調が続いている。その企業の利益が特別ボーナスの支給などで家計に流れ、消費にも火がつき、ドイツは好景気を謳歌している。ドイツがもっと支援するのが当然だと、ギリシャ人が考えるワケがここにある。

そんなドイツの好景気と、ユーロ危機の恩恵をフルに受けている国が別にある。欧州大陸の真ん中にありながら、ユーロに加入していないスイスである。5月末に機会があってスイスを訪問した。筆者は2002年から2004年までスイスのチューリヒに駐在したが、当時と比べても好景気は歴然としていた。


スイスの高級住宅街
引き金になっているのがドイツ・マネーの流入。ドイツ人が高級マンションなど不動産をせっせと買っているというのだ。それがスイス人の不動産投資熱にも火をつけている。

なぜ、ドイツ人がスイスの不動産を買うのか。もちろん、ドイツが好景気だからという理由もある。だが、最も大きい理由は資産を保全するためだ、という見方が強い。ユーロ危機が叫ばれる中で、ユーロ建ての資産をスイスに移そうというのである。

スイスの高級住宅街にある共同住宅
スイスはスイス・フランという独自通貨を持つ。EUには加盟していないものの、国境を超えた人やモノの移動を自由にする「シェンゲン条約」に加盟している。EU諸国と同様に自由に移動できる一方、通貨は別ということで、EUのメリットは享受し、ユーロの危機からは遮断されるという特異な位置にいる。いわば、「良いとこ取り」ができる立場なのである。

スイスフラン
ドイツからスイスに移っているのは資産ばかりではない。ドイツ人が「居住地」をスイスに移す動きも活発だ。1990年代半ばまでは移民のうち、専門的な知識を持つ「高技能人材」は20%過だった、という。それが今では80%になった。その中心がドイツ人で、医師や経営者などの移住が目立っているのだという。

もちろん、その背景にドイツの高い所得税率があるのは間違いない。スイスは州ごとに税率が違うが、ドイツなどEU諸国に比べれば、大幅に税金が安い。つまり税制上の「居住地」をスイスに移す動きが活発になっているというわけだ。

金融資産ではなく、不動産の方がより安心

ユーロ危機が長引けば長引くほど、スイスへの資産逃避は進む。ユーロが先々安くなり、スイスフラン高が続くとみれば、今のうちにスイスフラン建ての資産を手に入れておこうという動きにつながるからだ。もちろん、ユーロからの離脱が懸念されてきたギリシャのお金持ちなどは、もうすでにスイスに資産を移していると言われる。その最大の受け皿が高級不動産になっているのだ。

国家財政が危機的状況なのは世界各国に共通している。それを賄うために、通貨供給の増大、つまり、お札を増刷する動きが広まっている。それによっていずれインフレが進むとみる投資家は少なくない。国債など金融商品に置いてある資産を、不動産など非金融商品に移そうという流れは強まっている。ユーロよりスイスフランの信用が高いと言っても、スイス政府の財政も磐石なわけではない。スイスフラン建ての金融資産ではなく、不動産の方がより安心だというわけだ。

1920年代ハイパーインフレに見舞われたドイツ
子供たちが、お札を積みこのようにして遊んでいる
ドイツ人は、かつて1920年代にハイパーインフレを経験した歴史的教訓を持つ。それだけに彼らはインフレに敏感だ。スイスの不動産ばかりではなく、ドイツ国内の不動産価格も上昇基調にある。

国外から資金が集まっているスイスの景気は沸騰気味だ。失業率はリーマン・ショックの影響が出る前の2008年9月末の3.3%から2010年3月末には5.1%に上昇したが、昨年末現在4.1%。外国人の失業率の方が高いため、スイス人男性に限ってみれば、失業率は2.8%にまで低下している。完全雇用状態といっていい。

リーマン・ショック時の駅構内のキヨスクの新聞スタンド
スイスフラン高は輸出産業にはマイナスだが、事業のグローバル化が進んでいるスイス企業は意外と影響を受けていない。カルティエなどを傘下に持つ高級宝飾品大手のリシュモンや、スウォッチなどの企業は好業績を上げている。中国などの高級品需要の伸びに加え、ドイツなど欧州域内でも販売が好調なためだ。企業業績の好調によって給与も増えている結果、スイスの国内消費も底堅い。

マクロ経済が危機に瀕する中で、どうやってその影響を回避し、逆にチャンスに変えていくか。したたかに生きるスイスを見ていると、日本の国も企業も、外部環境の変化に流されないための戦略的な思考を持つ必要性をヒシヒシと感じる。

 (写真は、ブログ管理人が挿入)

【私の論評】経済は、循環するということを知らない日本人というより、政治家と財務省・日銀?!!

上の記事の結びで、「マクロ経済が危機に瀕する中で、どうやってその影響を回避し、逆にチャンスに変えていくか。したたかに生きるスイスを見ていると、日本の国も企業も、外部環境の変化に流されないための戦略的な思考を持つ必要性をヒシヒシと感じる」と書いていますが、この見解少し的外れな感じがします。

かつて世界最大のシェアを誇ったスイス時計、しかし、機械時計に
こだわったため、日本企業のクオーツ時計その座を奪われた
これでは、まるで、スイスの企業が利口で、日本の企業は、バカと言っていようにも聞こえます。まあ、政府・日銀に関してはバカというのは、その通りあてはまります。だから、この記事を書いた人は、悪げはないのでしょうが、言葉の端々に何か大きな勘違いをしている節が感じ取られます。そうして、これは、何もこの人に限らず、多くの人に見られる傾向ではないかと思い、気になったので、本日の記事を掲載いすることにしました。

本日の主題は、経済は循環するものであるということです。このことを十分認識されている方は、以下の記事は、読む必要がありませんので、読まないでください。そうして、こういうあまりにも、基本的なもの読むのは、ごめんだと思われる方、私は実は日本では、あなたのような方は、少数派なのではないかと思います。だから、この記事は読まないで結構ですから、多くの人と、経済の循環について話をしてあげてください。

これには、いくつかの意味がありますが、特に景気は循環するという基本的な原則を忘れている人が個々人だけではなく、政治家や高級官僚の中にも多いのではないかということです。景気の巡回といえば、3つほどあります。国内、国際、時代という枠組みのなかで循環します。

まずは、国内の循環ですが、模式図的に表すと以下のようになります。これをご覧になると、お金は、日本国内を循環していることがわかります。これが、念頭になければ、とんでもない妄想に取り憑かれることになります。たとえば、政府の借金です。以下の、図表には、残念ながら、納税だけが掲載されていますが、この他に国債などの借金もあります。

では、政府が、国債などで、企業や、銀行から借金をしたとしたらどうなるでしょうか?多大な借金をして、公共工事など行った場合どうなるでしょうか?経済が循環しているということを理解していなけば、そのお金は、この世から消えたことになるのかもしれません。でも、循環しているということを理解していれば、そのなことはありえないことがわかります。



そうです。公共投資を行なって、公共工事をした場合、お金は、主に、公共工事を請け負った企業にいくわけです。そうして、そのお金は、賃金などとして、家計にも移ります。家計からは、銀行に貯蓄することもあるでしょう。その後は、どうなるか、そうです。政府は、企業、家計、金融機関などから、税金を徴収しますから、公共工事で支払ったお金は、また、政府にもどってくるわけです。この世の中から完璧に消え失せるわけではありません。

政府が公共工事を行った結果、その工事によって出来あがってインフラなどを目一杯活用して、企業や、個人も頑張って、仕事をして、大きな富を創出したとします、そうすると、個人や、企業の収入が増えて、政府は、先に公共投資をしたよりも、もっと大きなお金を税金として徴収することもできるわけです。

しかし、この循環を理解せずに、政府がお金をつかえば、それで世の中からお金が消えると思い込んでいる人が、いるように思えてなりません。この考えは、経済の循環など無視して、政府財政が、あたかも、自分の懐と同じように思い込んでいることからおこることです。一般家庭であれば、使ったお金は、消えたものとみなすべきですが、政府はそうではありません。税金を徴収することができます、場合によっては、国債を刷って企業、家計、金融機関から借金もできます。それから、家計や、企業と根本的に異なるのは、政府の機関でもある、日本国の中央銀行である日本銀行は、お金を刷ることができるということです。これは、個人や、企業と根本的に異なるところです。ということは、政府の借金は、個人の借金とは全く異なるということです。

だって、お金は循環しているわけですから、政府の借金は、やりようでなんとでもなると思いませんか?全くそのとおりです。ただし、一つだけ条件があります。それは、何かといえば、上の図には出てこない、国外からの借金が嵩んでいなければという条件です。これがたくさんあれば、何ともしようがなくなります。

さて、日本国の中央銀行である日本銀行に関しては、本来政府の機関でもあるのですが、いわゆる中央銀行の独立性ということで、日銀法が改正されて以来、あたかも、政府とは関係のない、独立機関であるかのような動きをしていますが、これは、本日は本題ではないので、本日は、詳細を掲載することはしません。

経済の国際循環は、模式図的には、以下のようになります。これに関しては、上記のように説明していると長くなるので、あまり説明は、しませんが、上記の国内のように、循環しているということです。そうして、ここで、最低限理解しておかなければならないのは、金融資産です。日本が下の図の、A国であったとします。そうして、A国以外のすべての外国をB国ということにします。

A国は、様々な経済の循環として、現在どのような状況になっているかといえば、実は、B国に対して、お金を随分貸しつけており、A国は、B国に対して、収入と、借金を差し引いた、純額ということで、なんと、260兆円も貸し付けているということになります。そうして、その総額は、260兆円です。

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さて、上の国内の経済循環のところで、「だって、お金は循環しているわけですから、政府の借金は、やりようでなんとでもなると思いませんか?全くそのとおりです。ただし、一つだけ条件があります。それは、何かといえば、上の図には出てこない、国外からの借金が嵩んでいなければという条件です」と記載しましたが、これで、政府の借金はやりようでなんとでもなるいうことです。

時代による循環は以下のようなものです。景気は、良くなったら、悪くなるし、悪くなれば、良くなるという循環を繰り返しているということです。
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さて、経済の時代的な、循環である、景気の移りかわりですが、これは、何百年も前から知られていることです。実際に過去の日本も、循環しています。良くなったり、悪くなったりを繰り返しています。そうして、これは、これからも、続きます。日本は、従来の景気の循環からみれば、比較的長い間不景気の状況が続いています。そのため、これからも、ずっと経済は停滞すると思い込んでいる人もいるようですが、そのようなことは絶対にありません。

しかし、人間というものは、不思議なもので、何百年も前から、景気の良い時期が続くと、その景気の良さが永遠に続くと思い込み、逆に、景気が悪い時期が、長く続くと、人々は悲嘆し、不景気が永遠に続くと思い込むということは、何度となく繰り返されてきました。

近い例では、あのニューエコノミー狂想曲です。これは、特にアメリカでいわれたものです。その背景として、1990年代後半、IT投資の活性化により企業内での情報網が整備されていきました。SCM(供給連鎖管理)などの進展により、調達・生産・在庫・販売のそれぞれの局面における最適化が図られるようになりました。この結果、それまでの見込み生産によるタイムラグで発生していた景気循環(在庫循環)が消滅するのではないかと期待されました。これが、ニューエコノミー論です。


要するに、当時の経済の良さは、ITなどの進展により、従来のように在庫調整がうまくいかなくなることは、なくなり、その結果、新しい経済の領域に踏み込んでいるからであり、よって、景気後退は永遠におとずれず、この景気は永遠に続くとされたのです。


しかし、皆さんご存知のように、そのようなことはありませんでした。これについては、このブログでも、しばしば、紹介しているドラッカーの「ネクス・ソサエティー」の序文に、金融恐慌の時にドラッカー氏が、実際に体験したことも交えてわかりやすく解説されています。書籍の内容ともども、お薦めです。

そうして、スイスやドイツは、様々な巡りあわせから、結果として、経済の良い局面に遭遇しているのであって、特に経済面で、スイスやドイツ人が優れているというわけではないということです。そうして、しばらく好景気が続けば、また必ず、後退局面がやってきます。

さて、上記の話、簡単なことなのですが、デフレのこの時期に増税論議が巻き起こるような状況を考えると、多くの政治家や、もしかして、官僚などもこうした基本的なことを理解していないのではないかと、思えてきます。それは、ともかくとして、上記のことを理解していないと、それも字面をなぞっただけではなく、本当に真から理解していなければ、インフレも、デフレもましてや、デフレの最中の増税がなぜ、不味いのかを理解することはできないです。であれば、日本の景気後退の局面が長く続くのも無理はありません。でも、このような認識を持てないというのなら、そもそも、政治家、官僚など目指すべきではありません。自ら、辞めるべきです。そうではない人だけ、残って欲しいものです。皆様、どう思われますか?



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