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2018年6月13日水曜日

明確な定義なく「煽る」だけ…非論理的な財政破綻論者 不要な緊縮招く危険な存在―【私の論評】不況時に増税をする等の緊縮財政は「狂気の沙汰」ということだけは覚えておこう(゚д゚)!

明確な定義なく「煽る」だけ…非論理的な財政破綻論者 不要な緊縮招く危険な存在

財政破綻を煽る記事 写真はブログ管理人挿入 以下同じ


 「日本が財政破綻する」「国債が暴落する」と煽(あお)る論者はいまだに少なくない。

 そもそも財政破綻などを煽る人は、なぜかその定義を明らかにしない。これまでの筆者の体験も次のようなものだった。

 その1。私「国債暴落の定義を言ってください。何カ月以内で何%とか。暴落はあるのですか」

 先方「暴落なき暴落が『あります』」(ありますを強調)

 私「暴落はないのですか」

 先方「暴落『なき』暴落があります」(なきを強調)

 その2。私「ハイパーインフレの定義は何ですか。ケーガン(経済学者)のもの? 国際会計基準?」

 先方「(一切答えず)ハイパーインフレになっていいんですか。日銀引受はハイパーインフレになるのです」

 私「日銀引受は毎年やっていますよ。私はその最高記録保持者ですが」

 先方「…」

 かつて役所内で議論した際にも、「財政破綻の定義は難しい」と言われ、定義することも避けられた。

 不良債権処理の専門書を書いたこともある筆者にとって、民間の破綻認定は簡単だった。債務の支払い能力がないというためには、基本的には貸借対照表(B/S)で債務超過を示せばいいからだ。

 政府の場合、徴税権(見えない資産)があるから債務超過でも即破綻ではないが、資産を考慮したネット債務残高がポイントだ。通貨発行権は統合政府のB/Sに出てくるので、ネット債務残高を見ればいい。ちなみにインフレ目標は、通貨発行権の乱用予防の役割もある。

 ネット債務残高というものの、その国の経済力との関係が問題になる。となれば、ネット債務残高対国内総生産(GDP)比が将来的に発散(ブログ管理人注:数列の極限値や積分の値などが有限値に定まらない、つまり無限大や不定になること。数学に詳しくない人は無限大になったとの理解で十分です)したら、破綻と言っていいだろう。

 こうした計量的に明確な定義もなく財政破綻を唱える人は、客観的に説明できずに煽るだけになる。日本の今の財政状況とは関係なく、実際に財政破綻した国で行政サービスが低下したことなど、国民生活面での不都合を強調しがちだ。または、B/Sの片方の借金だけを強調して「借金は避けるべきだ」「将来世代の負担になる」というが、見合い(ブログ管理人注:対応していること、釣り合っていること)の資産があると、こうした論法は馬脚をあらわす。

 正確に定義され計算された基礎的財政収支(プライマリーバランス)の動向は、ネット債務残高対GDP比の発散条件と密接に関わっている。通常、プライマリーバランスが赤字であっても改善傾向にあれば、ネット債務残高対GDP比はめったなことでは発散しない。プライマリーバランスが均衡化するに越したことはないが、改善さえすれば「財政破綻」を過度に心配する必要はない。

 財政破綻の定義を明確にせずに財政再建を語るのは、不必要な緊縮財政(増税、歳出カット)を招き、意図せざる失業者を発生させるので、経済にとって危険である。

 今の多くのマスコミ、学者や財界は財務省に洗脳され、財政再建を盲目的に追求し、緊縮財政そのものを目的化している。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】不況時に増税をする等の緊縮財政は「狂気の沙汰」ということだけは覚えておこう(゚д゚)!

何でも緊縮すれば良いと思い込む「緊縮脳」は始末に負えない

財政破綻論者のほとんどは当然のことながら、緊縮策の支持者です。

不況時に緊縮策をとれば景気はさらに冷え込み、その結果税収は落ち、財政状況はますます悪化する。このような事は経済学を学んだことがない人でも直感としてすぐにわかるはずだと言いたいところですが、日本のみならず、世界的に見ても不況時に緊縮こそが答えだと信じてしまう人のほうがむしろ多数派かもしれません。

さらには経済学を学んだことのある人どころか、権威あるとされる経済学者の中にも、依然としてこのような主張をする人までいます。古今東西の歴史を紐解けば緊縮策の結果として手痛い思いをした経験を持つ国は歴史的に数多くあり、その教訓を嫌というほど学んでいるはずなのに、なぜ緊縮策という「ゾンビ経済学」はこのように蘇ってくるのでしょうか。

ジョン・クギンのオーディオブック"ゾンビ経済"の表紙

日本でも、古くは江戸時代に徳川吉宗の緊縮策などを皮切りに、様々な緊縮策が何度も実行されましたが、長続きはしませんでした。さらに、戦前には日本が世界で一番はやく金融恐慌(日本では昭和恐慌)から脱却したのは、無論緊縮策ではなく、高橋是清による積極財政と金融緩和によるものでした。

こうした貴重な体験をした日本人が、過去の歴史を忘れて、緊縮策になびく人が多いというのは、全く理解に苦しむところです。しかし、世界恐慌の原因がデフレであったことが、わかったのはなんと1990年代の経済研究によるということを考えると無理もないのかもしれません。

高橋是清

それだけ、緊縮は多くの人々に支持される経済政策なのです。経済が悪い時に緊縮策が機能しないのははっきりと確かめられた事実です。緊縮策は倫理的な問題を別にしても、経済学的に不合理で誤った政策です。

経済的に正しいのは、不況の時は、財政政策と金融政策を二つとも発動せよ、です。

これはマクロ経済学を学んだ者にとっては当たり前の話です。通常の教科書モデルでも、変動相場制の国ではマンデル=フレミング効果が働いて、金融緩和の後ろ盾のない財政政策はあまり効果がありません。かといって、金融緩和だけでは、痛みの出ている箇所への集中投下ができないので即効性がなく、また大きな需給ギャップを埋めるには財政政策が不可欠になってきます。

さらに流動性の罠の下での財政出動は、クラウディングアウト(民間投資圧迫)も“後世へのツケ”も残すことはありません。

ノーベル賞受賞者でもあるアメリカの経済学者ジョセフ・スティグリッツも、不況の時の緊縮策は「自殺」への処方箋だとしています。同じくノーベル賞受賞者であるクルーグマンも、はっきり「狂気の沙汰」と言っています。過去おいては、欧州では緊縮財政で失敗しています。

日本も、安倍政権が誕生して、積極財政に踏み切るかとみられましたが、14年4月から、増税という緊縮策に踏み切ってしまいました。そのため、個人消費が低迷してしまい、今でもデフレに一歩手前の状況にあります。

ただし、金融緩和は政権発足当時が継続して行ってきたので、雇用は過去にない程良い状況になっています。

2012年に民主・自民・公明の三党合意で消費税増税法案が成立しました。そうして、14年4月から消費税が8%に増税されました。19年10月には、10%増税が予定されています。増税しないと日本が駄目になるというのですが、今の日本で緊縮財政を強行するのはデフレを長引かせるだけであり、まさに「狂気の沙汰」です。


緊縮策とは個人の行為でいえば、節約ですが、これが多くの人々の琴線に触れるのかもしれません。だれでも、贅沢三昧することよりは、節約のほうが、良いと考えるものですが、それを政府の支出にまで拡大して解釈し、緊縮こそ善であると思い込むのは完璧な「狂気沙汰」です。これは、社会の常識として多くの人々に認識していただきたいです。

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