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2018年8月30日木曜日

「真珠湾攻撃忘れないぞ」トランプ米大統領、安倍首相に圧力―【私の論評】日本のメディアは米国保守派の歴史観の変貌に無知(゚д゚)!


会談で握手する安倍首相(左)とトランプ米大統領=6月、ワシントンのホワイトハウス

米紙ワシントン・ポスト電子版は28日、トランプ大統領が6月にホワイトハウスで安倍晋三首相と会談した際「(第2次大戦の)真珠湾攻撃を忘れないぞ」と前置きした上で、難航している通商問題の協議を始めたと伝えた。異例の発言の背景には、対日貿易赤字の削減を目指し圧力を強める狙いがありそうだ。

米国では真珠湾攻撃は「卑劣なだまし討ち」との見方が強い。日本側の弱みと見なしてトランプ氏が通商交渉で譲歩を引き出すために、あえて日米首脳会談で触れた可能性がある。

同紙によると、トランプ氏は真珠湾攻撃に言及した後、米国の対日貿易赤字について激しく非難し、安倍氏に対し牛肉や自動車の対日輸出で米国に有利になるような2国間貿易協定の交渉に応じるよう促した。

これに対し安倍氏は、トランプ氏の発言が終わるのを待った上で反論。日本政府当局者は「首相は大統領の主張を断定的に否定すれば、プライドを傷つけてしまうと分かっている」と説明した。(共同)

【私の論評】日本のメディアは、米国保守派の歴史観の変貌に無知(゚д゚)!

時事通信や共同通信、新聞各紙が、トランプ大統領が「真珠湾攻撃を忘れていないと発言し、通商交渉で厳しい姿勢を示した」とし、「揺らぐ日米蜜月」などと報じています。

この「パールハーバー発言」は、そもそもアメリカの新聞「ワシントン・ポスト」が、トランプ大統領が安倍首相に対して、「真珠湾攻撃はひきょうだった」と非難する、「アイ・リメンバー・パールハーバー」、つまり、「真珠湾攻撃を忘れないぞ」という言葉を使って、通商問題で譲歩を迫ったと報じたことが始まりでした。しかし、各紙はしっかりと総理周辺などに取材したのでしょうか。

日本軍による真珠湾攻撃

トランプ大統領は、真珠湾攻撃ではないものの先の大戦に関しこれまでも同様の発言を繰り返し、防衛費増について話を日本側に振っています。

すなわち防衛装備品の購入増につながるわけで、それをアメリカも狙っているわけですが、アメリカの新聞の引用ではなく、しっかりと取材をし記事を書いて欲しいものです。

一方多少まともに報道しているところもあります。これは、FNNの取材でわかったことですが、6月にアメリカで行われた日米首脳会談において、トランプ大統領は確かに「アメリカが日本の防衛費を負担して、対日貿易赤字も解消されなければ、ダブルパンチになる」と不満を表明しました。

そのうえで、「真珠湾攻撃を忘れていない。日本も昔はもっと戦っていただろう。日本も周辺国ともっと戦うべきだ」と述べたのです。

この発言は、「日本が自国の防衛を強化して、アメリカの防衛費の負担を減らすべきだ」と、暗に求めたとみられます。

関係筋などによると、この時トランプ大統領は、「日本はかつて真珠湾を攻撃したほどの軍事強国であったじゃないか」と言う意味で述べたもののようです。

日本は「防衛費をもっと増やすべきだ」という意味で発言したもので、通商問題で日本を非難する意味ではなかったとしています。

また、トランプ大統領は、「パールハーバー」と発言したものの、「あのひきょうな攻撃を忘れないぞ」という批判的な意味、言い方はしていないとのことです。

外交上、際どい言葉は、異なる解釈を生み出すケースがあるため、そうした言葉が波紋を生んだケースだといえそうです。

また、メディアとの関係もあります。トランプ大統領に対して批判的な米リベラル・メディアは、そういうふうに報道したというベースがあるとも忘れてはいけないです

このブログでも何度か述べたように、米国のメデイアはほとんどがリベラルです。その中で、特に大手新聞はすべてがリベラルです。米国のメディアのリベラル対保守を比率でいうと、代替9対1の割合です。

そのため、保守派が何かをいっても、ほとんどがリベラルメディアによってかき消されてしまうというのが現状です。そのため、私達日本人などは、リベラルメディアによる報道のみに接しているため、米国の半分のリベラルの見方や考え方にせっしているわけです。

ところが、トランプ大統領が誕生したことでもわかるように、実は米国にも当然のことながら、保守派も存在するわけです。少なくとも、米国の人口の半分くらいは存在するはずです。でなければ、トランプ大統領など誕生する余地もなかったはずです。

メディアを批判するトランプ大統領

結果として、私達日本人は米国のリベラルのことはみていても、後半分の保守層のことは全く見ていないということになります。

そうして、日本のメディアは米国のリベラルメデイアの報道する内容をそのまま報道することが多いので、いつまでたっても、日本ではアメリカの半分である保守の言っていることや考えていることがわからないままなのです。

だからこそ、ブログ冒頭の記事のような報道がなされてしまうことが良くあるのです。

そうして、このトランプ氏を含めた保守派の「真珠湾」という言葉の意味は、従来とは明らかに変わっています。それについては、以前このブログに掲載したことがあります。そのブログのリンクを以下に掲載します。
やはり「中国と対決」の道を選んだトランプ政権―【私の論評】背景には米国内での歴史の見直しが(゚д゚)!
米国のドナルド・トランプ大統領(左)と中国の習近平国家主席(2017年11月9日)

この記事は、2017年12月27日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事には動画が掲載してあり、その動画ではトランプ大統領のいう「真珠湾忘れるな」の意味について説明しています。

以下にその動画と、記事の一部を引用します。




この動画では、米国では多様な歴史の見方があることを語っています。たとえば、日本のパールハーバー攻撃を卑怯なだまし討とみるのではない見方もあることを語っています。 
1941年12月7日(現地時間)、日本軍が真珠湾攻撃をした当時、アメリカのルーズヴェルト民主党政権は「卑怯な騙し討ち」と非難しました。日米両国が懸命な戦争を避けるための外交交渉をしていたのに、日本がいきなり真珠湾を攻撃してきたという見方です。 
しかし、日米交渉の経緯について知られるようになるにつれ、日米交渉を潰したのは、ルーズヴェルト民主党政権側であったことが知られるようになっていきました。 
先の戦争は決して日本の侵略戦争などではなかったにもかかわらず、アメリカのトルーマン民主党政権は東京裁判を行い、日本の指導者を侵略者として処刑しました。このことは、公正と正義を重んじたアメリカ建国の祖、ワシントンやリンカーンの精神を裏切る行為です。 
これまで戦争責任といえば、必ず日本の戦争責任を追及することでした。過去の問題で批判されるのは常に日本であって、過去の日本の行動を非難することがあたかも正義であるかのような観念に大半の日本人が支配されてしまっています。しかし、どうして戦争責任を追及されるのは常に日本側なのでしょうか。 
敗戦後の日本人が、「戦争に負けたのだから」と連合国側による裁きを甘受したのは仕方のないことだったかもしれません。しかし、歴史の真実は勝者の言い分にのみ存するのではないはずです。 
上の動画をみてもわかるように、米国では真珠湾攻撃は日米両国がそれぞれの国益を追求した結果起こったものであるとして、日本を「侵略国」であると決めつけた「日本悪玉史観」は事実上、見直されているのです。

この「日本悪玉観」を見直しているのは、あくまで米国の保守派であって、リベラル派の多くは未だに「日本悪玉観」で歴史をみています。

米国のリベラル派は、おそらく米国の人口の半分はいるとみられる保守層の「歴史観」の変貌にきづいているでしょう。かなりの脅威を感じているに違いありません。

トランプ氏の歴史観も当然ながら、「日本悪玉観」ではないので、当然のことながら、安倍総理に「真珠湾を忘れない」と語ったのも、 無論「卑怯な騙し討ち」を意味するものではないのです。

このような事実を知っていれば、日本の新聞も誤った報道をしないですんだかもしれません。

その意味では、今回の出来事は、日本のマスコミが米国の主に保守派においては、歴史観が変わって単純な「日本安悪玉観」は通用しなくなっていることに関して無知であることを露呈したともいえると思います。

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2017年4月28日金曜日

ルトワック博士の緊急警告! 先制攻撃か降伏か 日本が北朝鮮にとるべき選択肢―【私の論評】日本が戦争できる国に変貌することが、アジアに平和をもたらす(゚д゚)!

ルトワック博士の緊急警告! 先制攻撃か降伏か 日本が北朝鮮にとるべき選択肢

エドワード・ルトワック博士
『戦争にチャンスを与えよ』を上梓したエドワード・ルトワック氏より日本の読者へ向けて緊急の提言が届いた。朝鮮半島情勢が緊迫する中、日本がとるべき道とは何か。軍事的衝突の確率とは。“最強の戦略家”による最新の情報を、本書の一部とともに紹介する。
ルトワック博士の緊急警告! 
 習近平は現時点で、トランプからの「平壌(北朝鮮)政府に本物の圧力を加えてくれたら、米中貿易関係における要求を減らしてやる」という提案に対して、それなりに対応しているように見える。 
 なぜなら北京では、北朝鮮に対する石油の流れを制限することが議論されているからだ。 
 もしこれが実現すれば、きわめて重要なステップになる。 
 また中国は、アメリカによるシリアの空軍基地に対する巡航ミサイル攻撃を利用して、北朝鮮側に核実験を自制するよう警告している。そこで発せられているメッセージは「気をつけろよ! トランプはオバマと違うぞ。お前も攻撃されるぞ……」というものだ。 
 では、米軍はどういう計画を持っているのか。 
 米軍のトップたちは、かつてイスラエルがイラクやシリアに対して行ったような攻撃、つまり、北朝鮮の核・弾道ミサイルなどの目標に対して、たった一度の精密攻撃で「非核化」することを狙うような、「先制攻撃」だけをオプションとして考えているわけではない。 
 むしろ米軍はトランプ大統領に対して、「非常に大規模な空爆」、つまり、核・弾道ミサイルに加えて、北朝鮮の航空基地や地対空ミサイル部隊といったターゲットを攻撃するというオプションしか提案していないのである。
 これは非現実的な数日間にわたる作戦であり、民間人にも多数の死傷者がでるだろう。 
 ただしこのようなオプションは、北朝鮮が最初に大規模な砲撃や侵略、もしくはその両方を使って攻撃してこないかぎり実行されないはずだ。 
 さらに、アメリカ政府には「経済的遮断」という強力なツールがある。たとえば全般的な経済力に加えて、実際に金融制裁などを使って北朝鮮の資金調達を真綿で首を締めるようにして遮断することができるのである。 
 まとめていえば、トランプ政権下の米国はまたしても「防御的」に行動することになるだろう。ただしオバマ政権との決定的な違いは、そこに「戸惑い」や「曖昧さ」はない、という部分だ。


平和は戦争につながる

(以下『戦争にチャンスを与えよ』からの転載です)

「戦略」において、すべては反対に動く。

 戦争で国家や国民が被害を受け続けるのは、日常生活や平時における通常のロジックと紛争や戦時におけるロジックがまったく異なるからだ。また、そのことを理解するのが難しいために、被害がさらに拡大することになる。

 最も難しいのは、「戦争ではすべてのことが逆向きに動く」というのを理解することだ。たとえば、「戦争が平和につながる」という真実である。戦えば戦うほど人々は疲弊し、人材や資金が底をつき、勝利の希望は失われ、人々が野望を失うことで、戦争は平和につながるのだ。

 ところが、逆に「平和が戦争につながる」ことも忘れてはならない。

 人々は、平時には、脅威を深刻なものとして考えられないものだ。平時に平和に暮らしていれば、誰かの脅威に晒されていても、空は青いし、何かが起こっているようには思えない。友人との飲み会に遅れないことの方が重要で、脅威に対して何の備えもしない。

 つまり、脅威に対して降伏するわけでも、「先制攻撃を仕掛ける」と相手を脅すわけでもない。そのように何もしないことで、戦争は始まってしまうのである。

 平時には、脅威が眼前にあっても、われわれは、「まあ大丈夫だろう」と考えてしまう。脅威が存在するのに、降伏しようとは思わず、相手と真剣に交渉して敵が何を欲しているのかを知ろうともせず、攻撃を防ぐための方策を練ろうとも思わない。だからこそ、平和から戦争が生まれてしまうのである。

 平時には、誰も備えの必要を感じない。むしろ戦争に備えること自体が問題になる。そうして行動のための準備は無視され、リラックスして紅茶でも飲んでいた方がよい、ということになり、そこから戦争が始まるのだ。

 平和は戦争につながる。なぜなら平和は、脅威に対して不注意で緩んだ態度を人々にもたらし、脅威が増大しても、それを無視する方向に関心を向けさせるからだ。日本にとって、その典型が北朝鮮問題だ。

北朝鮮のICBM

北朝鮮への日本の態度

 北朝鮮は、特異な政権である。特異な点として、二つ挙げられるだろう。

 一つは、リーダーのヘアスタイルがひどい、ということだ。金正恩の髪型は本当にみっともない。

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党第1書記
 もう一つは、北朝鮮の軍事関連の技術力は侮れない、ということだ。根本的な意味で、日本やアメリカ以上の底力を持っている。

 もちろん、彼らのミサイルは、塗装されていない。アメリカや日本のミサイルは塗装されているが、そもそも爆発させるミサイルを塗装した方がよいかどうかという問題は、ここでは論じないでおこう。とにかく北朝鮮のミサイルは塗装されていないことが多い。

 その一方で、北朝鮮は、人工衛星を打ち上げ、中距離弾道ミサイルも発射した。さらに弾道ミサイルを潜水艦からも発射しているのだ。ミサイルに搭載可能な核弾頭の爆発実験も成功させた、と見られている。

 しかもこれらすべてを、彼らは非常に少ない予算で短期間に実現しているのだ。

 もし日本政府が国内メーカーに、中距離弾道ミサイルとそれに搭載可能な核弾頭、宇宙に飛ばす人工衛星の開発などを命じても、おそらく年間の国防費以上の予算と、調査、研究、開発に一五年ほどの時間が必要になるだろう。

 したがって、北朝鮮の軍事関連の技術者を侮ってはならない。彼らは、他国の技術者の五倍以上の生産性を有している、と言えるからだ。たとえば、イランは、核開発に北朝鮮の五倍もの時間をかけながら、一発の核兵器に必要な核物資さえつくりだせていない。人工衛星の技術もない。

 要するに、北朝鮮の軍事開発力は、極めて危険な域に達しており、真剣に対処する必要があるのだ。

北朝鮮への降伏
 私は戦略家であり、政治家ではない。ましてや教師や牧師でもない。倫理道徳の価値観の教育は専門外だ。したがって、私が日本政府に対して言えるのは、「何もしないのが最悪の選択肢で、以下の選択肢のうちの一つを実行せよ」ということぐらいである。

 第一の方策は、「北朝鮮に降伏(サレンダー)する」というものだ。

 北朝鮮政府が真に何を望んでいるのかを聞き出し、経済制裁をすべて解除する。祖国への朝鮮総連の送金に対する制限も解除し、金一族を讃える博物館を表参道に建て、北朝鮮に最も美しい大使館を建てさせる。

 代わりに、日本政府は、北朝鮮に五〇〇キロ以上の射程を持つミサイルの開発を止めてもらう。五〇〇キロ以上の射程のミサイルは、国際的な「ミサイル技術管理レジーム」(MTCR)での制限の対象となっている。またそれだけでなく、これは、幸いなことに偶然にも、朝鮮半島の非武装地帯から下関までの距離と同じなのだ。

 これは、北朝鮮に対する制裁をすべて解除し、彼らに名誉を与え、国家としての彼らの存在を認めることで、五〇〇キロ以上の射程のミサイルの脅威を取り除く、という道だ。

北朝鮮への先制攻撃
 次の方策は、「北朝鮮を攻撃する」というものだ。しかもこれは、先制攻撃(プリエンプティブ・ストライク)でなければならない。核関連施設を特定しつつ、それらすべてを破壊するのである。

 たとえば、イランの核開発の脅威に晒されているイスラエルは、先制攻撃能力を持っている。イスラエルが先制攻撃する場合は、儀式的なことは一切抜きに、ただ実行するのみだ。しかも彼らは、アメリカと違って空爆だけを用いるわけではない。空と陸から同時に攻撃を行うのである。

 もしイスラエルの首相が、「イランが核攻撃を行いそうだ」という報告を受けたら、即座に空と陸から攻撃を開始する。しかも、有人機とミサイルを使うのだ。ミサイルも、短距離ミサイルと長距離ミサイルの両方を使う。

 アメリカは、OPLANという韓国との合同演習で、北朝鮮の核施設への攻撃を想定した訓練を行っているが、いずれにせよ、北朝鮮が核弾頭をミサイルに搭載したら、その時点で完全に手遅れだ。

 ここで覚えておかなければならないのは、北朝鮮のミサイルは、侵入の警告があれば即座に発射されるシステム(LOW)になっているかもしれない、という点だ。このシステムでは、アメリカの航空機やミサイルが侵入してくれば、北朝鮮側の兵士が自動的に発射ボタンを押すことになる。

 LOWとは、レーダーからの警告に即座に反応することを意味する。彼らは、その警告を聞いた途端にボタンを押すのだ。そうなると、北朝鮮を攻撃すること自体に大きなリスクが伴う。

 もし北朝鮮を本気で攻撃するのであれば、空からだけでなく地上からの支援も必要だ。地上に要員を配置して、ミサイルをレーザーなどで誘導しなければならないからだ。つまり「現場の兵士」が必要となるのであり、ミサイルの着弾後も、攻撃目標が間違いなく破壊されたかを確認する必要がある。ミサイルが着弾しても、爆発による煙やホコリが落ち着くまで写真撮影は不可能であり、破壊評価が遅れるので、現場の人員が必要になるのだ。そのためには、北朝鮮内に何らかの方法で人員を予め侵入させておき、目標を把握しておかなければならない。

 韓国は、そうした能力を持っているとされるが、もしそうなら、作戦敢行の最も良いタイミングは、今夜、もしくは明晩ということになる。しかし、いくら能力があっても、それを使う「意志」がなければ、能力は何の意味もなさないのである。

韓国と北朝鮮との軍事境界線上にある板門店
「まあ大丈夫だろう」が戦争を招く

 日本国民も、一九四五年以来、他国や他民族が戦争の悲劇に見舞われてきたことを目撃してきたはずだ。街が燃やされ、多くの人間が殺され、子供も殺されたのだ。それらすべてのケースがなぜ発生したかと言えば、当事者たちが、「まあ大丈夫だろう」(it will be all right)と思ってしまったからだ。

 人間というのは、平時にあると、その状態がいつまでも続くと勘違いをする。これは無理もないことだが、だからこそ、戦争が発生する。なぜなら、彼らは、降伏もせず、敵を買収もせず、友好国への援助もせず、先制攻撃で敵の攻撃力を奪うこともしなかったからである。つまり、何もしなかったから戦争が起きたのだ。

 いま北朝鮮に関して生じているのは、まさにこのような状況だ。

 アメリカは、北朝鮮の核開発の阻止に関して何もしていない。アメリカだけではない。他の西側諸国も、中国も、ロシアも、何もしていない。

 さらに北朝鮮は、核兵器と弾道ミサイルを保有し、韓国を直接脅かしているのに、韓国自身も何もしていない。彼らは、北朝鮮に対して抑止さえもしていないのだ。

 韓国は、北朝鮮に何度も攻撃されているのに、反撃さえしていない。韓国の哨戒艦「天安」の沈没事件でも、誰もいない方向に砲撃しただけだ。

 要するに、韓国は、北朝鮮の脅威が現に存在するのに、何も行っていない。「降伏」も、「先制攻撃」も、「抑止」も、「防衛」もせず、「まあ大丈夫だろう」という態度なのだ。

 これは、雨が降ることが分かっているのに、「今は晴れているから」という理由だけで、傘を持たずに外出するようなものだ。ところが、このような態度が、結果的に戦争を引き起こしてきたのである。

エドワード・ルトワック(Edward N. Luttwak)

【私の論評】日本が戦争できる国に変貌することが、アジアに平和をもたらす(゚д゚)!

北朝鮮の特異点としてルトワック氏は、金正恩の酷い髪型と、北朝鮮の軍事関連の技術力は侮れないということをあげていました。

金正恩の髪型とは、無論髪型そのものを言っているのではなく、北朝鮮の体制や文化水準などのことを指しているのだと思います。

そうして、軍事技術に関しては、多くの日本人はどうせかつてのソ連や、今ロシア、それに日本などから盗んだものとして、あまりその技術水準に対して脅威を感じていないようでもあります。

しかし、他国の技術盗むということでは、中国をはじめとしてどのような国でも盗んでいるといえば盗んでいるはずです。別に北朝鮮だけが、技術を盗むことに長けているというわけではないです。にもかかわらず、北朝鮮が短期間に核やミサイルの開発に成功しているということは決して侮れないということです。

これに関しては、なぜ北朝鮮の軍事技術が優れているのかについて、このブログで解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
北朝鮮、特別重大報道で「人工衛星発射成功」を宣言―【私の論評】韓国にはるかに立ち遅れた北朝鮮が、水爆や長距離弾道ミサイルに挑戦できるのはなぜ?
 

この記事は昨年2月7日のものです。詳細は、この記事を読んでいただくものとして、以下には北朝鮮の軍事技術が侮れない理由を述べた部分を引用します。

北朝鮮のミサイル技術も、ソ連の流れを汲むものですが、すでに完成された技術をつかっており、精度を更新するための工夫はあっても、ほとんど進化していません。 
とはいいながら、自前で、車や航空機を製造することができるある程度技術のある国にとっては、そうなのですが、発展途上国などではなかなかそうはいきません。 
にも関わらず、北朝鮮が成功したしないは別にして、とにかく人工衛星発射に挑戦できるだけの技術基盤をどのようにして構築したのでしょうか。 
無論、旧ソ連の技術を転用してたりしているはずですが、それにしても、特に韓国と比較して、著しく技術面でも、経済面でも遅れてしまった北朝鮮でなぜそれが可能になったのでしょうか。 
それは、歴史を遡るとおのずと答えがでてきます。 
大東亜戦中・戦前はご存知のように、朝鮮半島は日本に統治されていました。そうして、実は、日本統治時代、電源開発や工業化において、南朝鮮よりも、北朝鮮の方がはるかに進んでいました。 
朝鮮と満洲の国境を流れる鴨緑江の水系には当時世界最大級の水豊ダムがあり、支流の赴戦江、長津江、虚川江にもダムがありました。
現代の水豊(スプン)ダム
このダムは太平洋戦争の泥沼化の中、1944年3月、水豊水力発電所(発電能力:60万kW)と共に竣工しました。この発電規模は当時の世界最大級であり1940年当時の日本国内の水力発電規模280万kWと比較してもその大きさは容易に比較できます。7基の発電機は各々約10万kWの発電能力を持っていたが、当時世界最大級の能力であり、製造を受注した東京芝浦電気(現在の東芝)は製造のために新工場を建設しました。 
1945年8月9日、ソ連軍(赤軍)侵攻により、7基の発電機のうち5基を略奪されました。略奪された発電機は、カザフスタン共和国、イリティッシュ川(エルティシ川)上流のダムで確認されています。 
朝鮮戦争中に雷撃を含む、アメリカ軍機の攻撃を受けたが、ダム構造が堅牢であったため決壊を免れました。ただしこの攻撃で北朝鮮では発電能力が激減し一時、広域にわたって停電しました。戦後に北朝鮮は発電能力を増強して復興しました。竣工から70年以上経過した現在もダム本体は大きな改修工事が行われず現役であり、現在も北朝鮮の重要なエネルギー源の一つです。なおダム湖は中朝国境となっていて、北側は中国領です。 
戦中には、この電力を使い、北部の日本海に面した興南という地に、日本窒素肥料(現チッソ)が大規模な化学工場を建設し、硫安などの肥料を量産していました。
最近の北朝鮮の旅客機の客室乗務員 スカートの丈が短くなった
戦後、日本から莫大な工業資産を引き継いだ北朝鮮の経済は長い間、農業国の韓国より優位に立っていました。1975(昭和40)年の一人当たりの国民所得は、韓国120ドルに対し、北朝鮮は190ドルでした。しかし、その10年後、韓国580ドル、北朝鮮450ドルと逆転しました。 
これは昭和40年の日韓国交正常化に伴う日本からの経済協力(無償3億ドル、有償2億ドル)を経済発展のために使った当時の朴正熈大統領をはじめとする韓国民の努力の成果でした。 
北朝鮮はすでに日本統治時代の資産を食いつぶし、現在のような状況に陥っています。しかし、日本から受け継いだ工業技術などは細々とでも、引き継いできたのでしょう。特に、民生分野ではかなり立ち遅れてしまいましたが、日本統治時代の資産の上に、旧ソ連などの技術などを継ぎ足し、継承しているのだと思います。

だからこそ、発展途上国であり、経済的にも恵まれず、人民が食うや食わずの状態でありながらも、人民を犠牲にしてでも、軍事技術などは何とか維持発展させ、核兵器や弾道弾などの技術に挑戦できるのです。

もし、北朝鮮が日本の統治を受けておらず、中国の属国のままであったとしたら、今頃、核兵器や大陸間弾道弾などとは無縁の国であったことでしょう。技術的な基盤がまったくないところに、ソ連などの技術を移転したとしても、自前で核兵器や、大陸間弾道ミサイルなど、なかなか開発できるものではありません。
これは、日本統治時代の朝鮮に対して日本がいかに貢献したかを物語っていると思います。日本統治時代に、日本は朝鮮の人民を自国民として扱い、自国民と同等の教育をしていたということの証であると思います。

そうして、現在の北朝鮮にあたるところには、工業化されていたことから、朝鮮人に対する産業教育なども十分に行われていたものと考えられます。統治時代の約30年間にわたり、北では具体的な産業教育が行われたものと思います。

そこで、産業の基本的なものの考え方や、心構えなども教えられたものと思います。一方、韓国においては統治時代にはそのようなことはなく、戦後しばらくしてから産業化し、見よう見まねで産業化が図られたため、そもそも基本的なものの考え方や、心構えなどがおろそかにされたのだと思います。

韓国では、これらが疎かにされ、付け焼き刃的に海外から技術を買ったり、技術者を雇ったりして最先端の技術を身につけたようにもみえるのですが、基本中の基本を疎かにしたため今日のようなチグハグな状況になってしまったものと思います。

その象徴的なことが、軍事産業で起こっています。たとえば、強襲揚陸艦の「独島」など象徴的です。以下に「独島」のポンコツぶりを示す記事のリンクを掲載します。
【世界を読む】韓国軍艦『独島艦』唖然の〝ポンコツぶり〟…自称「アジア最大」で機関砲は味方撃ち、火災・浸水・漂流で使い物にならず
韓国の強襲揚陸艦「独島」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、韓国がアジア最大の軽空母級輸送艦と自称する「独島(ドクト)艦」も救いようのないポンコツ品であることが、現地報道などを通じ次第に明らかになたことを報道しています。韓国が不法占拠する島根県竹島の韓国名を挑発的に命名したこの軍艦は、レーダーが役に立たず、機関砲を発射すれば甲板上の自軍ヘリに命中するという設計ミスが判明。あげくは平時の海上で浸水や火災を起こして漂流し、長期修理でドッグ入りしてしまいました。韓国内では、「パレード艦」「イベント艦」と揶揄され、就役から7年たっても全く戦力にならない“自慢の軍艦”の信じがたい実情を紹介しています。

この艦艇は、韓国が製造したものです。一国が製造した軍事用の艦艇や、戦車などには、その国の技術水準が如実に反映されるものです。

日本でもヘリコプター搭載型護衛艦として、このような艦艇を製造していますが、これほど酷い不手際があった試しはありません。

北朝鮮がもし、韓国と同じ程度の軍事予算を獲得することができれば、とてつもないことになるかもしれません。

しかし、日本とて韓国を笑ってばかりではいられません。今日、北朝鮮の核とミサイルは日本にとって最大の脅威となっています。北朝鮮に巨大な産業資産を設置し、産業教育などを施したことが回り回って、現在の脅威を生み出しているのです。

北朝鮮は、戦後しばらくは技術水準もかなり劣っているように見えたので、日本では多くの人が「まあ大丈夫だろう」だろうと考え、これに真摯に対応してこなかったことが、拉致問題を生み出しさらには、今日の脅威を生み出してしまったのです。

ルトワック氏は北朝鮮への日本の対応は、北朝鮮への降伏、北朝鮮への先制攻撃のいずれかしかないと主張しています。

無論、日本としては北朝鮮への降伏はあり得ないです。では、ルトワック氏の主張からすれば、北朝鮮への先制攻撃しかないということになります。

しかし私は、ルトワック氏は、日本が北朝鮮とすぐに戦争しろと単純に主張しているとは思いません。先制攻撃しかないなどといわれても、今の日本にはすぐに北朝鮮に先制攻撃できる力はありません。

そのようなことはわかっていて、このような主張をするわけですから、無論明日や明後日に、北朝鮮に先制攻撃しろと言っているわけではないと思います。そうではなくて、それに向けて今すぐに準備しろと主張しているのだと思います。

これに対処するために、日本は、北朝鮮に対して先制攻撃できるだけの軍事力とそれに対応できるように国内での法的裏付けをするべきであると主張しているのだと思います。

しかしそのためには、結局日本が「戦争できる国」に変貌するしかありません。こう言うと、リベラル・左派の人たちはとんでもないことだと大騒ぎするかもしれません。

しかし、彼らは、上でルトワック氏が主張しているような「平和は戦争につながる」という現実を見ていないだけです。

日本が北朝鮮に先制攻撃できるだけの準備を整え、いつでもそれを実行できるようにしておけば、そもそもこれから朝鮮半島で問題がおこることはなくなる可能性が高いです。

日本は、あまりに長い間平和を享受しすぎました。そのことが、今日の危機を招いているのです。そうして、日本が変わらなければこの状態は未来永劫にわたって継続します。

日本が戦争できる国に変貌することが、日本にそうしてアジア平和をもたらすのです。

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