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2020年7月24日金曜日

【コロナ後の世界】「裸の王様」習主席の最終手段は戦争!? 国際的に四面楚歌も“強硬路線”展開の矛盾 — 【私の論評】中国は総力戦はしないが、6つの不可避な戦争のいずれかに挑戦する可能性は十分ある!(◎_◎;)

【コロナ後の世界】「裸の王様」習主席の最終手段は戦争!? 国際的に四面楚歌も“強硬路線”展開の矛盾 

沖縄県尖閣諸島
 三流の指導者は、行き詰まると戦争に打って出る特徴がある。

 周囲にイエスマンと茶坊主しかいない中国の習近平執行部。その失敗を冷ややかに待つのが李克強首相や、汪洋副首相ら共産主義青年団だ。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)は当初、反共の連合だった。いつしか全加盟国が中国のサプライチェーンに巻き込まれ、中国批判は希釈化した。南シナ海の領海問題ではベトナム、フィリピンが強硬だが、カンボジアなど「北京の代理人」かと思われる振る舞いである。

 東シナ海、南シナ海に戦雲が湧き、派手に展開する中国の軍事演習と米軍の対応を目撃すれば、ドナルド・トランプ米大統領のいう「台湾防衛」の本気度が試されることになる。沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵犯、接近は頻度が増した。

 しかし、中国国内事情を勘案すれば、「裸の王様」はすっかり飽きられており、「習近平よ、さようなら」というムードなのだ。

 第1は、全国人民代表大会(全人代)で、国内総生産(GDP)成長率の目標値が明示されず、第1四半期はマイナス6・8%と報告された。果たして、その程度で済むのか? 雇用が特に懸念され、李首相は「9億の労働者人口があり、雇用を守り、雇用機会を創造する」と記者会見した。

 第2は、景気刺激策を遂行するための無謀な財政措置である。

 金利の低め誘導、中小企業への融資拡大など主に企業支援政策である。新しく債務となる財政支出は合計5・5兆元(約84兆2600億円)。これは中国GDPの4・1%に相当する。

第3に、李首相の基調演説から、台湾「平和的統一」の文言が消えたことだ。

 台湾総統に再選された蔡英文氏は、就任式で「(中国の唱える)一国二制度には反対」と明確なメッセージを出した。

 尖閣諸島周辺や台湾海峡に、中国海軍の艦船が出没し、領空接近は日常の風景となった。日本の「2020年防衛白書」は明確に、中国の軍事的脅威を記載するようになった。

 中国の富裕層は、全人代で打ち出された「香港の治安維持強化」という方向に賛同を示しつつも、ホンネでは不安視し、資産をもっと安全な場所へ移管している。

 マイナスになることは分かっていても、中国は強硬路線を捨てられない。国際的に四面楚歌(そか)でも、対外活動を強硬路線で展開しなければ習政権は国内で孤立するという矛盾を抱えているからだ。

 そして、すべての矛盾をそらす最後の手段が戦争である。

 ■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『戦後支配の正体 1945-2020』(ビジネス社)、『「コロナ以後」中国は世界最終戦争を仕掛けて自滅する』(徳間書店)など多数。

【私の論評】中国は総力戦はしないが、6つの不可避な戦争のいずれかに挑戦する可能性は十分ある!(◎_◎;)

中国ウォッチャーとして有名な、上の宮崎正弘氏の記事では、矛盾を逸らす最後の手段としての戦争があり得ることを主張しています。

戦争というと、まず頭に浮かぶのは、台湾を武力統一することです。それに、尖閣諸島の奪取もあり得ます。これらは、日本人ならすぐに思い浮かぶことです。他には、どのような戦争があり得るのでしょうか。

昨日このブログでは、トゥキディディスの罠に嵌って、米中両国が総力戦に入ることはないであろうことと、その根拠も述べました。その上で、総力戦はないものの局地戦はあり得ることを主張しました。その事例として、米軍による南シナ海の中国軍基地への攻撃を挙げました。

本日は、その続きとして、中国による局地戦としては、どのようなものが考えられるのかを掲載します。

これに対するヒントとなるような内容が、2013年11月26日豪州戦略政策研究所(ASPI)のブログ・サイトThe Strategistに掲載されていました。豪州国立大学(ANU)のウェイド客員研究員が、中国がメディアを通して、反米感情を煽ったり、領土拡張を訴えたりしている現状を紹介して、警告を発しました。

当時ウェイド客員研究員は、中国の新書『中国は恐れない――国家安全保障への新脅威と戦略対応』を分析し、人民解放軍の戦略の一部として、軍人か否かを問わず国内の精神的引き締めを行なうと共に、中国の動を規制する外国勢力を牽制するものであると分析し、その他にも、人民解放軍が係ったと思われる映画と通信社の記事にも、同様の分析が成り立つことを主張しました。

中国の映画『静かなる競争』は、2013年10月に中国及び世界のネットに上がるや否や論争を呼びました。そして、その月の末までには、何の告知もなく、映画は中国のサイトからは削除されました。ただ、YouTubeでは見ることができましたが、今は削除されています。

映画は、米国が、5つの方法によって中国政府を転覆させようとしている様子を描いています。その方法とは、(1)政治的に中国を弱体化させる、(2)文化的浸透を図る、(3)思想戦をしかける、(4)諜報部隊を訓練する、及び(5)中国国内の反体制派を強化すること、です。全体としては、米国が中国を支配下に置こうとしているということを伝えたいようです。映画を見た中国国内の軍人や民間人は、侮辱された感情と怒りを持つだろう内容です。

映画の製作に人民解放軍は密接にかかわりました。具体的には、国防大学、中国社会科学院、及び、国家安全部の管轄にある現代国際関係研究院が、2013年初めに映画の製作に関与しました。これは、確かに、米国のアジア回帰に対応したものですが、より深い根本原因もあるでしょう。これだけ権威ある中国の諸機関が映画製作に携わったということは、そこで示された極端な感情が人民解放軍のタカ派に限られたものではないことを表しています。

2013年7月には、更に問題となる領土回復主義の記事が、中国新聞網のサイトに掲載されました。この記事は、「今後50年間に中国が戦わなければならない6つの戦争」という題名で、人民解放軍の一部に見られる超国粋主義の態度を示しています。しかし、このような記事が中国国営通信社に掲載されるという事実から、これが指導部で認められた考えであることが想像出来ます。

6つの「不可避な」戦争は、時系列で示されています。(1)台湾統一戦争(2020-2025年)、(2)南シナ海の様々な諸島の領土回復戦争(2025-2030年)、(3)チベット南部の領土回復戦争(2035-2040年)、(4)釣魚島及び琉球諸島回復戦争(2040-2045年)、(5)外蒙古統一戦争(2045-2050年)、(6)ロシアに奪取された領土の回復戦争(2055-2060年)です。

台湾に関しては、中国は、武力行使の手段を放棄したことはなく、具体的時期が示されたこともそれまではありません。偶然でしょうが、丁度この頃、台湾軍が、中国は2020年までに台湾を併合する軍事的能力を有するだろう、と発表したばかりでした。

南シナ海に関しては、現在のいざこざが戦争に発展することは想像に難くないです。3つ目の中国によるインドのArunachal Pradesh州への領有権の主張は、何十年も中印関係の棘でしたが、中国がヒマラヤのチベット文化圏のどこまでを勢力圏として主張しているかは、今だ明らかにされていません。今年の6月15日夜、ヒマラヤ高地のギャルワン渓谷で中印が衝突。報道では両国で数十人の死者が出たもようです。

尖閣諸島に対する中国の領有権の主張は、最近よく報道されるので、その状況が戦争に発展するのにさほどの想像は必要としないでしょう。今年は、現在までにすでに100日以上も中国の海警局の艦艇が、尖閣付近に出没しています。

また、モンゴルが清王朝から継承した土地に関しても、中国は領有権を主張しています。ロシアの極東地域についても同様で、多くの中国人は、そこはロシアが不当に占拠したものだと思っています。

上記の戦争は、現在の中国の政策で裏付けされたものでもなければ、極端な超国粋主義者の見解にすぎないかもしれないです。しかし、戦争によって領土を回復しなければならないという主張は、長い間中国で言われてきたことです。

中国(中華民国)政府公認の1938年「中国の屈辱」地図は、上記記事が主張する領土と驚くほど一致しています。この地図の中国が「失った」領土には、ロシア極東、琉球諸島、台湾及び南シナ海のみならず、韓国、ヴェトナム、カンボジア、ラオス、タイ、ミャンマー、マレー半島とシンガポール、ネパール、パキスタンの一部及び中央アジアの殆どが含まれています。

「中国の屈辱」地図
中国の主張する領土が、今日の中国の国境を超えて70年以上前に遡ることや、中国の超国粋主義者の言い分を読むにつけ、我々は、これらの地域に住む人々が、恐怖を感じたり危険に晒されたりすることがないようにしなければならないだろう、と論じています。

中国の戦略は、中長期的です。上記の論説で紹介された記事のように、50年間で6つも戦争をしかけては中国ももたないと思いますが、中国人民解放軍は、ハードな軍事戦争のみならず、「三戦」(心理戦、情報戦、法律戦)と呼ばれるソフトな戦争もしかけます。更に、今日では、経済や文化も重要な手段となり、人海戦術も活用しています。

5カ年計画、10カ年計画は、中国共産党の一政権の期間であり、中国にとっての中期、長期は、50年、100年の戦略計画となります。

欧米や日本等の民主主義国は、単年度予算かつ政権も4年位の任期で(最近まで日本の政権は1年位でした)、中長期は、5~10年の計画となります。

ただ、 50年、100年の戦略計画は、たとえそれが国家による計画といえども、あまりに長期です。そもそも、そのようなスパンでは、計画当初の中共幹部のほとんどが、亡くなっているか、引退しているはずです。それに、最初の想定から、世界情勢や技術水準などあらゆる想定が異なるものなり、ほとんど無意味な計画になるでしょう。
現実的には、やはり5年〜10年の計画でしょう。このブログでは、中国海軍のロードマップを紹介したことがあります。それによれば、中国海軍は既に尖閣列島を含む第一列島線を傘下に収め、今年は第二列島線を我がものに収めることになっています。ご存知のように、尖閣諸島すら奪取できない今日、これはもうほとんど絵に描いた餅にすぎません。
私は、習近平自身もこれらの計画が計画通りに進むなどとは思っていないと思います。そんなことより、我々が危惧すべきは、プーチンによるクリミア統合のようなことが、習近平によってなされる可能性です。
2018年ロシアの大統領選挙のとき、プーチンの支持率かなり高いものでした。その4年前、ウクライナ南部のクリミアを併合したことに対する欧米からの経済制裁。そして主力の輸出品である原油の価格低迷。ロシアは当時も、厳しい経済状況を抜け出せずにいました。

国民の可処分所得は4年連続で落ち込み、最低生活費よりも低い所得で生活している人は、この4年間で400万人以上増加しました。国民の生活実感はなかなか改善されないのが現実でした。

それにもかかわらず、当時、プーチン大統領の支持率は80%台で推移。モスクワでは2017年12月、プーチン大統領を題材にした絵画や彫刻などを集めた美術展覧会「スーパープーチン」も開かれるなど、人気にかげりは見られませんでした。2018年の大統領選挙でプーチンは、通算4期目の当選を果たしました。

2017年12月開催された美術展覧会「スーパープーチン」

それは、やはり戦争を起こし、それに勝利したことが大きいでしょう。戦争は、多くの国民に愛国心を燃え上がらせる一つの手段でもあります。この戦争がなければ、あるいはこの戦争に負けていれば、プーチンは今頃引退していたかもしれません。

私は、このようなことを習近平も考えるの可能性は十分あると思います。このブログでも何度か紹介されていただいたように、中国は自国の都合で動く国であり、そもそも外交などあまり重視していません。

本来戦争は、外交手段を尽くしても解決できない他国との争いを解決するための手段の一つに過ぎないのですが、習近平は対外活動を強硬路線の最強の手段として、戦争を選ぶ可能性は十分あります。そうして、その目的は、習近平自身の統治の正統性を強化することにあります。

そもそも、習近平は、建国の父毛沢東や、経済改革を実現した鄧小平などのような大きな実績はありません。だから、統治の正統性は、どうしても弱いところがあります。

中国では、ロシアのように選挙がありませんが、だからこそ、誰の目にも明らに統治の正当性を主張し、特に共産党の中で自己の正当性を主張する必要があります。

上に掲載した六つの戦争のうち、いずれかの戦争を行い、勝利すれば、習近平の統治の正統性は飛躍的に高まり、当面大きな権力闘争などしなくてもすむようになります。

本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点でいずれかの戦争を行い、それに勝利すれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となります。

ですから、今年中にもいずれかで局地戦争が起こる可能性は、十分にあります。習近平としても、大きな冒険はしたくないので、米国と直接対決せざるを得なくなるような戦争はしないと思います。

中国とソ連は1929年と1969年に国境紛争をしており、1969年の時は核戦争一歩手前まで行った
台湾統一戦争、南シナ海の領土回復戦争、尖閣諸島奪取などは、米国が直接絡みます。もしこれらが、攻撃されれば、米国はすぐに反撃に出る可能性があります。ロシアに奪取された領土の回復戦争もやりたくはないでしょう。

中露は互いに友情は感じていないかもしれませんが、それにしても、国連などでは、中国に賛成する数少ない国の一つでもあります。それに過去には、中ソ国境紛争という苦い経験もあります。

そうなると、チベット南部のインドからの領土回復戦争あたりが手頃でやりやすいかもしれません。

これは、インドにとっては脅威ですが、中国に対抗する勢力にとっては、一つのチャンスかもしれません。これを完膚なきまでに、打ち負かせば、習近平の統治の正統性は地に落ちることになり、失脚する可能性もあります。

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2019年4月4日木曜日

北朝鮮『4・15ミサイル発射』に現実味!? 「絶対に許さない」米は警告も…強行なら“戦争”リスク―【私の論評】北がミサイル発射実験を開始すれば、米・中・露に圧力をかけられ制裁がますます厳しくなるだけ(゚д゚)!


金正恩氏は東倉里から“人工衛星”を発射するのか

 北朝鮮が「人工衛星」と称して弾道ミサイルを発射する可能性が現実味を増してきた。北西部・東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場の準備が完了したとの分析があるのだ。「Xデー」として、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の祖父、金日成(キム・イルソン)主席の誕生日(15日)などが予想されている。米朝首脳会談の決裂を受け、北朝鮮は再び「瀬戸際外交」に戻るのか。朝鮮半島の緊張が高まっている。

 「北朝鮮が東倉里長距離ミサイル発射場の整備を事実上終えた」「最高指導部が決心すればいつでも発射できる状態を維持中」

 韓国紙、中央日報(日本語版)は2日、韓国政府当局者がこう伝えたと報じた。

 記事では、北朝鮮が3月27日にドイツ、同29日にフィンランドで予定されていた会議への出席を、ドタキャンしてきたことも伝えた。こうした状況から、国会に当たる最高人民会議が開かれる今月11日や、日成氏の誕生日などに、「人工衛星打ち上げ」を強行する可能性もあると指摘した。

 北朝鮮は2017年11月29日を最後に、弾道ミサイルを発射していない。だが、2月末にベトナムの首都ハノイで行われたドナルド・トランプ米大統領と正恩氏による首脳会談が決裂してからは、ミサイル発射施設を整備する動きが、たびたび確認されている。

米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)と、北朝鮮分析サイト「38ノース」は3月7日、衛星画像に基づき、東倉里にあるミサイル発射場の構造物の再建が完了し、稼働状態に戻ったとの分析を発表した。

 北朝鮮は緊張を高めることによって、交渉相手に譲歩を迫る「瀬戸際外交」を得意としてきた。ただ、この手法が、トランプ氏や、北朝鮮が「死神」と恐れるジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に通用するかは不明だ。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「北朝鮮が弾道ミサイル発射や、ロケットエンジンの燃焼実験をする可能性は十分ある。発射までの経緯や打つ方向によって、その後の展開は変わってくるだろう。例えば、北朝鮮が『人工衛星』として発射予告をした時点で、米国が『絶対に許さない』と警告したにもかかわらず強行すれば、『戦争のリスク』を孕むことになる」と語った。

【私の論評】北がミサイル発射実験を開始すれば、米・中・露に圧力をかけられ制裁がますます厳しくなるだけ(゚д゚)!

さる2月27、28日に行われた2回目の米朝首脳会談ですが、ドナルド・トランプアメリカ大統領と金正恩北朝鮮労働党委員長の会談は、事実上の物別れに終わり、共同声明すら出されませんでした。

なぜこのようになったかといえば、そのキーワードは、Status quo(ステイタス・クォー)です。この一言さえ意味が分かっていれば、今回の会談を読み解くなど、たやすいです。さらに、北朝鮮がミサイルの発射実験を開始したり、それら継続することになれば、どうなるかを予測するのもたやすいです。ラテン語の原語の意味では「現状」ですが、現代では「現状維持」とも訳されます。


米朝首脳会談に関係するアクターの中で、Status quoを望まない国はどこだったのでしょうか。そもそも誰がアクターなのかを理解していれば、愚かな報道には惑わされることはありません。

「朝鮮戦争が終結する」「日本人拉致被害者が帰ってくるかもしれない」「朝鮮半島の新時代に向けて、日本は巨額の資金供出をしなければならないのか」などなど。はっきり言いいますが、この状況で北朝鮮が日本人拉致被害者を一人でも帰してくるならば、何かの嫌がらせ以外にあり得ないです。

現代の情勢を分析する前に、Status quoを望まない国、すなわち現状打破勢力の歴史を知っているほうが、急がば回れで米朝会談の真相が見えてきます。

第二次世界大戦直前。1939年の時点で、現状維持勢力の代表はイギリスでした。しかし、大英帝国は既に絶頂期の勢力を失い、新興大国の米国が覇権を奪う勢いでした。英米の関係では、イギリスが現状維持国で、米国が現状打破国でした。

だが、両国には共通の敵のソ連がいました。ソ連は共産主義を掲げる、現状打破を公言する国でした。共産主義とは「世界中の国を暴力で転覆し、世界中の金持ちを皆殺しにすれば、全人類は幸せになれる」という危険極まりない思想です。

ソ連に対して、英米は共通の警戒心を抱く現状維持国でした。ここに、ナチスドイツが現れまし。アドルフ・ヒトラー率いるナチスは、第一次大戦の敗戦国としてのドイツの地位に甘んじないと公言する現状打破国でした。

英独ソの3国は主に東欧での勢力圏をめぐり抗争しました。現状維持を望む英国に対し、ドイツが東欧を侵略して第二次世界大戦がはじまりました。イギリスは米国を味方に引き入れドイツを倒したと思ったのも束の間、東欧を丸ごとソ連に併合されました。辛抱強く現状を変更できる戦機を待った、ソ連の独裁者・スターリンの悪魔のような慧眼の勝利でした。

ソ連の衛星国となった東欧諸国


さて、現代も現状維持勢力と打破勢力の相克で動きます。ただし、世界大戦のように劇的に動く時はめったにありません。では、東アジアにおいて、誰が今この瞬間の現状打破を望んでいるでしょうか。

昨年の米朝会談で、北朝鮮は核兵器の全面廃棄と今後の核実験の中止を約束しました。約束を履行した場合の経済援助も含みがありました。

北朝鮮の望みは、体制維持です。金正恩とその取り巻きの独裁体制の維持、労働党幹部が贅沢できる程度の最小限度の経済力、対外的に主体性を主張できるだけの軍事力。米国に届く核ミサイルの開発により、大統領のトランプを交渉の席に引きずり出しました。間違っても、戦争など望んでいません。

この立場は、北朝鮮の後ろ盾の中国やロシアも同じです。習近平やウラジーミル・プーチンは生意気なこと極まりない金一族など、どうでも良いのです。ただし、朝鮮半島を敵対勢力(つまり米国)に渡すことは容認できないのです。

だから、後ろ盾になっているのです。結束して米国の半島への介入を阻止し、軍事的、経済的、外交的、その他あらゆる手段を用いて北朝鮮の体制維持を支えるのです。

ただし、絶頂期を過ぎたとはいえ、米国の国力は世界最大です。ちなみに、ロシアの軍事力は現在でも侮れないですが、その経済力は、GDPでみると東京都を若干下回る程度です。

ロシアも中国も現状打破の時期とは思っていません。たとえば、在韓米軍がいる間、南進など考えるはずはないです。長期的にはともかく、こと半島問題に関しては、現状維持を望んでいるのです。少なくとも、今この瞬間はそうなのです。

では、米国のほうはどうでしょうか。韓国の文在寅政権は、すべてが信用できないです。ならば、どこを基地にして北朝鮮を攻撃するのでしょうか。さらに、北の背後には中露両国が控えています。そんな状況で朝鮮戦争の再開など考えられないです。

米・中・露とも朝鮮戦争の再開など望んでいない

しかも、文在寅は在韓米軍の撤退を本気で考えています。そうなれば、朝鮮半島が大陸(とその手下の北朝鮮)の勢力下に落ちます。ならば、少しでも韓国陥落を遅らせるのが現実的であって、38度線の北側の現状変更など妄想です。

しかも、以前からこのブログにも掲載しているように、現状をさらに米国側から検証してみると、北朝鮮およびその核が、朝鮮半島全体に中国の覇権が及ぶことを阻止しているのです。北の核は、日米にとって脅威であるばかりではなく、中国やロシアにとっても脅威なのです。

さらに、韓国は中国に従属しようとしてるのですが、韓国は中国と直接国境を接しておらず、北朝鮮をはさんで接しています。そうして、北朝鮮は中国の干渉を嫌っています。そのため、韓国は米国にとってあてにはならないのですが、かといって完璧に中国に従属しているわけでもなく、その意味では韓国自体が安全保障上の空き地のような状態になっています。

この状況は米国にとって決して悪い状態ではないです。この状況が長く続いても、米国が失うものは何もありません。最悪の自体は、中国が朝鮮半島全体を自らの覇権の及ぶ地域にすることです。これは、米国にとっても我が国にとっても最悪です。

昨年の米朝合意は特に期限を設けていません。「本気で核廃絶する気があるのか?」「あるから制裁を解除しろ。金寄越せ」「順序が違う!」と罵りあっていて、何も困ることはありません。成果など不要なのです。

さて、米中露北の関係4か国の中で、今この瞬間の現状打破を望む国はゼロです。関係者すべてがStatus quoを望んでいるのです。「米朝会談成果なし」など、外交の素人の戯言に過ぎません。

そもそも、外交交渉における「成果」とは何でしょうか。自らの何らかの国益を譲歩することです。仮に一方的に要求をのませるとしたら相手の恨みを買います。それは降伏要求であって、外交ではありません。北朝鮮は中露を後ろ盾にしている限り米国に譲歩する必要もないし、逆に米国だって同じなのです。

今回の交渉は、続けること自体に意味があったのです。さて、わが日本はどうでしょうか。安倍晋三首相は、トランプ大統領に拉致問題の解決を要請したとされています。

そして、拉致問題の解決なくして1円も北に資金援助はしないとの立場を伝えたそうです。当たり前です。これまでの外交では、その当たり前のことを毅然とできなかったからと安倍外交を称賛しなければならないとしたら、本当に情けないことです。

今の日本は現状打破を望む必要はないです。交渉で被害者を取り返せば良いのです。全員奪還が我が国是です。だが、北は何人かを帰して幕引きにするカードをちらつかせています。日本に独自の軍事力がないから舐められているのです。日本の道は、防衛費増額しかないのです。

さて、北朝鮮が核実験や核ミサイルの発射実験を開始したらどうなるかということですが、先に述べたように、北朝鮮も現状維持を望んでいます。であれば、せいぜい人工衛星の打ち上げ実験程度にとどめて、あとは核実験や、ミサイル発射実験などはしないでしよう。

もし従来のようにミサイル発射実験や核開発をすれば、どうなるでしょうか。現状維持を望む、米国、中国、ロシアから圧力を加えられ、制裁がますます厳しくなるだけのことになります。そのようなことは、北朝鮮自身が望んでいないでしょし、余計なことをすれば、現状が崩れることを金正恩は理解していることでしょう。

にもかかわらず、北がミサイル発射実験や核開発を継続すれば、米国が軍事攻撃する可能性もでてきます。さらに、米国が中露にたとえ北朝鮮の体制が変わったとしても、現状維持することを約束するとともに、中露も現状変更をしないことを米国に約束すれば、中露は米国の北に対する軍事攻撃を許容する可能性も十分あります。そうなった場合には、米国は北を軍事攻撃することでしょう。

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2017年5月22日月曜日

落合信彦氏 「プーチンは戦争したくて仕方がない男だ」―【私の論評】ロシアによる小さな戦争はこれからも起こる(゚д゚)!

落合信彦氏 「プーチンは戦争したくて仕方がない男だ」


アメリカと北朝鮮による武力衝突が懸念されているが、「朝鮮有事とともに脅威となっているのは、米ロの衝突が起きること」と指摘するのは、ジャーナリストの落合信彦氏だ。

                 * * *

 昨年秋に上梓した『そして、アメリカは消える』で指摘したように、プーチンは戦争したくて仕方がない男だ。

 プーチンは2014年にクリミア半島を略奪し、ウクライナと戦争を起こした。さらに、アサドをIS(イスラム国)の攻撃から防ぐという口実をつけて、シリアに介入した。あの男は、自分が世界の覇者だと考えているのだ。

 米軍のミサイル攻撃は、シリアでの米ロ衝突につながる可能性がある。トランプとプーチンというまともではない指導者のことだから、それが全面的な戦争に発展することさえ懸念される。


 クリントン政権で国防長官を務めたウィリアム・ペリー氏も一昨年の講演で、「アメリカとロシアの間で核戦争が起きる可能性が大きい」と語っている。ペリー氏の主張が、信憑性を増してきたのだ。

 プーチン自身も、ISによるテロの脅威に晒され始めた。4月3日にサンクトペテルブルクの地下鉄で起きた爆弾テロに、プーチンは大きな衝撃を受けたはずだ。テロはプーチンのサンクトペテルブルク訪問中に起きた。容疑者はキルギス出身で、ISとの関係が取り沙汰されている。

 ロシアでは今、多くの若者がISの影響を受け、シリアなどでISと接触してテロの方法などを訓練された後、帰国していると言われる。爆弾を持った不満分子が多数いるという状況だ。サンクトペテルブルクで起きたようなテロは、ロシア国内で今後も繰り返されるだろう。

 経済が落ち込み、国民がテロに怯える中で、プーチンが批判の矛先をずらすために戦争を始める可能性は、十分ある。いま世界は、あちこちで戦争に向かう動きが加速しているのだ。

 ※SAPIO2017年6月号

【私の論評】ロシアによる小さな戦争はこれからも起こる(゚д゚)!

最近では、中国への対抗軸の一環として、ロシアも仲間に引き入れるべきという意見も聴かれます。私自身も、それに関してこのブログに掲載したこともあります。しかしながら、ロシアという国は一筋縄ではいかないことも十分認識すべきです。

それについては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
安倍首相と米露のバトル口火 TPPは“トランプ版”に衣替え、北方領土はプーチン氏と論戦に―【私の論評】日米は、中国の現体制と、ロシアの中のソ連を叩き潰せ(゚д゚)!
この記事は、昨年の11月10日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事からロシアという国を示した部分を引用します。
現代ロシアを理解するうえで大切なことは、ロシアとソ連は宿敵だということです。ロシアを乗っ取ってできた国がソ連なのですから、両者を一緒くたに考えるべきではありません。

エリツィンは現在では単なる酔っ払いとしか評価されていないのですが、間違いなくロシアの愛国者でした。そのエリツィンから大統領の地位を禅譲されたプーチンがやっていることは、ソ連邦の復活であり、ロシアに対する独裁です。
ロシアの愛国者エリツィン氏
プーチンが日本文化に詳しいから交渉しやすいなどという甘い幻想は捨て去るべきです。ロシアはそれほど単純な国ではありません。例えば、2002年にアレクサンダー・レベジというロシアの政治家が死にました。

彼はロシアの自由化を進め、チェチェン紛争の凍結にも尽力した人物です。NATOや日米同盟にも融和的でした。何より、近代文明とは何かを理解し、実行しようとしました。

ロシア史のなかでも、一番の真人間と言っていい存在です。しかし、彼の末路はヘリコプター事故死です。ロシアではなぜか、プーチンの政敵が『謎の事故死』を繰り返します。このレベジについてなんら言及せず、『プーチンは親日家だから』などと平気で言っているような輩は、間違いなく馬鹿かロシアスパイです。
アレクサンダー・レベジ
しかし、無論プーチンに限らず誰にも様々な面があります。どんな物事にも良い面もあれば悪い面もあります。『誰が善玉で誰が悪玉か』という子どものような区別の仕方はすべきではありません。 
ロシアを支配しているのは、徹底した『力の論理』です。自分より強い相手とはケンカをせず、また、自分より弱い相手の話は聞かないというものです。

日本からの投資などで、ロシア側の姿勢を軟化させ北方領土問題を一歩でも進めよう、などという声もあるようですが、話を進める気のない相手に交渉を持ち込んだところで、条件を吊り上げられるのがオチです。

そもそも、戦争で取られたものは戦争で取り返すしかない、というのが国際社会の常識です。力の裏づけもないまま、話し合いで返してもらおうなどと考えている時点で、日本は甘すぎます。これは、それこそ子どもの論理と謗られてもしかたありません。 
これは、プーチンとメドヴェージェフの役回りを考えてもわかります。子分が大袈裟に騒ぎ立てたところへ、親分が『まあまあ』と薄ら笑いで入ってくるのは、弱肉強食のマフィア社会などでは常套手段です。にもかかわらず子どものままの日本は、プーチンの薄ら笑いを友好的なスマイルだと勘違いしてしまっています。要するに、マフィアの社交辞令を真に受けているわけです。
プーチンとメドベージェフ
そもそも、多くの日本人はロシアを知らなさすぎます。ウクライナの問題にしても、ロシアの歴史を知っていれば『またやってるよ』で終了です。『アメリカの影響力の低下』を論じる向きもありますが、そもそも、旧ソ連邦であるウクライナ、とくにクリミア半島に欧米が手出しできるわけがありません。メキシコにロシアが介入できないのと一緒です。

これは、世界の通史を知れば国際社会の定跡が学べ、おのずと理解できることです。そうして、文明国として、日本が強くなるべき理由やその方法も理解できるはずです。

プーチン大統領にとって、ウクライナはあくまで自分たちの持ち物です。元KGBである彼の故郷はロシアではなくソ連邦なのです。ウクライナを狙うのは、彼が旧ソ連を取り戻そうとする行為の一環なのです。

プーチンは故郷であるソ連邦の歴史をムダにしたくないし、ソ連の崩壊が敗北だったとは決して認めたくないのです。例えばプーチンは、ガスプロムという天然ガスの企業を使って、ロシア人から搾取を続けています。

かつてイギリスが東インド会社でやっていたような植民地化を自国で行っているわけです。この事実だけ見ても、彼がロシアの愛国者ではなく、ソ連への忠誠心が高いと見ていいです。
ソ連の愛国者プーチン
北方領土へのミサイル配備や担当大臣拘束という一連の動きは、北方領土・日露平和条約交渉を妨害しようというプーチンの意図の表れです。 
日本としては、米国と貿易交渉で徹底的にケンカをして、ロシアのプーチン幻想など捨て去り、米国と共同しつつ、何十年かけてもロシアの中のソ連をぶっ潰す、中国の現体制をぶっ潰すことを念頭においた外交を展開すべきです。 
さて、ロシアという国の実情がおぼろげながらでもご理解いただけたものと思います。さて、次にプーチンの人柄を以下に説明しようと思います。

プーチンの人柄を知る上で、絶対に忘れてはならないことが1つあります。それは、奴は自分にとって脅威となる政敵はことごとく暗殺する性癖があるということです。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
邪魔者は殺す プーチン大統領のデスノート―【私の論評】プーチンは、生かさず殺さず利用することが我が国の目指すべき道(゚д゚)!
ウラジーミル・プーチン
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に過去のプーチンによるものとみられる暗殺に関して引用します。
 超大国ロシア復権を目指すプーチン大統領は、政権に批判的な者を露骨に排除してきた。ロシア・旧ソ連圏の安全保障に詳しい軍事アナリストの小泉悠氏は、「ロシアの恐怖政治は今後も続く」と見ている。  
 * * * 
 2015年2月27日、ある男がモスクワ中心部の橋で4発の銃弾を浴びて死亡した。男はロシアの野党指導者ネムツォフ。反プーチンを掲げて大規模デモを開催する2日前の暗殺だった。後に当局は5人を逮捕したが「黒幕」は不明のままだ。
暗殺されたとみられる野党指導者ネムツォフ氏
 プーチンという男を批判する者の不可解な死は今に始まったことではない。
 有名な例が、プーチン政権誕生の鍵を握る事件を追及していたジャーナリストのポリトコフスカヤだ。 
 1999年、ロシア3都市のアパートが連続爆破され、約300人が死亡した。当時、ロシア首相のプーチンはチェチェン独立派武装勢力のテロと断定して報復攻撃を開始した。決断は国民に広く支持され、大統領に上り詰める基盤となった。 
 だが、後に同型の爆弾を仕掛けた不審者がロシアの諜報機関と関係していた事実が発覚。ポリトコフスカヤは、アパート爆破はチェチェン侵攻の口実が欲しいプーチンの「自作自演」ではないかと追及した。
暗殺されたとみられるポリストフスカヤ氏の葬儀
 そして彼女は標的となる。2004年のチェチェン武装勢力による中学校占拠事件を取材する際、現場に向かう機内で提供された一杯の紅茶を飲んで意識を失った。彼女は紅茶に毒を盛られたとして、「ロシア当局による毒殺未遂」だと主張した。 
 奇跡的に一命を取り止めたが、2006年10月7日、モスクワ市内にある自宅アパートのエレベーター内で射殺された。全容は不明だが、この日はプーチン54歳の誕生日であり、暗殺は「最大の贈り物」とされた。 
 3週間後、彼女と同様にロシア政府の関与を追及していた元KGB(ソ連国家保安委員会)のリトビネンコが亡命先のロンドンで体調不良を訴える。髪の毛が抜け、嘔吐を繰り返した彼は、やつれ果てた姿で死亡した。
病気の治療を受けていたリトビネンコ氏
 死体からはロシアで独占的に製造される放射性物質のポロニウム210が検出された。後に英国の調査委員会は、暗殺にロシア政府が関与しており、少なくともプーチンの承認を得ていたと結論づけた。 
 KGBには「チェキスト(情報機関員)は死ぬまでチェキストだ」との鉄則がある。KGB出身のプーチンにとって、西側に魂を売ったリトビネンコは、「許されざる裏切り者」だった。
これらの暗殺は、無論プーチンは認めてはいません。しかし、これだけ都合よく政敵が倒れるのですから、これは推して知るべき筋合いのものです。

しかしながら、そもそもプーチン氏とはどんな人物なのでしょうか。氏を動かす要因とは何なのでしょうか。氏が信じる価値とは何か。こうした事柄について、北海道大学名誉教授の木村汎氏の著書『プーチン人間的考察』『プーチン内政的考察』(いずれも藤原書店)は、合わせて1200頁余、木村氏のロシア及びプーチン分析では他の追随を許しません。


プーチン像を、木村氏は「人誑(ひとたら)し」という言葉で鮮やかに表現しました。プーチン氏は父親同様、ソ連(ロシア)の情報要員、つまりスパイとして働くべく、KGB(旧ソ連国家保安委員会)に勤めたのですが、チェキストと総称される彼らに叩き込まれるのは、「人間関係のプロフェッショナル」になることだと、これはプーチン氏自身が語っています。
 
ロシアの名門紙「コメルサント」の女性記者、エレーナ・トレーグボワは、プーチン氏とは「絶対的に対立し合う立場」だったが、プーチン氏は、「彼と私があたかも同一グループに属し、同一利益を共有しているかのような気分に」させてしまうと振り返っています。
把瑠都(右から二番目)とエレナ・トレクボワ(右)
木村氏はさらにジョージ・ブッシュ前米大統領が如何に「めろめろ」にされたかも描いきました。反ソ、反露主義のブッシュ氏は、大統領就任後、なかなかプーチン氏に会おうとしなかったのですが、2001年6月16日、とうとう会談しました。そのときプーチン氏は、幼いときに母親から貰った十字架を見せて、マルクス主義の下でロシア正教の信仰が禁止されていた少年時代に、母親の計いで洗礼を受けた体験を、ブッシュ氏に静かに語ったそうです。
 
ブッシュ氏は明らかに心を動かされ、次の言葉を残している。「私はこの男(プーチン)の眼をじっと見た。彼が実にストレートで信頼に足る人物であることが判った」。

プーチン(左)とブッシュ(右) 
英国人ジャーナリストのロックスバフ氏は、「ブッシュは、プーチンの釣針に見事に引っ掛った」と評しましたが、木村氏はこの人誑しイメージとは異なる別のプーチン評も紹介しています。

「プーチンは自己(および家族)のサバイバルやセキュリティを何よりも重視し、この目的達成を人生の第一義にみなして行動する人間」(プーチンの公式伝記『第一人者から』の執筆者)であり、プーチンの胸深くには、「己が何が何でも・サバイバル・せねばならないという欲望が、一本の赤い糸のようになって貫いている」と、断じています。
 
上半身裸で馬を駆ったり、釣りをする姿を、プーチン氏は好んで映像にとらせます。そこから連想されるマッチョなイメージとは正反対に、彼は「臆病すぎるほどの慎重居士」だと木村氏は見ています。


従ってプーチン氏はいかなる人間をも絶対的に信頼することはありません。常に複数の人間に保険をかけます。状況が動いているときにはとりわけそうです。
 
そのプーチン氏が権力保持のために注意深くコントロールしてきたのが、➀ロシア国民、➁反対派諸勢力、➂プーチン側近のエリート勢です。
 
➀は新聞・テレビなどのメディアを国営化し、人事をプーチン派で固め、自分に好都合な情報だけを報じることでコントロール可能です。ちなみに、2014年段階でロシア人の情報源は60%がテレビ、インターネットは23%にとどまります。
 
➁は上に掲載したように、苛酷で執拗で非情な手段を用いて、命まで奪いとることで押さえます。
 
最も手強いのが➂の側近による反乱、宮廷クーデターです。そのような事態が起きるとすれば、中心勢力は旧KGB関係者を含む「シロビキ」です。万が一にも反乱の可能性があれば、プーチン氏はその芽を摘みとります。それが昨年4月、関係者を驚かせた一大決定でした。プーチン氏が命じたのは国家親衛隊の創設でした。新組織は生半可なものではありません。そこに配置転換された人数は40万人、ロシア正規軍の約半分に相当する規模です。新組織の長にはプーチン氏の長年の柔道仲間で、「プーチン氏に最も献身的に尽くす人物」と評されるゾロトフという人物が選ばれました。

プーチン(前)とゾロトフ(後)
こうした中、昨年3月に行われた世論調査では、ロシア人の82%がプーチン大統領を支持し、同じく82%がロシアは深刻な経済危機に直面していると答えました。深刻な経済危機は為政者への批判につながるのが世界の常識だが、ロシアではそうなっていない。なぜなのでしょうか。
 
ロシア人は今日の食事に困っても、ロシアという「偉大な国家」が国際社会で存在感を示し、大国の栄光を回復するなら、精神的に満足するからだと解説されています。加えて、プーチン氏は経済的困難を外敵の所為にして、対外強硬路線を取って求心力を高め、自身への支持率上昇につなげています。クリミア、シリアなどとの「小さな戦争」は、ロシア国民のナショナリズムを呼び醒ます効果を生みます。米欧諸国はそれに対して対露制裁を強化します。するとプーチン氏は新たな小さな戦争を始めて国民のナショナリズムに訴えるのです。
 
完全な悪循環の中にあるのがプーチン大統領なのです。ブログ冒頭の記事では、落合氏は、「プーチンは戦争したくて仕方がない男だ」と評していますが、というよりは「小さな戦争をせざるを得ない、悪循環におちいつている」とみるべきなのでしょう。

現在のロシアは、最盛期の頃のソ連と比較すれば、国力は衰えました。現在では、米国と戦争などとてもできるような状況ではありません。米国抜きのNATO軍と戦ったとしても、今や勝ち負けを論じるようなレベルではありません。とても戦争を遂行できるだけの、軍事力も経済力もありません。

しかしながら、小さな戦争をする力はあります。これからも、クリミア、シリアなどとの「小さな戦争」を仕掛ける可能性は十分にあります。

中国・ロシア・北朝鮮の国境が接する、中国の琿春市。展望台にはロシア・中国・北朝鮮の国旗。
しかし、世界情勢はこれからもどうなるかわかりません。朝鮮半島においても、当然のことながら、プーチンは、機会をうかがっていることでしょう。多くの日本人は、意識していませんが、ロシアと北朝鮮は国境を接しています。

無論、ロシアが北朝鮮に攻め入るなどという単純な図式ではないと思いますが、現在の緊張がロシアにとって少しでも有利になるように、チャンスをうかがっているであろうことは、確かです。

世界は、プーチンの頭の中に、ソ連的なものがよぎるのを阻止し、そうして日本は何十年かけてでも、ロシアの中のソ連的なものを破滅させるべきなのです。

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2016年8月1日月曜日

日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷―【私の論評】戦争になれぱ中国海軍は、日本の機雷戦に太刀打ち出来ず崩壊する(゚д゚)!


平成20年6月12日、海上自衛隊による機雷の爆破処理で
海面に噴き上がる水柱。後方は神戸市街=神戸市沖
日本の国防を考える時、最大の脅威は中国だ。仮に共和党の大統領候補・ドナルド・トランプ氏が主張するように米国の後ろ盾がなくなったら、日本はどうすべきか。軍学者の兵頭二十八氏は、日本は「自衛」の結果、中国を簡単に滅する“奥の手”があると論じる。

* * *

在日米軍が2017年に急に引き上げ、日米安保が停止したとしよう。ふつうは他の集団的安全保障(たとえば核武装国である英・仏・印・イスラエルとの2国間の軍事同盟条約)を模索するだろうが、話を極度に単純化し、それもナシということにする。

すると日本は核武装国の中共に対して単独で自衛せねばならぬ。

体重百キロのチンピラに密室で襲撃された老人と同じく、弱者の自衛には手加減は不可能だ。日本は主権と独立を防衛するために、中共体制そのものを全力で亡ぼしてしまうしかない。じつはそれは簡単である。

まず尖閣の領海に機雷を敷設し、それを公表する。これは主権国の権利なのだが、チンピラの中共は必ず、わけのわからないことを叫び、軍艦か公船か漁船を出してきて、触雷するだろう。そのうえもっと軍艦を送り込むので、わが国は「自衛戦争」を始められる。

こっちは弱い老人だから体力のあるうちに早く決着をつけなくてはならぬ。すぐ、中共本土の軍港前にもわが潜水艦によって機雷を撒き、それを公表する。同時に黄海や上海沖で潜水艦によって敵軍艦も雷撃させ、わざとらしく「機雷が作動したと思われる」とアナウンスする。

すると中共海軍の防衛ドクトリンがスタートする。彼らは外国軍の潜水艦を北京や上海に寄せつけない手段として、漁船を動員して大量の機雷を撒かせることに決めているのだ。こっちが機雷を撒くと、向こうも機雷を撒く。レバレッジ(梃子作用)が働いて、わが自衛行動が数倍の効果を生むのだ。

 連中には撒いた機雷の位置を精密に記録するという訓練も装備もありはしない。しかもシナ製機雷には時限無効化機構もついてない。

自分たちで撒いた機雷により、シナ沿岸は半永久に誰も航行ができない海域と化す。中共に投資しようという外国投資家も半永久にいなくなる。なにしろ、商品を船で送り出せなくなるのだ。

外国船籍の原油タンカーがシナ沿岸には近寄らなくなる(無保険海域となるのでオーナーが立ち寄りを許可しない)結果、中共沿岸部の都市では、石油在庫はたちどころに闇市場向けに隠匿されて、表の市場には出てこなくなるだろう。他の生活必需物資も同様だ。

およそ精鋭の掃海部隊があったとしても、大量の機雷の除去には数十年を要する。中共軍にはその準備がないので、中共だけが「石油高」「電力高」「輸出ストップ」に長期的に苦しむ。闇石油を押さえた軍閥が強くなり、石油を支配していない中央政府と大都市・大工場は逼塞する。第二の袁世凱または張作霖があらわれるだろう。弱者の日本の正当防衛は成功したのである。

機雷戦のメリットは、いったんスタートすると、核をチラつかせた脅しや、シナ人得意の政治的工作をもってしても、事態を元には戻せないことだ。そもそも敵艦がわが領海を侵犯しなければ触雷はしないのだから、平和的だ。艦艇が沈む前に敵に脱出のチャンスを与えるという点では、対人地雷よりも人道的である。

そして、機雷戦がいったん始まれば、シナ大陸沿岸海域は長期にわたって無保険化することが確定するので、戦争の決着がどうなるかとは関係なしに、中共経済の未来は終わる。スタートした時点で、日本の勝利が決まるのである。

このように、強者の米国がバックについていない場合、余裕を失った弱者の日本は、却って簡単に中共を亡ぼすことになるのである。

※SAPIO2016年8月号

【私の論評】戦争になれば中国海軍は、日本の機雷戦に太刀打ち出来ず崩壊する(゚д゚)!

さて、ブログ冒頭の記事では、"日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷"としています。そうして、それがなぜなのかについて、ある程度説明はしているものの、肝心要の部分についてはほとんど解説されてないので、本日はそれについて掲載します。

その大きな一つして、真っ先にあげなければならないのは、日本の海上自衛隊による、機雷除去などの掃海能力は世界一だということです。世界一というと、以前にもこのブログではいわゆる通常型の潜水艦の能力や、P3Cなどの哨戒機による対潜哨戒能力(潜水艦を索敵する能力)は世界一であることを掲載したことがあります。

しかし、機雷除去などの掃海能力が世界一であることは、ほとんど掲載してきませんでした。これ抜きに、ブログ冒頭の記事のように、中国を壊滅される機雷作戦を敢行することはできません。

さて、日本にも昔から、掃海母艦、掃海艦、掃海艇、掃海管制艇があります。そうして、海上自衛隊が機雷掃海のために保有する艦艇は27隻に上ります。米国や英国など主要国の掃海艦艇は20隻以下とされおり、海自は世界一のの陣容を誇るのです。

「日本は高い掃海能力を持っている。掃海によって機雷を敷設することが無意味になっていく。つまり抑止力にもなる」

安倍晋三首相は一昨年6月9日の参院決算委員会で、自衛隊の掃海能力について、誇らしげにこう語りました。

最新鋭の「えのしま」型掃海艇は、木造船を使用してきた海自で初めて強化プラスチックを船体に使用し、耐用年数が大幅に延びました。掃海艇より大型の「やえやま」型掃海艦は潜水艦を標的とする深深度機雷の処理も行うことができます。

掃海艇「えのしま」
掃海艦「やえやま」
「うらが」型掃海母艦は旗艦として補給支援や機雷敷設などを行うほか、ヘリコプターの発着艦が可能で、掃海艇を狙った機雷を処理するためダイバー(水中処分員)を現場海域に送り届けます。「いえしま」型掃海管制艇はラジコンのような遠隔操縦式掃海具を操り、掃海艇が入れない水深の海域に敷設された機雷を処理します。

掃海母艦「うらが」
こうした総合力は、対潜水艦哨戒能力と並ぶ海自のお家芸ともいえます。一昨年7月の閣議決定で集団的自衛権の行使が認められたことにより、政府は新たに可能となる活動の1つとして、停戦合意前に中東・ホルムズ海峡で行う機雷掃海活動を挙げたのも、このためでした。

自衛隊が初めて海外での任務に投入されたのも、機雷掃海活動でした。

湾岸戦争終結後の平成3年、海上自衛隊はペルシャ湾掃海派遣部隊を送り込みました。当時はすでに他国海軍が活動しており、“遅参”した自衛隊に割り当てられた掃海区域は「最も危険で難しい場所しか残っていなかった」(海自関係者)といいます。過酷な条件下で海自部隊は約3カ月間に34個の機雷を無事に処分し、他国海軍から高い評価を受けたのです。
平成3年4月、湾岸戦争終結を受け、機雷掃海のためペルシャ湾に
向けて出航する、海上自衛隊の掃海派遣部隊=海上自衛隊横須賀基地
安倍首相が「高い掃海能力」を誇るのは、このときの経験も裏付けとなっています。ただ、防衛省関係者は「当時の海自部隊は装備面では他国に劣っていた面もあった」と指摘します。特に、水中に潜って爆雷を投下する装置にはカメラが付いておらず、水中処分員が目視で機雷を確認せざるを得なかったといいます。

海自が装備の遅れをカバーできたのは、先の大戦の“遺産”によるところが大きかったのです。

終戦当時、日本周辺海域には旧日本海軍が防御用に敷設した機雷約5万5000個のほか、米軍が敷設した約1万700個の機雷が残っていました。主要航路の掃海は昭和40年代後半まで行われ、現在も港湾工事前の磁気探査で機雷が発見されることがあります。これを処理してきた海自の経験が、精密で効率的な掃海能力を培ってきたのです。

機関砲や爆雷投下で処分できない機雷は、生身の水中処分員が潜って機雷に爆薬を取りつけます。水中処分員には体力、知力、精神力が要求され、海自の特殊部隊「特別警備隊」と同様に精鋭隊員が選ばれる。東日本大震災では「えのしま」型掃海母艦「ぶんご」に集約されたダイバーが、水中での行方不明者捜索に当たりました。

ホルムズ海峡だけではなく、東アジアでも有事の際は中国などが機雷を敷設して米軍や海自の艦艇を封じ込めようとする可能性が高いです。もちろん、ペルシャ湾派遣以降、海自掃海艦艇は「えのしま」型や「うらが」型などの導入により世界トップレベルとなっていいます。人と装備の両方を兼ね備えた海自掃海艦艇が担う役割は大きいです。

平成23年11月、不発弾を爆発処理し、海面に上がる水柱。
右は掃海艇「とよしま」=山口県下関市沖の関門海峡
さて、中国海軍は、新旧あわせて10万個以上の機雷を保有しているとされます。海自や米海軍は、イザというときに中国海軍には機雷を敷設する、機雷戦を仕掛ける能力と意思があるとみています。安上がりな機雷を使えば、強大な米海軍を追い払えるかもしれないからです。

米海軍大学の『海軍大学レビュー』(65号、2012年)の掲載論文「機雷の脅威を検討する-中国『近海』における機雷戦」によれば、湾岸戦争当時、イラクが敷設した1300個の機雷によって、米海軍はペルシャ湾のコントロールを一時失いました。10億ドルの米イージス艦が、2万5千ドルのイタリア製機雷で行動不能になったのです。

論文は、中国海軍が機雷をまくかもしれないケースとして、台湾封鎖や南シナ海危機、朝鮮有事を挙げました。グアム島近辺や東シナ海、西太平洋でもあり得るとしました。機雷は、水上艦艇だけでなく航空機や潜水艦、公船、商船、漁船でもゲリラ的に敷設することができます。

なぜか米海軍は、十分な数の掃海部隊をもっていません。そこで、海自とオーストラリア海軍に期待を寄せています。

さて、上の記事では、日本が単独で中国に機雷戦を挑み、中国を壊滅させることが掲載されています。機雷戦については、このように日本単独でもかなりのことができます。

しかし、より完璧にするためには、やはり集団的自衛権の行使は避けられません。政府与党の協議では、集団的自衛権の事例として、朝鮮有事などで邦人が乗った米艦船を自衛隊が守ることも論じられました。邦人がいなくても、各国民間人が乗った外国の艦艇、船舶が避難してくるときに、自衛隊が守らず見殺しになどできるはずもありません。そんなときに、北朝鮮でも中国でもいい、どこかの国が機雷を絶対にばらまかないという保証もありません。

南シナ海でも同じことです。世界の商業海運の半分が通過する大動脈であり、「航行の自由」が強く求められている海です。

中東だけでなく、アジア太平洋の海でも、集団的自衛権の限定行使として、海自が掃海にあたる事態は起こり得ます。

これは、米国の戦争に巻き込まれるという単純な話でもありません。実行するかどうかはそのときに決める話だが、日本の存立のため、安全保障の生命線である日米同盟を破綻させないために、できるようにしておくべきシビアな話です。幅広く考えておくことが、平和への備えにつながるのです。

そうして、日本の掃海能力が世界一ということは、掃海能力がほとんどゼロに近い中国に対してはかなりの強みであり、中国にとってはかなりの脅威です。

中国の081型掃海艇(ウォチー型/渦池型)技術的にもノウハウ的、人的資源の面からも
到底日本の掃海能力はには及ばない
掃海能力がほとんどゼロの中国海軍は、敵の飛行機から機雷バラ撒かれたらそれだけで、機能不全に陥ります。昔は、目標の海域に近寄らないと機雷を落とせなかったのですが、最近ゆで゜は、40海里離れたところから狙って落とせるようになりました。

米軍の最新式の「クイックストライク」機雷は、本体に滑空用の主翼が備わっていて、B-52Hから高空から投下すれば、40海里先まで飛翔して着水します。この実験は2014年9月23日に成功しています。

航空機から撒布される沈底機雷である「クイックストライク」は前からあったものですが、いよいよそれにJDAM機能が結合されたわけです。「GBU-62B(V-1)/B クイックストライクER」というのが正式名称です。

高度3万5000フィートから落とせば、40海里前に落ちます。航空機から機雷を撒く技術は、米軍は1943から実用化した。その基本的制約は2014までも同じでした。しかし、ようやくその技術に革命が起きたのです。

これを大量に使われたら、中国は南シナ海の人口島に、近寄れなくなってしまいます。ところが、米軍には「世界一の掃海屋」こと、海上自衛隊の助っ人が存在するので、機雷は怖くありません。これで、中国側の言う「領空侵犯」しなくても、一方的に中国を潰すことができます。中国には打つ手はありません。

日本にも、91式という凄まじい機雷があります。91式機雷(きゅういちしききらい)は、日本の海上自衛隊が装備する機雷で、世界初の複合誘導型追尾上昇機雷です。

91式機雷は、爆弾型の形状をしており、敷設された後は海底に鎮座する係維器と浮力を有する弾頭である缶体、そして両者を繋ぐ係維索(ワイヤー)により構成されています。目標を感知すると係維索が外れて缶体は浮力により浮上、その間も追尾しつつ目標に到達する仕組みになっています。

これまでの上昇機雷は、80式機雷の様に目標を探知して以降はそのまま浮力かロケット噴射により浮上するだけでしたが、91式は浮上中も目標を追尾し続ける点において世界初の装備です。その為に以下の特徴を有しています。
  • 係維器を筒型にしその内部に薄肉の缶体を収納することで、缶体の浮上するために必要な浮力と、航空機敷設時の耐振性、着水時の耐衝撃性を両立
  • 音響測定により目標の速度・方位を浮上追尾前に予測することによる、中・高速目標の対応や攻撃範囲の拡大
  • 低雑音性の潜水艦にも対応するためにパッシブ・ソナーだけでなく、磁気探知や測的にアクティブ・ソナーを用いた複合感応式
  • 音響測的による定方位比例航法を行うために、傾斜計方位計を用い地球重力極北を基準とした姿勢制御を行なう上昇追尾方式
91式機雷の模式図

類似した装備として目標を感知すると魚雷を発射するキャプター機雷がありますが、91式はそれらより本来の機雷寄りの装備と言えます。

この機雷簡単に説明すれば、海底に潜むように設置されており、海上や水中を中国の艦艇や潜水艦が近くを通過すれば、それを目掛けて機雷が自動追尾して、爆発し、破壊するわけです。

機雷というと、昔のイメージで、水中に設置してある爆弾で、船が触れると爆発するくらいの認識の方には、このブログ冒頭の記事の意味が良くお分かりにならなかったものと思います。しかし、ここまで掲載すれば、日本による機雷戦により、中国軍を崩壊に導くことも可能であることがお分かりになったと思います。

南シナ海でも、東シナ海でも、尖閣諸島付近でも、中国海軍は日本の海上自衛隊の機雷戦になすすべもなく、短期間に無力化され、機能を失うことでしょう。一方、掃海能力の優れた日本は、中国海軍に対して圧倒的強みを発揮することになります。

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2016年7月4日月曜日

「お子さんが戦争に行かされる」という法治無視の署名運動―【私の論評】新左翼老人は老害をさらすな(゚д゚)!

「お子さんが戦争に行かされる」という法治無視の署名運動

署名運動は、選挙期間中に及ばず、年中行われている
参議院選挙が実質的にスタートしていた6月中旬。真夏のような日差しが照りつける中、東京・山手線のある駅の駅前ロータリーで、市民団体が署名運動を行っていた。

「戦争法には絶対反対! 戦争法廃止のために署名をお願いしま~す」

数人いた運動員は多くが高齢者であり、見たところ、若者はいなかった。

〈NO WAR 戦争法の廃止を求める2000万人統一署名にご協力を!〉と書かれた幟を掲げる人もいれば、マイクで通行人に呼びかける人もいる。

冒頭で紹介した署名活動の現場では「安倍内閣退陣」のポスターが掲示されるとともに、参院選でどの政党に投票するか、シールを特大ボードに貼るアンケートも実施していた。ちなみに「野党」に貼られたシールは与党の2倍ほどもあり、現実にそうなったら安倍内閣退陣間違いなしだが、このシールの数には“何らかの深い理由”があったのだろう。

 署名運動は全国的な規模で行われている
いずれにしても「戦争法反対」の署名運動は、7月10日の参院選を明らかに意識した形で、全国で繰り広げられている。5月には「2000万人統一署名提出集会」が衆議院第1議員会館で開かれ、民進党の岡田克也代表や共産党の志位和夫委員長らが参加した。

「戦争法」と勝手にネーミングして、思考停止することは簡単だ。しかし現実には、中国の軍艦が何度も日本の領海と接続水域に侵入し、挑発を繰り返している。中国の脅威にどう対処すべきか。その議論を進めることは、参院選があろうとなかろうと喫緊の課題である。

法律の内容を知ろうともしないで「戦争に行かされる!」というとんちんかんな主張を展開したり「爆弾が落ちてきたら嫌だ」と感情論に踊らされたりしている(ましてや政治家もそれに乗っている)のは、中国にとっては大チャンスと映ることだろう。我々は、現実を直視して実効性のある策を考えなければならないのだ。

目の前で、署名用紙を載せたボードを持った運動員が小学生の女の子を連れたファミリーに近づく。

「お子さんが戦争に行くかもしれないんですよ!」

女の子が両親の後ろにすっと隠れると、運動員は踵を返して高校生か大学生と思しき2人組の若い女性のほうに向かう。

「君たちが戦争に行かされるかもしれないんだよ。それでもいいの?」

そう言って署名用紙を差し出したのだ。女性たちは運動員の横をすり抜け、足早に駅に向かった。

安全保障関連法には、「徴兵制」は定められていない。自衛隊員でもない人が「戦争に行かされる」というのは、法治を無視したぶっ飛んだ論理である。だが、最高気温33度の炎天下、運動員たちの表情は真剣そのものだった。

市民団体だけではない。この6月には、東京・足立区で昨年、路上で署名活動をしていた共産党運動員が小学生たちに次のように声をかけて、安保関連法案反対の署名を求めていたことが報じられた(産経新聞6月10日付)。

「爆弾が落ちてきたら嫌でしょ」「(戦争になれば)お父さんやお母さんが死ぬ」「お父さんやお母さんが戦争で死んだら困るでしょう」

声をかけられた小学生の中には、帰宅後に恐怖で涙を流した子供もいた。保護者や学校の教員が現場に駆けつけ抗議したところ、運動員は謝罪したという。

【私の論評】新左翼老人は老害をさらすな(゚д゚)!

このような動きは、全国で行われています。そうして上の記事でも"数人いた運動員は多くが高齢者であり、見たところ、若者はいなかった"と掲載されていたように、老人の動きが目立ちます。

自民党の安倍晋三首相(61)が3日、応援演説で「帰れ」コールを浴びせる一団に反撃に出ました。これまで安倍首相の演説会場には反安倍のプラカードを持つ集団が現れ、やじを飛ばすことがあり、首相周辺は気をもんでいました。しかし、この日の安倍首相は「妨害ばかりなんて恥ずかしくないのか」と、反撃しました。

炎天下の渋谷・ハチ公前は人でごった返していました。日曜の夕方というだけが理由ではありません。安倍首相目当てにたくさんの人が集まったのです。「安倍首相が来るってよ」と政治に関心のなさそうな若者までもが足を止めました。

一方で懸念材料もありました。選挙戦が始まる前の6月19日、東京・吉祥寺で安倍首相の演説が行われた際、「帰れ」コールが起きたのです。安倍首相は「こういうことはやめましょうね」と引きつった笑顔で反応したといいます。与党関係者は「首相が帰れコールを浴びるなんて、絶対に避けないといけないこと。やじを避けるために一部の演説を回避したとささやかれたりもしましたが、とにかくマイナスイメージにしかならない」と嘆いたそうです。

少し遅れて来た安倍首相は「観光も日本の成長の柱となった。もっとお金を落としてもらうために規制緩和をした。これで社会保障の財源を確保していく」と演説を始めました。こう話す当人に向かって「戦争反対!」と叫ぶ集団がどこからともなく現れました。


年配の男女からなる20~30人の集団で、「アベ政治を許さない」と書かれた特製のうちわを掲げていました。安倍首相の正面に陣取ると「帰れコール」などのやじを始めました。

これに対して、安倍首相は、「批判ばっかりしている人たちがいますが、たまには自分で主張してほしい。妨害ばかりは恥ずかしい。この演説を邪魔ばかりしている。こういう人たちに負けるわけにはいかない!」 と反撃しました。集まった聴衆も拍手で援護し、批判の声はかき消されました。

安倍総理の吉祥寺演説て「帰れコール」が止まらない!20日の北海道演説は謎の中止!

昨日は、このブログに「アベノセイダーズ」に関して、掲載しました。上記の署名活動をしたり、安倍総理の演説に「安倍帰れ」などと罵声を浴びせかけるような人たち、アベノセイダーズと同じ穴のムジナなのでしょう。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事でこのアベノセイダーズについて、その背景を掲載しました。

その背景の一つとして、私は"「アベノセイダーズ」は、「火炎瓶やゲバ棒を暴言に持ち替えた新左翼」もしくはそれに近いシンパであることが理解できます"と掲載しました。

そうして、この「新左翼」は、1960年代以降に欧米などの先進国と同様に、日本でも従来の日本共産党や日本社会党などを「既成左翼」と呼んで批判し、より急進的な革命や暴力革命を掲げて、直接行動や実力闘争を重視した運動を展開した諸勢力が、特に大学生などを中心に台頭していました。

特に安保闘争やベトナム反戦運動などに大きな影響を与えたましたが、70年安保以降は内部の凄惨な内ゲバ殺人や爆弾闘争などのテロリズムもあり、大衆の支持を失い影響力は低下しました。


新左翼が、大衆の支持を失ったのは、結局何でも壊すことしかできず、新しく創造することが何もできなかったのと、テロなどの暴力を行使したからです。

そうして、新左翼は1960年代の学生が中核となって結成された運動です。この頃、学生だった人は現在70歳前後の老人です。

アベノセイダーズの多くは、この頃新左翼運動に参加した学生や、そのシンパです。そうして、上記の署名運動や選挙妨害をする人たちは、昔新左翼運動に参加した学生や、そのシンパなのです。

だからこそ、老人が多く、手段を選ばないような、署名活動をしてみたり、選挙演説を暴言で直接妨害したりするのでしょう。

そうして、彼らは、ものごとを創造することができないので、もっぱら「戦争法案」や「徴兵」などという法治を無視したぶっ飛んだ論理でしか、自分たちの主張を表現することができないのです。これでは、多くの人から支持をえることはできません。

本来であれば、批判するなら対案を出すべきです。しかし、ものごとを壊すことしかできず、創造することのできない彼らはそれができずに、暴力のかわりに暴言をはいたり、奇妙奇天烈な論理で、結局のところ老害を晒しているだけなのです。

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