日銀が金融政策の検証を行ったことを受けて、金融緩和によるデフレ脱却を主張する「リフレ派」の「敗北」や「失敗」を強調する報道が見受けられる。「異端の理論を実験したが、失敗して路線変更を余儀なくされた」といった論調もある。
だが、「異端」というのは日本のマスコミや学会だけの話である。世界の中央銀行はリフレ的な考え方で運営されている。
こうした批判者は、日銀が「金利」重視に変更したことで、これまでお金の「量」が重要だと主張してきたリフレ派が敗北したと言いたいのだろう。
たしかに、名目金利にこだわる従来の金融政策を批判するために、実質金利に注目すべきことや、量的緩和が重要であることを筆者は主張してきた。
だが、金融理論では、実質金利を決めれば量が決まり、逆に量が決まれば実質金利が決まるという「1対1対応」の関係にある。この意味で、量か金利かというのは、さほど本質的なことではない。
この等式が頭に入っていないお粗末な経済記者や経済学者が多い 図表・写真はブログ管理人挿入以下同じ |
筆者は、日銀の2013年以降の金融政策を評価している。なにより就業者数が増加し、失業率は低下するなど雇用環境が良くなった。これはマクロ経済政策としてクリアすべき必須条件だ。
こう言うと、冒頭の批判者は「人口、とりわけ生産年齢人口が減っているからだ」と反論する。しかし、人口減少は05年から、生産年齢人口減少は1995年から始まっており、アベノミクスの金融緩和による結果とは無関係だ。「リフレ派の敗北」といった記事を書く人は統計数字をまったく読めない人たちだというほかない。
ただし、筆者は9月に日銀が決めた政策には不満がある。金融緩和か引き締めかでみれば、現状維持で、何もしていないのと同じだからだ。
筆者の計算では、失業率は現在の3・1%から2・7%程度まで下げることが可能だ。しかも、現状のインフレ率はゼロ近辺で、目標の2%まで達していないため、失業率を下げてインフレ率を高める金融緩和を実施するのは当然だ。
今回それを日銀はやらなかったので、筆者の評価は、やるべき時にやらなかったという意味で「日銀はサボった」となる。
野球の試合にたとえれば、日銀は5対0でリード、追加点2点を取ればコールドゲームというチャンスなのに、絶好球を打ち損じた-というところだ。
リフレの批判者は、ほぼ例外なく実質金利を理解できていない。冒頭のような批判者も、金融政策は無効であり、他の政策を行うべきだと主張する。しかし、これまで雇用増加に寄与し、さらなる増加も見込まれるのに、もう金融政策をやるなというのは、デフレに逆戻りせよというのと同じだ。失われた20年間の教訓がまったくない、デフレの犯人ともいえる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】俗説、珍説を語る輩はエビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)を出せ(゚д゚)!
それ以外の期間の失業率をみると、87年を例外として、ほとんどが2.0%と3%の間に収まっています。この前の年の1986年には、日本経済は円高不況に陥っていました。失業率の悪化はその影響であると思われます。
高橋洋一氏の上の記事では、「日銀はサボった」との記述もありますが、過去においてはまともに実行していた時期もあります。そうして、あまりにも当然のことなので、わざわざ触れていませんが、量的金融緩和政策をまともにやっていたときでも、8%増税などという馬鹿げた政策をやってしまったので、せっかくの量的金融緩和の腰を折ったというのも事実です。
もし、消費税増税をしていなければ、量的金融緩和の政策の効果が至るところに現れていて、「リフレ派」の「敗北」や「失敗」などという論調など全く影を潜めていたことでしょう。
さらに、量的金融緩和政策には、量的金融緩和政策には、一定期間のラグがあるということも理解すべきです。それに関しては、以下の表をご覧いただければご理解いただけるものと思います。
もし、消費税増税をしていなければ、量的金融緩和の政策の効果が至るところに現れていて、「リフレ派」の「敗北」や「失敗」などという論調など全く影を潜めていたことでしょう。
さらに、量的金融緩和政策には、量的金融緩和政策には、一定期間のラグがあるということも理解すべきです。それに関しては、以下の表をご覧いただければご理解いただけるものと思います。
岩田規久男「デフレをとめよ」(日本経済新聞社)第6章 IS-LM2分析で記述 |
量的金融緩和政策を実行したからといって、その効果がGDPの上昇、失業率の上昇、インフレ率の上昇という形になってあらわれるのは、約2年かかるということです。これは、何も後付で解説しているのではなく、最初からわかっていたことです。
日銀の量的金融緩和政策は、2013年4月から実施されてます。もし、増税せずにそのまま金融緩和を続けていれば、2015年にはGDPも上昇していたことでしょう。
ただし、GDPは上昇してはいないものの、過去に量的金融緩和を実施し続けてきたことにより、失業率はかなり下がり、新卒の就職率もここ数十年ほどなかったほどの高水準です。実質賃金も上昇基調にあります。
特に新卒雇用に関しては、2013/03/09にはYouTubeで以下の様な動画が掲載されていたことを考えると、隔世の感があります。
この動画は、『「就活狂想曲」animation "Recruit Rhapsody"』というタイトルで、「ごく普通の大学生として何となく過ごしてきた主人公。ところが近頃友人たちの様子がおかしい。聞けば、彼らは噂の"就活"に躍起になっているらしい。それが一体どのようなものなのか見極められぬまま、主人公もまた「ニッポン式就活」の渦中へと引きずり込まれて行く」というストーリーです。
日銀の量的金融緩和政策は、2013年4月から実施されてます。もし、増税せずにそのまま金融緩和を続けていれば、2015年にはGDPも上昇していたことでしょう。
ただし、GDPは上昇してはいないものの、過去に量的金融緩和を実施し続けてきたことにより、失業率はかなり下がり、新卒の就職率もここ数十年ほどなかったほどの高水準です。実質賃金も上昇基調にあります。
特に新卒雇用に関しては、2013/03/09にはYouTubeで以下の様な動画が掲載されていたことを考えると、隔世の感があります。
この動画は、『「就活狂想曲」animation "Recruit Rhapsody"』というタイトルで、「ごく普通の大学生として何となく過ごしてきた主人公。ところが近頃友人たちの様子がおかしい。聞けば、彼らは噂の"就活"に躍起になっているらしい。それが一体どのようなものなのか見極められぬまま、主人公もまた「ニッポン式就活」の渦中へと引きずり込まれて行く」というストーリーです。
わずか3年ほど前には、このような悲惨で異様な就活が一般的だったのが現在のような状況になったのですから、現状までの量的金融緩和が失敗だったなどというのは全くの間違いです。
高校や大学の就職担当の先生方は、この違いを一番良く理解しているでしょう。それに、多くの若者達もこれをよく実感または、体感していることでしょう。そのためでしょうか、多くの若者はアベノミクスの継続を希望しています。
しかし、2014年4月から8%の消費税増税を実行してしまったため、その悪影響でGDPはいまだにはっきりとした上昇基調にはありません。
会社経営でも、一旦業績をかなり落とした企業が、回復して成長軌道にのるためには、何か対策を打ってそれが効き目があったにしても、数年かかります。量的金融緩和政策も同じことで、緩和したからといって、半年、1年で目に見えてすぐに効果でるというわけではありません。
それに、一旦業績を落とした企業が何か対策を打ったにせよ、まだ会社の業績が回復しきっていない状況にあるにもかかわらず、大規模な設備投資や賃上げを行ってしまえば、ふたたび会社の業績を落とすのは目に見えています。
このたとえが、良いものであるかはどうかはわかりませんが、量的金融緩和政策を実行中似、減税ではなく増税を実行してしまうというのは、企業経営でいえば回復途上にある会社が大規模な設備投資や賃上げを行ったのと、同様で、GDPがいまいち伸びないのは当然すぎるほど当然です。
量的金融緩和政策はまさに、失敗したのでも何でもなく、増税さえしなければ今頃十分に成果をあげていたはずなのが、増税をしてしまったために、その途上にあるということです。
その根拠として、ブログ冒頭の記事で高橋洋一氏は「失業率は現在の3・1%から2・7%程度まで下げることが可能だ。しかも、現状のインフレ率はゼロ近辺で、目標の2%まで達していないため、失業率を下げてインフレ率を高める金融緩和を実施するのは当然だ」としています。
総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。
しかし、2014年4月から8%の消費税増税を実行してしまったため、その悪影響でGDPはいまだにはっきりとした上昇基調にはありません。
会社経営でも、一旦業績をかなり落とした企業が、回復して成長軌道にのるためには、何か対策を打ってそれが効き目があったにしても、数年かかります。量的金融緩和政策も同じことで、緩和したからといって、半年、1年で目に見えてすぐに効果でるというわけではありません。
それに、一旦業績を落とした企業が何か対策を打ったにせよ、まだ会社の業績が回復しきっていない状況にあるにもかかわらず、大規模な設備投資や賃上げを行ってしまえば、ふたたび会社の業績を落とすのは目に見えています。
このたとえが、良いものであるかはどうかはわかりませんが、量的金融緩和政策を実行中似、減税ではなく増税を実行してしまうというのは、企業経営でいえば回復途上にある会社が大規模な設備投資や賃上げを行ったのと、同様で、GDPがいまいち伸びないのは当然すぎるほど当然です。
量的金融緩和政策はまさに、失敗したのでも何でもなく、増税さえしなければ今頃十分に成果をあげていたはずなのが、増税をしてしまったために、その途上にあるということです。
その根拠として、ブログ冒頭の記事で高橋洋一氏は「失業率は現在の3・1%から2・7%程度まで下げることが可能だ。しかも、現状のインフレ率はゼロ近辺で、目標の2%まで達していないため、失業率を下げてインフレ率を高める金融緩和を実施するのは当然だ」としています。
特に、失業率に関してはまさに、高橋洋一氏の言うとおりです。それに関して以下に若干の説明を加えます。
総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。
需要不足失業―景気後退期に労働需要(雇用の受け皿)が減少することにより生じる失業この3つの失業のうち、需要不足失業は金融緩和などの政策によって、解消しうる失業です。構造的失業と、摩擦的失業は金融緩和などの政策によっては解消できない失業です。このうち、摩擦的失業は最近ではインターネットなどが発達したため、情報共有が進みあまりみられらなくなりました。現在では、あまり考慮しなくても良いといえるものです。
構造的失業―企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる失業
摩擦的失業―企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることによる失業(一時的に発生する失業)
量的緩和政策により失業率が下がり需要不足失業が全くなくなったとしても、構造的失業は依然として残るわけです。この構造的失業率を高橋洋一氏は2.7%であると見ているわけです。
以下に、過去の完全失業率のグラフを見ておきます。過去の失業率でも、97年以降からは日本は完璧にデフレに突入しましたし、その数年前からデフレ気味でした。ですから、このあたりの失業率はあまり参考になりません。
このように過去の傾向からみても、日本の失業率の下限(≒構造的失業率)は、やはり3%未満、おそらく2.7%であるとみるべきでしょう。これは、かつてデフレでなかった頃の、日本では失業率が3%を超えるとそろそろ赤信号と言われていたことと、符号します。
そうなると、失業率が2.7%になるまでは、量的金融緩和政策を続けるべきという結論に落ち着くのは当然のことです。
さらに、2%の物価目標も達成されていないわけですが、やはり量的金融緩和は絶対に必要であるという結論になります。
「リフレ派」の「敗北」や「失敗」等と主張する方々には、そのような主張をする前に、誰もが納得するエビデンスを出せといいたいです。
エビデンスがないのなら、日本を再びデフレ(証拠・根拠、証言、形跡)に戻すような主張をするのは厳に慎むべきです。
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