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2019年6月26日水曜日

G20議長国・日本に難題山積 経済と安全保障の均衡取り…当面の解決策模索できるか―【私の論評】G20で見えてくる衆参同時選挙ではなく、時間差選挙の芽(゚д゚)!

G20議長国・日本に難題山積 経済と安全保障の均衡取り…当面の解決策模索できるか


サミット会場近くで警備をする警官

28、29日に大阪で20カ国・地域首脳会合(G20サミット)が開かれる。中心となる議題やG20に合わせて開かれる予定の米中首脳会談などの注目点、議長国である日本の役割について考えてみたい。

 G20は、米国、英国、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダおよび欧州連合(EU)の「G7メンバー」に、ロシア、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンを加えたものだ。

 国際通貨基金(IMF)が4月9日に公表した世界経済見通しは、2019年の成長率予測を3・3%とし、前回1月の見通しから0・2ポイント引き下げた。米中貿易戦争や中国経済の減速、英国のEU離脱問題が引き続き懸念材料だからだ。

 世界中が注目している米中貿易戦争では、G20の場で米中首脳会談が開かれることが決まった。このニュースで米国株などが上昇する場面もあった。

 もっとも、今回の米中首脳会談で、すべてが解決するとは多くの人が思っていない。よくて部分的な解決であり、最終的な解決には時間を要するというのが一般的な見方だ。

 英国のEU離脱(ブレグジット)も大きな問題だ。メイ首相は来日するかもしれないが、すでに保守党党首は辞任しており、もはやレームダック状態だ。ブレグジットは英国の国内問題にとどまらず、欧州経済にすでに悪影響を与えている。メイ首相の政治力があれば日英間で貿易問題を話し合い、日英経済連携協定(EPA)や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への英国加盟などの可能性があったが、これらの問題は次期首相の手に委ねられる。

 香港の「逃亡犯条例改正」審議が、大衆デモによりに延期となったが、これについて英国は、香港返還の経緯などを国際社会に説明する必要がある。「一国二制度」がすでに形骸化しており、今回の事件もそれが顕在化したにすぎない。G20では、香港の人権問題を扱ってもいいはずだが、はたしてどこまで議論できるのだろうか。もっとも米中首脳会談において、トランプ米大統領が中国に対して人権問題として取り上げるかもしれない。

 国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、G20に対し、世界的な経済成長へのリスクを和らげるため貿易摩擦の解決を最優先課題とするよう求めている。

 ただし、米中貿易戦争は、単に経済の問題だけではない。知的財産権の強制移転や盗用という安全保障面での問題もある。議長国の日本としては、経済問題と安全保障問題のバランスをとりながら、当面の解決策を求めていく必要がある。

 資本取引の自由という西側資本主義ロジックと、生産手段の私有を制限するために資本取引制限のある東側社会主義ロジックとの間の調和・調整が問題解決に求められている。

 また、人権や環境にも配慮し、地球規模問題の解決を図る必要もある。国際社会において名誉ある地位を占めるのは、言うは易く行うは難しだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】G20で見えてくる衆参同時選挙ではなく、時間差選挙の芽(゚д゚)!

夏の参院選を控え、G20サミットで議長を務める首相にとっては、外交手腕を示す格好の場となりそうです。一方、韓国大統領府高官は25日、G20サミットに合わせ、首相と文在寅大統領との日韓首脳会談について「開かれない」と記者団に語りました。高官は「われわれは会う準備ができていると伝えたが、あちら(日本)から何の反応もなかった」と説明。一方で、その場で日本から要請があれば、「いつでも会える」と述べ、会談への未練をにじませました。

安倍総理と、トランプ米大統領との会談は今回のサミットで12回目を数えます。4、5月に続く3カ月連続の相互往来で、強固な日米同盟を世界に示します。非核化をめぐる米朝協議など最新の情報を共有し、北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動を示さない限り、国連安全保障理事会の決めた経済制裁は解除しない方針も再確認します。

また首相は、今月のイラン訪問の詳細をトランプ氏に伝えます。イラン革命防衛隊によるホルムズ海峡付近での米軍無人機撃墜などで米イランの対立は激化しており、首相は衝突回避の重要性を働きかける意向です。

中国の習近平国家主席は、2013年の国家主席就任後初の来日となります。首相との会談では、米中貿易摩擦が世界経済最大のリスクとなっていることから、通商問題で意見を交わします。20~21日の中朝首脳会談を踏まえ、北朝鮮情勢も協議します。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案撤廃をめぐる香港の混乱について、首相がどう提起するかにも関心が集まるところです。

26回目となるプーチン大統領との会談は、協議が停滞している日露平和条約交渉の取り扱いが焦点です。昨年11月、日露両首脳は1956(昭和31)年の日ソ共同宣言を基礎に条約交渉を加速させることで合意しましたが、プーチン氏は北方領土の引き渡しに関し「計画はない」と明言するなど、局面打開は難しい情勢です。

一方、G20サミットの全体会議では、世界経済、イノベーション、格差・インフラ、気候変動の計4分野が主要議題となります。

トランプ米大統領が今回のG20首脳会議で目指すのは、中国との貿易摩擦、ロシアとの核軍縮、イラン核問題など米国が抱える懸案に関し、「米国第一」の立場から自国に有利な展開を引き出すことです。

トランプ大統領

G20などの多国間会議の場で設定される首脳会談は外交儀礼上、必ずしも正式な会談に位置づけられるわけではないです。

しかし、主要国などの首脳が一堂に会する多国間会議は、複数の国の首脳とそれぞれ効率的に意見を交わす一方、利害が多国間にまたがる特定の懸案については会議の場で合意形成を図れるという利点があります。

トランプ大統領も中国問題については今回、首脳会議ではサイバー攻撃などによる情報窃取、技術移転の強制、関税や非関税障壁などに関し「不公正な貿易慣行」の排除に向けた各国と認識をすり合わせつつ、習近平国家主席との直談判で具体的合意にこぎ着けたい考えです。

ただ、G20首脳会議の枠組みそのものは既に形骸化が明白となっており、米政権としてはさほど重要視していないのも事実です。

2008年に当時深刻化していた世界金融危機に対応するためにワシントンで始まったG20首脳会議は、世界経済が回復軌道に乗った09年にピッツバーグで開かれた第3回首脳会議の時点で、本来の役割は終了したとの指摘は多いです。

ピッツバーグサミット

その第3回会議でも、メディアに最も注目されたのはイランが当時、秘密の核施設の存在を明らかにしたことに対して米英仏の首脳が抗議の合同記者会見を開いたことで、形骸化の萌芽は既に現れていました。

今回もG20自体は米中の直接対決を前に存在がかすみがちになるのは確実とみられます。

そうした中で、安倍総理にとってG20を活用する方法として、やはり増税凍結もしくは見送りの地ならしです。

これについては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【G20大阪サミット】大阪から世界が動く 米中貿易摩擦で歩み寄り焦点 日本、初の議長国―【私の論評】G20前後の安倍総理の意思決定が、安倍政権と国民の運命を左右することになる(゚д゚)!
詳細は、この記事をごらんいただくもとして、以下に増税見送りに関する部分のみ引用します。
経済協力開発機構(OECD)は5月21日、世界全体の実質GDP成長率が2018年から縮小し、19年は3.2%、20年は3.4%との経済見通しを発表しました。日本については、19年と20年のGDP成長率をそれぞれ0.7%、0.6%とし、3月の前回予測から0.1ポイントずつ下方修正しました。米中貿易摩擦の影響が大きく、OECDは「持続可能な成長を取り戻すべく、各国政府は共に行動しなければならない」と強調しました。 
そのような中、日本が初めて議長国を務めるG20サミットが開かれます。日本は議長国として、機動的な財政政策などを各国に呼びかける可能性が高いです。それにもかかわらず、日本のみが増税すれば、日本発の経済不況が世界を覆うことになる可能性を指摘されることにもなりかねません。 
平成28年5月下旬、三重県で開かれた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット、G7)で、安倍首相は「リーマン・ショック級」の危機を強調しながら、増税延期の地ならしを進め、直後に延期を正式表明しました。
伊勢志摩サミットで「リーマン・ショック級」の危機を強調した安倍総理

果たして、G20はG7の再来となるのでしょうか。もし今回増税すれば、日本経済は再びデフレスパイラルの底に沈み、内閣支持率がかなり落ちるのは目に見えています。 
それでも、増税を実施した場合、安倍政権は憲法改正どころではなくなります。それどころか、野党はもとより与党内からも安倍おろしの嵐が吹き荒れレームダックになりかねません。 
まさに、G20前後の安倍総理の意思決定が、安倍政権と国民の運命を左右することになります。
 さて、増税見送りということでは、当初永田町では、衆院解散のタイミングは6月から7月初頭の間に断行して今夏の参院選との同日選に持ち込む案(この場合、投票日は8月4日とするとの説があった)と、今夏は参院選単独で行っておいて今秋から暮れにかけて衆院選を行う「時間差ダブル選挙」とする案がありました。

現状では、衆参同時選挙の芽はなくなってしまったようですが、全くないということでもないと思います。さらに、今秋に増税凍結を公約として衆院選挙という手は未だ否定しきれないところがあると思います。暮ということでは、増税延期には間に合わないので、今秋衆院選は未だにありえる選択肢です。

現在、政争の道具にするには、全く不利で実際他国ではほとんど政争の道具にされていない年金問題で野党は政府を追求しようとしています。この試みは、「もりかけ」問題と同じく野党にとって全く不毛な結果に終わることでしょう。

しかし、現実には与党の支持率は落ちています。とはいいながら、野党に支持率はあがっていません。この状況ですからから秋に衆院選をすることにし、それまでの間に年金問題に関して国民にわかりやすく説明していくことなどの戦略は十分に考えられます。

いずれにしても、伊勢志摩サミット(G7)で、安倍首相は「リーマン・ショック級」の危機を強調しながら、増税延期の地ならしを進めたように、G20でもそれを安倍総理が実行するかどうか、見逃せないところです。

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2019年6月24日月曜日

中国次官、米側の譲歩求める G20、香港問題は「議論許さぬ」―【私の論評】米国に続いて日本も中共の面子を叩き潰せ(゚д゚)!


G20で香港問題の議論は深まるか。トランプ米大統領(右)と中国の習近平国家主席の対応に注目が集まる

 中国商務省の王受文次官は24日の記者会見で、大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた米中首脳会談をめぐり、「一方(中国)だけでなく双方が譲歩しなければならない」と述べ、貿易協議の妥結には米国側の譲歩も必要だとの立場を強調した。中国外務省の張軍次官補も同じ記者会見で「G20で香港問題を議論することは許さない」とし、同問題を提起する方針を示したトランプ米大統領を牽(けん)制(せい)した。

 習近平国家主席は27~29日に大阪を訪問。王氏は、米中の交渉団が現在、双方の相違を解決する方法に関し、交渉を続けていると表明した。一方で、トランプ政権を念頭に「一部の国が一国主義や保護主義を実行し、ほしいままに貿易相手国に関税をかけている」と非難し、G20で多国間主義への支持が一層高まることへの期待感を示した。

 習氏は昨年11月末からのアルゼンチンでのG20首脳会議で、米中首脳会談を控えていたため「保護主義」への反対といった米国との対決色を封印した。ただ中国は、5月に貿易協議が事実上決裂した原因は米国にあると国内メディアを通じて宣伝。協議再開に道筋が付いた場合、一方的に譲歩したと受け止められるのを避けるため、今回のG20ではより強い表現で米批判を展開する可能性がある。

 一方で中国当局は、香港の混乱をめぐり各国から批判を浴びる事態を懸念している。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案について香港政府は作業の完全停止を発表したが、張次官補は条例改正が法律上の欠陥を補うために必要だとの認識を改めて表明。「どのような場面や形式であろうと、いかなる国も中国の内政に干渉することは許さない」と米側にクギを刺した。

【私の論評】米国に続いて日本も中共の面子を叩き潰せ(゚д゚)!

香港のデモに関しては、やはり話し合うべきでしょう。香港の政治的不安定は、世界経済にも影響を与えるから当然議題にすべき筋のものです。私は、中共はこの問題をあまりに安易に考えてると思います。中国がこれについて、全く話し合いをしないというのなら、トランプ大統領は習近平の会談をキャンセルすることもあり得ると思います。

もうオバマ政権時代の数年前とは事情が全く異なってきていることを中共は理解していないようです。トランプ大統領としては、オバマ時代に後退した中国との対決を本気で一気に進めて米国に有利な状況をつくりだそうとしています。

すでに、中国に対する米国による最終兵器が5月15日に炸裂しました。それは華為技術(ファーウェイ)を輸出管理法に基づく輸出規制の対象(エンティティーリスト)に加えたことです。

ファーウェイを標的にしたトランプ大統領

米国の企業がファーウェイに部品やソフトウェアを売ろうとするときには商務省に申請して許可を得なければならなくなりましたが、一般に申請は許可されないといいます。

昨年4月に中興通訊(ZTE)がイランに不正輸出を行ったとして同様の制裁を科され、スマホの工場の稼働が止まるほどの窮地に陥ったことは記憶に新しいです。その時は中国政府が米国政府と交渉して、米国企業との取引禁止から罰金に「減刑」してもらうことで何とか難局を乗り越えました。

とはいいながら、ZTEが米国に対して約束した透明性を確保しなければ、制裁が再発動されることになります。

一方、ファーウェイはZTEを上回る技術力を持つハイテク企業ですが、米国政府も周到にファーウェイを追い詰めようとしています。まず昨年4月にアメリカ連邦通信委員会(FCC)は米政府の補助金を使う通信事業者がファーウェイとZTEの機器を使うことを禁じる措置を決めました。

さらに昨年8月に成立した国防権限法2019(NDAA2019)は、アメリカの政府機関がファーウェイ、ZTEなど中国企業5社の通信機器や監視機器を使用することを禁じ、さらにこれらの企業の機器を利用している企業からの調達まで禁止しました。

そしてこのたびの輸出管理法は米国の企業がファーウェイに対して機器、部品、ソフトウェアなどを輸出することを事実上禁ずる、というだけではなく、他国企業がアメリカ企業の部品やソフトなどを含むものをファーウェイに売ることにも規制の網をかけています。もしこの規制を破れば、今度はその企業が米国企業との取引禁止や罰金などの制裁を受けることになるのです。

つまり、米国企業がファーウェイに何かを売ったり、ファーウェイから何かを買ったりするのを制限するというだけでなく、ファーウェイと取引するような企業は他国の企業であっても米国の政府調達から締め出されたり、米国企業との取引を禁止されるといった制裁が科されるというのです。

もっとわかりやすくいえば、ファーウェイは、インテルやAMDのCPU、チップセットを購入出来なくなったのです。これは小売用だけでなく、社内使用分もです。また、Windows OSもです。ファーウェイは自身で開発した新 OS 何を使って開発するようなことを言っていますが、これを実行したとしても、効率はかなり悪くなることでしょう。

世界中で共通のプラットフォームとして用いられている、OS等には、様々なノウハウが蓄積されており、その豊富なノウハウなどの資源を用いることができるのですが、自社開発のOSということになれば、そういうわけにはいきません。なんでも自前て開発しなければならなくなります。

ただし、禁輸にしても、第三国経由で横流しされるでしょう。米国はそれを追跡し、第三国企業に制裁、見せしめをする事で穴を塞いで行くことになるでしょう。

インテル、nvida、AMD 3社を禁輸にすれば、天網スカイネットも瓦解するでしょう。ウイグル等人権問題が関係するので正当性はあります。NDAA2020では、天網を崩壊させるてだても組み込むことでしょう。

なぜここまでするかといえば、もう米中の貿易戦争は、冷戦の次元にまで高まっているからです。そうして、その背景には「文明の衝突」があるからです。現在の米中の争いは、米国側からすれば、中共の価値観を排除するという意味合いがあるのです。

さらに、米国共和党のルビオ上院議員が「政府の監視対象となっている企業が国内での特許について、特許侵害での提訴も含めた法による救済措置を求めることを禁止する」法案を提出したそうです。 

ルビオ上院議員

これは事実上、アメリカの監視対象となっているヒューウェイを狙い撃ちにしたものです。

ヒューウェイは米国の大手通信会社・Verizonに対し230件を超える特許を巡って10億ドル以上のライセンス料を要求していますが、法案が成立すれば救済措置を求められないどころか「ヒューウェイの特許はいくらでも侵害していい」ということになるわけです。

なお、周知の通りヒューウェイiは現行の4Gおよび次世代産業の中核となる5G技術においてトップクラスの特許を保有。5Gの標準化に大きく貢献するなど名実ともにフロントランナーです。

5Gをめぐる米中覇権争いの中、ターゲットにされている感のあるヒューウェイ。知財保護を訴えていた米国とすれば、ヒューウェイの技術は、元々成熟しかけていた米国等の技術を盗み、中国の政府補助金などで、急速に成熟化したものであると断定しているのです。

だからヒューウェイの技術に関しては、当然のことながら自分たちが金と時間をかけ成熟させるはずだったものを、盗まれたのですから、盗まれたものは取り返すという意味でこのような措置をとるのでしょう。

さらには、日米はすでに6Gの基礎研究に入っていますから、これがある程度までいったときにまた盗まれては、同じことの繰り返しです。この措置は、そんなことは絶対にさせないし、すれば取り返すだけであるという覚悟を中共にみせたのでしょう。

中国も盗まれる痛みを知らなければ、いつまでも窃盗を続けるでしょうから、私はこうした措置を歓迎したいです。

それにしても、米国の要求に折れたら習近平の負けを認めたことになり共産党支配の崩壊が早まることになります。 突っぱねれば、中国経済に大打撃を受けることになります。

トランプ政権は、中国製品に理不尽なまでの制裁関税をかけ、ファーウェイに対するアメリカ製品の輸出を禁止した。トランプに態度軟化の気配は見えず、中国はこれ以上被害が広がらないうちに折れたほうが賢明ではないかと思います。

王受文次官は、G20で香港デモの話をしないとしていますが、もし本当にそうすれば、トランプ大統領は習近平との会談をキャンセルし、さらに何らかの形で具体的に、新たな制裁を実施することになるでしょう。

王受文次官

この米国の行動は、トランプ大統領が辞任した後も続きます。それは、次の選挙でトランプ氏が再び大統領になってもならなくても、超党派で継続されます。

これについては、日本の企業や日本政府が何を言ったとしても、今後しばらくは変わりません。そうして、日本の企業が米国のやり方に違反した場合は、何らかの制裁を受けるだけになります。それは、日本政府も同じことです。

そんなことよりも、今は米国に協力して、中国がまともな国なり、中共が崩壊するか、中国の経済が弱体化して、日本等の周辺諸国に覇権を及ぼすことができなくなるまで、中国を追い詰めるときです。今は、中共の面子を米中協同でたたき潰し、中共の崩壊を推進するべき時なのです。中共が面子を気にして粋がってみせていられるのも今のうちだけです。

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2019年5月16日木曜日

野党破滅も!? 衆参W選、最短「6・30」断行か 識者「安倍首相、G20でのリーダーシップが最大の選挙運動に」―【私の論評】安倍総理は、令和元年に平成年間には一度もなかった衆参同時選挙で大勝利して財務省を沈黙させる(゚д゚)!


安倍総理(左)と麻生副総理兼財務大臣(右)

米中貿易戦争の激化による世界経済の失速を警戒して、日経平均株価は14日、一時2万1000円を割り込んだ。内閣府が13日に発表した3月の景気動向指数の基調判断も6年2カ月ぶりに「悪化」に下方修正された。こうした現状を受け、安倍晋三首相が10月の消費税増税を延期する可能性が指摘され、悲願の憲法改正の是非も加えて「国民の信」を問うため、今夏の参院選に合わせた「衆参ダブル選」の断行が取り沙汰されている。注目の「決戦日」(投開票日)について、最速、「6月30日」というスケジュールもありそうだ。


 「(2007年参院選の惨敗で)政治は安定を失い、とうとう、『悪夢のような民主党政権』が誕生した」「このような状況を再び招いてはならない。歯を食いしばり、夏の参院選を勝ち抜かないとならない」

 安倍晋三首相は14日、盟友である麻生太郎副総理兼財務相率いる麻生派(志公会)が都内で開いた政治資金パーティーでこう語った。参院選勝利への並々ならぬ決意が伝わった。

 麻生氏も「参院選を断固勝ち抜き、安倍政権のど真ん中で『輝く日本』をつくる」といい、「自民党結党以来果たせなかった憲法改正は、残された大きな課題だ」と、安倍首相と共通する改憲への意欲も示した。

 日本の経済政策を牽引(けんいん)する2人だが、パーティーでは世界経済の懸念材料である米中貿易戦争には触れなかった。

 ただ、麻生氏は同日の閣議後の記者会見で「(世界の)覇権というものを意識して考えないと。(米中の争いは)そんなに簡単に決着するものではありません」と語った。

 確かに、ドナルド・トランプ米政権は「中国が知的財産権を侵害している」として、制裁措置を発動している。中国の横暴を放置すれば、米国のハイテク技術は盗まれ続け、経済優位性は損なわれ、安全保障上の脅威となり、中国に覇権を奪われかねない-という強い危機感があるのだ。

 米国はすでに、輸入額の半分近くの2500億ドル(約27兆4000億円)分に25%の追加関税を課しているが、中国は対抗して13日、米国からの輸入品600億ドル(約6兆6000億円)分の追加関税率を最大10%から同25%に引き上げると発表した。これに対し、米国は13日、輸入品3000億ドル(約33兆円)分に最大25%の追加関税を課すと発表した。

 日本経済も当然影響を受ける。前出の基調判断が「悪化」に転じたなかで、米中の「関税制裁合戦」が過熱すれば、厳しい局面を迎える。

 安倍首相が「外的要因」を背景に、消費税増税の再々延期や、憲法改正の是非などを名分に、「伝家の宝刀」を抜くこともありそうだ。

 では、決戦のタイミングはいつになるのか。

 公職選挙法によると、参院選は改選議員の任期満了(7月28日)から「30日以内」と規定されている。投開票日は日曜日が通例であり、6月30日、7月7日、14日、21日の4パターンから選択が可能だ。


 一方、衆院選は公選法で「解散の日から40日以内に行う」と規定されている。

 これまで、通常国会の会期末解散で「7月4日公示-21日投開票」が有力視されていたが、ジャーナリストの安積明子氏はいち早く、「6月30日投開票」説をネットで発信した。

安積氏は「永田町で、特に野党が『6月30日』説に色めき立ち、慌てている」といい、続けた。

 「6月28、29両日には、大阪でG20(20カ国・地域)首脳会議が開かれ、世界各国から要人が集まる。安倍首相が議長としてリーダーシップを発揮すれば、メディアでも大きく報じられる。最大の選挙運動にもなる。野党は候補者不足など、壊滅する可能性がある」

 安積氏の予想通りなら、参院は6月30日から少なくとも「17日前」に、衆院も「12日前」までには公示日を迎え、選挙戦に入ることになる。

ジャーナリストの安積明子氏

 政府・与党は「常在戦場だから」(閣僚経験者)と、衆参ダブル選への覚悟を決めつつある。

 自民党の二階俊博幹事長は13日の記者会見で、衆参同日選について「安倍首相が判断すれば、党として全面的にバックアップし、対応する用意はある」と発言した。

 安倍首相は14日の経済財政諮問会議で、日本経済の実態について、「このところ、輸出や生産の一部に弱さが見られており、先行きも海外経済の動向などに十分、留意する必要がある」と、警戒感をにじませた。

 今月20日には1~3月期の国内総生産(GDP)の速報値も発表される。月内には、政府が独自の景気認識を示す月例経済報告など、経済指標の公表が相次ぐ。

 こうしたなか、トランプ大統領が25~28日に国賓として来日する。安倍首相は国内経済の現状を踏まえたうえで、日米首脳会談などで米中貿易戦争の展開などを把握し、最終決断を下すことになりそうだ。

【私の論評】安倍総理は、令和元年に平成年間には一度もなかった衆参同時選挙で大勝利して財務省を沈黙させる(゚д゚)!

増税見送りもしくは、凍結を公約として、衆参同時選挙をする可能性が高いことについては、このブログでも過去に何度か解説しました。そのため、ここではこれについては、解説しません。詳細を知りたい方は、この記事の一番下のほうに、【関連記事】を掲載してありますので、そちらをご覧になってください。

衆参同時選挙については、野党画をも相当危機感を感じているようです、国民民主党の小沢一郎氏は14日夜、民放のBS番組で、野党勢力の結集ができていない状況では、衆参同日選挙の可能性があり、野党側が敗北すると指摘したうえで、比例代表では野党の統一名簿を作成すべきだという考えを重ねて示しました。

この中で、国民民主党の小沢一郎氏は、「結集ができていない、今の野党の状況なら、『衆参ダブル選挙』はありうる。このままの状況なら、野党が立ち直れないくらいの壊滅的な敗北になる」と指摘しました。

そのうえで、小沢氏は、「いわゆる『オリーブの木』で、1つの傘のもとで戦う状態にならないと勝てないし、そういう状態になれば、圧勝する」と述べ、参議院選挙の1人区と衆議院選挙の小選挙区で、野党側の候補者を一本化し、比例代表では野党の統一名簿を作成すべきだという考えを重ねて示しました。

一方、小沢氏は、党内でのみずからの処遇について、「2か月後は選挙だから、ポジションは『あっちだ、こっちだ』と言っている場合ではない。『勝利するために、どうしたらいいのか』という話で、ポストをどうこうする必要はない」と述べました。

果たしてダブル選はあるのでしょうか。こればかりは安倍首相の心一つですが、少なくとも衆院を解散するのは、選挙を有利に戦えると踏んだときです。その判断材料の一つになるのが野党の動向です。

周知の通り、前回の衆院選で旧民進党は分裂し、当時の感情的なしこりが野党結集を妨げる一つ要因となっています。立憲民主党と国民民主党が主導権争いで対立する場面も多く、この間、野党が政権交代の受け皿になってきたとは言い難いです。

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、結党直後に11・6%だった立憲民主党の支持率は昨年2月の15・6%をピークに下落傾向に入り、今月6、7両日実施の調査では9・6%でした。国民民主党の支持率は1・6%で、野党第一党と第二党を合わせても10%程度にしかなりません。

一方、安倍内閣の支持率は、前月比5・2ポイント増の47・9%で上昇傾向にあります。

野党共闘のあり方にも課題があります。4月21日に投開票された衆院沖縄3区補選では勝利したのですが、同日の大阪12区補選は共産党系候補への支援のあり方をめぐり、足並みが乱れました。

共産党は、同党の元衆院議員を無所属で擁立する異例の対応を取り、他党が相乗りしやすい環境づくりを目指したのですが、共産党以外で推薦したのは自由党のみでした。立憲民主党や国民民主党は自主投票で臨み、立候補した4候補中、最下位の惨敗に終わりました。

共産党は夏の参院選と次期衆院選から、野党共闘の条件として候補の「相互推薦・支援」を求めていますが、大阪補選で浮き彫りになった野党間の溝はハードルの高さを物語っています。

野党5党派は参院選の勝敗を分ける32の改選1人区で候補の一本化作業を進めていますが、これまで事実上合意したのは愛媛、熊本、沖縄の3選挙区にとどまり、調整は大幅に遅れています。

こうした野党の体たらくを安倍首相サイドからみれば「解散の好機」と捉えることができるでしょう。

実際、ダブル選は地方に強固な組織を持つ自民党に有利とされます。自民党は沖縄、大阪補選や大阪府知事・市長のダブル選で敗れたものの、県議・市議選など統一地方選全体では着実に議席を伸ばしました。ダブル選ならば野党共闘態勢の構築も難しくなり、圧勝できると見る向きも多いようです。

一方、平成29年衆院選では、旧民進党と小池百合子東京都知事率いる旧希望の党による合流劇で、一時は政権交代も予感させました。小池氏の「排除」発言によって機運は急速にしぼんだのですが、官邸は肝を冷やしたに違いないです。

ダブル選になれば、野党結集が一気に加速する可能性があります。そこを官邸がどう判断するかが重要になってきます。

平成の時代に一度も行われなかったダブル選は、令和元年に実現するのか。夏の政治決戦に向けて、与野党の神経戦は既に中盤を迎えています。

安倍総理にとって有利なのは、増税延期の理由を海外に求めることができるということです。

これは米中貿易戦争の悪影響だけでありません。市場では、ヨーロッパが景気後退に入ったという見方が支配的になっています。一部では、欧州発の金融危機発生という見方さえ出始めています。

さらに、IMFが4月9日に発表した世界経済見通しでは、2019年の世界の実質経済成長率が1月に、同月発表の3.5%から、さらに下方修正されて3.3%となりました。この成長率は、リーマンショック後の長期停滞局面の成長率を下回っています。

安倍総理が言い続けてきた「リーマンショック並みの経済危機」に世界経済はすでに陥っているのです。そうした状況下なら、増税を延期しなければならない理由は、野党が主張するような「アベノミクスの失敗」ではなく、あくまでも日本政府がコントロールできない海外要因によるものだと強弁することが可能になります。

伊勢志摩サミットでも「リーマンショック前と似た状況」と語っていた安倍総理

安倍総理は、消費税増税延期のカードをすでに掌中にしている。4月21日に行われた大阪と沖縄の衆院補選で自民党が惨敗した流れを考えれば、自民党内に安倍総理の掲げる増税延期を否定する声は、さほど強く上がらないのではないでしょうか。

唯一の懸念は、財務省です。これまで幼稚園や保育園の無償化、軽減税率の導入、ポイント還元など、消費税増税による増収分をすべて使い尽くすくらいの大盤振る舞いで、増税実施への努力を続けてきたのですから、財務省としては、増税延期は絶対に許したくない政策です。

これからの2カ月、安倍総理と財務省の間で、消費税増税の延期をかけた壮絶な戦いが、水面下で始まることでしょう。

ただし、安倍総理には伝家の宝刀があります。それは、衆参両院選挙です。これで消費税見送りか、凍結、もしかすると減税をかかげて選挙に大勝すれば、財務省とて官邸には逆らえないです。このようなことは過去二度あって、実際に増税が見送られました。

二度あったことは、三度あるとみておくべきでしょう。ただし、今回は参院選だけでなく、衆院選も同時に行い、令和元年に平成年間には一度もなかった衆参同時選挙で大勝利して財務省を黙らせる算段でしょう。

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2018年12月3日月曜日

G20「各国の力関係の変化」と共同宣言の本当の読み方を教えよう―【私の論評】トランプが目の敵にしている日本の消費税引き上げを安倍総理は本当に実行できるのか(゚д゚)!

G20「各国の力関係の変化」と共同宣言の本当の読み方を教えよう

この変化に気付けるか…それが重要だ

 アルゼンチンで開催されていたG20が終わった。「保護主義と闘う」との言葉が、アメリカの反対で無いものとされた、といったことが中心に報道されているが、米中首脳会談で互いの追加関税が猶予され、一時的な休戦になったことにもっと注目すべきだろう。

 G20を経て、世界情勢はどうなるのか。その中では日本は立ち位置をどこに定めるべきなのか。また、G20首脳会合に合わせて行われる、日米、日中、日ロなどの首脳会談は、どのような成果があったのか。今回はそれを見ていきたい。

立ち位置に関する、シンプルなルール

 まず、G20などの国際的な首脳会議での一つの楽しみ方は、「集合写真での各国首脳の立ち位置」である。

 今回のG20、前列の中心にいるのはアルゼンチンのマクリ大統領だ。向かって左に、マクリ大統領から、安倍首相、トランプ米大統領、マクロン仏大統領などが並び、向かって右に、習近平中国主席、プーチン・ロシア大統領らが並んだ。

 中心が議長国であるアルゼンチンのマクリ大統領なのは当然だが、その隣にいるのが安倍首相だ。

G20での各国首脳の立ち位

    実は、国際会議の立ち位置については各国首脳が競い合うのではなく、次のようなシンプルなルールがある。

①議長国の首脳が中央、
②首相よりも大統領が内側、
③在任期間の長い首脳が内側

というものだ。

    もちろん立ち位置は議長国がその都度決めてよいのだが、大体この原則になっている。このルールにより、各国首脳の位置は事前に決められているのが通例だ(もっとも、アルゼンチンはお国柄なのか、マクロン大統領の到着時に、その出迎えに遅れた国なので、どこまでこうした通例が意識されたのかはわからないが)。

    さて、G20では、次期議長国の首脳が開催国首脳の隣に来るのが慣例なのだが、それを割り引いたとしても、安倍首相の立ち位置は目立っていた。写真にはメルケル独首相が写っていない。これは専用機のトラブルで、G20の開催に間に合わなかったためだ。それによって、安倍首相は写真に写る中で、先進国の首脳として最も在任期間の長い首脳になった。

    議長国の右側を見ても興味深い。議長国の隣に習主席、シェンロン・シンガポール首相、プーチン大統領と並んでいる。シェンロン首相の位置は通例で考えればちょっとありえないのだが、同氏は英語のほか中国語もロシア語もできるらしいので、それで中ロの間に呼ばれたのかもしれない。

    そのほかにも、集合写真を見ると面白いことがわかる。G20 には、サウジアラビアからサルマン皇太子が参加した。同氏はジャーナリストのカショギ氏暗殺を指示した人物だ、と国際社会から断定されている。

    その根拠となった情報はトルコから提供された。トルコは、オスマン帝国時代からサウジアラビアとは長年の因縁の関係があるので、カショギ氏の事件はトルコとサウジアラビアの間で非常に敏感なテーマとなっている。

   それを頭に入れて写真を見ると、トルコのエルドアン大統領は向かって前列の左端、サルマン皇太子は後列の右端に位置している。これは両国の関係から、無難にことが進むように、事前にそう決めたのだろう。そういったことも写真からは読み取れるので、眺めているだけでも結構面白いのだ。

G20の認識も随分変わった…?

   さて、今回のG20の集合写真における安倍首相の立ち位置は、今の日本の世界における位置を表している、と言っていい。

   安倍首相は今回のG20で、トランプ大統領、習主席、プーチン大統領と会談した。またトランプ大統領、インドのモディ首相と日米印三者による初の首脳会談も行った。中ロも、これに対抗するために、インドを取り込む中ロ印首脳会談を行った。まさに、G20の場で国際政治が動いているのだ。

    日中首脳会談を行いながら、中国の一帯一路に懸念を表する米印と日米印首脳会談を同時に行う、という動きは、これまでの日本の指導者にみられなかったものだ。こういう国際舞台では、誰と会談できたか、がいちばん重要だ。安倍首相は、米中ロという主要3ヵ国と会談したのだから、世界のトップリーダーとして存在感を見せたと言っていいだろう。

     その一方で、韓国の文在寅大統領との首脳会談は行なわれなかった。日韓関係は、日韓合意に基づいて設立した「和解・癒やし財団」の解散や元徴用工訴訟の韓国最高裁判決など、韓国が一方的に国家間の約束を破る暴挙に出ているので、最悪の状況にある。

    その韓国は、国際的に孤立を深めつつある。米韓関係において、トランプ政権は非核化協議をしないまま北朝鮮との協力関係の構築に前のめりになる文政権を信頼していない。文大統領はトランプ大統領との本格的な会談を望んだが、トランプ大統領は文氏との会談は簡単に済ませていた。どうやら、安倍首相との差をつけたようだ。

    さて、冒頭述べたように、アメリカの反対もあって今回のG20では共同宣言がまとめられるかどうか、危ないところであったが、なんとか共同宣言はまとめられた。自由貿易に関する記述は、前回のハンブルグG20と比較しても少ない。しかし、経済政策に関する部分は、概ね前回と同じである。その中で、財政政策に関する記述は「よくなっている」と筆者にはみえる。


    これをみると、従来の財政再建重視という路線から、財政政策の役割を重視するように、と少し考え方が変化しているようだ。「債務残高対GDP比」を絶対視しその水準に着目するよりも、「債務残高が持続可能かどうか」を問題としているのはいい。というのは、10月5日の本コラム(<IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する> https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57978)で指摘したように、債務残高対GDP比より、資産も考慮した純債務残高対GDP比のほうが、財政の実情を表すのに適切だからだ。

    つまり、債務残高が持続可能かどうか、というのは、債務残高対GDP比が大きくても、日本のように純債務残高対GDP比が低ければ問題ない、ともいえるのだ。

やっぱり消費増税、なんですね

    G20内でも少しずつ意識の変化が現れているが、こうした観点から日本国内の状況をみると、相変わらず、財務省が発信源と思われる酷い情報が流布されている。

たとえば12月1日の夜に放送された、日本テレビの「世界一受けたい授業」(http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/181201/03.html)で、<このまま日本の借金が増え続けると、実は、「未達」という問題が起きます。一体この、「未達」とは、どういう問題のことでしょうか?> という問いが流れていた。

     解説をしていたのは、元財務官僚で、ニュースゼロのキャスターだった村尾信尚氏だ。筆者は同氏を個人的に知っているが、熱血漢でナイスガイであるものの、ある意味で財務省の広告塔として、財務省の意見を忠実に述べる人でもある。日本テレビは、最近は財務省事務次官が天下る組織でもある。財務省の意向が反映しやすのはやむを得ないだろう。

財務省の広告塔として、財務省の意見を忠実に述べる人村尾信尚氏
写真はブログ管理人挿入 以下同じ

     この放送内容については大いに違和感があったと言わざるを得ないだろう。財政危機についての村尾氏の説明は財務省と寸分違わぬもので、ストックでは、バランスシートの右側の債務だけに着目し、その大きさを強調していた。またフローでは、政府の一部にすぎない「一般会計」の収支についてだけを説明していた。まさに財務省的な手口である。

    日本が財政危機でないことは、本コラムで何回も述べている。つまり、民間企業でいうところのグループ決算に相当する「統合政府のバランスシート」では、実質債務がゼロになっている。ストックで実質債務ゼロというのは、グループ決算で収支が均衡していることをほぼ意味している。

     財務省のように、一般会計だけのフローは赤字にして、グループ会社で利益を「資産化」して隠すことは、会計の専門家であれば容易にできる。しかしこれは見破るのも容易だ。いわゆる「埋蔵金」がそれにあたるのだが、筆者(をはじめ専門家ら)が「埋蔵金」を探し出せるということをまだ財務省はわからないみたいだ。

    また、番組で扱われていた「未達」とは、国債入札において、目標とする国債発行収入が得られない場合をいうが、そもそもいまの日本は国債が「品不足」となっている状態で、もっと政府は国債を発行すべきとき、なのだ(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51394)。

     「未達」がたいした問題でないことを理解するために、筆者と金融機関勤務経験のある民間投資家のぐっちーさんとの対談(2017年7月20日付け「消費増税なんて必要ナシ!?日本経済の本当の話をしよう」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52109)を読んでほしい。日本が財政危機でないことを簡潔に説明しており、一般読者にも有益だろう。

     なお、「未達」の問題を世に広めた作家の幸田真音氏は、財務省のお気に入りらしく、政府の各種審議会委員を歴任して、財務省の天下り会社であるJTの社会取締役をやっている(https://www.jti.co.jp/corporate/outline/officer/index.html)。

 いずれにしても、こういう話題がメディアで取り上げられるのは、財務省が必死になって、財政危機キャンペーンを続けている、ということの表れだろう。背景には、是非とも消費増税を進めたいという彼らの意地と焦りがあるのだ。

 さて、先進国と大国が参加するG20は、いまや国際政治の大舞台になっている。来年6月28日及び29日には大阪で開催されるので、これは日本の存在感を世界に示す絶好のチャンスである。その一方で、国内では消費増税に向けた動きが進行中である。来年、G20の後に行われる参院選挙が、国際政治にとっても国内政治にとっても、天王山であるのは間違いない。

【私の論評】トランプが目の敵にしている日本の消費税引き上げを安倍総理は本当に実行できるのか(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事にもあり、国際的評価が高まる安倍総理ですが、高橋洋一氏が結論ではっきり言わないことがあります。

それは、安倍総理が消費税増税を再延期する可能性です。私自身は、おそらく安倍総理は再延期すると思っています。増税すれば、8%増税のときと同じように、個人消費が再び落ち込み経済が低迷することになるのは明らかです。

そうなると、今後安倍内閣はレイムダックになり、安倍総理の残りの任期中には、憲法改正どころではなくなる可能性がかなり高いです。安倍総理は任期中に憲法改正を実施したいと考えています。いや考えるどころか、それを至上命題としています。

私は、そのような安倍総理が安易に増税するとは、とうてい思えないのです。

憲法改正を別にしても、私は安倍総理は増税しないと思います。

それには、主に3つの理由かあります。まずは、2019年には、4月に統一地方選挙、7月に参議院議員選挙という、2つの大きな選挙があります。これは、消費税を上げることを確約した状態で臨めばかなり不利になるのはわかりきっています。

それと、安倍政権が掲げる軽減税率制度は、頭の悪い財務省が考えたせいでしょうか、とても現実的ではなく、これは各方面からかな不興を買っています。これを本当に実行すれば、嫌がおうでも、安倍政権の評判は落ちることになります。

しかし、これらは、安倍総理が消費税増税を延期する理由の最大のものではありません。最大の理由は、「消費税引き上げには、アメリカのドナルド・トランプ大統領が大反対する」というものです。

トランプ大統領は、日本の消費税は輸出産業への補助金だと見なしています。アメリカが日本に対して貿易赤字を抱えているのは、日本が輸出産業に消費税という名の補助金を出し、消費税のないアメリカで有利にクルマなどを売るからであって、日本はダンピングしているとさえ言っています。

日本では、輸出業者に消費税が還付される「消費税還付制度」があります。たとえば、自動車を1台生産する場合、部品をつくる会社は部品を売ったときの消費税を国に納め、その部品を買って組み立てて製品にした会社は、それを親会社に売るときに消費税を納めます。そうやって、いくつもの会社が払ってきた消費税が、最終的に製品を輸出する企業に還付される仕組みになっています。


本来なら、部品をつくる会社、それを組み立てる会社と、消費税を払うそれぞれの業者にも出されてしかるべきですが、最終的に輸出されるときには輸出業者は免税で、そこにまとめて還付されることになっています。

この輸出業者に還付されるお金は、全国商工新聞によると約6兆円。つまり、消費税徴収額約19兆円のなかで、主に輸出業者に戻される還付金が約6兆円もあるということです。みんなから集めた消費税の約3割は、輸出企業に戻されているのです。

これに対してトランプ大統領は、アメリカに輸出する日本の企業は政府から多額の補助金をもらっていると怒っていて、だからダンピングでクルマなどが売れるのだと考えているようです。消費税を「輸出を促すための不当な補助金」だと非難しているわけです。

そもそも、米国には消費税がありません。州単位では「小売売上税」という消費税に似たような税金を徴収していますが、国としてはないのです。1960年代から何度も消費税導入の議論はされていますが、ことごとく却下されています。

なぜ米国の議会が消費税導入を却下するのかといえば、彼らは消費税というのは不公平な税制だと思っているからです。アメリカには、儲かった企業がそのぶんの税金を払うのが正当で、設備投資にお金がかかるので儲けが出にくい中小企業やベンチャー企業からは税金を取らないという考え方があります。儲かっていない中小企業の経営を底支えし、ベンチャー企業を育てて、将来的に税金を払ってくれる金の卵にしていく。それが正しい企業育成だというのです。

しかし、消費税は、儲かっていても儲かっていなくても誰もが支払わなくてはいけない性質の税金です。さらにいえば、儲かっているところほど相対的に安くなる逆進性を持っているので、アメリカでは不公平な税制だというのが議会や経済学者のコンセンサスになっています。

そのため、これまで米国では儲かっている企業が支払う法人税率が38.91%とバカ高かったのです。ただし、この高かった税金をトランプ大統領は選挙公約通りに下げ、現在は21%程度になっています。

一方で、トランプ大統領は、新たに「国境税調整」を税制改革要素のひとつとして盛り込みました。これは、輸入品には20%の関税がかかり、アメリカ企業が輸出して得た利益は無税になるというもの。貿易面だけで見れば、日本の消費税に当たる要素を持っており、これで日欧などの消費税や付加価値税に対抗しようと考えたのでしょう。

しかし、議会では、公平な税制の機能が不十分で国内消費に低迷をもたらすということで見送られてしまいました。そんななか、日本がさらに消費税を引き上げるということになれば、許せないと思うのは当然でしょう。

9月26日(日本時間27日未明)、ニューヨークでトランプ大統領と安倍首相が会談し、2国間の貿易交渉を始めるという共同声明を発表しました。

9月の日米首脳会談

これについて、安倍首相は「アメリカから要求された自由貿易協定(FTA)ではない」と言い切り、マスコミでは「物品貿易協定(TAG)の締結に向けた交渉」という文字が躍りました。しかし、出された共同声明を見ると、これはFTA以外の何物でもありません。

しかし、政府はあくまで「TAGだ」と言い張り、外務省のホームページでも「日米両国は、所要の国内調整を経た後に、日米物品貿易協定 (TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する」という日本語訳を出しています。

ところが、アメリカ大使館の日本語訳を見ると、「米国と日本は、必要な国内手続が完了した後、早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する」とあります。さらに、物とサービスの交渉が成立したら「投資に関する他の項目についても交渉を開始する」というのですから、これがFTAでなくてなんなのでしょう。

加えて、アメリカ側は、マイク・ペンス副大統領が「日本と歴史的な自由貿易交渉(Free trade deal)を始める」と明言しています。折しも、この共同声明が出た後に、アメリカ政府は、新しい北米自由貿易協定(NAFTA)で通貨安誘導への報復措置を認める「為替条項」を盛り込んだと公表しました。これは、貿易相手国が為替介入で不当に自国通貨を安くした場合、米国が報復しても文句は言わせないという条項です。

ペンス副大統領は、FTAをの交渉を始めると名言

当然ながら、この「為替条項」は日本とのFTA交渉にも入るはずです。そうなれば、トランプ大統領から「為替操作国」の疑惑をかけられている日本は、「為替条項」で徹底的に痛めつけられる可能性もあります。

トランプ大統領は1日、メキシコ、カナダの首脳と北米自由貿易協定(NAFTA)に替わる新協定に署名しました。大統領はこの協定を「手本」だと自賛。「国有企業への巨額の補助金と為替操作に、3カ国全ての労働者は痛めつけられている。こうした不公正な貿易慣行と闘うための基準を劇的に上げることができた」と述べています。

仮に安倍総理が消費税をあげたとして、トランプ大統領がこれにより輸出企業への補助金が増えたとみなした場合、日本は何らかの形で報復される可能性もあります。

そうなった場合、消費税増税で、個人消費が低迷し、日本国経済はふるわず、国民からの支持が低迷するでしょう。そこに米国による報復措置が日本の輸出企業に課せられた場合、まさに安倍政権は泣き面に蜂で、レイムダック化します。

安倍総理が、トランプ大統領が目の敵にしている日本の消費税の引き上げを断行できるのかどうかは、はなはだ疑問です。

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2016年9月9日金曜日

醜悪さ満載の杭州G20宣言 中国の問題を「世界的な課題」とはよく言うよ―【私の論評】世間知らずの馬鹿が馬鹿話をして、世界の笑いものに(゚д゚)!


G20首脳会合の閉幕後、記者の前で演説する習主席=5日、中国・杭州
写真はブログ管理人挿入 以下同じ
中国・杭州で20カ国・地域(G20)サミット(首脳会議)が開かれた。通常、サミット宣言というものは議長国(今回は中国)の官僚が中心になった作文の合作で、退屈きわまりない。杭州G20もそうだろうと思ったが違っていた。裏読みすれば、表現とはおよそかけ離れた醜悪な中身満載だ。

 サミットの出だしもそうだった。地元の中国共産党青年団が特別に作成したというソングで「(杭州の)最も魅力的な景色でさえ、あなたと出会う気持ちにはかなわない」と熱烈歓迎しながら、オバマ米大統領には出迎え用のタラップも用意しないなど前代未聞の非礼、という落差ぶりだ。

出迎用の赤絨毯のタラップが用意されていなかったため、専用機のタラップで降りるオバマ大統領
 くだんの宣言はどうか。

 まずは為替問題。「為替レートの過度の変動や無秩序な動き」を問題にしつつ「競争力のために為替レートを目標とはしない」とうたった。北京当局は人民元市場に介入しては、元売りを小刻みに低め誘導してきた。明らかに輸出てこ入れのためだが、頬かむりする。昨年8月に基準レートを大幅に切り下げた途端に巨額の資本逃避が起きた。北京は「無秩序な動き」を阻止するためには市場介入が必要だ、今のやり方が正しい、と言い張るのだろう。


 「IMF(国際通貨基金)の決定に従い“我々は”10月1日の人民元の特別引き出し権(SDR)構成通貨入りを歓迎する」とはよくぞ言った。人民元のSDR入りは、金融市場の自由化を条件にしているのだが、習近平政権のやることは逆だ。IMF加盟国から文句が出ないのは、欲に目のくらんだ西側金融資本を一本釣りして人民元決済や株式取引の権益を部分供与しているからだ。人民元が国際通貨になれば、戦略物資も軍事技術も北京が刷るカネで確保できる。南シナ海、尖閣諸島周辺など、武力を使って海洋進出を図る習主席はほくそ笑んでいるだろう。

 とりわけこっけいなのは、「不正な資金の流れの我々の経済への重大な悪影響を認識」「腐敗や不正な資金フローが経済成長などに及ぼす有害な影響を認識」「腐敗関係の捜査対象者及び財産回復に係る国際協力のための研究センターの中国における設立」。


 かのパナマ文書が暴露したように、習主席の親族を含め、中国の党幹部や企業こそ、タックスヘイブン(租税回避地)利用の大半を占める。習政権は汚職高官のリストを持って米国に逃亡した元党幹部の引き渡しをワシントンに求めているのだが、杭州合意を手にしてさらにワシントンに詰め寄るのだろう。ならば、せめて赤じゅうたんでオバマ大統領を歓迎すべきだった。研究センターをつくるなら、自身や周辺の党幹部一族の蓄財を調べて公開すればよい。

 「鉄鋼及びその他の産業における過剰生産能力が、共同の対応を必要とする世界的な課題であると認識」とは、よく言うよ。課題は世界ではなく中国にある。習政権は自身で解決できないなら、国際監視団の外圧のもとに5割を超える鉄鋼などの過剰設備を廃棄したらどうか。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】世間知らずの馬鹿が馬鹿話をして、世界の笑いものに(゚д゚)!

中国をめぐる環境では本当に何も良いことはありません。それは、上の記事でも明らかですが、以下に若干これ以外に関して補足しておきます。

まずは、現在の世界経済をみると、一国の経済を伸ばすために、輸出を増やすことはもう有効ではなくなりました。

ちなみに、このあたりの数値を以下に掲載しておきます。これは2014年のものです。
●輸出依存度(GDP比)
韓国  :43.4%
ドイツ :33.6%
メキシコ:26.2%
中国  :24.5%
ロシア :24.4%

日本  :11.4%
アメリカ: 7.5%

●輸入依存度(GDP比)
韓国  :38.8%
ドイツ :28.0%
カナダ :24.6%

アメリカ:11.4%
日本  :10.8%

そうして、日本の対中依存度は下記の通り
対中輸出依存度(GDP比):2.79%
対中輸入依存度(GDP比):2.44%
中国の輸出依存度は、韓国程ではないですが、日本や米国と比較するとかなり高いほうです。そうして、これは経済を伸ばすとか、立て直すといった場合には障害になります。


なぜなら世界貿易総額は最近では伸びが少なく、2015年にはかなりのマイナスとなり、これからは急激に伸びることは考えられないからです。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が先月9日発表した2016年版の世界貿易投資報告によると、2015年の世界貿易額(輸出ベース)は推計で前年比12・7%減の十六兆四千四百六十七億ドル(約千六百八十兆円)となり、6年ぶりに縮小に転じました。中国経済の不振が影響したほか、各国企業の現地生産進展も貿易が伸びにくくなったという背景があります。。

世界では、2015年以降に日本とオーストラリア、中国と韓国など十四件の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)が発効したのですが、環太平洋連携協定(TPP)など大型のFTA発効が遅れていることも貿易停滞の一因となったようです。

国別では、中国は景気減速に加え、工業製品の内製化が進み輸入が18.4%減となりました。ジェトロの石毛博行理事長は「中国の供給力が上がっている」と指摘し、対中輸出が伸びない理由として中国の生産力増強を挙げました。

また日本の輸入は20・7%減、輸出は10・0%減でした。日米欧などの企業は需要がある海外現地での生産体制を既に築き上げており、自国からの輸出が増えにくい構図になっています。

分野別では、価格が下落した原油が45.5%減と大きく落ち込みました。ジェトロの担当者は「中国で製造業向けの生産用機械や部品の輸入が減っていることが大きい」と分析しました。

世界経済の約67%を占める主要22カ国・地域の16年一~3月期の輸出額は前年同期比8.4%減となり、低迷が続いています。

そうして、中国のような輸出の多い国は、輸出を大幅に伸ばすことはもう不可能なので、内需を拡大するのが経済政策の順当な手段であると考えられます。

さて、日本をはじめとする先進国の個人消費がGDPに占める割合は60%台です。アメリカは、この比率が他国と比較すると高くて、70%台です。これに比較すると、中国はなんと35%に過ぎません。韓国も低いですが、それでも50%台です。

ここに本来は中国の活路があるはずです。個人消費を50%台にでも高めれば、かなりの成長が期待できます。しかし、なぜか中国はこれに本気で取り組む姿勢にありません。

結局、個人消費を増すためには、個人にある程度収入や、資産がなければ不可能です。家局中国では、富裕層や高級官僚が金を握って離さないような仕組みになっているので、不可能なのです。

個人消費を増すためには、ある程度民主化、政治と経済の分離、法治国家化が必要不可欠なのですが、共産党一党独裁国家である中国においては、これが非常に困難なのです。

この体制が構築されないかぎり、中国においては日本をはじめとする、先進国に普通にみられる、中間層が活発な社会経済活動を行うこともできず、深みにはまるだけです。これに関しては、このブログでも何度か掲載してきたことですが、もう一つ中国の根本的な弱点があります。

アメリカの一番の強みは軍事力ではない
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、軍事力でもなく、イノベーション力でもありません。それは、米国による世界の金融支配にあります。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発しています。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものです。

当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国でした。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれます。

世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ないです。中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになります。

だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていました。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものです。人民元はSDR入りしましたが、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになります。

資源を買うことができなければ、軍艦を出動させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになります。そして、その段階においても対立が融和しない場合、アメリカは金融制裁をさらに強めることになるだけです。

いわゆるバブルマネーによって、中国経済は本来の実力以上に大きく見られきましたが、バブルが崩壊し、同時にアメリカが前述のような金融制裁を強めたら、どうなることでしょう。当然、一気にこれまでの体制が瓦解し、中国は奈落の底に落ちることになります。

アメリカの一番の強みは金融支配力
そうした構造をよくわかっているので、中国はアメリカのドル支配から抜け出そうとしてきたわけです。そうしてアジアインフラ投資銀行(AIIB)や新開発銀行(BRICS銀行)の創設を主導し、さまざまな二国間投資を推進することによって、アメリカに頼らない体制をつくりたがっています。

その動きを必死に否定しているのが日本やアメリカであり、同時にASEAN(東南アジア諸国連合)の各国も日米に連動するかたちで自国の権益を守ろうとしています。そうして、中国のこの動きは完璧に封鎖されたといっても良い状態にあります。日米が参加しなかったため、AIIBは頓挫状況です。

このようなことから、米中が軍事衝突したり中国がそれ以外でもとんでもない行動をしそれが米国が到底許容できないものであった場合には、米国はすぐさま金融制裁に打って出ることでょう。そうなれば、中国に軍配が上がる可能性は全くありません。米国にとっては中国のこうした動きなど、赤子の手をひねるように簡単に封殺できます。

軍事的には無論のこと、米国の金融制裁には中国は手も足も出ず、中国の現体制は崩壊することになります。

以上のようなことを知った上で、ブログ冒頭の記事を読み返すと、今回の中国杭G20サミットの共同宣言の中身は、 世間知らずの馬鹿が馬鹿話をして、世界の笑いものになったという代物であり、本当に醜悪な中身としか言いようがありません。どんなときでも、どんな内容でも、中国国内を優先するという態度は永遠に改まりそうにもありません。

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