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NHK NEWS WEB
今回の日米首脳会談を受け、日本がアメリカ産のトウモロコシを追加で輸入することになりました。国内で害虫の被害が確認されたため、日本企業が輸入を前倒しするということです。
これは安倍総理大臣とトランプ大統領が共同の記者発表で明らかにしたものです。
政府関係者によりますと、追加で輸入するのは飼料用のトウモロコシおよそ250万トンで、年間の輸入量の3か月分にあたる規模だということです。
国内で新たな害虫が確認され、今後供給に不安が生じることも懸念されるため、トウモロコシの輸入の90%以上を占めるアメリカから、日本の企業が9月から輸入を前倒しすることになるとしています。
記者会見でトランプ大統領は米中の貿易摩擦の影響でアメリカから農作物の輸出が減少していることを踏まえ、「中国は約束したことを実行しないため、アメリカのいろんな地域でトウモロコシが余っている。安倍総理が購入してくれるのはとても大きな取り引きだ」と述べました。
トウモロコシの追加輸入は来月の署名を目指す日米の貿易交渉とは別の扱いで、日本政府としては害虫対策のための民間の措置だとしていますが、トランプ大統領が重視するアメリカの農家対策にもつながる側面があると判断したものと見られます。
【私の論評】日本は世界最大のトウモロコシ輸入国。今回の日米の取引はWin-Winの状況(゚д゚)!
中国との貿易摩擦によって、トウモロコシの輸出が滞っていた分を日本が買い取るという取引が成立しました。その額は数億ドルに上るとされています。
さっそくですが、「日本はATMだ」などと言った論評が観測されています。では、日本にとってメリットはあるのでしょうか?
Trump Says U.S. and Japan Have Reached Trade Deal in Principle - WSJThe prime minister said Japan’s private sector would buy U.S. corn because
ウォールストリートジャーナルの記事を見ると、安倍総理は害虫問題のためにアメリカのトウモロコシを買うのだと言っています。日本では、8月に入ってからトウモロコシに被害が出る害虫が発生しています。
世界蔓延の厄介害虫が茨城へ到達、全国拡散か(団藤保晴) - 個人 - Yahoo!ニュース国内で最初に見つかった鹿児島での発生状況調査によると、トウモロコシ、水稲、サツマイモ、サトウキビなど306ほ場を調べてツマジロクサヨトウを見つけたのは飼料用トウモロコシとスイートコーンの53ほ場でした。その後の各県の発生状況でもトウモロコシだけが狙われているのが不幸中の幸いです。
日本では、ツマジロクサヨトウという害虫によってトウモロコシだけが被害を受けている最中です。
そのため酪農家としては代替飼料の購入をする動機があるのですが、既に補助が出ることが決まっています。日本農業新聞 - ツマジロクサヨトウ 代替飼料購入を支援 農水省が追加対策 1トン当たり5000円補助農水省は9日、鹿児島などで発生が初確認された飼料作物などの害虫、ツマジロクサヨトウの被害まん延防止の追加対策を明らかにした。生産者集団やJAなどに対し、防除によって不足する飼料の代替分を共同購入する場合、1トン当たり5000円を補助する。参考:ツマジロクサヨトウに関する情報:農林水産省
わが国の年間トウモロコシ使用量は約1630万トン(2007~10年度平均)。その大部分を米国からの輸入によっています。1630万トンのうち、飼料用が1170万トン、でん粉用途を中心とする飼料用以外が460万トンです。
トウモロコシの用途は飼料用が65%ですが、実は工業用にも使われていて、工業用接着剤、製紙、医療用輸液などの原料として使われるコーンスターチにになります。
日本は米国からの輸入が80%を超えています。
今回の日本の追加輸入措置により、中国はトウモロコシ輸入国としての存在感は減退することになります。
https://www.mlit.go.jp/common/000220291.pdf
輸入トウモロコシに依存する日本もう1つ注目しておきたいのが中国だ。05年には米国に次ぐ4.7%のシェアがあったが漸減し、14年にはついにゼロとなった。中国国内での経済発展による食肉需要増、それに伴う家畜の増加でトウモロコシ需要が増加したことが第一の理由だ。輸出どころか今後は輸入国に転じ、20年には日本の輸入量を超えるとも言われている。
中国産の輸入減少にはもう1つ理由がある。10年に発生した宮崎県の口蹄疫も起因しているのだ。この口蹄疫では約30万頭の牛、豚などが発症・予防のために殺処分された。国の疫学調査でも結局原因は特定されなかったが、牛の敷き料として利用されていた中国産稲ワラが原因と噂され、畜産業界では中国産の稲ワラ、飼料原料などの輸入を一切やめた。
さて、今回、日本が米国からトウモロコシを追加輸入するのは中国向けのトウモロコシが余剰になったという事情もありました。
これを日本が輸入することは、中国がトウモロコシの大量生産国であり、米国産の輸入国でもあるということから中国に対して影響を与えるでしょう。
かつての中国はトウモロコシを大量生産した分を輸出していたのですが、今は自国での消費にあてるだけでは足りず米国等から輸入するようになっていました。
「トウモロコシの争奪戦」が起こっている様子が分かります。現状では、余剰であるものの、今回のディールにより、また需要が高まったときには、日本はさらに米国から輸入しやすくなったはずです。
今回の追加輸入は、対中国としても効果がある安倍トランプのディールということができそうです。以下にそれを箇条書きでまとめます。
- 米国は中国向けトウモロコシが貿易摩擦で余剰になっている
- 日本は害虫問題でトウモロコシの代替飼料が必要
- 日本は元々米国からの輸入が大半
- 日本が世界のトウモロコシ輸入の中でプレゼンスを更に増すことで、トウモロコシを大量に必要とする中国との関係で有利になる
実際に日本の産業界がどれほど米国のトウモロコシを輸入する需要があるのかは分かりませんが、中国が輸入するはずだったが余剰になってしまった分は、日本のこれまでの輸入分に比べれば随分と小さなものです。
このような国際関係を見ると、今回の日米のディールは日米双方にとって、Win-Winの状況だと思います。
さらに、今回の追加輸入は、日米貿易協定とは無関係であり、購入が既成事実となり、毎年日本が同等の追加輸入をしなければならないというわけではありません。中国が輸入しない米のトウモロコシ 日本が買います | NHKニューストウモロコシの追加輸入は来月の署名を目指す日米の貿易交渉とは別の扱いで、日本政府としては害虫対策のための民間の措置だとしていますが、トランプ大統領が重視するアメリカの農家対策にもつながる側面があると判断したものと見られます。
日米首脳、通商交渉で原則合意 9月下旬に署名へ - ロイター:魚拓トランプ氏によると、日本は、余剰になっている米国産トウモロコシを購入することに同意したという。安倍首相はトウモロコシ購入の「可能性」に言及し、民間セクターが対応すると述べた。
一方の安倍首相は、トウモロコシの購入が既成事実と受け止められないようにしたい姿勢をうかがわせつつも、害虫によって国内の一部農産品が影響を受けており、特定の農産品を購入する必要性が生じていると指摘。民間セクターによる米国産トウモロコシの早期購入を支援する緊急措置を講じる必要があるとの認識を示した。日本政府ー米国政府でのトウモロコシ売買の合意をしたというよりは、日本側において米国のトウモロコシを追加輸入することが促進されるような措置を講ずる約束をした、というところでしょうか。
いずれにしても日本政府が民間に対して購入を強要するということではありません。
今回の日米のトウモロコシに関する取引は、日米にとってWin-Winであり、中国のトウモロコシ輸入国としての、存在感を弱め、もしかすると、日米の蜜月ぶりをアピールし、最近GSOMIAを破棄した韓国に対する、牽制ともなったかもしれません。そもそも人口が4千万人の韓国がいくら頑張っても日本のようにトウモロコシを輸入することはできません。
その証拠に大統領は、予定になかった日米共同記者会見を行い、農産物の輸入関税の問題だけでなく日本がトウモロコシを大量に購入することを約束したと嬉しそうに語ったのです。
文大統領にしてみれば、最近の日本への反日攻勢で、かつては日本が今回米国を助けたように、韓国も助けていたのですが、もうそのようなことはないであろうことを感じたかもしれません。いや・・・・。無理か?
このようなことでもないと、実は日本がトウモロコシの最大の輸入国であることなど、なかなかアビールすることなどできません。米国も今回のことで、改めて日本がかなり輸入していることを実感したでしょう。
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