2019年1月31日木曜日

日欧EPA、世界GDPの3割 あす発効、世界最大級の自由貿易圏誕生へ―【私の論評】発効によって一番ダメージがあるのは韓国(゚д゚)!

日欧EPA、世界GDPの3割 あす発効、世界最大級の自由貿易圏誕生へ

仏ボルドーのワイン醸造元。日欧EPA発効で欧州産ワインの市場拡大が見込まれる

 日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2月1日の午前0時に発効する。国内総生産(GDP)の合計で世界の約3割、貿易総額で約4割を占める世界最大級の自由貿易圏が誕生する。



 関税の撤廃などで貿易や投資が活発になり、日本のGDPを約5.2兆円押し上げると試算される。米中による貿易戦争が激しさを増す中、日欧は連携して保護主義的な動きの台頭に対抗する構えだ。

 日本側の関税撤廃率は品目ベースで約94%。欧州産のチーズやワインなどにかかる関税が撤廃や引き下げとなり、日本の消費者には恩恵となる。

 一方、安価な輸入品の増加により酪農をはじめとする農林水産業には打撃となる恐れがある。



 EU側の関税撤廃率は約99%。日本からの輸出は自動車への関税が発効から8年目に撤廃されるなど、企業にとっては商機が広がる。日本の雇用は約29万人増加する見込みだ。

 日欧はともに近く貿易交渉を控える米国を牽制(けんせい)する狙いもある。日欧間で関税が下がれば、米国産品の競争力が相対的に低下する。日本は米国に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への復帰を促す考えだ。

【私の論評】発効によって一番ダメージがあるのは韓国(゚д゚)!

日欧EPA発効で、私自身はワインとチーズが安くなるということで大喜びです。しかし、これで思わぬところに影響がでそうです。

実はEUとの自由貿易がスタートすることによって、お隣の韓国と日本との一騎打ちがスタートすることになりそうです。なぜでしょうか?
この記事では、日本とEUがEPAを結ぶと、どのようなことを意味するのか? それがなぜ、韓国メーカーとの戦いになるのか? このあたりをご紹介していこうと思います。

2018年7月17日、日本とEUとの間で、日欧EPAの署名を行いました。その後各国の国会において日欧EPAの承認がなされました。そうして、明日から日欧EPAは、無事に発効することになりました。

発効とは、日欧EPAに加盟している国に対して、協定書で決められている内容が遅滞なく行われることを意味します。

一例を申し上げれば、関税撤廃の予定が「即時撤廃」に指定されている物は、日欧EPAの発効によって、すぐに関税の撤廃がおこなわれます。発効のタイミングによって、一気に、欧州産の高品質な品物が関税ゼロで日本市場に押し寄せてくるかもしれません。

また、この日欧EPAを考えるときは、とても重要なことがあります。それが相手国におけるEPAの締結状況です。今回であればEUは、すでに他国とも同じような自由貿易協定を結んでいます。すでに締結している協定に加えて、今回、新しく(追加)日本との自由貿易を始めるということです。

決して、相手国は、日本だけと自由貿易を結んでいるわけではありません。もちろん、これは日本側も同じです。(2017年現在、日本は15の地域との間にEPAを発効)

では、2017年現在、EUはどこの国と自由貿易を結んでいるのでしょうか?

2018年7月現在、EUは以下の国との間で自由貿易協定を結んでいます。
  • チリ
  • 南アフリカ
  • コートジボワール
  • ペルー
  • メキシコ
  • カメルーン
  • 韓国
  • 中央アメリカ
  • ラテンアメリカ・カリブ諸国
この協定国の中には、韓国があります。韓国は、アジア地区においては、唯一、EUとの自由貿易協定を結んでいます。日本がEUとEPAを結べば、すでにEUと自由貿易を結んでいる以下の国々と似た土俵に立てます。

この中で注目すべき国は韓国です。韓国といえば、日本企業と競合する製品を輸出する国として有名です。そんな韓国は、日本よりも一足先にEUと自由貿易を結んでいます。そのため、これまでは、欧州市場で韓国製品と日本製品が戦おうとしても関税が賦課される分だけ価格競争に勝てないことが多かったです。

例えば、日本からEUへオレンジを100万円分輸出します。EUが設定しているオレンジへの関税は、日本産が10%、韓国産の物が0%であるとすればどうるなでしょうか。
この場合、EU側の輸入者にとっては、
  • 日本産であれば10万円の関税(100万円の10%)
  • 韓国産であれば、関税はゼロ。
という状況だったのです。日欧EPAを結べば、この関税負担分がなくなり、これまでよりも価格競争力をつけた物を輸出できます。これが自由貿易協定を結ぶメリットの一つです。

サムスン社旗

日欧EPAが発効すると、韓国には、どのような影響があるのでしょか? それを考えるときは、日本とEU、そして韓国の三か国を多面的にとらえる必要があります。一般的に韓国で有名な企業(サムスンなど)は、日本企業と似た製品を輸出しています。しかし、もう少し韓国製品を詳しく見ると、製品の核となる部分は、日本からの輸入に頼っていることが多いです。

つまり、日本から製品に使う部品を輸入して、韓国の工場で最終完成品医にした後、EUへ輸出しています。韓国からの輸出品であれば、韓国とEUとのFTAを使い、関税ゼロで輸出ができます。また、韓国は、アメリカともFTAを結んでいるため、西へ東へと自在に関税ゼロで輸出ができるようにして、自国の競争力を保っていたのです。

ところが、日欧EPAが発効すると、関税面での不利な扱いが徐々に解消されていきます。関税無しで輸出ができるのは、日本の輸出企業にとって大きな追い風です。

では、一方の韓国企業を考えてみましょう。この場合、これまで当たり前にあった日本製品との関税の壁がなくなるため、まさに逆風です。本音のレベルでいうと、韓国企業にとって「日欧EPAの発効」は最も忌み嫌うことでしょう。

日欧EPA発効で、韓国国内自動車業界が少なからず打撃を受けるという見方が出ています。グローバル舞台で競争関係にある日本自動車企業がEU市場で関税引き下げ分を値下げしたり、マーケティング拡大、ディーラー網管理などのさまざまな戦略を通じて韓国車のシェアを蚕食する可能性があるからです。

 韓国自動車産業協会の関係者は、『中国市場の供給過剰、米国市場の成長鈍化など主要市場が厳しくなる中、世界3大市場の欧州まで日本に奪われるかもしれないという危機感が強まっている』とし、『製品の競争力を高められるよう全方向での協力が必要な時期』と述べました。

おそらく、今後日本企業の韓国からの引き上げなども予想できるため、韓国の関連株(輸出企業・船会社・自動車など)も安くなりそうです。

関税撤廃で欧州への日本車輸出が加速するか

日本が、どこかの国とEPAを結ぶときは、すでに相手国が「他の国と自由貿易を結んでいないのか」を確認すべきです。もし、結んでいるときは、どのような国と結んでいるのか? それらの国からは、どのような商品が輸出されているのかを調べるべきです。

すると、それぞれの国に属する企業がどのような動きをするのかが何となく予想できます。今回の件でいうと、日本とEUのEPAによって、韓国に大きなダメージがあると予想できます。

一方米国も、日欧EPAの発効に「臍(ほぞ)をかむ」思いのようです。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(昨年7月7日付)は、「日欧EPAは米国に対する警鐘」と題する社説を掲げました。

経済に明るくない大統領を選んだ結果、米国は国際貿易のグローバル化という波に背を向けて、一人で爪をかむ心境に追い込まれているようです。そう言っては失礼ですが、「類は友を呼ぶ」で、保護貿易論者の下には、それ相当のスタッフしか集まらなかったようです。当初の日本やEUに対する関税引き上げなど、勇ましい議論は影を消しています。

欧州は、米国がTPPから離脱したことを「天佑」と見て、一挙に協定をまとめ上げたと言えるでしょう。もう一つ、米国が保護貿易主義に戻ってしまい、日欧が手を携えて自由貿易を守るという使命感も妥結に導いたものでしょう。さらに、EUから英国が離脱すれば、TPPに加入する可能性が高まります。

日本はTPPから米国が抜けた穴を日欧EPAで補いつつ、さらに米抜きTPPの「TPP11」はすでに発効しています。

一方、以前このブログに掲載したように、日欧EPAは、中国に接近しようとするドイツに対する牽制ともなっています。

いずれにせよ、自由貿易協定をめぐる安倍政権の動きは、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながります。日本のマスコミや野党は全く評価しませんが、これだけをもってしても、素晴らしい成果であるといえます。

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