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2019年11月5日火曜日

RCEP、インドの交渉不参加言及に波紋 離脱なら枠組み瓦解―【私の論評】インド離脱は、新たな自由貿易を目指す日本にとって追い風(゚д゚)!


東アシアサミットに臨む(前列左から)インドのモディ首相,安倍総理ら=4日,バンコク郊外

日本や中国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉をめぐり、インドの当局者が今後の交渉に参加しない可能性に言及したことをめぐり、5日、日本政府内には波紋が広がった。「インドのいないRCEPは考えられない」(交渉筋)との指摘もあり、仮にインドが離脱すればRCEPの枠組み自体が瓦(が)解(かい)する恐れもある。

 「16カ国を併せれば世界最大の経済圏となることから、その戦略的、経済的意義は極めて大きい」。安倍晋三首相は4日、バンコク郊外で開かれたRCEP交渉の首脳会議の席上、16カ国の枠組みの重要性をこう強調した。

 インドの当局者が4日の記者会見で、現在の条件では「RCEPには参加できない」と話したことが伝わると、日本政府内には「対中交渉の駆け引きの一環だろう」(経済官庁幹部)と冷静に受け止める一方で、「真意がわからない」(政府関係者)といった困惑の声も聞かれた。

 4日の首脳会議では来年の協定署名で合意。その上で、関税撤廃などでインドとの交渉を引き続き継続するとした。共同声明では「インドには未解決のまま残されている重要な課題がある」と指摘。妥結はインドにかかっていると明示することで、インドの政治的な決断を促した。

 日本の立場は明確だ。中国がインドを除外した枠組みを参加国に打診した際には、日本は保護主義的な動きが強まる中、市場規模の大きいインドを自由貿易圏に取り込むことの意義を説明。また、インドが抜ければ中国の影響力が強まることへの懸念もあった。

 インドが離脱するようなことがあれば、日本のRCEPへの関心自体が薄まりかねず、交渉が暗礁に乗り上げる恐れがある。

【私の論評】インド離脱は、新たな自由貿易を目指す日本にとって追い風(゚д゚)!

私自身は、RCEPには反対です。日本はこのような貿易協定に労力をさくよりも、TPP拡大に注力すべきです。そのため、RCEPからのインドの離脱は大いに賛成です。これについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、RCEPが日本にとっては重要ではなく、TPPこそが本命であることを掲載しました。以下に一部を引用します。
ほとんど関税も削減しない、WTO以上のルールや規律は設定しない、という内容の乏しいFTAでは、いくら参加国のGDPが大きかったとしても現状に大きな変更を加えるものではありません。この意味からもRCEPはまともな協定にならない可能性が高いです。

さらなる問題は、複数のFTAが重複することによって、それぞれの関税、ルール、規則などが複雑に絡み合ったスパゲッティのように錯綜して貿易が混乱するという「スパゲッティボール効果」です。

TPP11と日EUのFTAは対象となる地域が異なるので、このような問題は生じないです。しかし、TPP11とRCEPの参加国には重複があります。スパゲッティボール効果を避けるためには、一つの大きなFTAに関係国すべてが参加することが望ましいです。

自由貿易の推進や新しいルールの設定の両面でレベルの高いTPPに、アジア太平洋地域の経済を統合すべきです。
さらに、そもそも論で、中国は自由な市場経済国ではないですから、最初から自由貿易をリードしていく資格などありません。 自由貿易をリードしたいというのなら、まずは自国の構造改革をすべきです。

特に、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめ、自由貿易ができる体制を整えるべきなのです。しかし、中国ではこれができません。実行すれば、中共政府は統治の正当性を失い崩壊してしまうでしょう。

そのため、中国が主導するRCEPは、ほとんど関税も削減しない、WTO以上のルールや規律は設定しない、という内容の乏しいFTAにならざるを得ないのです。

これまでの貿易の秩序が公平で正しいものだったのかは、甚だ疑問です。特に米国にとってはあらゆる産業が自然に衰えていく傾向を示し潜在敵国の中国には絶好の儲けを提供する仕組みになっていました。米国民は現状が不公平過ぎると感じていたのでしょう。その腹立ちが世界の予想外だったトランプ氏を誕生させました。

世界経済の常識は「金持ちは我慢しろ」という傾向がありましたが、トランプ氏は「アメリカ・ファースト」を掲げて既成の秩序をぶち壊し始めました。米国は、現体制は米国の利益を損なっていると認識したからこそ、根こそぎ破棄し新たな秩序づくりを提唱しているのです。

現状の貿易体制はWTOの精神に裏付けられています。WTOの考え方は自由な取引を推進すれば比較優位の商品が産出されます。言い換えると、どの国も得意なものを作って儲けられるというものです。

ところが、完全な自由貿易を強制すると、ある製品について、1国以外に製造する国がなくなるはずです。もしその国が独占的立場を悪用して、価格を上げるとなると、他に競争する国がないのですから、儲け放題になる。そこで互いに関税をかけて産業を保護するのです。

WTO発足時点の経済情勢に合わせて、各国は関税を設けて公平な競争条件でスタートしました。この条件は年を経れば歪みが出てくるのは当然です。当時、中国は「途上国」という条件で排気ガス規制から逃れる一方、世界銀行から「途上国援助」を受け取っていました。その援助は総額4兆円に近いのですが、「計画が残っている」との名目でいまだに続行されています。

米国の自動車は当時飛び抜けて世界一でしたが、競合国のドイツや日本に攻め立てられています。米国の自動車産業の象徴と言われたGMでさえ倒産しそうになりました。

現在の経済状態に合わせて新しい貿易のルールに作り直す必要があります。そこで新しい貿易ルールを日米で作成に取り掛かっていたのがTPP(環太平洋経済連携協定)でした。そこからトランプ氏は脱退したのですが、新時代に合わせたTPPが必要であることは変わらないです。

安倍晋三首相はトランプ氏が脱退を表明した後、米国抜きの11ヵ国でまとめる意志を表明し、現実に11ヵ国TPPは2018年12月30日発効しました。

一方で日本とEUとの間では新たにEPA(日・EU経済連携協定)を締結しました。TPPもEPAも締結時の関税などを固定するものではありません。現在日本は高級チーズには29.8%の関税をかけていますが、15年後までには、年々削減してゼロにすると約束しています。

日本はTPPと日欧EPAにより現状では世界の自由貿易をリードしているといっても過言ではありません。日本はこれからも、この方面で積極的に行動すべきです。



自由貿易の枠組みの中で競争力を高めてきた日本は、19世紀の英国や20世紀の米国とは異なります。日本が自由貿易を推進するのは、自国にとって有利だからではなく、それがルールに基づく競争の場を提供するということを理解しているからです。

20世紀型自由貿易の出発点となったブレトンウッズ会議に日本は残念ながら参加できなかった。当時日本は米国との戦争を続けていたからだ。これに対して、21世紀型自由貿易はその誕生から日本が関わることができる。米中貿易戦争が続く今の状況が日本にとって大きな試練であることは間違いないが、70年前の無念を晴らす願ってもないチャンスでもあるのです。

ブレトン・ウッズ会議 1944年7月

チャンスをものにするためには、経済大国としての厳しさが求められる。自由貿易を推進するのであれば、競争力の弱い分野を温存するという政策はふさわしくないです。

「競者」の論理に立つならば、高関税や輸入制限によって競争力の弱い産業を保護する政策とは一線を画し、その競争力を高めていく工夫や努力が常に行われているような、活力あるビジネス環境の整備が必要となるでしょう。

無論中国のように、国営企業に補助金を与えるというやり方では、だめです。日本国内で、まともに多くの企業が切磋琢磨できるように、政府は基盤を整備すべきでしょう。その基盤の上で、各企業や様々な組織がプレーヤーとなり対等な立場で競い合うのです。競い合うだけではなく協同しやすい環境も整備するのです。

20世紀型自由貿易の出発点となったブレトンウッズ会議に日本は残念ながら参加できませんでした。当時日本は米国との戦争を続けていたからです。これに対して、21世紀型自由貿易はその誕生から日本が関わることができます。

米中貿易戦争が続く今の状況が日本にとって大きな試練であることは間違いないですが、70年前の無念を晴らす願ってもないチャンスでもあります。

チャンスをものにするためには、経済大国としての厳しさと柔軟性が求められます。自由貿易を推進するのであれば、競争力の弱い分野を温存するという政策はふさわしくないです。

「競者」の論理に立つならば、高関税や輸入制限によって競争力の弱い産業を保護する政策とは一線を画し、その競争力を高めていく工夫や努力が常に行われているような、活力あるビジネス環境の整備が必要となります。

今回のRCEPインド離脱は、まさに日本にとってこのような環境整備への追い風となるかもしれません。

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