1月31日、ホワイトハウスで劉鶴副首相(左端)と面会するトランプ大統領 |
米国と中国の両政府による閣僚級貿易協議が1月31日、2日間の日程を終えた。トランプ米大統領は同日、中国代表団を率いる劉鶴副首相と会談し、中国の知的財産権侵害問題などをめぐり、「極めて大きな進展があった」と協議成果を評価した。一方で「いくつかの重要な問題」を積み残したとして、妥結に向けて中国の習近平国家主席と会談する意向を表明した。
トランプ氏は劉氏とホワイトハウスの大統領執務室で面会。中国側が表明した米国産大豆の大規模購入に
具体的な米中首脳会談の日程や場所は、まだ中国と話し合っていないとした。
米政府は協議終了後に声明を発表し、「議論が広範な論点に及んだ」と指摘。中国による技術移転の強要や市場開放のほか、米国産品の購入拡大による貿易不均衡の是正を話し合ったことを明らかにした。
声明で米政府は「あらゆる合意事項は完全に順守されることで両当事者が一致した」とした。トランプ政権内には、通商問題をめぐる過去の米中合意が守られてこなかったとして、合意内容を強制執行する仕組みを最終合意に盛り込むよう要求する意見がある。
一方、声明には「(昨年12月の)首脳会談で合意した3月1日は厳格な交渉期限だ」と明記。期限延長の可能性を否定した。最終合意までに「さらなる作業が残っている」とも述べた。
ロイター通信によると、閣僚級協議の米側代表である通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は、中国側から2月中旬に米交渉団が訪中するよう招請を受けたと明らかにした。
米中は昨年12月の首脳会談で90日間の協議期限を設定。米国は協議中の対中制裁強化を猶予するとした。ただし3月1日までの期限内に合意できない場合、米国は中国からの2千億ドル(約21兆8千億円)相当の輸入品に課した10%の制裁関税を25%に引き上げる。
【私の論評】「灰色のサイ」がいつ暴れだしてもおかしくない中国(゚д゚)!
トランプ大統領 |
ホワイトハウスは、現在ワシントンで行われている米中通商協議について「トランプ大統領は、(12月の)ブエノスアイレスにおける両国首脳会談で合意した90日の猶予期間は厳格な期限であり、米中が3月1日までに満足できる結果に達しなければ、米国は中国製品への関税を引き上げると繰り返した」と述べました。
米国の景気は、昨年はまずまずというところで、特に雇用がさらに改善されました。2019年には、景気を良くしたいトランプ陣営の政策と、それを抑制するFRBの政策とのバランス、また、2020年8月の東京オリンピック後の日本の政策や2020年11月のアメリカ大統領選挙の動向によって今後の流れが定まって来るのでしょうが、今のところは小さなものはいくつかはあるものの、大きな懸念材料はありません。
習近平 |
一方、中国の習近平国家主席は1月21日、甚大な影響をもたらす想定外の事態を意味する「ブラックスワン(黒い白鳥)」に警戒するとともに、顕著であるにもかかわらず看過されているリスクを指す「灰色のサイ」を回避する必要があるとの認識を示しました。国営新華社通信が報じましたた。
中国は昨年の経済成長率が28年ぶりの低水準を記録するなど、景気の失速ぶりが目立っています。
習氏は、経済動向が妥当な範囲内に収まる見通しで、中小企業の金融問題を実利的に解決するほか、雇用の安定を目指し企業支援を強化すると述べました。また多額の負債を抱える「ゾンビ」企業の問題を適切に解消するとしました。
技術上の安全性は国家安全保障の重要部分であり、人工知能(AI)や遺伝子編集、自動運転車(AV)などの分野で法制化を加速すると表明。外部環境が困難かつ複雑となる中で、中国は海外の利益を護るとともに、海外事業やその職員らの安全確保を強化するとしています。
灰色のサイ |
本日は中国の「灰色のサイ」について掲載します。
「灰色のサイ」という概念は、米国の学者ミシェル・ウッカー氏が2013年1月にダボス世界経済フォーラムで提起したものです。
言い換えると、金融システムの崩壊のような「ブラックスワン」が突如として到来するのに対し、「灰色のサイ」は長きにわたって積み重なったものがようやく姿を現してくるというものです。
10年前も暴走した「灰色のサイ」
「灰色のサイ」は発生する確率の高いリスクであり、社会の各分野で相次いで登場している。多くの経済事件は、「ブラックスワン」というよりも「灰色のサイ」であり、爆発前にすでに前兆が見られているが、無視されてきた。
例えば、2007年から2008年までの金融危機は、一部の人々にとっては「ブラックスワン」的な事件ですが、大多数の人々にとってこの危機は数多くの「灰色のサイ」が集まった結果でした。早くから警告を示す兆候が見られていたのです。
国際通貨基金と国際決済銀行は危機が発生する前に、継続的に警告を発していました。 2008年1月、世界経済フォーラムはリスク報告で、予想されている不動産市場の衰退、流動性資金の緊縮、そして高止まりしているガソリン価格など、どれも実際に発生して経済崩壊のリスクを押し上げていると指摘していました。
現在、不平等という問題も一種の「灰色のサイ」かもしれないです。この問題も、もはや今に始まったことではないですが、これまでずっと重視されてきませんでした。
『灰色のサイ:発生する確率の高い危機にどう対処するか』は、彼女の著作ですが、それによると、「ブラックスワン」は発生する確率は低いが大きな影響を与える事件のことであり、「灰色のサイ」とは発生する確率が高い上に影響も大きな潜在的リスクのことです。
予兆は目にしていたのに、防ぎきれない
灰色のサイはアフリカの草原で成長し、体が並外れて大きくて重く、反応も遅いです。我々が遠くから見ていても、サイは全く気に留めないです。
灰色のサイはアフリカの草原で成長し、体が並外れて大きくて重く、反応も遅いです。我々が遠くから見ていても、サイは全く気に留めないです。
しかし、サイは一旦狂ったように走り出すと、一直線に猛突進し、その爆発的な攻撃力の前に、我々はあまりにも突如過ぎて防ぎきれず、吹き飛ばされて地面に転がってしまいます。
そのように、突如やって来る災厄、もしくはあまりにも小さすぎる問題に端を発している危険ではなく、多くの場合は長きにわたってその予兆を目にしてきたにもかかわらず、注意を払わなかっただけという例えなのです。
言い換えると、金融システムの崩壊のような「ブラックスワン」が突如として到来するのに対し、「灰色のサイ」は長きにわたって積み重なったものがようやく姿を現してくるというものです。
10年前も暴走した「灰色のサイ」
「灰色のサイ」は発生する確率の高いリスクであり、社会の各分野で相次いで登場している。多くの経済事件は、「ブラックスワン」というよりも「灰色のサイ」であり、爆発前にすでに前兆が見られているが、無視されてきた。
例えば、2007年から2008年までの金融危機は、一部の人々にとっては「ブラックスワン」的な事件ですが、大多数の人々にとってこの危機は数多くの「灰色のサイ」が集まった結果でした。早くから警告を示す兆候が見られていたのです。
国際通貨基金と国際決済銀行は危機が発生する前に、継続的に警告を発していました。 2008年1月、世界経済フォーラムはリスク報告で、予想されている不動産市場の衰退、流動性資金の緊縮、そして高止まりしているガソリン価格など、どれも実際に発生して経済崩壊のリスクを押し上げていると指摘していました。
現在、不平等という問題も一種の「灰色のサイ」かもしれないです。この問題も、もはや今に始まったことではないですが、これまでずっと重視されてきませんでした。
金融危機勃発後から今日に至るまで、世界経済でも特に先進経済地域の蘇生は力のない状態のままであり、中流及び貧困層の生活は悪化の一途をたどり、貧富の差は拡大しています。最終的に一連の「ブラックスワン」事件を招く要因の一つになるかもしれないです。
中国人民大学・重陽金融研究院の高級研究員である何帆氏は、「未来経済学において最も重要な問題は収入の不平等であり、この問題は世界経済の頭上にある『ダモクレスの剣』である」と指摘しています。
最大の「サイ」は不動産バブル
現在の中国経済において「灰色のサイ」は何なのでしょうか。
中国金融改革研究院の劉勝軍院長は、不動産バブルこそ疑問の余地なく最大の「灰色のサイ」だと表明しました。「一方では中国の住宅価格のバブル化に関してもはや議論はされていないが、他方では住宅価格の調整や管理がかつてないほど効力が失われており、多くの人々が『住宅価格は二度と下がらない』という錯覚に陥っている」と彼は語りました。
2頭目の「灰色のサイ」は通貨、人民元の切り下げです。切り下げによる資金の流出は1997年のアジア金融危機のような大きな動揺を引き起こすことになるでしょう。過去数年、中国内資産価格の高止まりや経済成長の減速、経済モデルチェンジの不確実性などの要素の影響で人民元の切り下げ予想が形成され、外貨準備高が4兆ドルから3兆ドルに減少するという事態を招きました。
中国人民大学・重陽金融研究院の高級研究員である何帆氏は、「未来経済学において最も重要な問題は収入の不平等であり、この問題は世界経済の頭上にある『ダモクレスの剣』である」と指摘しています。
最大の「サイ」は不動産バブル
現在の中国経済において「灰色のサイ」は何なのでしょうか。
中国金融改革研究院の劉勝軍院長は、不動産バブルこそ疑問の余地なく最大の「灰色のサイ」だと表明しました。「一方では中国の住宅価格のバブル化に関してもはや議論はされていないが、他方では住宅価格の調整や管理がかつてないほど効力が失われており、多くの人々が『住宅価格は二度と下がらない』という錯覚に陥っている」と彼は語りました。
2頭目の「灰色のサイ」は通貨、人民元の切り下げです。切り下げによる資金の流出は1997年のアジア金融危機のような大きな動揺を引き起こすことになるでしょう。過去数年、中国内資産価格の高止まりや経済成長の減速、経済モデルチェンジの不確実性などの要素の影響で人民元の切り下げ予想が形成され、外貨準備高が4兆ドルから3兆ドルに減少するという事態を招きました。
最近の外貨準備高はやや安定しているとはいえ、それは主に為替管理を強化した結果であり、人民元切り下げの予想はまだ完全に払拭されていません。
3頭目の「灰色のサイ」は、銀行の不良資産の増加です。現在、政府側が公表した銀行の不良資産率は2%前後で、これは非常に良い数字です。しかし、株式市場の銀行株の株価から見ると、不良率は明らかに低く見積もられています。
3頭目の「灰色のサイ」は、銀行の不良資産の増加です。現在、政府側が公表した銀行の不良資産率は2%前後で、これは非常に良い数字です。しかし、株式市場の銀行株の株価から見ると、不良率は明らかに低く見積もられています。
多くの銀行株の実勢利回りのPE値(株式の時価と純利益の比)は5倍前後で、今のところA株式市場の株価収益率の中央値の60倍以上。銀行株のP/B値(一株当たりの株価と一株当たりの純資産の比率)は2倍以下です。これは、株価がすでに一株当たりの純資産を下回っていることを意味しています。
米国に似てきた住宅ローン事情
最大の「灰色のサイ」と見なされている不動産バブルについて、天風証券マクロ分析チームは米国の金融危機を鑑に、中国の住宅価格における「セーフティクッションの厚さ」を分析しました。
米国の家庭での住宅ローン支出の平均と世帯収入の比率は、2000年以降急速に上昇し、2000年の時点でこの指標は65%でしたが、2006年にはすでに99%に達しており、住宅ローンによる圧力の限界に限りなく近づいていました。
米国に似てきた住宅ローン事情
最大の「灰色のサイ」と見なされている不動産バブルについて、天風証券マクロ分析チームは米国の金融危機を鑑に、中国の住宅価格における「セーフティクッションの厚さ」を分析しました。
米国の家庭での住宅ローン支出の平均と世帯収入の比率は、2000年以降急速に上昇し、2000年の時点でこの指標は65%でしたが、2006年にはすでに99%に達しており、住宅ローンによる圧力の限界に限りなく近づいていました。
世帯収入の全てを住宅ローン支出につぎ込むならば、家計が崩壊するのは時間の問題です。2007年に米国の家庭での住宅ローン支出の平均と世帯収入の比率は101%に達し、極限点を超えると同時に危機が発生しまし。
中国の家庭の住宅ローン支出と世帯収入の比率は、2006年から2016年までに33%から67%に上昇しまし。2013年から2016年までの間に、不動産価格も大幅に上昇しました。その様相は、2001年から2004年にかけて、米国の国民が積極的にレバレッジをかけた過程と似ています。
世帯における債務という観点から見れば、2016年の中国は2004年の米国にかなり似ています。2016年下半期に中国は通貨政策の緊縮と住宅購入制限政策を打ち出したのに伴い、中国の世帯においても能動的なレバレッジから受動的なレバレッジに変わりつつありますが、住宅ローン支出と世帯収入の比率は、その後も上昇を続けています。
中国の家庭の住宅ローン支出と世帯収入の比率は、2006年から2016年までに33%から67%に上昇しまし。2013年から2016年までの間に、不動産価格も大幅に上昇しました。その様相は、2001年から2004年にかけて、米国の国民が積極的にレバレッジをかけた過程と似ています。
世帯における債務という観点から見れば、2016年の中国は2004年の米国にかなり似ています。2016年下半期に中国は通貨政策の緊縮と住宅購入制限政策を打ち出したのに伴い、中国の世帯においても能動的なレバレッジから受動的なレバレッジに変わりつつありますが、住宅ローン支出と世帯収入の比率は、その後も上昇を続けています。
これについては、以前このブログにも掲載しましたが、中国の蘇寧金融研究院は昨年、家計債務の増加ペースが非常に速いとの見解を示しました。過去10年間において、部門別債務比率をみると、家計等の債務比率は20%から50%以上に膨張しました。一方、米国では、同20%から50%に拡大するまで40年かかりました。
今や中国の家計の債務費比率は、リーマンショック時の米国と同水準になっているのです。
天風証券は、「これは良い兆候ではなく、中国の『灰色のサイ』が動き出したのかもしれない」と見ています。まさらにいつサイが暴走しないとも言い切れない状態になっています。
天風証券は、「これは良い兆候ではなく、中国の『灰色のサイ』が動き出したのかもしれない」と見ています。まさらにいつサイが暴走しないとも言い切れない状態になっています。
米国に経済制裁を挑まれている現在、「灰色のサイ」が暴れまくることになれば、習近平はさらに苦しい対応を迫られることになります。
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