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2017年10月15日日曜日

小池新党の掛け声倒れを報じる米国メディア―【私の論評】小池氏は都知事としての政治生命すら危うくなってきた(゚д゚)!

小池新党の掛け声倒れを報じる米国メディア

政策の中身は自民党と変わらず「改革とは言えない」

「ウォール・ストリート・ジャーナル」(10月9日付)の
小池氏へのインタビューを報道する同紙のサイトのタイトルと、写真

 日本の総選挙に米国の主要メディアも真剣な関心を向け始めた。

 関心の対象は、主に小池百合子都知事の「希望の党」の動きである。ただし報道のほとんどは、小池氏が唱える改革はそれほどの改革ではなく、都知事と国政野党代表を兼任して「二兎を追う」と不毛な結果に終わりかねないという慎重な見方も紹介している。

安倍氏への報復が小池氏の狙い?

「ニュヨーク・タイムズ」(10月8日付)は、「先駆者の東京都知事により日本は大きく揺れている」という見出しで、日本の総選挙の開始を報道した。小池知事が女性として国政を大きく動かすに至った側面に焦点を当て、小池氏の政治歴を前向きに描いていた。

 だが同記事は、小池氏が都知事の仕事を後回しにする形で国政に登場したことに対する東京都民の否定的な反応も取り上げていた。記事中では、墨田区在住の61歳の主婦による「二兎を追うものは一兎も得ず」「小池さんが東京都知事としてなにか重要なことを実行したならば国政進出も支持しただろうが、彼女は都知事としてまだなにもしていないと思う」というコメントを紹介している。

 さらに同記事は、小池氏の本来の政策が安全保障や外交面で安倍首相のそれとほとんど変わらず、憲法改正を求めるタカ派であるとも特徴づけていた。だから政策面では「希望の党」はそれほど大きな改革を求める政党ではないようだ、と総括している。

 「ワシントン・ポスト」は10月10日付の「人気のある東京都知事が総選挙に立候補しないことを決め、安倍首相に利益をもたらす」という見出しの記事で、小池氏の不出馬が「希望の党」の人気を大幅に落としたようだと報じた。「新党(希望の党)は指導者のいない政党と国民の目に映り、安倍首相を利する形になった」というのだ。

 また、小池氏の政策や姿勢については、日本政治研究の米国人学者トビアス・ハリス氏の見解として「小池氏が新党の指導者として総選挙に出馬しないことを決めた。このことは、今回の動きが政策面での真の改革を目指すことよりも、自民党内でこれまで安倍氏に冷淡にされたことへの報復に狙いがあることを印象づけた」という言葉を引用していた。

 さらに同記事は、小池氏が自民党の第1次安倍政権で防衛大臣のポストにあったことや、改革を唱えながらも「その政策は自民党の政策とほとんど相違がない」ことなどを伝えていた。

冷静に日本の総選挙を見つめる米国メディア

「ウォール・ストリート・ジャーナル」(10月9日付)は小池氏へのインタビューの内容を伝える記事を掲載した。

 記事の見出しは「日本の変革を有権者に求める女性に会う ただしその変革は大きくはない」である。記事によると、小池氏は男性が圧倒的に多数な日本の政界で長年活躍し、ついに日本の既製政治に挑戦する新政党を立ち上げたが、実は、それほど大きな改革は求めていないという。

 同記事は、「小池氏は変革の顔を見せながら、根本的な変革は実際には求めていない」「外交政策や安全保障政策では小池氏と自民党の間には違いはない」「北朝鮮対策や日米同盟の政策でも『希望の党』と自民党の間には大きな相違はない」といった記述も載せていた。

 また、同紙の記者が小池氏に「誰を『希望の党』の首相候補にするのか」と直接質問したところ、「総選挙の結果をみてから決める」という率直な答えが返ってきたことも明かしていた。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは10月12日付の記事でも日本の総選挙を取り上げ、「世論調査では安倍首相が総選挙での大勝利に向かっている」との見通しを伝えた。

 同記事は、共同通信、日本経済新聞、産経新聞、朝日新聞、読売新聞という日本の主要メディア5社の世論調査結果の内容を報じていた。これらの最新の世論調査によると、自民党は衆議院の過半数の議席を確実に獲得し、公明党と合わせると300議席を越えて、憲法改正に必要な3分の2以上の議席を獲得するかもしれないという。その結果は、小池氏の率いる「希望の党」にとって、たとえ野党第一党の議席を得たとしても「大きなトラブル」になるだろうと記している。

 こう見てくると、米国メディアが日本の今回の総選挙を見る目は意外と冷静である。小池都知事が巻き起こした激震のような動きも「それほどの改革ではない」という抑制された見方をしていることが分かる。

【私の論評】小池氏は都知事としての政治生命すら危うくなってきた(゚д゚)!

大手メディア各社の衆院選の序盤情勢調査が出そろいましたが、希望の党はいずれも60議席前後にとどまる情勢です。公認候補235人のうち実に4分の3が討ち死に必至です。

希望の党が、民進党と合流する、しかもその理由が政治資金欲しさであるとみられることから、まずは保守層から嫌われてしまいました。

さらに、小池代表が民進党のリベラル派を『排除いたします』と宣言した、映像が繰り返し流れて以降、風向きは完全に変わりました。


保守派、リベラルの両方の有権者が日ごとに小池氏に対する危機感をつのらせ、希望の党の党勢が急速に衰えました。

希望の小選挙区候補198人のうち優位に立つのは、笠浩史氏(神奈川9)、細野豪志氏(静岡5)、古川元久氏(愛知2)、古本伸一郎氏(愛知11)、玉木雄一郎氏(香川2)らにとどまります。小池代表のお膝元の東京でも苦戦を強いられ、松原仁氏(東京3)は劣勢です。小池代表の側近気取りの若狭勝氏(東京10)も落選の危機です。

比例区の東京ブロックの獲得議席も立憲民主党を下回る可能性があります。何しろ前回、前々回と2度の逆風をはね返して当選を重ねた馬淵澄夫氏(奈良1)や階猛氏(岩手1)、山井和則氏(京都6)など選挙に強い候補が軒並み、劣勢に立たされているのです。

13日の朝日新聞による調査では、(1)自民党と公明党を合わせた与党で300議席をうかがう勢い (2)希望の党は、東京で候補者を立てた23すべての選挙区で先行を許す――などの情勢になっています。

希望は小池頼りの選挙のはずが、アテ外れになってしまいました。小池嫌いの有権者が離れる逆効果で、公示前の57議席を維持できない確率も高いです。

希望に移った民進出身者からは、怨嗟の声が巻き起こり、すでに「小池おろし」の機運は高まっているようです。小川敏夫民進党参院会長は「民進党は解党しない。民進党を守り、再びリベラル勢力を結集する」と発言しました。


しかし、翌日には前原代表がその動きを批判し、当事者の小川会長も「意図せぬ解釈」と自身の発言を否定されたので多少は紛糾が収まったようですが、その懸念は今後もくすぶり続けるでしょう。ここ数年間の信念なき離合集散で「国会議員は再選するためなら何でもありの人たち」と国民に見透かされています。

それにしても、民進の参院内はもともと連合の組織内議員が多く、小池代表が提示する安保法制・改憲容認の「踏み絵」には猛反発しています。

地方組織は今なお『民進党』の看板を掲げ、選挙戦でフル回転しています。野田佳彦氏や岡田克也氏など無所属のベテラン組も、実は民進に党籍を残したままです。そこで選挙後に希望に移った民進出身者もまとめて再結集を目指す動きがあります。選挙が終われば、議席のない小池代表の影響力が弱まるのは確実です。

希望の党の候補者の擁立状況を見ると、自民党の石破茂元幹事長(鳥取1区)、野田聖子総務相(岐阜1区)の選挙区には対抗馬を立てていません。両氏は小池氏と親しいため、今後の連携の可能性を指摘する声もあります。

衆院選で与党が過半数を割った場合について希望の党に連携を呼び掛けることもあり得るたかもしれません。そうなると、小池氏がキャスティングボードを握るという状況もあり得たかもしれません。しかし、現在ではほんどあり得なくなってきました。

小池代表は、改憲発議に必要な3分の2議席のキャスティングボートを握れなければ、それこそ希望の党から「排除」されかねません。その前に希望の党から出ていくことも予想できます。

しかし、今後都政に専念しても前途多難でしょう。五輪の準備や築地市場移転など難問山積。豊洲市場の追加工事は2度も入札不調となり、来年秋までの移転予定が皮算用となりかねないです。都民ファーストも小池人気の陰りで分裂含みです。何より小池代表は都民の支持を大きく失ってしまいました。

JX通信が今月7、8日に実施した調査によると、都知事としての小池代表の支持率は37%で、不支持率は54%に達した。9月23、24日の調査では支持率は58%だっただけに、国政にうつつを抜かす小池代表に皆、そっぽを向き始めているようです。

さて、今後はどうなるのでしょうか。やはりブログ冒頭の米国メディアの見方のように、緑の党がこれから、どうなろうと、全く改革にはならないという見方が順当だと思います。

小池氏はどうなるのでしょうか。私自身は、以前このブログに掲載したように、小池知事の政治生命は都知事で終わりという状況に急速に近づきつつあると思います。その記事のリンクを以下に掲載します。
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東京味わいフェスタで試食する小池知事
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、小池氏が出馬するかどうかまだ未定の時期に、様々な分析から小池氏は出馬しないと断定しました。

さらに、小池氏の政治生命は今後国政においては尽きてしまっているので、東京都知事で終わることも掲載しました。

そうして、東京都知事を複数期にわたって、努める可能性も掲載しました。しかし、これもどうなるかわかりません。

小池氏は、今後速やかに国政から手を引き、都政に専念すべきです。専念するだけではなく、都知事として都民に認められる都政において、成果をあげて結果を出すべきです。そうでなければ、都知事としての政治生命も短命に終わってしまいます。

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2017年9月26日火曜日

民進は共産と共闘するのか 増税凍結提言で維新好機、準備不足が響く小池新党―【私の論評】消費増税凍結が争点となりえない裏事情(゚д゚)!

民進は共産と共闘するのか 増税凍結提言で維新好機、準備不足が響く小池新党

安倍総理が衆院解散の表明をしたことを伝える街頭テレビ
 先日の本コラムで書いたように、衆議院解散の大義は北朝鮮情勢への対処である。年末から来年以降、暴走する北朝鮮を止めるために、米国の軍事オプションが視野に入る。そのときは選挙どころでなくなる。北朝鮮に対処するためにどのような政権が望ましいのかを選ぶのが今回の衆院選である。北朝鮮に対しては圧力なのか、対話なのかを問う、といってもいい。

 争点は国際情勢なので、消費増税は争点化しにくい。また、自民党と民進党は増税で一致している。もちろん平時であれば消費増税なしで国債を発行するのが望ましいが、争点にできないなら、法律どおり消費増税となる。民主党政権時代に消費増税が法律に盛り込まれたのをはね返すことができなかったわけだ。経済政策の視点からはデフレに逆戻りする恐れがあるが、これが政治というものだともいえる。

 北朝鮮への対処について、民進党はまだ「対話」と言い続けるのだろうか。対話はここ20年間行ってきたが、北朝鮮はウソをつき続けて、核・ミサイルを発射してきたという事実からみると、お花畑議論に思えて仕方がない。

 といっても、いまさらリアルな議論はできそうにもない。民進党内の保守系といわれる細野豪志氏や長島昭久氏は、こうした民進党の非現実的な議論に嫌気が差したとみえて離党した。

 前原誠司代表は、外交安保では比較的リアリストであるが、それでも党内の多くの意見は相変わらず「お花畑」なので、北朝鮮問題では「対話せよ」となって、共産党と比較的意見が合いそうである。

 となると、前原氏が忌み嫌っていた共産党との共闘が、各地の選挙区でみられるかもしれない。その際、野党は「森友学園と加計学園(モリ・カケ)疑惑隠しで国会解散」と言うだろう。本コラムの読者であれば、「モリカケ」問題に首相の疑惑はなく、単なる言いがかりであったことは明らかだろう。北朝鮮問題に比べると「モリカケ」は比較にならないが、国民にはどう映るのだろうか。

 日本維新の会は、外交安保では常識的な保守政党なので、国内政治でまともな意見を言ういい機会になる。自民も民進も言えない消費増税凍結や規制改革で両党との差別化を図りながら、存在感を増す好機だろう。憲法改正論議では、維新が先導してきた教育無償化を実現するチャンスでもある。

 「小池新党」は、ちょっと苦しい。風を吹かせるにはいい機会なのだが、なにしろ手勢が少なく準備不足だ。小池百合子氏が都知事から国政に復帰すると宣言すれば別の展開になるかもしれないが、今のままでは、北朝鮮問題への対処が争点になると苦しいだろう。

 安倍晋三首相は、最も得意とする外交安保で衆院解散を仕掛けるわけだが、はたしてどの政党がその論戦についてゆけるだろうか。各政党もここで勝てば、安倍政権打倒の道が開けてくるので、大いに選挙戦で争ってもらいたい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】消費増税凍結が争点となりえない裏事情(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事て高橋洋一氏は「争点は、国際情勢なので、消費増税は争点化しにくい」と語っています。これは確かにそうだと思います。

毎日新聞には以下のような記事が掲載されています。
財政健全化先送り 消費税の使途変更方針表明へ

 安倍晋三首相は20日、2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化する政府の財政健全化目標を先送りする方針を固めた。25日にも開く予定の記者会見で表明する。首相は衆院解散にあわせ、消費税率10%への引き上げによる増収分のうち、国の借金返済に充てる分を教育無償化などに回す考えを示す方針。教育充実のための予算確保と財政再建のバランスをどうとるのかが衆院選の争点の一つになりそうだ。

19年10月に消費税率を予定通り8%から10%へ引き上げた場合、約5兆円の増収が見込まれている。政府は、そのうち約4兆円を国の借金の返済に、残り約1兆円を医療、介護、子育てなど社会保障の充実に充てる予定だった。増収分の多くを借金返済に充てるのは、財政の債務負担を減らし将来にわたり安定的に社会保障費を確保するのが目的だ。 
 首相は、借金返済に充てる約4兆円の一部を教育無償化に回すことを検討。借金返済分が減り歳出が拡大するため、「目標先送りは避けられない」(政府高官)と判断した模様だ。PB黒字化の新たな目標年次は、教育無償化などに割り当てる財源の規模を詰めたうえで検討する見通し。 
 PBは、政策経費を新たな借金に頼らずどれだけ賄えているかを示す指標。内閣府の試算では、予定通り消費税を増税し高い経済成長を果たしても、20年度は8・2兆円の赤字が残る見込み。すでに目標達成は厳しい状況で、政府・与党内には「教育無償化への使い道の変更は、目標先送りの格好の理由になる」(政府関係者)との声もある。だが、首相は経済政策「アベノミクス」で、経済成長と財政再建の両立を訴え国際的にも財政再建目標をアピールしてきただけに、財政再建を後回しにする政策の変更について説明が求められそうだ。
この記事を読んで、安倍総理は10%増税する予定だと大騒ぎしている人もいるかもしれませんが、私はそうだとは思えません。

あれだけ、渋々増税したくないにもかかわらず、財務省はもとより、大部分の政治家、マスコミのほとんど、そうして経済関係には識者といわれる人までが、こぞって「8%増税の影響が日本経済に与える影響は軽微」としたにも関わらず、実際に蓋を開けてみれば、とんでもないことになりました。安倍総理は、増税派に根強い不信感を抱いているのは間違いないです。

8%増税は誰がみても、大失敗でした。直近では、茂木経済再生相は昨日の記者会見で、足元の景気回復が、第2次安倍内閣が発足した12年12月に始まり、4年10か月(58か月)がたっていることから、「戦後2番目のいざなぎ景気(57か月)を超える長さになった可能性が高い」との認識を示しています。

しかしながら、現実にはこの景気の良さも上辺だけであって、現実は相当厳しい状況にあります。それに関しては以前このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本を完全雇用・適度なインフレに導く、極めて効果的な方法があった―【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事にも掲載した、上のグラフを見てもわかるように、消費増税以降、デフレータは下降し続け、今やマイナス領域を推移しています。

デフレーターとは、ある国(または地域)の名目GDPから実質GDPを算出するために用いられる物価指数です。名目GDPと実質GDPはそれぞれ物価変動の影響を排除していないGDPと排除したGDPであるため、その比にあたるGDPデフレーターは、物価変動の程度を表す物価指数であると解釈されます。従ってGDPデフレーターの増加率がプラスであればインフレーション、マイナスであればデフレーションとみなせます。

このデフレーター消費税増税後しばらくしてから下がり続け、2017年なってからはマイナスになっています。この状況では、とても経済がしっかり回復したとはいえません。

これほど、8%増税にはこれほどの悪影響があったのです。なぜこのようなことになるかといえば、財務省が緊縮財政を行ったからです。そもそも、8%増税そのものが緊縮財政であり、さらに財務省は緊縮を行っています。

茂木経済再生相が語るように、経済の回復がみられるわけですが、それにはそれなりの背景があります。

これについても、この記事に掲載しています。以下にその部分を引用します。
"
消費と投資の回復は一体なぜもたらされたのか──その根拠は、下記のグラフから読み取ることができます。


このグラフは、日本経済を構成する「四主体」の内の三つ、「民間」「政府」「海外」の「貯蓄態度」を示すもの(日銀資金循環統計から)。

この「貯蓄率」という数字は「貯蓄額の対GDP比」ですから、各主体が「ケチ」になって「金づかい」が悪くなって貯金ばかりするようになると「上がり」ます。一方、各主体が「豪気」になって「金づかい」が良く(=荒く)なると、は「下がり」ます。

ご覧のように「民間」の貯蓄率は、この1年ほど「下落」してきています。これは、民間企業が「ケチ」な態度から「豪気」な態度にシフトし始めた事を意味しています。

別の言い方をすると、「内部留保する傾向を弱めてきている」という事を意味します。つまり、民間企業が、儲けたオカネを貯金する(=内部留保する)のでなく、消費や投資に使うようになってきたということを示しているのです。これこそ、「今期の消費と投資の拡大」を意味する統計値です。

では、なぜ、民間が貯蓄率を減らし、投資や消費を拡大し始めたのでしょうか。それは、海外の貯蓄率が下がってきた」という点に求められます。

ご覧の様に、この3年ほど、海外の貯蓄率は下落し続けています。これはつまり、外国人が日本で使うカネの量が、過去三年の間、増えてきた事を意味します。これは要するに、(相対的に)「輸出が増えてきた」ということを反映したもの。実際、ここ最近景気の良い企業の多くが、「輸出企業」だったのです。

http://datazoo.jp/w/%E8%BC%B8%E5%87%BA/32830318

さて、これらのデータを全て踏まえると、我が国のここ最近の経済動向は、次のようなものだ、という「実態」が見えてきます。
①ここ2,3年間、外需が伸びてきた事を受けて、外需関連企業の収益が改善した、 
②その影響を受け、ここにきてようやく、民間企業がトータルとして「内部留保」を縮小させ、消費と投資を拡大しはじめる程に景気が改善してきた。 
③これを受けて、ようやく(物価の力強い上昇は達成されていないものの──)「名目GDP」も上向き始めた──。
つまり、今の「よい数字」を導いた基本的な原因は「外需」だったわけであり、それがここにきてようやく、民間企業の力強い成長に結びついてきた、と言う次第です。

さて、この実情を踏まえれば、確かに、(金融緩和→円安→外需拡大をもたらした)アベノミクスは着実に、一定成功していることが見て取れるのですが、それと同時に、未だ、我が国経済の「成長の兆し」はとても確実で安定的なものだとは言えない、という姿も同時にくっきりと見えてきます。なぜなら我が国の現時点の成長の兆しは、「外需頼み」のものに過ぎず、したがって、極めて不安定なものと言わざるを得ないからです。
"

今後、デフレーターからみて未だ日本経済がデフレから完全に脱却しきっていないことと、直近の消費と投資の回復が外需によるものであることを考えると、朝鮮半島情勢で何か世界経済が大きな影響を受けると、日本経済も悪化する懸念は拭いきれません。

そうして、このグラフで政府貯蓄率というところに注目して下さい。日本がこのような状況であれば、財務省としては、積極財政に踏み切るべきなのですが、財務省のやり方は、その反対です。

政府貯蓄率が、増税後も右肩上がりに上がっているではありませんか。これは、あり得ないことです。普通の国の財務省であれば、増税後積極財政を行うので、政府貯蓄率は減っていくはずです。8%増税した上、さらに緊縮財政をするのですから、GDPデフレータがマイナスに触れるのも当然のことです。

このような状況でも、財務省は様々な理由でせっせとお金をためこみ、日本経済の回復のための積極財政を行おうしません。

このような主張をすると国の借金返済は仕方ないではないかという人もいるかもしれません。

しかし、この国の借金というものがそもそもインチキと言わざるを得ません。

まずは、「日本国」と「日本政府」は違います。「日本国」と言えば、国民、企業、団体、政府などで、「日本国の借金」と言えば、これらの人たちが負っている借金の総額になります。また「日本政府」なら、これも当然ですが、政府の財政だけで、国民や企業は関係がありません。

また「政府」のなかには「地方自治体」も入っていますので、厳密に言えば「広義の政府」としてもよいと思います。

そうして、この「日本政府」の財産状態ですが、「持っているお金(資産)」が、直接的なお金などで500兆円、土地などの固定資産が580兆円で、およそ1080兆円の資産があります。森友学園報道のときに、繰り返しテレビで出てきた「国有地」などは政府が持っている資産のひとつです(「政府所有地」と言わずに伝統的に「国有地」と言っています)。

これに対して政府の借金は主として国債で1040兆円です。資産が1080兆円、借金が1040兆円ですから、わずかですが40兆円ほどのお金が余っていることになります。

政府の国債を持っているのはほとんどが銀行で、そのお金は国民の預金ですから、「国債を買ったのは国民」と言ってもよいでしょう。

現在の日本政府の財政状態は、家庭で言えば、銀行に預けている貯金や株が500万円、土地が580万円、合計すると家の資産は1080万円。借金は1040万円なので、「いざというときには土地でも売ればなんとかなる」という状態です。

それに日銀も政府の中に入れると、いわゆる政府の借金なるものはさらに減ることになります。これに関しては、説明していると長くなるので、【関連記事】のところに掲載しておきます。とにかく、国の借金1000兆円などと大騒ぎするレベルでないことだけは確かです。

財務省は、資産など無視して、負債の額のみを示して、これを「国の借金」としています。これは、明らかに虚偽です。

これについては、以下の動画をご覧いただけると、さらにご理解いただけるものと思います。


「税と社会保障の三党合意は財務省によるペテンだった」という驚くべき内容です。実際財務省は、税と社会保障の一体改革として、消費税を社会保障の財源とするということで、三党を騙して、ほとんど危機的とはいえない国の借金の返済のなどの名目で、資産を溜め込んでいるのです。無論溜め込んだ資産は、将来様々な天下り先を構築し、財務省退官後のゴージャスなハッピーライフを送るための準備資金ということでしょう。

このような事実を安倍総理は十分理解していて、借金返済に充てる約4兆円の一部を教育無償化に回すことを検討という形で、財務省の、この溜め込み姿勢を批判しているのです。

そうして、以上のようなことから、安倍総理が今回の選挙では、増税を争点としないということは、どういうことか、今一度考えてみると、以下のようなことがいえると思います。

来年生誕90周年を迎える池田大作氏
まずは、首相の今回の解散決断は、北朝鮮情勢の緊迫化、内閣支持率の好転、上の動画にも掲載されていたように、公明党の来年の池田大作氏生誕90周に対する配慮など様々な要因が重なったための急ごしらえのものであるということがあります。

そのため、政治的な駆け引きが必要な消費増税の凍結や再々々延期などは全く無理です。10%の消費増税は、2019年10月に実施されることはすでに法律で決まってることです。これを凍結ないし再々々延期するには法律を修正するか、新しい法律を国会で通す必要があります。

そのためには、国会で消費税増税に反対する議員が多数派になっていなければなりません。無論、その前に安倍総理は自民党内をまとめる必要があります。

そもそもそのための政治日程など、組まれていませんし、白紙の状態にあると見て間違いないです。ちなみに他の野党・新党に至っては、たとえ言ってみたとしてみても、それを争点にして自党に選挙戦を有利にするまでの準備も何もない状況です。

そうして、上の読売新聞の記事のプライマリーバランス2020年問題に関しては、安倍総理の単なる口約束のようなものであり、いつでも撤回できるものであり、これは安倍総理による消費税の分配という形を借りた財務省批判と見るのが妥当だと思います。一般の人はもとより、政治家ですらも気づかないでしょうが、財務省の高級官僚たちは気づいていると思います。

私達としては、政治家や一般の人々も含めて、いかに財務省が酷いことをしているのかを訴えていくことと、今回の選挙では、北朝鮮対応を第一に考えるにしても、その中でも経済に関してまともな認識を持っている議員を選ぶことに専念すべきと思います。

そうして、安倍総理は選挙が終われば、憲法改正は無論のこと、消費税増税阻止に向けて着々と準備を開始すると思います。これは、ポスト安倍の政権運営にも必須です。もし、増税されてしまえば、増税後にはまた日本はデフレスパイラルのどん底に沈み、そのときの政権がいずれの政権であれ、政権運営はかなり困難になるのは目に見えています。

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