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2019年3月16日土曜日

【日本の解き方】波紋呼ぶ…二階氏「小池支持」の点と線 知事選前倒し&増税延期で「衆参とのトリプル選」視野か―【私の論評】「リーマン級」は増税回避の常套句になった?

【日本の解き方】波紋呼ぶ…二階氏「小池支持」の点と線 知事選前倒し&増税延期で「衆参とのトリプル選」視野か

小池百合子都知事(右)と自民党の二階俊博幹事長

次の東京都知事選をめぐり、自民党の二階俊博幹事長が小池百合子氏支持を打ち出し、波紋を広げている。小池氏と自民党、東京五輪・パラリンピックの力学が都知事選にどう影響するのか。

 今後の日程を整理しておこう。2020年東京五輪は7月24日~8月9日まで17日間。同パラリンピックは8月25日~9月6日に開かれる。小池都知事の任期は20年7月30日まで。

 普通なら、都知事選は任期切れ前の1カ月以内の20年7月中に実施されるが、これは誰が考えてもちょっと無理な日程だ。五輪直前の追い込みの時に選挙となると、どんな不測の事態があるともかぎらない。

 そこで、特例法を作り、都知事選を前倒しするという話が出てきている。

 特例法は東日本大震災などの国家的重大事案に際し、特例を作ってでも選挙日程変更などの必要がある場合に検討、制定される。

 20年東京五輪が選挙日程を変更するほどの国家的重大事案かどうかは判断が分かれるかもしれない。今のところ、特例法制定の具体的な動きはないものの、政治判断によっては今後大いにありうる話だ。

 そこで、冒頭の二階氏の発言だ。1年以上先の選挙であれば、今の段階で支持を表明することはありえない。発言は、都知事選前倒しの特例法を前提としたものだろう。

 特例法をいつ出すかといえば、今国会だろう。秋の臨時国会はまだ先で、不確かな話になるからだ。今国会は、3月末までに今年度予算と予算関連法案を通すが、4月以降めぼしい法案もなく、国会審議はスカスカの状態だ。

 一方、経済状況は芳しくない。足元の国内景気については、景気動向指数が3カ月連続マイナスで、景気判断も下方修正された。海外でも中国や英国でリーマン・ショック級の激動が懸念される。改元後の5月以降、消費増税をぶっ飛ばして解散総選挙になっても不思議ではない。この場合、7月の参院選とのダブル選挙になるだろう。

 となると、解散総選挙のタイミングを都合よく取れるような、国会運営上のいい「タマ」が必要だ。都知事選挙前倒しの特例法は、その候補の一つとなるだろう。

 こうした政局絡みであれば、通常、与党は特例法だけを出し、小池氏支持を言わないものだが、そこは小池氏の老獪(ろうかい)さで、二階発言を引き出したのだろう。二階氏としても小池氏を都知事に封じ込めておくほうが得策と考えているのではないか。

 特例法による具体的な都知事選の日程を考えてみると、任期を1年残した今年7月となる可能性が高い。つまり、参院選と衆院選のダブルでなく、都知事を巻き込みトリプルになるかもしれない。そうであれば、候補者選定の都合から、小池氏支持になるのはやむを得ないだろう。

 二階氏の発言は、こうした政局絡みの背景で出てきたとみたほうがいい。だからこそ、波紋を呼んでいるのだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】「リーマン級」は増税回避の常套句になった?

昨年安倍内閣の菅義偉官房長官がNHK番組で2019年10月に予定されている消費税増税について、「リーマンショックのようなことがない限り実施する」と述べてました。このフレーズは、消費税増税を延期するために過去にも用いられてきたものでした。

菅官房長官

2016年5月の伊勢志摩サミットで、安倍首相は当時の状況がリーマンショック前の状況に似ているとの主張を展開しました。

2015年半ばから2016年初頭にかけて、中国株価が下落して、主要国の株価が下落しました。しかし、2016年2月の上海G20会合で、世界経済の下方リスクが認定され、各国が政策総動員することで合意が成立しました。

中国が5兆円規模の減税を決定するなど、政策対応が示され、危機が回避されました。中国株価が急落したのは事実ですが、中国株価は急落の直前に暴騰しており、株価下落の影響を過大評価することはできませんでした。

2014年夏に2000ポイントだった上海総合指数は2015年6月に5178ポイントに暴騰しました。その、暴騰した株価が反落し、2016年1月に2683ポイントに達しました。暴騰後は急落ですが、暴騰前と比較すれば3割高の水準でした。

2016年初、世の中では「中国経済崩壊」の声が圧倒的多数を占めていましたが、中国経済は2016年初に底入れし、世界経済は緩やかな改善傾向をたどりました。日本の株価は、2016年に円高傾向が残存したため、低迷したが、2月と6月に安値を記録して、反発に転じていきました。

したがって、2016年5月の状況は、リーマンショック後に株価が安値を記録し、各国の政策対応を背景に、緩やかに事態が改善に向かい始めた局面と類似していました。

「リーマンショック前の状況と似て」はいませんでた。状況認識は間違っていたかもしれませんが、安倍内閣が2016年4月の消費税増税を先送りしたことは正しいです。とても増税を行うべき局面ではありませんでした。

安倍内閣は2014年度に消費税率を5%から8%に引き上げて窮地に追い込まれました。財務省と日本経済新聞が「消費税増税の影響軽微」という大キャンペーンを展開し、それに追随して他の大手新聞、テレビ、識者が同様の大キャンペーンを行いました。安倍内閣はこの言葉に抗えず消費税増税を実行しました。

しかし、実際に蓋を開けてみると消費税増税の影響は軽微ではありませんでした。甚大な影響が広がり、日本経済はまた落ち込み、デフレからの完全脱却は遠のきました。この教訓があり、安倍内閣は消費税増税に極めて慎重になりました。

「リーマンショックのようなことがない限り」という言葉は、消費税増税を延期または中止するための大義名分に過ぎないものです。大義名分であろうが、何であろうが、日本の実体経済をみれば、増税に慎重になるのは正しいです。

その意味では、「リーマンショックのようなことがない限り」というフレーズは、場合によつては増税を回避するというサインと受け取るべきでしょう。経済状況が増税を十分に許すどころか加熱してきつめのインフレになりそうなときには、最初から何も言わずに増税することでしょう。

安倍首相も昨年末のテレビ報道番組で「リーマン級なければ増税」と明言

2014年11月、2016年6月に、安倍首相は消費税増税を二度延期しましたが、いずれも国政選挙直前でした。安倍首相は選挙に勝つためにも、消費税増税延期が得策であると考えれば、消費税を延期するでしょう。選挙に負けてまえば、選挙後の政局運営は難しいし、さらに念願の憲法改正も叶わぬことになり、何よりも安倍政権がレイムダック化してしまう恐れがあります。

さらに、世界情勢をみてみるとブログ冒頭の記事にもあるように、2016年当時と比較すれば、足元の国内景気については、景気動向指数が3カ月連続マイナスで、景気判断も下方修正されましたし、中国経済は16年当時より明らかに悪化しいますし、ブレグジットありでリーマン・ショック級もしくはそれを超える激動が懸念されています。

2月8日に行われた衆院予算委員会で答弁する安倍総理

次の消費税増税の時期は2019年10月とされています。したがって、2019年度予算編成では、2019年10月の消費税増税実施を組み込むことになるでしょう。

しかし、そのことが直ちに、消費税増税実施を意味するわけではありません。2019年の通常国会が終了した段階で、安倍首相は三たび、消費税増税の延期を発表するでしょう。そうしなければ、2019年夏の参院選を乗り切ることはできないからです。投票日は7月21日(日)が有力です。

安倍内閣が消費税増税を再々々延期することを前提に選挙戦術を構築することが必要になります。そして、安倍内閣が消費税増税を再々々延期する場合には、ブログ冒頭の記事のように、衆参ダブル選プラス都知事選に突き進む可能性が高いです。

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