金正恩氏は東倉里から“人工衛星”を発射するのか |
北朝鮮が「人工衛星」と称して弾道ミサイルを発射する可能性が現実味を増してきた。北西部・東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場の準備が完了したとの分析があるのだ。「Xデー」として、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の祖父、金日成(キム・イルソン)主席の誕生日(15日)などが予想されている。米朝首脳会談の決裂を受け、北朝鮮は再び「瀬戸際外交」に戻るのか。朝鮮半島の緊張が高まっている。
「北朝鮮が東倉里長距離ミサイル発射場の整備を事実上終えた」「最高指導部が決心すればいつでも発射できる状態を維持中」
韓国紙、中央日報(日本語版)は2日、韓国政府当局者がこう伝えたと報じた。
記事では、北朝鮮が3月27日にドイツ、同29日にフィンランドで予定されていた会議への出席を、ドタキャンしてきたことも伝えた。こうした状況から、国会に当たる最高人民会議が開かれる今月11日や、日成氏の誕生日などに、「人工衛星打ち上げ」を強行する可能性もあると指摘した。
北朝鮮は2017年11月29日を最後に、弾道ミサイルを発射していない。だが、2月末にベトナムの首都ハノイで行われたドナルド・トランプ米大統領と正恩氏による首脳会談が決裂してからは、ミサイル発射施設を整備する動きが、たびたび確認されている。
北朝鮮は緊張を高めることによって、交渉相手に譲歩を迫る「瀬戸際外交」を得意としてきた。ただ、この手法が、トランプ氏や、北朝鮮が「死神」と恐れるジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に通用するかは不明だ。
評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「北朝鮮が弾道ミサイル発射や、ロケットエンジンの燃焼実験をする可能性は十分ある。発射までの経緯や打つ方向によって、その後の展開は変わってくるだろう。例えば、北朝鮮が『人工衛星』として発射予告をした時点で、米国が『絶対に許さない』と警告したにもかかわらず強行すれば、『戦争のリスク』を孕むことになる」と語った。
【私の論評】北がミサイル発射実験を開始すれば、米・中・露に圧力をかけられ制裁がますます厳しくなるだけ(゚д゚)!
さる2月27、28日に行われた2回目の米朝首脳会談ですが、ドナルド・トランプアメリカ大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長の会談は、事実上の物別れに終わり、共同声明すら出されませんでした。
なぜこのようになったかといえば、そのキーワードは、Status quo(ステイタス・クォー)です。この一言さえ意味が分かっていれば、今回の会談を読み解くなど、たやすいです。さらに、北朝鮮がミサイルの発射実験を開始したり、それら継続することになれば、どうなるかを予測するのもたやすいです。ラテン語の原語の意味では「現状」ですが、現代では「現状維持」とも訳されます。
なぜこのようになったかといえば、そのキーワードは、Status quo(ステイタス・クォー)です。この一言さえ意味が分かっていれば、今回の会談を読み解くなど、たやすいです。さらに、北朝鮮がミサイルの発射実験を開始したり、それら継続することになれば、どうなるかを予測するのもたやすいです。ラテン語の原語の意味では「現状」ですが、現代では「現状維持」とも訳されます。
米朝首脳会談に関係するアクターの中で、Status quoを望まない国はどこだったのでしょうか。そもそも誰がアクターなのかを理解していれば、愚かな報道には惑わされることはありません。
「朝鮮戦争が終結する」「日本人拉致被害者が帰ってくるかもしれない」「朝鮮半島の新時代に向けて、日本は巨額の資金供出をしなければならないのか」などなど。はっきり言いいますが、この状況で北朝鮮が日本人拉致被害者を一人でも帰してくるならば、何かの嫌がらせ以外にあり得ないです。
現代の情勢を分析する前に、Status quoを望まない国、すなわち現状打破勢力の歴史を知っているほうが、急がば回れで米朝会談の真相が見えてきます。
第二次世界大戦直前。1939年の時点で、現状維持勢力の代表はイギリスでした。しかし、大英帝国は既に絶頂期の勢力を失い、新興大国の米国が覇権を奪う勢いでした。英米の関係では、イギリスが現状維持国で、米国が現状打破国でした。
だが、両国には共通の敵のソ連がいました。ソ連は共産主義を掲げる、現状打破を公言する国でした。共産主義とは「世界中の国を暴力で転覆し、世界中の金持ちを皆殺しにすれば、全人類は幸せになれる」という危険極まりない思想です。
現代の情勢を分析する前に、Status quoを望まない国、すなわち現状打破勢力の歴史を知っているほうが、急がば回れで米朝会談の真相が見えてきます。
第二次世界大戦直前。1939年の時点で、現状維持勢力の代表はイギリスでした。しかし、大英帝国は既に絶頂期の勢力を失い、新興大国の米国が覇権を奪う勢いでした。英米の関係では、イギリスが現状維持国で、米国が現状打破国でした。
だが、両国には共通の敵のソ連がいました。ソ連は共産主義を掲げる、現状打破を公言する国でした。共産主義とは「世界中の国を暴力で転覆し、世界中の金持ちを皆殺しにすれば、全人類は幸せになれる」という危険極まりない思想です。
ソ連に対して、英米は共通の警戒心を抱く現状維持国でした。ここに、ナチスドイツが現れまし。アドルフ・ヒトラー率いるナチスは、第一次大戦の敗戦国としてのドイツの地位に甘んじないと公言する現状打破国でした。
英独ソの3国は主に東欧での勢力圏をめぐり抗争しました。現状維持を望む英国に対し、ドイツが東欧を侵略して第二次世界大戦がはじまりました。イギリスは米国を味方に引き入れドイツを倒したと思ったのも束の間、東欧を丸ごとソ連に併合されました。辛抱強く現状を変更できる戦機を待った、ソ連の独裁者・スターリンの悪魔のような慧眼の勝利でした。
英独ソの3国は主に東欧での勢力圏をめぐり抗争しました。現状維持を望む英国に対し、ドイツが東欧を侵略して第二次世界大戦がはじまりました。イギリスは米国を味方に引き入れドイツを倒したと思ったのも束の間、東欧を丸ごとソ連に併合されました。辛抱強く現状を変更できる戦機を待った、ソ連の独裁者・スターリンの悪魔のような慧眼の勝利でした。
ソ連の衛星国となった東欧諸国 |
さて、現代も現状維持勢力と打破勢力の相克で動きます。ただし、世界大戦のように劇的に動く時はめったにありません。では、東アジアにおいて、誰が今この瞬間の現状打破を望んでいるでしょうか。
昨年の米朝会談で、北朝鮮は核兵器の全面廃棄と今後の核実験の中止を約束しました。約束を履行した場合の経済援助も含みがありました。
北朝鮮の望みは、体制維持です。金正恩とその取り巻きの独裁体制の維持、労働党幹部が贅沢できる程度の最小限度の経済力、対外的に主体性を主張できるだけの軍事力。米国に届く核ミサイルの開発により、大統領のトランプを交渉の席に引きずり出しました。間違っても、戦争など望んでいません。
この立場は、北朝鮮の後ろ盾の中国やロシアも同じです。習近平やウラジーミル・プーチンは生意気なこと極まりない金一族など、どうでも良いのです。ただし、朝鮮半島を敵対勢力(つまり米国)に渡すことは容認できないのです。
昨年の米朝会談で、北朝鮮は核兵器の全面廃棄と今後の核実験の中止を約束しました。約束を履行した場合の経済援助も含みがありました。
北朝鮮の望みは、体制維持です。金正恩とその取り巻きの独裁体制の維持、労働党幹部が贅沢できる程度の最小限度の経済力、対外的に主体性を主張できるだけの軍事力。米国に届く核ミサイルの開発により、大統領のトランプを交渉の席に引きずり出しました。間違っても、戦争など望んでいません。
この立場は、北朝鮮の後ろ盾の中国やロシアも同じです。習近平やウラジーミル・プーチンは生意気なこと極まりない金一族など、どうでも良いのです。ただし、朝鮮半島を敵対勢力(つまり米国)に渡すことは容認できないのです。
だから、後ろ盾になっているのです。結束して米国の半島への介入を阻止し、軍事的、経済的、外交的、その他あらゆる手段を用いて北朝鮮の体制維持を支えるのです。
ただし、絶頂期を過ぎたとはいえ、米国の国力は世界最大です。ちなみに、ロシアの軍事力は現在でも侮れないですが、その経済力は、GDPでみると東京都を若干下回る程度です。
ロシアも中国も現状打破の時期とは思っていません。たとえば、在韓米軍がいる間、南進など考えるはずはないです。長期的にはともかく、こと半島問題に関しては、現状維持を望んでいるのです。少なくとも、今この瞬間はそうなのです。
では、米国のほうはどうでしょうか。韓国の文在寅政権は、すべてが信用できないです。ならば、どこを基地にして北朝鮮を攻撃するのでしょうか。さらに、北の背後には中露両国が控えています。そんな状況で朝鮮戦争の再開など考えられないです。
では、米国のほうはどうでしょうか。韓国の文在寅政権は、すべてが信用できないです。ならば、どこを基地にして北朝鮮を攻撃するのでしょうか。さらに、北の背後には中露両国が控えています。そんな状況で朝鮮戦争の再開など考えられないです。
米・中・露とも朝鮮戦争の再開など望んでいない |
しかも、文在寅は在韓米軍の撤退を本気で考えています。そうなれば、朝鮮半島が大陸(とその手下の北朝鮮)の勢力下に落ちます。ならば、少しでも韓国陥落を遅らせるのが現実的であって、38度線の北側の現状変更など妄想です。
しかも、以前からこのブログにも掲載しているように、現状をさらに米国側から検証してみると、北朝鮮およびその核が、朝鮮半島全体に中国の覇権が及ぶことを阻止しているのです。北の核は、日米にとって脅威であるばかりではなく、中国やロシアにとっても脅威なのです。
さらに、韓国は中国に従属しようとしてるのですが、韓国は中国と直接国境を接しておらず、北朝鮮をはさんで接しています。そうして、北朝鮮は中国の干渉を嫌っています。そのため、韓国は米国にとってあてにはならないのですが、かといって完璧に中国に従属しているわけでもなく、その意味では韓国自体が安全保障上の空き地のような状態になっています。
この状況は米国にとって決して悪い状態ではないです。この状況が長く続いても、米国が失うものは何もありません。最悪の自体は、中国が朝鮮半島全体を自らの覇権の及ぶ地域にすることです。これは、米国にとっても我が国にとっても最悪です。
昨年の米朝合意は特に期限を設けていません。「本気で核廃絶する気があるのか?」「あるから制裁を解除しろ。金寄越せ」「順序が違う!」と罵りあっていて、何も困ることはありません。成果など不要なのです。
さて、米中露北の関係4か国の中で、今この瞬間の現状打破を望む国はゼロです。関係者すべてがStatus quoを望んでいるのです。「米朝会談成果なし」など、外交の素人の戯言に過ぎません。
昨年の米朝合意は特に期限を設けていません。「本気で核廃絶する気があるのか?」「あるから制裁を解除しろ。金寄越せ」「順序が違う!」と罵りあっていて、何も困ることはありません。成果など不要なのです。
さて、米中露北の関係4か国の中で、今この瞬間の現状打破を望む国はゼロです。関係者すべてがStatus quoを望んでいるのです。「米朝会談成果なし」など、外交の素人の戯言に過ぎません。
そもそも、外交交渉における「成果」とは何でしょうか。自らの何らかの国益を譲歩することです。仮に一方的に要求をのませるとしたら相手の恨みを買います。それは降伏要求であって、外交ではありません。北朝鮮は中露を後ろ盾にしている限り米国に譲歩する必要もないし、逆に米国だって同じなのです。
今回の交渉は、続けること自体に意味があったのです。さて、わが日本はどうでしょうか。安倍晋三首相は、トランプ大統領に拉致問題の解決を要請したとされています。
そして、拉致問題の解決なくして1円も北に資金援助はしないとの立場を伝えたそうです。当たり前です。これまでの外交では、その当たり前のことを毅然とできなかったからと安倍外交を称賛しなければならないとしたら、本当に情けないことです。
今の日本は現状打破を望む必要はないです。交渉で被害者を取り返せば良いのです。全員奪還が我が国是です。だが、北は何人かを帰して幕引きにするカードをちらつかせています。日本に独自の軍事力がないから舐められているのです。日本の道は、防衛費増額しかないのです。
今の日本は現状打破を望む必要はないです。交渉で被害者を取り返せば良いのです。全員奪還が我が国是です。だが、北は何人かを帰して幕引きにするカードをちらつかせています。日本に独自の軍事力がないから舐められているのです。日本の道は、防衛費増額しかないのです。
さて、北朝鮮が核実験や核ミサイルの発射実験を開始したらどうなるかということですが、先に述べたように、北朝鮮も現状維持を望んでいます。であれば、せいぜい人工衛星の打ち上げ実験程度にとどめて、あとは核実験や、ミサイル発射実験などはしないでしよう。
もし従来のようにミサイル発射実験や核開発をすれば、どうなるでしょうか。現状維持を望む、米国、中国、ロシアから圧力を加えられ、制裁がますます厳しくなるだけのことになります。そのようなことは、北朝鮮自身が望んでいないでしょし、余計なことをすれば、現状が崩れることを金正恩は理解していることでしょう。
にもかかわらず、北がミサイル発射実験や核開発を継続すれば、米国が軍事攻撃する可能性もでてきます。さらに、米国が中露にたとえ北朝鮮の体制が変わったとしても、現状維持することを約束するとともに、中露も現状変更をしないことを米国に約束すれば、中露は米国の北に対する軍事攻撃を許容する可能性も十分あります。そうなった場合には、米国は北を軍事攻撃することでしょう。
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