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2018年12月3日月曜日

G20「各国の力関係の変化」と共同宣言の本当の読み方を教えよう―【私の論評】トランプが目の敵にしている日本の消費税引き上げを安倍総理は本当に実行できるのか(゚д゚)!

G20「各国の力関係の変化」と共同宣言の本当の読み方を教えよう

この変化に気付けるか…それが重要だ

 アルゼンチンで開催されていたG20が終わった。「保護主義と闘う」との言葉が、アメリカの反対で無いものとされた、といったことが中心に報道されているが、米中首脳会談で互いの追加関税が猶予され、一時的な休戦になったことにもっと注目すべきだろう。

 G20を経て、世界情勢はどうなるのか。その中では日本は立ち位置をどこに定めるべきなのか。また、G20首脳会合に合わせて行われる、日米、日中、日ロなどの首脳会談は、どのような成果があったのか。今回はそれを見ていきたい。

立ち位置に関する、シンプルなルール

 まず、G20などの国際的な首脳会議での一つの楽しみ方は、「集合写真での各国首脳の立ち位置」である。

 今回のG20、前列の中心にいるのはアルゼンチンのマクリ大統領だ。向かって左に、マクリ大統領から、安倍首相、トランプ米大統領、マクロン仏大統領などが並び、向かって右に、習近平中国主席、プーチン・ロシア大統領らが並んだ。

 中心が議長国であるアルゼンチンのマクリ大統領なのは当然だが、その隣にいるのが安倍首相だ。

G20での各国首脳の立ち位

    実は、国際会議の立ち位置については各国首脳が競い合うのではなく、次のようなシンプルなルールがある。

①議長国の首脳が中央、
②首相よりも大統領が内側、
③在任期間の長い首脳が内側

というものだ。

    もちろん立ち位置は議長国がその都度決めてよいのだが、大体この原則になっている。このルールにより、各国首脳の位置は事前に決められているのが通例だ(もっとも、アルゼンチンはお国柄なのか、マクロン大統領の到着時に、その出迎えに遅れた国なので、どこまでこうした通例が意識されたのかはわからないが)。

    さて、G20では、次期議長国の首脳が開催国首脳の隣に来るのが慣例なのだが、それを割り引いたとしても、安倍首相の立ち位置は目立っていた。写真にはメルケル独首相が写っていない。これは専用機のトラブルで、G20の開催に間に合わなかったためだ。それによって、安倍首相は写真に写る中で、先進国の首脳として最も在任期間の長い首脳になった。

    議長国の右側を見ても興味深い。議長国の隣に習主席、シェンロン・シンガポール首相、プーチン大統領と並んでいる。シェンロン首相の位置は通例で考えればちょっとありえないのだが、同氏は英語のほか中国語もロシア語もできるらしいので、それで中ロの間に呼ばれたのかもしれない。

    そのほかにも、集合写真を見ると面白いことがわかる。G20 には、サウジアラビアからサルマン皇太子が参加した。同氏はジャーナリストのカショギ氏暗殺を指示した人物だ、と国際社会から断定されている。

    その根拠となった情報はトルコから提供された。トルコは、オスマン帝国時代からサウジアラビアとは長年の因縁の関係があるので、カショギ氏の事件はトルコとサウジアラビアの間で非常に敏感なテーマとなっている。

   それを頭に入れて写真を見ると、トルコのエルドアン大統領は向かって前列の左端、サルマン皇太子は後列の右端に位置している。これは両国の関係から、無難にことが進むように、事前にそう決めたのだろう。そういったことも写真からは読み取れるので、眺めているだけでも結構面白いのだ。

G20の認識も随分変わった…?

   さて、今回のG20の集合写真における安倍首相の立ち位置は、今の日本の世界における位置を表している、と言っていい。

   安倍首相は今回のG20で、トランプ大統領、習主席、プーチン大統領と会談した。またトランプ大統領、インドのモディ首相と日米印三者による初の首脳会談も行った。中ロも、これに対抗するために、インドを取り込む中ロ印首脳会談を行った。まさに、G20の場で国際政治が動いているのだ。

    日中首脳会談を行いながら、中国の一帯一路に懸念を表する米印と日米印首脳会談を同時に行う、という動きは、これまでの日本の指導者にみられなかったものだ。こういう国際舞台では、誰と会談できたか、がいちばん重要だ。安倍首相は、米中ロという主要3ヵ国と会談したのだから、世界のトップリーダーとして存在感を見せたと言っていいだろう。

     その一方で、韓国の文在寅大統領との首脳会談は行なわれなかった。日韓関係は、日韓合意に基づいて設立した「和解・癒やし財団」の解散や元徴用工訴訟の韓国最高裁判決など、韓国が一方的に国家間の約束を破る暴挙に出ているので、最悪の状況にある。

    その韓国は、国際的に孤立を深めつつある。米韓関係において、トランプ政権は非核化協議をしないまま北朝鮮との協力関係の構築に前のめりになる文政権を信頼していない。文大統領はトランプ大統領との本格的な会談を望んだが、トランプ大統領は文氏との会談は簡単に済ませていた。どうやら、安倍首相との差をつけたようだ。

    さて、冒頭述べたように、アメリカの反対もあって今回のG20では共同宣言がまとめられるかどうか、危ないところであったが、なんとか共同宣言はまとめられた。自由貿易に関する記述は、前回のハンブルグG20と比較しても少ない。しかし、経済政策に関する部分は、概ね前回と同じである。その中で、財政政策に関する記述は「よくなっている」と筆者にはみえる。


    これをみると、従来の財政再建重視という路線から、財政政策の役割を重視するように、と少し考え方が変化しているようだ。「債務残高対GDP比」を絶対視しその水準に着目するよりも、「債務残高が持続可能かどうか」を問題としているのはいい。というのは、10月5日の本コラム(<IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する> https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57978)で指摘したように、債務残高対GDP比より、資産も考慮した純債務残高対GDP比のほうが、財政の実情を表すのに適切だからだ。

    つまり、債務残高が持続可能かどうか、というのは、債務残高対GDP比が大きくても、日本のように純債務残高対GDP比が低ければ問題ない、ともいえるのだ。

やっぱり消費増税、なんですね

    G20内でも少しずつ意識の変化が現れているが、こうした観点から日本国内の状況をみると、相変わらず、財務省が発信源と思われる酷い情報が流布されている。

たとえば12月1日の夜に放送された、日本テレビの「世界一受けたい授業」(http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/181201/03.html)で、<このまま日本の借金が増え続けると、実は、「未達」という問題が起きます。一体この、「未達」とは、どういう問題のことでしょうか?> という問いが流れていた。

     解説をしていたのは、元財務官僚で、ニュースゼロのキャスターだった村尾信尚氏だ。筆者は同氏を個人的に知っているが、熱血漢でナイスガイであるものの、ある意味で財務省の広告塔として、財務省の意見を忠実に述べる人でもある。日本テレビは、最近は財務省事務次官が天下る組織でもある。財務省の意向が反映しやすのはやむを得ないだろう。

財務省の広告塔として、財務省の意見を忠実に述べる人村尾信尚氏
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

     この放送内容については大いに違和感があったと言わざるを得ないだろう。財政危機についての村尾氏の説明は財務省と寸分違わぬもので、ストックでは、バランスシートの右側の債務だけに着目し、その大きさを強調していた。またフローでは、政府の一部にすぎない「一般会計」の収支についてだけを説明していた。まさに財務省的な手口である。

    日本が財政危機でないことは、本コラムで何回も述べている。つまり、民間企業でいうところのグループ決算に相当する「統合政府のバランスシート」では、実質債務がゼロになっている。ストックで実質債務ゼロというのは、グループ決算で収支が均衡していることをほぼ意味している。

     財務省のように、一般会計だけのフローは赤字にして、グループ会社で利益を「資産化」して隠すことは、会計の専門家であれば容易にできる。しかしこれは見破るのも容易だ。いわゆる「埋蔵金」がそれにあたるのだが、筆者(をはじめ専門家ら)が「埋蔵金」を探し出せるということをまだ財務省はわからないみたいだ。

    また、番組で扱われていた「未達」とは、国債入札において、目標とする国債発行収入が得られない場合をいうが、そもそもいまの日本は国債が「品不足」となっている状態で、もっと政府は国債を発行すべきとき、なのだ(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51394)。

     「未達」がたいした問題でないことを理解するために、筆者と金融機関勤務経験のある民間投資家のぐっちーさんとの対談(2017年7月20日付け「消費増税なんて必要ナシ!?日本経済の本当の話をしよう」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52109)を読んでほしい。日本が財政危機でないことを簡潔に説明しており、一般読者にも有益だろう。

     なお、「未達」の問題を世に広めた作家の幸田真音氏は、財務省のお気に入りらしく、政府の各種審議会委員を歴任して、財務省の天下り会社であるJTの社会取締役をやっている(https://www.jti.co.jp/corporate/outline/officer/index.html)。

 いずれにしても、こういう話題がメディアで取り上げられるのは、財務省が必死になって、財政危機キャンペーンを続けている、ということの表れだろう。背景には、是非とも消費増税を進めたいという彼らの意地と焦りがあるのだ。

 さて、先進国と大国が参加するG20は、いまや国際政治の大舞台になっている。来年6月28日及び29日には大阪で開催されるので、これは日本の存在感を世界に示す絶好のチャンスである。その一方で、国内では消費増税に向けた動きが進行中である。来年、G20の後に行われる参院選挙が、国際政治にとっても国内政治にとっても、天王山であるのは間違いない。

【私の論評】トランプが目の敵にしている日本の消費税引き上げを安倍総理は本当に実行できるのか(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事にもあり、国際的評価が高まる安倍総理ですが、高橋洋一氏が結論ではっきり言わないことがあります。

それは、安倍総理が消費税増税を再延期する可能性です。私自身は、おそらく安倍総理は再延期すると思っています。増税すれば、8%増税のときと同じように、個人消費が再び落ち込み経済が低迷することになるのは明らかです。

そうなると、今後安倍内閣はレイムダックになり、安倍総理の残りの任期中には、憲法改正どころではなくなる可能性がかなり高いです。安倍総理は任期中に憲法改正を実施したいと考えています。いや考えるどころか、それを至上命題としています。

私は、そのような安倍総理が安易に増税するとは、とうてい思えないのです。

憲法改正を別にしても、私は安倍総理は増税しないと思います。

それには、主に3つの理由かあります。まずは、2019年には、4月に統一地方選挙、7月に参議院議員選挙という、2つの大きな選挙があります。これは、消費税を上げることを確約した状態で臨めばかなり不利になるのはわかりきっています。

それと、安倍政権が掲げる軽減税率制度は、頭の悪い財務省が考えたせいでしょうか、とても現実的ではなく、これは各方面からかな不興を買っています。これを本当に実行すれば、嫌がおうでも、安倍政権の評判は落ちることになります。

しかし、これらは、安倍総理が消費税増税を延期する理由の最大のものではありません。最大の理由は、「消費税引き上げには、アメリカのドナルド・トランプ大統領が大反対する」というものです。

トランプ大統領は、日本の消費税は輸出産業への補助金だと見なしています。アメリカが日本に対して貿易赤字を抱えているのは、日本が輸出産業に消費税という名の補助金を出し、消費税のないアメリカで有利にクルマなどを売るからであって、日本はダンピングしているとさえ言っています。

日本では、輸出業者に消費税が還付される「消費税還付制度」があります。たとえば、自動車を1台生産する場合、部品をつくる会社は部品を売ったときの消費税を国に納め、その部品を買って組み立てて製品にした会社は、それを親会社に売るときに消費税を納めます。そうやって、いくつもの会社が払ってきた消費税が、最終的に製品を輸出する企業に還付される仕組みになっています。


本来なら、部品をつくる会社、それを組み立てる会社と、消費税を払うそれぞれの業者にも出されてしかるべきですが、最終的に輸出されるときには輸出業者は免税で、そこにまとめて還付されることになっています。

この輸出業者に還付されるお金は、全国商工新聞によると約6兆円。つまり、消費税徴収額約19兆円のなかで、主に輸出業者に戻される還付金が約6兆円もあるということです。みんなから集めた消費税の約3割は、輸出企業に戻されているのです。

これに対してトランプ大統領は、アメリカに輸出する日本の企業は政府から多額の補助金をもらっていると怒っていて、だからダンピングでクルマなどが売れるのだと考えているようです。消費税を「輸出を促すための不当な補助金」だと非難しているわけです。

そもそも、米国には消費税がありません。州単位では「小売売上税」という消費税に似たような税金を徴収していますが、国としてはないのです。1960年代から何度も消費税導入の議論はされていますが、ことごとく却下されています。

なぜ米国の議会が消費税導入を却下するのかといえば、彼らは消費税というのは不公平な税制だと思っているからです。アメリカには、儲かった企業がそのぶんの税金を払うのが正当で、設備投資にお金がかかるので儲けが出にくい中小企業やベンチャー企業からは税金を取らないという考え方があります。儲かっていない中小企業の経営を底支えし、ベンチャー企業を育てて、将来的に税金を払ってくれる金の卵にしていく。それが正しい企業育成だというのです。

しかし、消費税は、儲かっていても儲かっていなくても誰もが支払わなくてはいけない性質の税金です。さらにいえば、儲かっているところほど相対的に安くなる逆進性を持っているので、アメリカでは不公平な税制だというのが議会や経済学者のコンセンサスになっています。

そのため、これまで米国では儲かっている企業が支払う法人税率が38.91%とバカ高かったのです。ただし、この高かった税金をトランプ大統領は選挙公約通りに下げ、現在は21%程度になっています。

一方で、トランプ大統領は、新たに「国境税調整」を税制改革要素のひとつとして盛り込みました。これは、輸入品には20%の関税がかかり、アメリカ企業が輸出して得た利益は無税になるというもの。貿易面だけで見れば、日本の消費税に当たる要素を持っており、これで日欧などの消費税や付加価値税に対抗しようと考えたのでしょう。

しかし、議会では、公平な税制の機能が不十分で国内消費に低迷をもたらすということで見送られてしまいました。そんななか、日本がさらに消費税を引き上げるということになれば、許せないと思うのは当然でしょう。

9月26日(日本時間27日未明)、ニューヨークでトランプ大統領と安倍首相が会談し、2国間の貿易交渉を始めるという共同声明を発表しました。

9月の日米首脳会談

これについて、安倍首相は「アメリカから要求された自由貿易協定(FTA)ではない」と言い切り、マスコミでは「物品貿易協定(TAG)の締結に向けた交渉」という文字が躍りました。しかし、出された共同声明を見ると、これはFTA以外の何物でもありません。

しかし、政府はあくまで「TAGだ」と言い張り、外務省のホームページでも「日米両国は、所要の国内調整を経た後に、日米物品貿易協定 (TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する」という日本語訳を出しています。

ところが、アメリカ大使館の日本語訳を見ると、「米国と日本は、必要な国内手続が完了した後、早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する」とあります。さらに、物とサービスの交渉が成立したら「投資に関する他の項目についても交渉を開始する」というのですから、これがFTAでなくてなんなのでしょう。

加えて、アメリカ側は、マイク・ペンス副大統領が「日本と歴史的な自由貿易交渉(Free trade deal)を始める」と明言しています。折しも、この共同声明が出た後に、アメリカ政府は、新しい北米自由貿易協定(NAFTA)で通貨安誘導への報復措置を認める「為替条項」を盛り込んだと公表しました。これは、貿易相手国が為替介入で不当に自国通貨を安くした場合、米国が報復しても文句は言わせないという条項です。

ペンス副大統領は、FTAをの交渉を始めると名言

当然ながら、この「為替条項」は日本とのFTA交渉にも入るはずです。そうなれば、トランプ大統領から「為替操作国」の疑惑をかけられている日本は、「為替条項」で徹底的に痛めつけられる可能性もあります。

トランプ大統領は1日、メキシコ、カナダの首脳と北米自由貿易協定(NAFTA)に替わる新協定に署名しました。大統領はこの協定を「手本」だと自賛。「国有企業への巨額の補助金と為替操作に、3カ国全ての労働者は痛めつけられている。こうした不公正な貿易慣行と闘うための基準を劇的に上げることができた」と述べています。

仮に安倍総理が消費税をあげたとして、トランプ大統領がこれにより輸出企業への補助金が増えたとみなした場合、日本は何らかの形で報復される可能性もあります。

そうなった場合、消費税増税で、個人消費が低迷し、日本国経済はふるわず、国民からの支持が低迷するでしょう。そこに米国による報復措置が日本の輸出企業に課せられた場合、まさに安倍政権は泣き面に蜂で、レイムダック化します。

安倍総理が、トランプ大統領が目の敵にしている日本の消費税の引き上げを断行できるのかどうかは、はなはだ疑問です。

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