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2019年8月26日月曜日

中国が輸入しない米のトウモロコシ 日本が買います―【私の論評】日本は世界最大のトウモロコシ輸入国。今回の日米の取引はWin-Winの状況(゚д゚)!

中国が輸入しない米のトウモロコシ 日本が買います

NHK NEWS WEB


今回の日米首脳会談を受け、日本がアメリカ産のトウモロコシを追加で輸入することになりました。国内で害虫の被害が確認されたため、日本企業が輸入を前倒しするということです。

これは安倍総理大臣とトランプ大統領が共同の記者発表で明らかにしたものです。

政府関係者によりますと、追加で輸入するのは飼料用のトウモロコシおよそ250万トンで、年間の輸入量の3か月分にあたる規模だということです。

国内で新たな害虫が確認され、今後供給に不安が生じることも懸念されるため、トウモロコシの輸入の90%以上を占めるアメリカから、日本の企業が9月から輸入を前倒しすることになるとしています。

記者会見でトランプ大統領は米中の貿易摩擦の影響でアメリカから農作物の輸出が減少していることを踏まえ、「中国は約束したことを実行しないため、アメリカのいろんな地域でトウモロコシが余っている。安倍総理が購入してくれるのはとても大きな取り引きだ」と述べました。

トウモロコシの追加輸入は来月の署名を目指す日米の貿易交渉とは別の扱いで、日本政府としては害虫対策のための民間の措置だとしていますが、トランプ大統領が重視するアメリカの農家対策にもつながる側面があると判断したものと見られます。

【私の論評】日本は世界最大のトウモロコシ輸入国。今回の日米の取引はWin-Winの状況(゚д゚)!

中国との貿易摩擦によって、トウモロコシの輸出が滞っていた分を日本が買い取るという取引が成立しました。その額は数億ドルに上るとされています。

さっそくですが、「日本はATMだ」などと言った論評が観測されています。では、日本にとってメリットはあるのでしょうか?
Trump Says U.S. and Japan Have Reached Trade Deal in Principle - WSJThe prime minister said Japan’s private sector would buy U.S. corn because 
ウォールストリートジャーナルの記事を見ると、安倍総理は害虫問題のためにアメリカのトウモロコシを買うのだと言っています。日本では、8月に入ってからトウモロコシに被害が出る害虫が発生しています。
世界蔓延の厄介害虫が茨城へ到達、全国拡散か(団藤保晴) - 個人 - Yahoo!ニュース国内で最初に見つかった鹿児島での発生状況調査によると、トウモロコシ、水稲、サツマイモ、サトウキビなど306ほ場を調べてツマジロクサヨトウを見つけたのは飼料用トウモロコシとスイートコーンの53ほ場でした。その後の各県の発生状況でもトウモロコシだけが狙われているのが不幸中の幸いです。
日本では、ツマジロクサヨトウという害虫によってトウモロコシだけが被害を受けている最中です。
そのため酪農家としては代替飼料の購入をする動機があるのですが、既に補助が出ることが決まっています。
日本農業新聞 - ツマジロクサヨトウ 代替飼料購入を支援 農水省が追加対策 1トン当たり5000円補助農水省は9日、鹿児島などで発生が初確認された飼料作物などの害虫、ツマジロクサヨトウの被害まん延防止の追加対策を明らかにした。生産者集団やJAなどに対し、防除によって不足する飼料の代替分を共同購入する場合、1トン当たり5000円を補助する。
参考:ツマジロクサヨトウに関する情報:農林水産省
おそらくから追加購入するトウモロコシはこの補助の対象になるでしょう。ところで、日本はトウモロコシの大部分をアメリカから輸入してきました。

わが国の年間トウモロコシ使用量は約1630万トン(2007~10年度平均)。その大部分を米国からの輸入によっています。1630万トンのうち、飼料用が1170万トン、でん粉用途を中心とする飼料用以外が460万トンです。

トウモロコシの用途は飼料用が65%ですが、実は工業用にも使われていて、工業用接着剤、製紙、医療用輸液などの原料として使われるコーンスターチにになります。

日本は米国からの輸入が80%を超えています。
今回の日本の追加輸入措置により、中国はトウモロコシ輸入国としての存在感は減退することになります。

https://www.mlit.go.jp/common/000220291.pdf
輸入トウモロコシに依存する日本
もう1つ注目しておきたいのが中国だ。05年には米国に次ぐ4.7%のシェアがあったが漸減し、14年にはついにゼロとなった。中国国内での経済発展による食肉需要増、それに伴う家畜の増加でトウモロコシ需要が増加したことが第一の理由だ。輸出どころか今後は輸入国に転じ、20年には日本の輸入量を超えるとも言われている。 
中国産の輸入減少にはもう1つ理由がある。10年に発生した宮崎県の口蹄疫も起因しているのだ。この口蹄疫では約30万頭の牛、豚などが発症・予防のために殺処分された。国の疫学調査でも結局原因は特定されなかったが、牛の敷き料として利用されていた中国産稲ワラが原因と噂され、畜産業界では中国産の稲ワラ、飼料原料などの輸入を一切やめた。
さて、今回、日本が米国からトウモロコシを追加輸入するのは中国向けのトウモロコシが余剰になったという事情もありました。
これを日本が輸入することは、中国がトウモロコシの大量生産国であり、米国産の輸入国でもあるということから中国に対して影響を与えるでしょう。
かつての中国はトウモロコシを大量生産した分を輸出していたのですが、今は自国での消費にあてるだけでは足りず米国等から輸入するようになっていました。
「トウモロコシの争奪戦」が起こっている様子が分かります。現状では、余剰であるものの、今回のディールにより、また需要が高まったときには、日本はさらに米国から輸入しやすくなったはずです。
今回の追加輸入は、対中国としても効果がある安倍トランプのディールということができそうです。以下にそれを箇条書きでまとめます。
  1. 米国は中国向けトウモロコシが貿易摩擦で余剰になっている
  2. 日本は害虫問題でトウモロコシの代替飼料が必要
  3. 日本は元々米国からの輸入が大半
  4. 日本が世界のトウモロコシ輸入の中でプレゼンスを更に増すことで、トウモロコシを大量に必要とする中国との関係で有利になる
実際に日本の産業界がどれほど米国のトウモロコシを輸入する需要があるのかは分かりませんが、中国が輸入するはずだったが余剰になってしまった分は、日本のこれまでの輸入分に比べれば随分と小さなものです。
このような国際関係を見ると、今回の日米のディールは日米双方にとって、Win-Winの状況だと思います。
さらに、今回の追加輸入は、日米貿易協定とは無関係であり、購入が既成事実となり、毎年日本が同等の追加輸入をしなければならないというわけではありません。
中国が輸入しない米のトウモロコシ 日本が買います | NHKニューストウモロコシの追加輸入は来月の署名を目指す日米の貿易交渉とは別の扱いで、日本政府としては害虫対策のための民間の措置だとしていますが、トランプ大統領が重視するアメリカの農家対策にもつながる側面があると判断したものと見られます。
日米首脳、通商交渉で原則合意 9月下旬に署名へ - ロイター魚拓トランプ氏によると、日本は、余剰になっている米国産トウモロコシを購入することに同意したという。安倍首相はトウモロコシ購入の「可能性」に言及し、民間セクターが対応すると述べた。 
一方の安倍首相は、トウモロコシの購入が既成事実と受け止められないようにしたい姿勢をうかがわせつつも、害虫によって国内の一部農産品が影響を受けており、特定の農産品を購入する必要性が生じていると指摘。民間セクターによる米国産トウモロコシの早期購入を支援する緊急措置を講じる必要があるとの認識を示した。
日本政府ー米国政府でのトウモロコシ売買の合意をしたというよりは、日本側において米国のトウモロコシを追加輸入することが促進されるような措置を講ずる約束をした、というところでしょうか。

いずれにしても日本政府が民間に対して購入を強要するということではありません。

今回の日米のトウモロコシに関する取引は、日米にとってWin-Winであり、中国のトウモロコシ輸入国としての、存在感を弱め、もしかすると、日米の蜜月ぶりをアピールし、最近GSOMIAを破棄した韓国に対する、牽制ともなったかもしれません。そもそも人口が4千万人の韓国がいくら頑張っても日本のようにトウモロコシを輸入することはできません。
さらに今回の日米首脳会談で、日米貿易交渉で農産物の輸入関税の引き下げを中心とした合意に達したことは、トランプ大統領にとって「地獄に仏」ではないがとりあえずピンチを脱する助けになったことでしょう。

その証拠に大統領は、予定になかった日米共同記者会見を行い、農産物の輸入関税の問題だけでなく日本がトウモロコシを大量に購入することを約束したと嬉しそうに語ったのです。

文大統領にしてみれば、最近の日本への反日攻勢で、かつては日本が今回米国を助けたように、韓国も助けていたのですが、もうそのようなことはないであろうことを感じたかもしれません。いや・・・・。無理か?

このようなことでもないと、実は日本がトウモロコシの最大の輸入国であることなど、なかなかアビールすることなどできません。米国も今回のことで、改めて日本がかなり輸入していることを実感したでしょう。
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2012年9月12日水曜日

トウモロコシ「史上最高値」でも食糧危機が来ない理由―【私の論評】おおむね正しいが、一つ大きな間違いがある!!

トウモロコシ「史上最高値」でも食糧危機が来ない理由

青々と茂るとトウモロコシ畑

トウモロコシ価格が2012年7月に1トンあたり333ドルと史上最高値を更新した。

2008年(月平均)に価格が高騰したときには、「世界食糧危機が来た」などと言って大騒ぎしたものだが、今回はそれほど騒いでいない。もう、マスコミも国民も食糧危機には興味がなくなったのであろうか。ちなみに、トウモロコシの価格は2008年よりも16%も高くなっている。

なぜ大きな騒ぎになっていないのだろう。

それは円高だからだ。2008年は1ドルが110円前後であったが、現在は80円を切っており40%ほど円高になっている。だから価格が16%ほど高くなっても、円ベースだとまだまだ安い。
新興国の成長と資源価格の推移は関係があるのか?

図に1980年のドルベースの価格を1.0としたときのトウモロコシ、石油、鉛の価格の変化を示す(IMFデータ)。図を見ると、トウモロコシ、石油、鉛の価格の変動パターンが驚くほどよく似ていることに気がつく。2006年頃から2008年の夏にかけてそろって急騰し、2008年の秋にそろって急落し、その後に再び上昇している。


穀物価格の急騰は、干ばつによる不作などによってもたらされる。2012年も米国の穀倉地帯が干ばつに襲われたことがトウモロコシ価格急騰の直接の原因になっている。ただ、干ばつが来るかどうかまだ分からなかった4月から6月頃でも、価格は2008年の最高値付近で推移していた。

ただ、トウモロコシだけでなく石油や鉛の価格も一緒に見ると、そのような説を信じる気にはなれない。干ばつによって石油や鉛を含む鉱石が採れなくなることはないからだ。

それでは、新興国の需要が資源価格を押し上げているという説はどうだろう。中国をはじめとした新興国は資源を大量に消費し始めている。

ただ、この説もよく考えてみるとおかしい。まず、2000年の価格が1980年よりも安くなっている。2000年のトウモロコシの価格は1980年の価格の0.88倍、石油は0.74倍、鉛の価格はなんと0.42倍である。中国をはじめとした新興国は1980年頃より経済発展の速度を速めた。そんな状況で2000年の価格が1980年よりも安くなることがあるのであろうか。


また、新興国の需要によって価格が上昇したのであれば、なぜ2006年に急に高騰し、2008年に急落したのであろうか。需要増加が原因であるのなら、このような変化をすることはないだろう。
需給を反映していないトウモロコシの「史上最高値」

2006年以降の資源価格の乱高下は金融現象と捉えた方がよいと考える。

アラン・グリーンスパン氏は2006年まで米国連邦準備制度理事会の議長を務めていた。彼はマエストロ(巨匠)と呼ばれるほど米国の金融政策を巧みに操って、長期間にわたって米国を好景気に導くことに成功した。しかし、それは今になって考えれば、サブプライムローン問題など多くのバブルを作っていただけのことであった。

2008年の夏にピークを付けた資源価格の高騰は、住宅バブル崩壊に気付いた資金が資源に逃げ込んだためと考えられる。ただ、当時、多くの人はそのことに気付かなかった。だからトウモロコシの価格上昇を受けて、食糧危機の到来などと言って騒ぎたてたのだ。

サブプライムローン問題は2009年のリーマン・ショックへとつながったが、それによって世界景気は急速に冷え込んでしまった。その結果、資源価格も大きく下落した。

その金融危機は米国だけに留まらなかった。ギリシャの財政問題に飛び火して、ユーロ危機に発展している。それらの危機を回避するために世界は低金利時代に突入した。米国や西欧諸国はバブルの処理に失敗して低金利政策を続けている日本を嘲笑ったものだが、いまや彼らも日本と同じ状況にいる。

日本、米国、西ヨーロッパ諸国は全て超金融緩和状態を続けている。そんなときに、米国で干ばつが発生したという情報が入り、トウモロコシの価格はいとも簡単に史上最高値を更新した。

ただ、これは需給を反映したものではない。そのために、秋になって干ばつの被害はそれほどではなかったなどといった情報が入ると、今度は値を大きく下げることになろう。

この記事の詳細は、こちらから!!

【私の論評】おおむね正しいが、一つ大きな間違いがある!!
上の記事概ね正しいのですが、一箇所酷い間違いがあるので、訂正しておきます。それは、まずは、上の記事では、前のほうで、以下のように掲載しています。

トウモロコシは、値上がりしても、枯渇するということはなさそうだ
「2008年は1ドルが110円前後であったが、現在は80円を切っており40%ほど円高になっている。だから価格が16%ほど高くなっても、円ベースだとまだまだ安い」。

にもかかわらず、後ろのほうでは、以下のように掲載しています。

「日本、米国、西ヨーロッパ諸国は全て超金融緩和状態を続けている」。

これって、全くおかしいと思います。まず、他国はそうですが、日本だけは、「超金融緩和状態」を続けてなどいません。超金融引き締め状態を、かれこれ20年近くも続けているというのが事実です。

米国、EUは、現在景気対策として、確かに金融緩和策を実施しています。それに、リーマン・ショックのときだって、米国、EUも超金融緩和措置を行いました。何をしたかといえば、大幅な貨幣の増加などありとあらゆる緩和策をして、マネタリーベースを増やしました。



そんなときに、日本だけが増刷もせず、金融引締め状態を続けていました。その結果、どうなったかといえば、円高、デフレのさらなる進行です。下のグラフ、縦罫は金融緩和度合いを示すものです。

このグラフをみても、以下に日銀が金融緩和をせずに、金融引締めばかりしてきたかわかるというものです。リーマンショツクのとき、他国は、金融緩和を積極的に実施したため、リーマンショツクの震源地であったアメリカですら、日本よりも、はるかに立ち直りが早く、日本だけが、一人負けの状態になりました。

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このグラフの一番右は、2011年であり、大震災があった年です。さて、この年ですら、日銀は、金融緩和策を行いませんでした。そうして、どうなったかといえば、強烈な円高です。なぜ、こんなことになったかといえば、地震の復興のため、円需要が増すのは当然のことですが、そんなときでさえ、日銀は、増刷することもなく、金融引き締めをしたため、円の需要の高まり放置し、強烈な円高になってしまったのです。

トウモロコシが高騰しても、円安、インフレのほうが良い?!

何か、上の記事では、円高で、トウモロコシや、資源が安く購入できるので良いような印象を受けますが、そんなことは絶対にありません。やはり2008年あたりの、110円くらいが当たり前の水準です。それに、金融引き締めにより、デフレから脱却もままなりません。

トウモロコシが安く買えなくても、枯渇するというのでなければ、円高ではなく、デフレも収束したほうが国民にとって、はるかに良いことはいうまでもありません。

このようなミスリードはやめていただきたいです!!このようなことをして、日銀を擁護して何になるというのでしょうか?


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