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2017年9月26日火曜日

民進は共産と共闘するのか 増税凍結提言で維新好機、準備不足が響く小池新党―【私の論評】消費増税凍結が争点となりえない裏事情(゚д゚)!

民進は共産と共闘するのか 増税凍結提言で維新好機、準備不足が響く小池新党

安倍総理が衆院解散の表明をしたことを伝える街頭テレビ
 先日の本コラムで書いたように、衆議院解散の大義は北朝鮮情勢への対処である。年末から来年以降、暴走する北朝鮮を止めるために、米国の軍事オプションが視野に入る。そのときは選挙どころでなくなる。北朝鮮に対処するためにどのような政権が望ましいのかを選ぶのが今回の衆院選である。北朝鮮に対しては圧力なのか、対話なのかを問う、といってもいい。

 争点は国際情勢なので、消費増税は争点化しにくい。また、自民党と民進党は増税で一致している。もちろん平時であれば消費増税なしで国債を発行するのが望ましいが、争点にできないなら、法律どおり消費増税となる。民主党政権時代に消費増税が法律に盛り込まれたのをはね返すことができなかったわけだ。経済政策の視点からはデフレに逆戻りする恐れがあるが、これが政治というものだともいえる。

 北朝鮮への対処について、民進党はまだ「対話」と言い続けるのだろうか。対話はここ20年間行ってきたが、北朝鮮はウソをつき続けて、核・ミサイルを発射してきたという事実からみると、お花畑議論に思えて仕方がない。

 といっても、いまさらリアルな議論はできそうにもない。民進党内の保守系といわれる細野豪志氏や長島昭久氏は、こうした民進党の非現実的な議論に嫌気が差したとみえて離党した。

 前原誠司代表は、外交安保では比較的リアリストであるが、それでも党内の多くの意見は相変わらず「お花畑」なので、北朝鮮問題では「対話せよ」となって、共産党と比較的意見が合いそうである。

 となると、前原氏が忌み嫌っていた共産党との共闘が、各地の選挙区でみられるかもしれない。その際、野党は「森友学園と加計学園(モリ・カケ)疑惑隠しで国会解散」と言うだろう。本コラムの読者であれば、「モリカケ」問題に首相の疑惑はなく、単なる言いがかりであったことは明らかだろう。北朝鮮問題に比べると「モリカケ」は比較にならないが、国民にはどう映るのだろうか。

 日本維新の会は、外交安保では常識的な保守政党なので、国内政治でまともな意見を言ういい機会になる。自民も民進も言えない消費増税凍結や規制改革で両党との差別化を図りながら、存在感を増す好機だろう。憲法改正論議では、維新が先導してきた教育無償化を実現するチャンスでもある。

 「小池新党」は、ちょっと苦しい。風を吹かせるにはいい機会なのだが、なにしろ手勢が少なく準備不足だ。小池百合子氏が都知事から国政に復帰すると宣言すれば別の展開になるかもしれないが、今のままでは、北朝鮮問題への対処が争点になると苦しいだろう。

 安倍晋三首相は、最も得意とする外交安保で衆院解散を仕掛けるわけだが、はたしてどの政党がその論戦についてゆけるだろうか。各政党もここで勝てば、安倍政権打倒の道が開けてくるので、大いに選挙戦で争ってもらいたい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】消費増税凍結が争点となりえない裏事情(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事て高橋洋一氏は「争点は、国際情勢なので、消費増税は争点化しにくい」と語っています。これは確かにそうだと思います。

毎日新聞には以下のような記事が掲載されています。
財政健全化先送り 消費税の使途変更方針表明へ

 安倍晋三首相は20日、2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化する政府の財政健全化目標を先送りする方針を固めた。25日にも開く予定の記者会見で表明する。首相は衆院解散にあわせ、消費税率10%への引き上げによる増収分のうち、国の借金返済に充てる分を教育無償化などに回す考えを示す方針。教育充実のための予算確保と財政再建のバランスをどうとるのかが衆院選の争点の一つになりそうだ。

19年10月に消費税率を予定通り8%から10%へ引き上げた場合、約5兆円の増収が見込まれている。政府は、そのうち約4兆円を国の借金の返済に、残り約1兆円を医療、介護、子育てなど社会保障の充実に充てる予定だった。増収分の多くを借金返済に充てるのは、財政の債務負担を減らし将来にわたり安定的に社会保障費を確保するのが目的だ。 
 首相は、借金返済に充てる約4兆円の一部を教育無償化に回すことを検討。借金返済分が減り歳出が拡大するため、「目標先送りは避けられない」(政府高官)と判断した模様だ。PB黒字化の新たな目標年次は、教育無償化などに割り当てる財源の規模を詰めたうえで検討する見通し。 
 PBは、政策経費を新たな借金に頼らずどれだけ賄えているかを示す指標。内閣府の試算では、予定通り消費税を増税し高い経済成長を果たしても、20年度は8・2兆円の赤字が残る見込み。すでに目標達成は厳しい状況で、政府・与党内には「教育無償化への使い道の変更は、目標先送りの格好の理由になる」(政府関係者)との声もある。だが、首相は経済政策「アベノミクス」で、経済成長と財政再建の両立を訴え国際的にも財政再建目標をアピールしてきただけに、財政再建を後回しにする政策の変更について説明が求められそうだ。
この記事を読んで、安倍総理は10%増税する予定だと大騒ぎしている人もいるかもしれませんが、私はそうだとは思えません。

あれだけ、渋々増税したくないにもかかわらず、財務省はもとより、大部分の政治家、マスコミのほとんど、そうして経済関係には識者といわれる人までが、こぞって「8%増税の影響が日本経済に与える影響は軽微」としたにも関わらず、実際に蓋を開けてみれば、とんでもないことになりました。安倍総理は、増税派に根強い不信感を抱いているのは間違いないです。

8%増税は誰がみても、大失敗でした。直近では、茂木経済再生相は昨日の記者会見で、足元の景気回復が、第2次安倍内閣が発足した12年12月に始まり、4年10か月(58か月)がたっていることから、「戦後2番目のいざなぎ景気(57か月)を超える長さになった可能性が高い」との認識を示しています。

しかしながら、現実にはこの景気の良さも上辺だけであって、現実は相当厳しい状況にあります。それに関しては以前このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本を完全雇用・適度なインフレに導く、極めて効果的な方法があった―【私の論評】数字を見ればわかる、未だ緊縮財政で脆弱なわが国経済(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事にも掲載した、上のグラフを見てもわかるように、消費増税以降、デフレータは下降し続け、今やマイナス領域を推移しています。

デフレーターとは、ある国(または地域)の名目GDPから実質GDPを算出するために用いられる物価指数です。名目GDPと実質GDPはそれぞれ物価変動の影響を排除していないGDPと排除したGDPであるため、その比にあたるGDPデフレーターは、物価変動の程度を表す物価指数であると解釈されます。従ってGDPデフレーターの増加率がプラスであればインフレーション、マイナスであればデフレーションとみなせます。

このデフレーター消費税増税後しばらくしてから下がり続け、2017年なってからはマイナスになっています。この状況では、とても経済がしっかり回復したとはいえません。

これほど、8%増税にはこれほどの悪影響があったのです。なぜこのようなことになるかといえば、財務省が緊縮財政を行ったからです。そもそも、8%増税そのものが緊縮財政であり、さらに財務省は緊縮を行っています。

茂木経済再生相が語るように、経済の回復がみられるわけですが、それにはそれなりの背景があります。

これについても、この記事に掲載しています。以下にその部分を引用します。
"
消費と投資の回復は一体なぜもたらされたのか──その根拠は、下記のグラフから読み取ることができます。


このグラフは、日本経済を構成する「四主体」の内の三つ、「民間」「政府」「海外」の「貯蓄態度」を示すもの(日銀資金循環統計から)。

この「貯蓄率」という数字は「貯蓄額の対GDP比」ですから、各主体が「ケチ」になって「金づかい」が悪くなって貯金ばかりするようになると「上がり」ます。一方、各主体が「豪気」になって「金づかい」が良く(=荒く)なると、は「下がり」ます。

ご覧のように「民間」の貯蓄率は、この1年ほど「下落」してきています。これは、民間企業が「ケチ」な態度から「豪気」な態度にシフトし始めた事を意味しています。

別の言い方をすると、「内部留保する傾向を弱めてきている」という事を意味します。つまり、民間企業が、儲けたオカネを貯金する(=内部留保する)のでなく、消費や投資に使うようになってきたということを示しているのです。これこそ、「今期の消費と投資の拡大」を意味する統計値です。

では、なぜ、民間が貯蓄率を減らし、投資や消費を拡大し始めたのでしょうか。それは、海外の貯蓄率が下がってきた」という点に求められます。

ご覧の様に、この3年ほど、海外の貯蓄率は下落し続けています。これはつまり、外国人が日本で使うカネの量が、過去三年の間、増えてきた事を意味します。これは要するに、(相対的に)「輸出が増えてきた」ということを反映したもの。実際、ここ最近景気の良い企業の多くが、「輸出企業」だったのです。

http://datazoo.jp/w/%E8%BC%B8%E5%87%BA/32830318

さて、これらのデータを全て踏まえると、我が国のここ最近の経済動向は、次のようなものだ、という「実態」が見えてきます。
①ここ2,3年間、外需が伸びてきた事を受けて、外需関連企業の収益が改善した、 
②その影響を受け、ここにきてようやく、民間企業がトータルとして「内部留保」を縮小させ、消費と投資を拡大しはじめる程に景気が改善してきた。 
③これを受けて、ようやく(物価の力強い上昇は達成されていないものの──)「名目GDP」も上向き始めた──。
つまり、今の「よい数字」を導いた基本的な原因は「外需」だったわけであり、それがここにきてようやく、民間企業の力強い成長に結びついてきた、と言う次第です。

さて、この実情を踏まえれば、確かに、(金融緩和→円安→外需拡大をもたらした)アベノミクスは着実に、一定成功していることが見て取れるのですが、それと同時に、未だ、我が国経済の「成長の兆し」はとても確実で安定的なものだとは言えない、という姿も同時にくっきりと見えてきます。なぜなら我が国の現時点の成長の兆しは、「外需頼み」のものに過ぎず、したがって、極めて不安定なものと言わざるを得ないからです。
"

今後、デフレーターからみて未だ日本経済がデフレから完全に脱却しきっていないことと、直近の消費と投資の回復が外需によるものであることを考えると、朝鮮半島情勢で何か世界経済が大きな影響を受けると、日本経済も悪化する懸念は拭いきれません。

そうして、このグラフで政府貯蓄率というところに注目して下さい。日本がこのような状況であれば、財務省としては、積極財政に踏み切るべきなのですが、財務省のやり方は、その反対です。

政府貯蓄率が、増税後も右肩上がりに上がっているではありませんか。これは、あり得ないことです。普通の国の財務省であれば、増税後積極財政を行うので、政府貯蓄率は減っていくはずです。8%増税した上、さらに緊縮財政をするのですから、GDPデフレータがマイナスに触れるのも当然のことです。

このような状況でも、財務省は様々な理由でせっせとお金をためこみ、日本経済の回復のための積極財政を行おうしません。

このような主張をすると国の借金返済は仕方ないではないかという人もいるかもしれません。

しかし、この国の借金というものがそもそもインチキと言わざるを得ません。

まずは、「日本国」と「日本政府」は違います。「日本国」と言えば、国民、企業、団体、政府などで、「日本国の借金」と言えば、これらの人たちが負っている借金の総額になります。また「日本政府」なら、これも当然ですが、政府の財政だけで、国民や企業は関係がありません。

また「政府」のなかには「地方自治体」も入っていますので、厳密に言えば「広義の政府」としてもよいと思います。

そうして、この「日本政府」の財産状態ですが、「持っているお金(資産)」が、直接的なお金などで500兆円、土地などの固定資産が580兆円で、およそ1080兆円の資産があります。森友学園報道のときに、繰り返しテレビで出てきた「国有地」などは政府が持っている資産のひとつです(「政府所有地」と言わずに伝統的に「国有地」と言っています)。

これに対して政府の借金は主として国債で1040兆円です。資産が1080兆円、借金が1040兆円ですから、わずかですが40兆円ほどのお金が余っていることになります。

政府の国債を持っているのはほとんどが銀行で、そのお金は国民の預金ですから、「国債を買ったのは国民」と言ってもよいでしょう。

現在の日本政府の財政状態は、家庭で言えば、銀行に預けている貯金や株が500万円、土地が580万円、合計すると家の資産は1080万円。借金は1040万円なので、「いざというときには土地でも売ればなんとかなる」という状態です。

それに日銀も政府の中に入れると、いわゆる政府の借金なるものはさらに減ることになります。これに関しては、説明していると長くなるので、【関連記事】のところに掲載しておきます。とにかく、国の借金1000兆円などと大騒ぎするレベルでないことだけは確かです。

財務省は、資産など無視して、負債の額のみを示して、これを「国の借金」としています。これは、明らかに虚偽です。

これについては、以下の動画をご覧いただけると、さらにご理解いただけるものと思います。


「税と社会保障の三党合意は財務省によるペテンだった」という驚くべき内容です。実際財務省は、税と社会保障の一体改革として、消費税を社会保障の財源とするということで、三党を騙して、ほとんど危機的とはいえない国の借金の返済のなどの名目で、資産を溜め込んでいるのです。無論溜め込んだ資産は、将来様々な天下り先を構築し、財務省退官後のゴージャスなハッピーライフを送るための準備資金ということでしょう。

このような事実を安倍総理は十分理解していて、借金返済に充てる約4兆円の一部を教育無償化に回すことを検討という形で、財務省の、この溜め込み姿勢を批判しているのです。

そうして、以上のようなことから、安倍総理が今回の選挙では、増税を争点としないということは、どういうことか、今一度考えてみると、以下のようなことがいえると思います。

来年生誕90周年を迎える池田大作氏
まずは、首相の今回の解散決断は、北朝鮮情勢の緊迫化、内閣支持率の好転、上の動画にも掲載されていたように、公明党の来年の池田大作氏生誕90周に対する配慮など様々な要因が重なったための急ごしらえのものであるということがあります。

そのため、政治的な駆け引きが必要な消費増税の凍結や再々々延期などは全く無理です。10%の消費増税は、2019年10月に実施されることはすでに法律で決まってることです。これを凍結ないし再々々延期するには法律を修正するか、新しい法律を国会で通す必要があります。

そのためには、国会で消費税増税に反対する議員が多数派になっていなければなりません。無論、その前に安倍総理は自民党内をまとめる必要があります。

そもそもそのための政治日程など、組まれていませんし、白紙の状態にあると見て間違いないです。ちなみに他の野党・新党に至っては、たとえ言ってみたとしてみても、それを争点にして自党に選挙戦を有利にするまでの準備も何もない状況です。

そうして、上の読売新聞の記事のプライマリーバランス2020年問題に関しては、安倍総理の単なる口約束のようなものであり、いつでも撤回できるものであり、これは安倍総理による消費税の分配という形を借りた財務省批判と見るのが妥当だと思います。一般の人はもとより、政治家ですらも気づかないでしょうが、財務省の高級官僚たちは気づいていると思います。

私達としては、政治家や一般の人々も含めて、いかに財務省が酷いことをしているのかを訴えていくことと、今回の選挙では、北朝鮮対応を第一に考えるにしても、その中でも経済に関してまともな認識を持っている議員を選ぶことに専念すべきと思います。

そうして、安倍総理は選挙が終われば、憲法改正は無論のこと、消費税増税阻止に向けて着々と準備を開始すると思います。これは、ポスト安倍の政権運営にも必須です。もし、増税されてしまえば、増税後にはまた日本はデフレスパイラルのどん底に沈み、そのときの政権がいずれの政権であれ、政権運営はかなり困難になるのは目に見えています。

【関連記事】

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↑この記事で、統合政府ベースでの政府の負債について掲載しました。統合政府ベースではすでに、政府の借金はマイナスになっている可能性すらあります。

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2016年6月30日木曜日

英EU離脱は自民に追い風 共産「暴言」は野党に逆風 浅川博忠氏参院選分析―【私の論評】なぜ民進は経済・安保で滅びの道を選ぶのか(゚д゚)!

英EU離脱は自民に追い風 共産「暴言」は野党に逆風 浅川博忠氏参院選分析

英国のEU離脱は参院選では与党に有利に・・・・
与野党激突の参院選(7月10日投開票)が過熱するなか、英国の欧州連合(EU)離脱という衝撃的ニュースが飛び込んできた。日本経済へのダメージが懸念されているが、選挙戦にはどんな影響を与えるのか。政治評論家の浅川博忠氏が政党別の獲得議席を分析・予測したところ、野党によるアベノミクス批判は不発ぎみで、逆に有権者は安定した安倍晋三政権の継続を望み、自民党がさらに議席を伸ばすという結果が出た。共産党幹部の「暴言」も与党優位に拍車をかけているという。

英国のEU離脱問題が、与党の優位を決定付けそうだ。浅川氏が最新のデータをもとに分析したところ、自民党に追い風が吹いており、改選議席(121)の過半数を確保することが明らかになった。

注目の獲得議席予測は別表の通りだ。浅川氏は昨年12月、今年2月、5月、公示日の6月22日にも予測を行っている。

 自民党は、浅川氏が22日に予測した60議席から2議席増やし、62議席に達した。一方、民進党が27議席、共産党が11議席となり、それぞれ公示時点よりも1議席ずつ減らした。

なぜ、こういう結果になるのか。

浅川氏は「英国のEU離脱を受けて、野党はここぞとばかりに、『為替や株価に依存した経済(政策)ではダメだ』(民進党の枝野幸男幹事長)、『アベノミクスは破綻した』(共産党の小池晃書記局長)などと批判しているが、有権者には、ほとんど響いていない。それは、野党にアベノミクスに代わる経済政策がないことを知っているからだ。むしろ、こういう不安定な国際情勢だからこそ、安定した政権与党の継続を望んでいる。野党の政権批判は空回り気味で、与党が不利になっているという状況ではない」と指摘した。

選挙中とはいえ、安倍政権の反応の早さも功を奏したようだ。

24日昼ごろ、英国のEU離脱が明らかになり、株価は大きく下落した。政府は同日午後、関係閣僚会議を開き、「必要なのは国際協調だ」(安倍首相)との姿勢を示した。自民党も同日夜、稲田朋美政調会長を本部長として緊急特別本部を設置した。緊急時の初動対応としては“基本動作”といえそうだ。

経済対策にも気を配っている。

安倍首相は前出の関係閣僚会議で、「世界経済の成長と金融市場の安定に万全を期す」といい、大型の2016年度第2次補正予算案を成立させる方針を示した。さらに、首相に近い下村博文総裁特別補佐が27日夜のテレビ番組で、注目の規模について「10兆円超」と語ったのだ。

円高の加速で日本の製造業が2兆円の減益に陥るとの予想が流れるなか、不安を最小限に抑えようと努力していることが伝わってくる。

野党の「敵失・自爆」も大きい。

共産党の藤野保史政策委員長が26日のNHK番組で、「防衛費=人を殺すための予算」と発言したことも、与党の追い風となっている。藤野氏は28日夜、発言の誤りを認めて引責辞任した。



浅川氏は「東日本大震災以降、国民の自衛隊への信頼は確実に高まっている。熊本地震で、救命・救出活動に当たった記憶も新しい。こうしたなかで、藤野氏の発言は決定的だ。あの一言で『とてもじゃないが、共産党を勝たせるわけにいかない』という空気が広がった。共産党と連携している民進党にも大ダメージだろう」と分析した。

藤野発言で、共産党が綱領に「日米安保の廃棄」「自衛隊の解消」を堂々と掲げていることも、改めて注目された。

民進、共産両党の低迷は、複数区の情勢に現れ始めている。一部の選挙区で、自民党が2議席を確保し、民進党と共産党が共倒れになる可能性が出てきたのだ。

「自民党は複数区での2人擁立を積極的に進めてきたが、党内には当初、共倒れを懸念する声も多かった。だが、情勢は完全に変わった。一部の選挙区を除けば、複数区での2議席確保が見えつつある」(浅川氏)

民進党の岡田克也代表の発言も、野党の勢いにブレーキをかけたという。岡田氏は26日、地元・三重県で記者団に「三重で(民進党候補を)落とすようでは代表の資格はない。次の代表選に出ない」と発言したのだ。結果が出る前に「敗北」に言及したことになる。



浅川氏は「本人は陣営引き締めのために言ったのかもしれないが、選挙戦の最中に、敗北を前提とした自身の進退に触れるとは、政治センスが疑われる。加えて、党内では『地元さえ勝てばいいのか』『地元で勝てば次の代表選に出るのか』と受け止められた向きがある」と指摘した。

投開票まで2週間を切ったが、有権者はどう最終判断するのか。

【私の論評】なぜ民進は経済・安保で滅びの道を選ぶのか(゚д゚)!

終焉の画家「ズジスワフ・ベクシンスキー」による絵画

民進党の支持が高まらない大きな要因のひとつは、経済政策が定まらない事です。

民主党(現民進党)は、一昨年の総選挙以来、安倍晋三内閣が推進する「アベノミクス」を真正面から批判するスタンスを取り続けていますが、馬鹿の一つ覚えのように、もっぱらアベノミクスの成果を否定するばかりで、自ら建設的な対案を出すことができていません。そんな「経済無策」に国民の多くがそっぽを向いているのです。

各種の世論調査を見るまでもなく、国民の関心事は「経済」です。日々の暮らしやビジネスに直結する足下の景気への対策から、将来の生活を左右する年金・医療・介護などの社会保障政策まで、政治への期待は大きいです。

昨年安全保障関連法を成立させた安倍首相が、間髪いれずに「経済最優先」を繰り返し、軸足を経済に再び戻す姿勢を見せたのが、それを端的に表しています。経済こそが国民の最大の関心事であることを安倍首相は理解しています。

ところが、民主党はアベノミクスをただただ批判する姿勢を変えていません。

民進党(当時民主党)は昨年安倍首相が、「就任以来、雇用を100万人増やした」と言えば、「増えたのは非正規雇用ばかりで格差は広がっている」といった具合に、相手の足を引っ張ることに専念しています。この専念ぶりは、今年も変わらず、批判のための批判を繰り返しています。そうして、格差拡大を強調し、再分配を強化すべきだという社会主義型の経済政策に大きく傾斜しています。

こうした民進党の唱える分配中心の経済政策は、もともと社民党や共産党の主張と重なります。アベノミクスを当初から徹底的に批判してきたのも両党です。法人減税で経済活動を活発化させることで、経済を成長させ、国民の所得を増やし、最終的には税収も増やそうというアベノミクス的発想には、共産党などは強く反対してきました。

内部留保を溜め込む大企業にもっと課税をして、それを原資に弱者に再配分すべきだ、というのが左派政党の典型的な主張です。

ところが、一昨年末の総選挙以降、民進党(当時民主党)は明らかにそうした分配型の政策志向を強めていました。そうなると、経済政策で見る限り、民進党と共産党に「違い」が見えなくなってしまいます。

もともと民主党議員の中には、自民党以上に経済改革志向の強い金子洋一参議院議員のような人たちがいます。たとえば、言うならば、アベノミクスよりもさらに先を行く議員です。しかし、民進党の幹部はこの人たちの主張に耳を傾けることはありません。

金子洋一参議院議員
民主党が政権を奪取できたのは、自民党の既得権を温存する政策を打ち壊し、改革を進めることを標榜したからだったはずです。政権獲得前の民主党政調では、公共事業の削減や公務員制度改革、郵政民営化の促進といった自民党ではできないと思われていた政策を掲げました。

こうした改革的な政策が国民の民主党への支持を呼び起こし、政権奪取へとつながったのです。

しかしながら、結局経済対策が全くうまくいかず、自民党政権の頃と大差がないどころか、金融政策や財政政策をおろそかにしたため、さらに悪化していきました。特に、財政政策においては菅政権のときに、自民党と結託して、増税を自民・公明・民主の三党合意で増税することを決めてしまいました。

元々民主党は、政権交代する前には、民主党が政権にあるうちは、増税はしないことを公約としていました。

ところが政権を取ると、掲げた改革は大きく後退し、増税を決めたり、自民党政権に引き続き、金融政策は疎かにしたため、経済はデフレスパイラのどん底に落ち込みとんでもないことになりました。

そうして自民党に「バラマキ」と批判されることになった再配分強化の政策ばかりが目立つようになりました。労働組合を有力な支持母体に持つという党組織の限界とも言えましたが、結局急速に国民の支持を失うことになりました。

民主党の金子洋一参院議員は昨年の4月にツイッターで、「日経平均、続伸し15年ぶり2万円乗せ。わが国経済のためにまずは喜ばしいこと。やはり債券を主に買い入れ、株式を含む実物資産に民間資金をシフトさせる日銀による金融緩和の力は大きかった。われわれが提言したとおり、民主党政権でこれをやっていれば、経済の回復はより早かった。残念だ」とつぶやいた。これには、私も全く同感です。

そもそも、デフレなどの不況のときには、大規模な金融緩和をするという政策は、EUなどでは労働組合などの左派が、労働者の雇用を改善する手段として、推進することを望む政策です。実際、金融政策と雇用は、フィリップス曲線として強い相関関係にあることが経験則として知られています。

以下に有効求人倍率の推移のグラフを掲載します。


このグラフをみれば、有効求人倍率が1以上の都道府県の数が過去最高になっていることがわかります。これは、アベノミクスの金融緩和によるもの以外にはその原因を見出すことはできません。

さらに、日本でも当然のことながら、短期的フィリップス曲線は、理論的にも実証的にも成立しています。それは、以下のグラフをご覧いただければ、一目瞭然です。


本来ならば、このような政策野党の民進党などが推進すべき政策です。しかし、今の民進党は、アベノミクス批判ということで、結局金融緩和政策まで否定しています。本来は、金融緩和政策を強力に推進するように主張すべきです。つい先日、日銀が追加金融緩和を見送った際には、猛烈に批判すべきでした。

さらに、増税に関しては当然のことながら反対すべきですが、民主党が政権交代をする前の公約を前面に打ち出し、もともとの党の精神に戻ることを宣言して、8%増税を撤回することを主張すべきでした。そうして、減税して消費税を5%にすることを主張すべきでした。

これは、元維新の党の共同代表であった、江田憲司氏もその著書『財務省のマインドコントロール』で増税する必要性がないことを主張していたので、民進党になってからも、これを主張し、減税論を主張すべきでした。

8%増税など、安倍政権の完璧な大失敗であり、本来ならば、民進党にとって与党攻撃のための良い材料であるにもかかわらず、岡田代表は奇妙なレトリックでこれを不意にしてしまいました。結局岡田代表は、消費税は10%に増税すべきであって、安倍総理は上げられる経済状況をつくることができなかったとして、批判しています。これでは、まるで敵に塩を送るようなものです。


経済政策については、民進党だけではなく、共産も社民党も似たようなものであり、結局頓珍漢で奇妙奇天烈であり、そもそもマクロ経済的には雇用が良ければ、他が駄目でも良しとするとか、他が良くても雇用が駄目であれば、良くないと判断するべきであるという基本的な観念がないのです。これでは英国EU離脱や、中国経済の低迷、新興資源国の低迷、アメリカの利下げなどの問題による経済の悪化などにとても対処できないと国民に判断されてしまいます。

終焉の画家「ズジスワフ・ベクシンスキー」による絵画

次に、日米同盟を強化する安保法制をめぐっては、予想通り極左集団が徴兵制だの戦争だの、法律が目指す方向とは真逆どころか、全く関連のない妄想をふりまいて国民を不安に陥れました。そうして、民主党まで徴兵制になるなどという奇妙な論理を主張していました。

民主党は、元々は社会党や共産党のような極左集団ではない、反自民の受け皿として期待されていたはずです。特に、共産主義イデオロギーとは無縁で、利権に囚われない都市のリベラルな有権者を支持層としていたはずでしたが、政権奪取後に極左勢力が支配的となり、国民の信頼を失なってしまいました。

それでも、民主党には共産党など極左集団とは違う現実主義的な面があると期待していた国民も多数いたと思います。しかし、昨年の安保法制審議の時には、民主党を含めた野党は、まるで明日にでも戦争が始まるかのような扇動を始め、現政権がすぐにでも自衛隊をどこかに送り込もうとしているかのような宣伝を繰り返していました。さらに、今回の参院選では民進党は野党共闘として、共産党と手をを結びました。

民進党は1人区で日本共産党などと野党統一候補を擁立した
安保法案反対派の主張は、包丁を購入した主婦を人殺し扱いするようなものであり、ジムで鍛える男性を強姦魔として邪推するようなものであり、消防車の放水訓練をデモ弾圧の準備と非難するようなものでした。地域の平和と安定のための日米関係の強化が、ある特定の人達には脅威と映ってしまうのでしょうが、真の目的には何も言及せず、ひたすらあり得ない事態の展開の妄想に浸った野党の主張と、マスメディアの報道によって、多くの国民が幻惑されました。

法案を政争の具に利用するのは良くあることですが、昨年の民主党の扇動はあまりに酷すぎでした。左翼的でありながら現実主義的であるというイメージもあった民主党が戦争だ戦争だと囃し立てたので、もともと反日指向のあるメディアとあわせ、国民が極左の妄想に毒される結果になってしまいまいました。

安保法制での自民党のつまづきは、予想されていたとは言え、あれほど酷いものとは思いませんでした。反対派の主張は「戦争法案」なる存在しない法案への妄想に基づく反対であり、少なくとも民主党くらいはある程度理性を働かせて行動するものと思っていましたのですが、そうではありませんでした。

あのすさまじい、騒ぎで昨年は幻惑されていた多くの国民も、あれからしばらくたって冷静さを取り戻したと思います。

そもそも、日本には、元々北朝鮮による拉致問題がまだ解決されていないとか、核開発や最近のミサイルの連発による脅威、尖閣諸島などに対する中国の脅威がありました。それに南シナ海の中国の脅威もあります。

護憲派は、憲法九条があったから、日本は平和を維持してこれたなどと言いますが、拉致問題を考えると日本が平和であったなどとはとても言えるものではありません。


昨年民主党などの野党は、「戦争法案」として安保法案が成立すれば、すぐにも日本が侵略戦争を開始するかのように煽りました。

しかし、現実には、日本が戦争をするなどということはあり得ず、戦争への脅威があるとすれば、中国や北朝鮮の危機です。

そうして、最近の中国軍の尖閣諸島への接続水域への艦艇の侵入や、つい先日もあった、東シナ海での自衛隊機に対する中国機の挑発などがあり、これは当然のことながら、参院選での重大争点となると思います。

そんなときに、民進党は未だに、「戦争法案」「憲法違反」を繰り返すばかりで、具体的な安全保障政策を打ち出そうとしません。そうして、日米安全保障条約の廃棄と自衛隊解消を唱える政党である共産党と野党共闘として1人区で日本共産党などと野党統一候補を擁立しました。

以上、経済と安全保障という2つの大きな政策に関して、何ら対案を出すことなく、ただただ安倍政権を批判するだけの民進党は、今回の参院選で大敗する以外道はありません。

私としては、本当は民進党は野党として十分働いてもらったほうが、自民党も驕り高ぶることなく、良い方向に動いていくと思います。

しかし、今のままの民進党ではとてもそうした役割を期待することはできません。いっそのこと、今回の参院選では上の記事で浅川氏が予想するよりも、酷い大惨敗を喫して、自分たちのやり方は何もかも間違いだったと納得して、新たな方向性を模索したほうが、結果として良いのではないかとさえ思っています。

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2016年5月31日火曜日

安倍内閣不信任決議案を否決―【私の論評】民進、共産、社民、生活の野党4党が理不尽であるこれだけの理由(゚д゚)!

安倍内閣不信任決議案を否決

衆院本会議で内閣不信任決議案が否決された=31日午後、国会
衆院は31日の本会議で、民進、共産、社民、生活の野党4党が共同提出した安倍晋三内閣に対する不信任決議案を、自民、公明両党とおおさか維新の会などの反対多数で否決した。賛成は124票、反対は345票だった。

これに先立ち、民進党の岡田克也代表は不信任案の趣旨弁明で「アベノミクスの失敗を正直に認めて、公約違反を国民に謝罪し、即刻退陣すべきだ」と批判した。同時に「重大な経済失政により消費税を引き上げられる状況をつくり出せなかった」と強調。与党が成立を強行した安全保障関連法に関し「憲法違反であることは明らかだ。憲法の平和主義を捨て去り、限定のない集団的自衛権の行使に道を開く」と反対姿勢を鮮明にした。

これに対し、自民党の松本純衆院議員は「アベノミクスにより雇用や所得環境は順調に改善を続け、日本経済は着実に回復に向かっている」と反論。不信任案を提出した野党を「党利党略、パフォーマンス政治そのものだ」と批判した。

【私の論評】民進、共産、社民、生活の野党4党が理不尽であるこれだけの理由(゚д゚)!

アベノミクスにより雇用や所得環境は順調に良くなっているのは事実です。以下にその証左となるデータを掲載します。

総務省の「労働力調査(基本集計)4月分(速報)」によれば、就業者数は6396万人で前年同月比54万人増、17か月連続の増加。雇用者数は5679万人で前年同月比で101万人増となりました。以下に、グラフを掲載します。


これは、直近の安倍内閣の期間だけですから、これだけではアベノミクスにおける金融政策が功を奏して、雇用状況が良くなったかどうかは認識しずらいです。

他のソースからも、金融政策が有効でアベノミクスは失敗ではなかった証左をあげておきます。

有効求人倍率、は4月は1.34倍に上昇し、24年5カ月ぶりの高水準になっています。

厚生労働省が31日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.04ポイント上昇の1.34倍でした。上昇は2カ月連続。QUICKがまとめた市場予想(1.30倍)を上回り、1991年11月(1.34倍)以来、24年5カ月ぶりの高水準となりました。企業の求人数が増える一方、求職者数が減ったことが求人倍率の上昇につながりました。訪日外国人客の恩恵を受ける宿泊・飲食サービス業や卸売業・小売業などの分野で堅調な求人が続きました。

雇用の先行指標とされる新規求人倍率は0.16ポイント上昇の2.06倍でした。上昇は3カ月ぶり。正社員の有効求人倍率は0.03ポイント上昇の0.85倍と、04年11月の調査開始以来で過去最高となりました。都道府県別の有効求人倍率は東京都が0.07ポイント上昇の2.02倍と、1974年6月以来の高水準。就業地別の有効求人倍率は05年2月の統計開始以来、初めて全都道府県で1倍を上回りました。


まだ続きがあります。以下は先日このブログに掲載したグラフですが、再掲します。


中には、まだ「実質賃金がー」と叫ぶ方もいるようですが、これははっきり間違いです。これは最初からわかっていることですが、雇用情勢が急激に改善しているときには、実質賃金は下がります。

このようなことは常識で考えてもわかります。今季高卒や大卒の採用が大幅に改善しているわけですから、大企業などで高卒や大卒を大量にある企業が雇用したとします。従来よりも、高卒・大卒の若くて、賃金が低い人の構成比率が増えるわけですから、会社全体の平均賃金は下がります。国全体でも同じことです。

さらに、実質賃金は、金融緩和で失業率が構造的失業率まで下がらないと上がらないものですし、構造的失業率まで下がれば上がるものです。

ちなみに、構造的失業等の説明を以下にしておきます。

総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。 
  • 需要不足失業―景気後退期に労働需要(雇用の受け皿)が減少することにより生じる失業  
  • 構造的失業―企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる失業  
  • 摩擦的失業―企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることによる失業(一時的に発生する失業)
日本では、なぜか失業対策というと、すべて厚生労働省の管轄ということになっていますが、その考えは根本的に間違いです。

上記3つの失業のうち、構造的失業と摩擦的失業は、無論厚生労働省の管轄ですが、需要不足失業への対応の管轄は中央銀行、日本では日銀の管轄です。

しかし、このことが全く理解されていないので、数年前までは、雇用情勢がいつまでたっても改善されませんでした。

日銀の金融引き締めによる、需要不足失業が増えているときに、厚生労働省が構造的失業や摩擦的失業の対策を一生懸命実施したとしても、そもそも、雇用の受け皿が不足しているわけですから、何の対策にもならないわけです。

5年ほど前に、厚生労働省関連の役所の女性方が、自分の上司の課長さんが「自分は雇用ってよくわからないんだ」という話しているのを聞いてショックを受けたという話がサイトに掲載されていたことがありました。この課長さんの頭の中にも、雇用の受け皿は日銀の金融政策によるものであることがインプットされていなかったので、このような発言をしたものと思います。

雇用の受け皿が少ないときにジョブ・フェアを実施してもぼとんど効果はない
これは、昔から知られていてマクロ経済では当然のこととされていることなのですが、日本やアメリカのように人口が億単位の国では、日銀がインフレ率を数%あげると、その他は一切何もしなくても、たちどころに雇用が数百万人分創出されます。

逆に日銀かインフレ率を数%下げると、その他は一切何をしなくても、たちどころに雇用が数百万人分減ります。

これは、当たり前のことであり、日本以外の国では当然のこととされていましたが、なぜか日本では雇用と金融政策とは関係ないものとされていました。

本日アベノミクスは失敗として、内閣不信任案を提出した民進、共産、社民、生活の野党4党の方々、特に幹部の方々は、これを理解していないのです。金融政策と雇用の関係を理解していないからこそ、金融緩和によって、雇用が劇的に改善しても、それは自然にそうなったのであり、アベノミクスとは何も関係ないと考えているのだと思います。

そうでなければ、これだけ成果があがっている金融政策を目の前にして、「アベノミクスは失敗」などということはできないはずです。

しかし、雇用と金融政策に密接な関連があるというこの事実を知らない人は、そもそも国会議員になるべきではありません。マクロ経済学では、雇用情勢が悪くなければ、他の数値が多少悪くても良しとします。その点では、アベノミクスは、雇用情勢が劇的に改善しているということでは、及第点をあげるべきものと思います。

さらに、雇用が改善した結果として、自殺者が減ったこともあげられます。


政府は31日の閣議で、2016年版の自殺対策白書を決定しましたた。15年の自殺者数は前年比1402人減の2万4025人となり、4年連続で3万人を下回りました。自殺者数の減少は6年連続。1998年に自殺者が3万人以上に急増する前の97年(2万4391人)の水準まで減りました。
所管する厚生労働省の担当者は「経済問題を理由とした中高年男性の自殺がここ数年大幅に減っており、景気回復を背景にさまざまな対策が功を奏したのではないか」と話しています。

経済政策がまずければ自殺者は増えます。ここでは、詳細は説明しません。それについては、このブログでも解説したことがありますのでそちらをご覧になってください。


ただし、8%増税は大失敗でした。以下に、直近のGDPの表を掲載します。これも以前、このブログに掲載したものを再掲します。


これは、以前もこのブログに掲載したことですが、今年の2月はうるう年で普段より2月は日数が多いです。このうるう年効果を相殺すると、国内生産は、0.1%、年率換算では0.5%です。かろうじて、プラスという状況です。これは、8%増税が大失敗したことを意味します。経済が順調に伸びているときにこの数字ならさほど問題はないかもしれませんが、そうではないので、これはかなり悪い数字とみるべきです。この数字を見た後でも、10%増税を主張する人は全く経済オンチだと言わざるを得ません。

しかし、増税見送りなどというと、決まって「財政再建がー」と叫ぶ人がいます。しかし、このような人は、因果関係や経済対策を実行してから、効果が出てくるまのラグを全く理解していないのだと思います。

財政再建は、名目経済成長がなければ、そもそも無理ことで、名目経済成長すれば後からついてくるものです。これを無視して、増税をすれば、消費が冷え込み、名目成長は当然マイナスになります。そうなれば、税収が減り増税しても財政再建はできません。財政再建できなければ、社会保障改革も不可能です。そもそも、増税すれば社会保障改革ができると思い込むのは間違いです。これを理解しない人は、日本のGDPの60%が個人消費によるものであるということを理解していなのではないかと思います。

8%増税は最初から失敗することはわかっていて、しかも、実際に大失敗であることが数値で示された現在、10%増税を主張する人は愚かとしかいいようがありません。

そうして、8%増税のときを振り返ってみると、野党は無論のこと、新聞などもマスコミも、そうして自民党の大部分の議員も増税すべきという立場でした。野党の中には反対する党もありましたが、その理由は薄弱で、せいぜい世論調査で多数の国民が増税反対なので、反対したのであり、党利党略の域を出ていないものでした。いわゆるエコノミストといわれる人たちも、増税しても、日本経済に与える影響は軽微としていました。しかし、実際に増税してみるとその結果は惨憺たるものでした。

確かに、安倍総理は8%増税の決断をし、増税に踏み切りましたが、それで経済が悪くなったからといって、自民党の議員は無論のことは、野党もそのようなことは言えないはずです。そうして、私は安倍総理自身も、本当はアベノミクスの腰を折るような増税などしたくはなかったと思います。

安全保障関連法に関しても、これも前にこのブログで掲載しましたが、以下のような手続きを踏んで、審議しています。
2012年12月 解散総選挙。自民党は集団的自衛権の行使を可能とし、「国家安全保障基本法」を制定することを公約として、圧勝し政権与党に返り咲く。 
2014年7月 安全保障法制方針について閣議決定。同日に国民向けに安倍総理が記者会見、テレビ全国放送とネットに全文公開。 
2014年12月 解散総選挙 自民党の公約に安全保障関連も含まれる。与党が圧勝 
2015年5月 安保法制案を閣議決定し、安倍総理が再び記者会見。 
2015年6月 通常国会を過去最長の延長幅となる95日間延長。 
2015年 7月 衆議院 特別委員会で異例の116時間を超える審議後、本会議可決し、参議院へ送られる。 
2015年9月 参議院 特別委員会審議は100時間を超える審議後に本会議で可決、成立。
国会で審議拒否や乱闘を繰り返した野党
このような議会制民主主義のステップを踏んで、可決成立しているわけでし、野党はまともな代替え案も提出せず、審議拒否や乱闘を繰り返したわけですから、これはどう考えてみても「強行採決」などとは言えません。これを強行採決とするならば、議会制民主主義を否定することになります。

ブログ冒頭の記事では、自民党の松本純衆院議員は「アベノミクスにより雇用や所得環境は順調に改善を続け、日本経済は着実に回復に向かっている」と反論。不信任案を提出した野党を「党利党略、パフォーマンス政治そのものだ」と批判していますが、私はそれどころではないと思います「理不尽」でさえあると思います。

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