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2018年3月1日木曜日

米、北に新たな一手“海上封鎖” 沿岸警備隊のアジア派遣検討 「有事」見据えた措置か―【私の論評】沿岸警備隊派遣の次には、機雷戦?その時には海自が活躍することになる(゚д゚)!


北朝鮮船籍のタンカー(左)と船籍不明の小型船が行う「瀬取り」に米沿岸警備隊の艦艇が目を光らせる

 ドナルド・トランプ米政権が、北朝鮮に“新たな一手”を打ち出す構えを見せている。国連安全保障理事会の制裁に反して、洋上で船から船へ石油などを移し替えて北朝鮮に密輸する「瀬取り」などを阻止するため、米沿岸警備隊のアジア派遣を検討しているのだ。海上臨検のスペシャリストである沿岸警備隊は米国では軍隊と位置付けられ、戦時には海軍の特別部局となることも任務に含まれている。これは、近い将来起こり得る「朝鮮半島有事」を見据えた措置ともいえそうだ。 

米国沿岸警備隊の艦船と航空機

 《米沿岸警備隊のアジア派遣も、北朝鮮の密輸監視を強化へ》

 ロイター通信(日本語版)は2月23日、このような見出しの記事を報じた。米国の強い決意を感じさせた。

 記事によると、トランプ政権とアジアの主要同盟国は、対北朝鮮制裁に違反した疑いのある船舶への臨検強化を準備しており、米沿岸警備隊をアジア太平洋地域に派遣する可能性もあるという。米高官が明らかにした。

 これと符合するように、日本政府が「瀬取り」を監視するため、米国や韓国、オーストラリア、シンガポールなどの関係国に実務者会合を呼びかけていることが、28日までに分かった。

 国際社会の警告を無視した「核・ミサイル開発」を強行する北朝鮮に対し、国連安保理や世界各国は制裁強化を続けている。トランプ政権が23日に発表した「過去最大規模」の独自制裁でも、「瀬取り」などに関与した海運・貿易会社や船舶、個人を対象に米企業との取引などを禁じた。

 北朝鮮の密輸は極めて狡猾だ。

外務、防衛両省は2月27日、北朝鮮船籍のタンカーが24日深夜、中国・上海の東約250キロの東シナ海(公海上)で、モルディブ船籍のタンカーに横付けしていたのを確認し、「瀬取り」の疑いで国連に通報したと発表した。北朝鮮船籍のタンカーは船名を消していた。両省が「瀬取り」の疑い例を公表したのは、1月以降で4例目となる。

 対北朝鮮制裁が効果を発揮するには、「瀬取り」を監視・阻止する「実力部隊」の態勢強化が不可欠となる。そのために派遣が検討されているのが、米国が誇る沿岸警備隊だ。

 英語で「United States Coast Guard」と表記される米沿岸警備隊は、1915年に創設された。陸海空軍、海兵隊とともに軍隊と位置付けられているが、海上での法執行権限を持っている。

 約4万1000人の隊員のほか、予備役約7000人、文官約8600人、ボランティア約3万1000人の人員で海洋の安全維持を図っているが、その任務は多岐にわたっている。

 公海や、米国が管轄する水域での法執行をはじめ、上空からの海上監視、国際合意に基づいた砕氷活動、戦時には海軍の特別部局として機能するよう準備態勢を維持することまで含まれている。

 前出のロイターの記事は《新たな戦略では北朝鮮への海上封鎖に当たらない程度まで、こうした活動の範囲を広げる方針。北朝鮮は海上封鎖は戦争行為に当たると警告している》と指摘していた。

確かに、北朝鮮の朝鮮中央通信は昨年12月、外務省報道官の話として、「(海上封鎖は)主権国家の自主権と尊厳に対する乱暴な侵害行為であり、絶対に容認されない侵略戦争行為である」「(海上封鎖を強行しようとした場合には)われわれに反対する戦争行為と見なすであろうし、無慈悲な自衛的対応措置で応えるであろう」などと威嚇した。

 盗っ人猛々しいとは、まさにこのことだ。

 国際的ルールを破って世界を恫喝(どうかつ)し、乱暴な侵害行為を繰り返しているのは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮である。

 米沿岸警備隊の派遣検討の意味・狙いは何か。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「米海軍は米韓合同軍事演習で忙しく、『瀬取り』のチェックをする余力がないのだろう。純然たる軍隊である海軍を出すよりは、沿岸警備隊を出すことで『戦争になったら米国のせいだ』というような批判を避けたいという意味合いもあるのではないか。一連の圧力を高める姿勢のなかで、1つのステップを踏んでいるということだろう。(『従北』の韓国政府が演出する)南北の融和的ムードとは裏腹に、日米間で合意した『北朝鮮に最大限の圧力を加える』という政策に基本的変化がないことを示していると受け止めた方がいい」と語っている。

【私の論評】沿岸警備隊派遣の次には、機雷戦?その時には海自が活躍することになる(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事には、米沿岸警備隊の派遣検討の意味合いについて「一連の圧力を高める姿勢のなかで、1つのステップを踏んでいるということだろう」と記されています。

確かに、これからいきなり本格的な戦争に踏み切るというよりは、着実に制裁の厳しさをましていき、最後の最後で軍事的手段をとるのでしょう。

では、沿岸警備隊を派遣した後で、米国は何をするのでしょう。まず考えられのは、米軍による核関連施設の爆撃ということが考えられます。その後に様子をみて、地上軍の派遣ということになると思います。

しかし、私としてはこれらの前にもうワンステップあるのではないかと考えています。それは、機雷封鎖です。

そうです、北朝鮮の付近の海域に機雷を敷設して、外国の艦艇が北朝鮮に寄港することはもとより、北朝鮮の艦船が北朝鮮から外洋に出ることを阻止するのです。

こうすれば、北朝鮮は完璧に背取りができなくなりますし、北朝鮮や外国が、制裁違反をして、北朝鮮に物資を運ぼうにも海路ではできなくなります。陸路に関しても、北朝鮮中国国境で中国がとりしまりを厳しくすれば、北への制裁は完璧になります。

そうなると、北朝鮮には石油も供給されなくなります。これなら、北朝鮮も制裁に折れるか、最後の賭けに出て、何らかの軍事行動を起こすことになります。そうなると、米国としても軍事行動にかなり出やすくなります。

先日の述べたように、北が核開発をやめるつもりがないのですから、最終的にはこうなるしかありません。

もし、北朝鮮海域に米軍が機雷を敷設したとなれば、これは中国にとってもかなりの脅威になるはずです。まず考えられることは、中国が南シナ海の環礁を埋め立てて設置した軍事基地の周辺に米軍によって機雷が敷設されることも十分考えられます。

そうなると、南シナ海の中国の軍事基地は、補給が困難となり軍事基地として有名無実化します。

そうして、機雷敷設ということになれば、その後は日本の海自が活躍することになりそうです。なぜなら、敷設された機雷はその目的が終了した後には取り除かれなければならないからです。

それに、米軍が北朝鮮の付近に機雷を敷設すれば、それに対抗して北朝鮮も機雷を敷設することが十分に考えられる仮です。

そうして、現状では日本の海上自衛隊の掃海(機雷を取り除く行動)能力が世界一といって良い水準にあるからです。

日本には、大東亜戦争中から、朝鮮戦争、そうして今日に至るまで、大規模な掃海活動の実績があります。

日本の機雷掃海を語るには、まずは世界大戦まで遡らなければいけません。 というのも、日本は先進国の中で、現代まで最も機雷に苦しめられ続けてきた国家だからです。

日本は四海を海に囲まれていて、国土は起伏の多い地形です。必然的に海運が盛んになり、物資の海上輸送量は、大戦時は重量ベースで優に5割を越え、飛行機や自動車が発展した今でも3割以上の割合を占めています。そこで、世界大戦末期に米国は「飢餓作戦」と呼ばれる輸送路断絶作戦を実施。B29爆撃機を使って、爆弾の代わりに機雷を大量に海に沈めていきました。

航空機から投下されるMK25機雷

実に12,000個を越える機雷の効果は絶大でした。本土内の輸送路は鉄道で代替されましたが、大陸からの輸送が途絶え、世界3位の海運国となり海運に依存し始めていた日本国民は飢えに苦しむ事になりました。

この機雷は沈底機雷と呼ばれる底に沈んだまま浮いてこないタイプの機雷で、船舶が通る際に変化する音や磁気、水圧を検知して爆発するものでした。海の底に船の瓦礫や岩などと一緒に沈んでいるため、当時の技術では見つけることは困難で、囮を使って爆発させる方法で掃海する他ありませんでした。

ところがその機雷は、一度の船舶検知では爆発せず何度か船が通りすぎてから爆発するような設定の機雷も存在し、囮や掃海部隊の船が通りすぎ、安全だと言われてやってきた普通の船舶が機雷によって破壊されてしまうようなこともありました。

当時としては技術の粋を集めた先進的な機雷であり、これが終戦後も大量に日本の海に残されました。これを除去するために、米軍によって日本海軍が解体された際にも掃海部隊の人員は残され、以降多くの殉職者を出しながらも掃海部隊は掃海作業に従事しました。そうして、この掃海部隊は朝鮮戦争にも参加しています。

そして、戦争から70年が経った今でも当時の機雷が発見されて解体されています。既に爆発しなくなっているので安全に船は通れますが、海底から何十メートルも上を通る海面の船を破壊できるほど大量の火薬が、機雷に詰まっていることには変わりありません。海底の土砂を汲み上げる際に、機雷に触れてしまって爆発してしまう事故も実際に起こっています。

とは言え、これらの機雷は旧式のものです。しかも、既に動作しなくなっている機雷です。この機雷除去の知識がノウハウとして蓄えられても、現代の高性能な機雷には通用しそうにありません。

しかし、重要なのはそこではないのです。

「機雷がどれほど恐ろしい兵器か誰よりも知っている」というのが、四海を海に囲まれ、多数の海峡を持ち、先進国でもある日本の自衛隊に蓄えられた最大のノウハウであると言えます。

機雷を使われた際の日本の海運被害は他国に比べて極めて甚大で、その機雷を除去する労力は計り知れませんでした。そのために、日本の海自は世界最大規模の掃海部隊を有するに至つたのです。

「日本が高い掃海能力を持っている」というのは、船の質と数という客観的な点からも明らかです。
平成29年度機雷戦訓練(陸奥湾)

<国別掃海艦艇の種類と総数(2014年時点)>
・自衛隊-7種26隻
・米海軍-1種11隻
・仏海軍-3種18隻
・英海軍-2種15隻
・独海軍-3種16隻
驚くべきことに、艦艇の数と種類だけ見ても主要国最大規模を誇っています。世界最大の米海軍が11隻しかいないというのが不思議でなりませんが、実は米海軍はオバマ政権による軍事費縮小のあおりで駆逐艦や哨戒艇、艦載ヘリで機雷探索を行う方針に移っており、「機雷戦艦艇」の数はどんどん減っていく傾向にあります。

確かに、技術の進歩で従来は探知できなかった機雷を遠くから探知出来るようになり、機雷に探知されにくい専用の艦艇を作らなくても機雷を除去出来るようにはなってきています。しかし、機雷対策を施していない通常艦はステルス型の機雷掃討などには不向きで、米海軍は湾岸戦争の際に少なからず被害を被っています。

さらに言えば、米国は機雷が仕掛けられたら致命傷となるような海域が少なく、機雷対策が軽視されていると言うのも機雷戦艦艇が少ない理由の一つでしょう。

一方、フランス・ドイツ・イギリスは、ドーバー海峡の制海権を巡って世界大戦時に苛烈な機雷戦を繰り広げているため、機雷の恐ろしさは身に沁みていることでしょう。現代でも、敵対国家によってドーバー海峡に機雷が仕掛けられればとんでもない事態に追い込まれるため、機雷掃海艇の整備は非常に重要な意味を持っています。

そんな他国と比べて見ても、日本の7種類26艦艇と言うのは多すぎるようにも思われます。

しかし、日本は同じ島国であるイギリスより海岸線が広く、そして海峡の数も数倍以上あります。さらに、上述した飢餓作戦時に大きな被害が出た内海への機雷敷設は日本の海を航行する船舶にとって大きな脅威となるため、機雷戦艦艇が他国より多く必要なのです。それに、日本が経済大国であるということが、それを可能にしています。

さらに、離島も多い日本の領海をカバーするために、より大型の艦艇が必要となり、先進国では唯一掃海専用の掃海母艦を保有しています。この掃海母艦は掃海用の艦載ヘリのための母艦であり、米国などの場合は強襲揚陸艦などで代用されます。

うらが型掃海母艦1番艦の「うらが」(手前)

日本もおおすみ型揚陸艦を保有していますが、掃海母艦として運用するにはそもそも大きすぎる上、米海軍が揚陸艦を掃海母艦とするのは、「掃海作業が揚陸作業に必要」だからであり、掃海が主任務ではないからです。

現在日本は、掃海母艦(大型)2隻、掃海艦(中型)3隻、掃海艇(小型)19隻、掃海管制艇(ダイバー支援)2隻を保有しています。これほどの陣容を整えているのは、まず日本だけです。

以上で述べたように、日本が世界最大規模の機雷掃海部隊を持っています。しかし、それは日本と言う国が機雷に弱い国(海岸線が長く、海峡が多い上、離島が多い)だからというだけで、世界の海を守るためではありません。

しかし、原子力空母に原子力潜水艦、大量の航空機を保有するような、米国の海軍が最低限の掃海部隊しか保有していない以上、万が一、タンカーの航路に機雷が敷設されたら米国以外の掃海部隊も対応しなければなりません。

結局、上陸作戦に支障をきたすほど大量の機雷が設置された湾岸戦争後、ペルシャ湾掃海などに日本が駆り出されることになりました。

実をいうと、ペルシャ湾に派遣された当初は日本の掃海部隊は、まだ現在ほどの陣容は整っていませんでした。そのため、「練度なら負けない」と意気込んでいた海自は、ペルシャ湾で遭遇したステルス機雷などの新型機雷を見て、装備がまだ不十分だと感じ、掃海母艦や新型掃海艇などが作られることになったのです。

イラク戦争時に米に回収されたイラク軍の
MANTA機雷(音響型)ソナーで探知しにくい
そして、日本の海自は本当の意味で世界最高クラスの掃海部隊を有するようになりました。

仮に中東の海峡に機雷が仕掛けられタンカーの航行に危険が生じた場合、実のところ米海軍や現地の海軍に任せるより、日本の自衛隊がやるほうが「確実」なのです。日本と同クラスの掃海艦艇を備えるのは英海軍(それでも海自より旧式)くらいで、今まではこう言った活動は英国が中心にやってきました。

英国に任せても良いでしょう。絶対に日本がやらなければいけない仕事ではありません。しかし、タンカーの乗員や石油の輸送路を確保する上で、日本の力が確実に役に立つのです。危険な作業ではありますが、最新の機器に艦艇を備える海自であれば、他国の海軍がやるよりは安全に作業出来るでしょう。

もちろん、掃海部隊の海外派遣は、「安全な石油の輸送には危険に見合うだけの利益が日本にある」と考えられますし、日本人の乗った船舶が機雷の危険にさらされる可能性もあります。

また、日本の海外貢献アピールや集団的自衛権の実践などの政治的問題も絡んでくるでしょう。しかし、それでも、ペルシャ湾の「機雷掃海」が行われた理由は、「機雷掃海によって敵を殺すことはない」ことと「日本の掃海部隊の能力が高いから」というところにあるのです。

そうして、北に対する日米間で合意した『北朝鮮に最大限の圧力を加える』という政策を支持する同盟国の日本の掃海能力が高いことが、北制裁を徹底強化したい米軍の機雷敷設を後押しすることになるかもしれません。

機雷封鎖による北への圧力は相当なものになるはずです。物資の遮断はもとより、心理的圧迫も極度に高まります。漁船も遠洋には出ることができなくなります。当然大和堆での、漁業もできなくなり、日本に漂着する漁船もなくなります。

これは、一つの事例に過ぎず、北による日米の圧力はときが経てば経つほど大きくなっていきます。北朝鮮は覚悟を決めなければなりません。日米は、北を核保有国として認めることはしません。

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2017年10月9日月曜日

もし米朝戦わば 北朝鮮軍には実際どれだけ攻撃力があるのか―【私の論評】機雷戦で北朝鮮は崩壊する(゚д゚)!

もし米朝戦わば 北朝鮮軍には実際どれだけ攻撃力があるのか

トランプ大統領のツイート
 トランプ米大統領は10月1日、北朝鮮に核・ミサイル問題で対話の意思の有無を尋ねていると公言したティラーソン国務長官に、「時間の無駄だと伝えた」とツイッターに投稿した。9月26日の記者会見でも、軍事的な選択肢の準備は完全に整っており、北朝鮮にとって壊滅的なものになると警告したが、本気で「武力行使も辞さず」と考えているのだろうか。当然、軍事衝突が起きれば北朝鮮の猛反撃も予想される。

 朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏が、ミサイルだけではない北朝鮮の攻撃力について分析する。

* * *

 米国の武力行使に対する北朝鮮軍の反撃の手段は、戦略軍が保有する弾道ミサイルだけではない。100万人以上の兵力を保有する地上軍、海軍、空軍も反撃することになる。北朝鮮軍は、日本、韓国、米国(グアム)へ弾道ミサイルを発射する一方で、在韓米軍と韓国軍の北進を防ぐために韓国へ侵攻する。

 北朝鮮軍は「烏合の衆」と揶揄されることがあるが、実際のところ、どのような戦闘を行うのか再確認することにしたい。

 ■地上軍-ソウルを攻撃できない可能性も

 米軍の武力行使に対して、北朝鮮軍は弾道ミサイルを発射するとともに、非武装地帯付近に配備されている長射程砲や多連装ロケットを発射して反撃する。ソウルを攻撃可能なのは300門に限定されるが、実際にソウルが「火の海」になるかどうかは別として、ソウルに砲弾が落下すれば、少なからず被害が出ることは間違いない。

 北朝鮮軍は約102万人の地上兵力を保有しているが、このほかにも準軍隊である「教導隊」(17~50歳)約60万人、「労農赤衛軍」(17~60歳)約570万人、「赤い青年近衛隊」(14~16歳)約100万人があり、これらが北朝鮮の防衛に動員される。

 また、米韓軍の海岸からの上陸や空挺作戦(落下傘降下)に備えるための兵力は残すことになるため、すべての地上兵力が韓国侵攻へ投入されるわけではないが、半数以上の地上兵力が非武装地帯の突破を試みるだろう。しかしこれは容易なことではない。

 北朝鮮軍の侵攻に備えて、韓国陸軍は非武装地帯沿いに12個師団を配備している。このことから、非武装地帯に直接張り付いている歩兵大隊は72個となる。本稿では詳しい計算は省略するが、このうちの韓国軍1個大隊を無力化(30%程度の損害を与える)するためには、砲弾を10万4615発撃たなければならない。

 これは、あくまでも韓国軍の歩兵大隊1個に対する攻撃である。1個大隊が布陣している面積は、正面幅3.5km、縦深2kmにすぎない(非武装地帯の総延長は248km)。極めて狭い突破口を開けるのにこれだけの弾数が必要になるのだ。

 しかも、韓国軍の防御ラインは一線ではなく、ソウルに最も近い北朝鮮軍第2軍団の正面では最大6線の防御ラインが配備されているといわれているので、乱暴な単純計算だが最低でも60万発は撃たなければならない。

 そもそも、ソウルが「火の海」になったり、北朝鮮軍が非武装地帯を電撃的に突破するという考え方は、韓国軍の反撃を一切考慮していない。韓国の尹光雄国防長官は2004年10月、北朝鮮軍の長射程砲が射撃を開始してから、韓国軍は多連装ロケットを6分以内、長射程砲を11分以内に撃破することが可能と述べている。

 ■海軍-機雷敷設とゲリラ戦

 北朝鮮海軍の任務は次の4項目が考えられる。

 1.米韓両軍の基地の破壊もしくは妨害

 →特殊部隊の潜入支援

 2.韓国の主要港への機雷敷設

 3.米軍艦艇の補給路の遮断

 4.北朝鮮の各主要港の安全確保

 これらの任務には、主にロシア製のロメオ級とウィスキー級の旧式潜水艦があてられる。北朝鮮の潜水艦で注目されるのは、サンオ級(1000トン、乗組員30人)沿岸用潜水艦とユーゴ級小型潜水艇など、特殊な潜水艦を保有していることだ。

 では、北朝鮮海軍はこれらを用いてどのように戦うのか。簡単に言えば海上および海中でのゲリラ戦だ。ゲリラ戦なら老朽化した艦艇や潜水艦でも可能である。潜水艦の任務は機雷敷設となる。北朝鮮海軍が保有する潜水艦は機雷を24~28発搭載できる。つまり、計算上は潜水艦部隊全力で1回に600発以上の機雷が敷設できる。

 例えば、対馬海峡一帯に機雷を敷設すれば、米空母機動部隊の展開を遅らせることができるかもしれないし、米韓連合軍の航路を大混乱に陥れることもできる。1隻でも触雷すれは機雷警報が発せられ、一時的にせよ、全ての艦艇の運航が止まる。

 しかし、米韓連合海軍が本格的に活動を始めたら作戦を遂行することが出来なくなる。つまり、北朝鮮海軍の潜水艦が出撃できるのは1回きりとなる。この1回で、どれだけの機雷を敷設できるのかが勝負なのだ。

 ■空軍-パイロットは技量不足、戦闘機の半数は飛行不能

 前述した大量の砲撃の問題に目をつぶったとしても、地上部隊に対する航空機の援護がなければ、地上部隊は戦力を発揮できない。他国の空軍と同様に、北朝鮮空軍の最も重要な任務も航空優勢(制空権)の確保である。

 しかし、航空優勢を確保するための北朝鮮空軍のパイロットの技量が問題となる。1996年に韓国へ亡命したミグ19のパイロットは10年間での総飛行時間は350時間だった。1996年当時でこの飛行時間なのだから、現在はもっと短くなっているだろう。(なお、航空自衛隊と韓国空軍は1年で150時間前後)

 北朝鮮空軍は1000機以上の航空機を保有している。しかし、比較的新しい航空機は、ミグ29戦闘機16機、スホーイ25攻撃機35機だけだ。しかし、これらの航空機は交換部品の不足などから稼働率は低くなっているはずだ。

 たとえ稼働率100パーセントだとしても、旧式機が大半を占める北朝鮮空軍が、韓国空軍の新鋭戦闘機と互角に戦い、航空優勢を確保することは不可能だろう。

 戦闘機がまともに戦えないとなると、残る選択肢は片道切符での韓国の軍事目標に対する体当たり攻撃となる。つまり、人間が操縦する巡航ミサイルというわけである。実際に1998年には「自殺決死隊」(特攻隊)が編成されている。

 戦闘機の体当たり以外で重要な任務は何かというと、300機保有しているプロペラの複葉機であるアントノフ2輸送機による特殊部隊の空輸となるだろう。アントノフ2は旧式だが巡航速度は時速160km、離陸距離は180m、着陸距離は170mなので、高速道路はもとよりゴルフ場でも200mあれば離着陸が可能だ。

 アントノフ2は、北朝鮮へ帰還することを考慮せず、なおかつ天候などが理想的な状態であれば理論的には西日本へも到達できる。

 ■軍事パレードの効果

 米国が金正恩体制を崩壊させるために攻撃を仕掛けてこないという確信があれば、正規軍の実際の能力は低くてもよい。とはいえ、大規模な軍事パレードや軍事演習などを行って、米国をはじめとする関係国に、「北朝鮮軍の能力の高さ」を誇示するデモンストレーションは適時行う必要がある。

 金正恩の前で軍事パレードや軍事演習はできても、正規軍は一部の精鋭部隊を除いて崩壊寸前の状態にある。このような状況だから、政治的により高い効果が期待できる弾道ミサイルや核兵器の開発を続ける必要性が出てきたのだ。

 ■中国の介入

 そもそも北朝鮮への攻撃は、米海軍が保有している3000発のトマホーク巡航ミサイルを全て使用しても足りない。北朝鮮軍が大きな打撃を受けることは間違いないが、トマホークだけで壊滅はしないだろう。

 このため攻撃が短期間で終わることは考えにくい。本格戦闘が終了し、大部分の将兵が戦わずして投降し、残存勢力による目立った抵抗がなかったとしても、数百万人もの将兵の武装解除には多大な時間がかかるだろう。

 たとえ、最終的な勝利が望めない「烏合の衆」でも、兵器の老朽化や燃料不足で能力を100パーセント発揮できなくても、朝鮮半島を混乱させて戦争を長引かせることはできる。戦争が長引けば中国軍の介入があるかもしれない。こうなると北朝鮮軍にもチャンスが巡ってくる。

 このため、米国が北朝鮮へ武力行使するにあたっては、事前に中国から「どのような事態になっても中国軍は介入しない」という確約を得ておく必要がある。さらに、金正恩政権崩壊後の新体制について合意しておくことも必要だろう。これは非常に厄介な問題で、確約や合意を得ることは簡単なことではない。

 冒頭で少し触れたが、ティラーソン米国務長官は9月30日、訪問先の北京での記者会見で、北朝鮮と「対話ルートを持っている」として、対話に臨む用意があるのかを「探っている」と述べている。

 トランプ大統領が「対話」に反対しているとはいえ、事態はまさに北朝鮮の思惑どおりに動いている。北朝鮮の弾道ミサイル発射や核実験は、米国との交渉を開始するにあたり、自国が有利な立場になったと確信するまで継続されるだろう。

【私の論評】機雷戦で北朝鮮は崩壊する(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、北朝鮮海軍による機雷敷設とゲリラ戦の懸念が掲載されています。しかし、これは日本にとってはさほど脅威ではない可能性が大です。それどころが、北朝鮮が、機雷を撒けば、それが北の命取りになります。

このような機雷が敷設されたとして、それを捕獲して、爆発しないようすることを掃海といいます。

海上自衛隊の機雷
このような掃海は海上自衛隊が持つ特殊な技術であって、世界に類を見ない世界一の技術を持っています。第二次大戦中、日本周辺は機雷で封鎖され、輸送路を断たれたとき我が国は破れました。世界に誇る連合艦隊も緒戦だけで、あとは海上封鎖という我が国軍部が想像もしていなかったアメリカ軍の巧妙な戦術に翻弄され、敗れ去りました。

このため掃海に関しては日本は戦時中から研究を重ね、ある程度の実績を挙げてきました。しかし、大型爆撃機(B29)に多くの機雷を搭載し、日本近海の海上を低空で飛びながら機雷をバラ撒くという新戦術で、あまりにも多くの機雷をばらまかれ、お手上げになってしまったのが実情でした。

戦後は、アメリカ軍が自ら撒いた機雷の除去に苦慮し、終戦時接収していた旧海軍の小型艦艇を貸与という形で機雷除去の掃海を命じ、旧海軍軍人が集まり、掃海に従事し、それが海上保安庁創立の礎になり、さらに海上自衛隊に引き継がれ、現在に至っています。、海上自衛隊創立の母体は掃海部隊なのです。

戦後も触雷による沈没事故は数多く起きており、青函連絡船は夜間の航行は禁止となり、昼間だけでした。見張り専用の船舶が同航し、浮遊機雷の発見に努め、避けて航行するのがやっとでした。その危険性が無くなったのは昭和30年代であって、掃海部隊の尽力によるものです。

実践で鍛えられてきた海上自衛隊の実力は世界でずば抜けた実力を有しており、また世界はそれを認め、期待しています。ペルシャ湾掃海は最初にアメリカ海軍、イタリヤ海軍、イギリス海軍などが掃海に従事し、浮流機雷は除去しましたが、残りは海底に潜む磁気機雷で、この掃海は海上自衛隊にすべてを任せ撤収しました。

機雷除去の訓練(出典:海上自衛隊掃海隊群HP)
海上自衛隊は、100%の掃海を目指し、掃海部隊の実力を発揮し、完全に100%の掃海を成し遂げました。この実績につては、世界の国々、特にタンカー乗りは『Japan Navy(正式にはJapan Maritime Self-Defense Force)』を大絶賛しています。

さて、このような高度の掃海能力を持っていることは、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷―【私の論評】戦争になれぱ中国海軍は、日本の機雷戦に太刀打ち出来ず崩壊する(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に海上自衛隊の掃海能力に関係する部分だけ引用します。

"
さて、日本にも昔から、掃海母艦、掃海艦、掃海艇、掃海管制艇があります。そうして、海上自衛隊が機雷掃海のために保有する艦艇は27隻に上ります。米国や英国など主要国の掃海艦艇は20隻以下とされおり、海自は世界一のの陣容を誇るのです。

「日本は高い掃海能力を持っている。掃海によって機雷を敷設することが無意味になっていく。つまり抑止力にもなる」

安倍晋三首相は一昨年6月9日の参院決算委員会で、自衛隊の掃海能力について、誇らしげにこう語りました。

最新鋭の「えのしま」型掃海艇は、木造船を使用してきた海自で初めて強化プラスチックを船体に使用し、耐用年数が大幅に延びました。掃海艇より大型の「やえやま」型掃海艦は潜水艦を標的とする深深度機雷の処理も行うことができます。

掃海艇「えのしま」
掃海艦「やえやま」
「うらが」型掃海母艦は旗艦として補給支援や機雷敷設などを行うほか、ヘリコプターの発着艦が可能で、掃海艇を狙った機雷を処理するためダイバー(水中処分員)を現場海域に送り届けます。「いえしま」型掃海管制艇はラジコンのような遠隔操縦式掃海具を操り、掃海艇が入れない水深の海域に敷設された機雷を処理します。

掃海母艦「うらが」
こうした総合力は、対潜水艦哨戒能力と並ぶ海自のお家芸ともいえます。一昨年7月の閣議決定で集団的自衛権の行使が認められたことにより、政府は新たに可能となる活動の1つとして、停戦合意前に中東・ホルムズ海峡で行う機雷掃海活動を挙げたのも、このためでした。

自衛隊が初めて海外での任務に投入されたのも、機雷掃海活動でした。

湾岸戦争終結後の平成3年、海上自衛隊はペルシャ湾掃海派遣部隊を送り込みました。当時はすでに他国海軍が活動しており、“遅参”した自衛隊に割り当てられた掃海区域は「最も危険で難しい場所しか残っていなかった」(海自関係者)といいます。過酷な条件下で海自部隊は約3カ月間に34個の機雷を無事に処分し、他国海軍から高い評価を受けたのです。
平成3年4月、湾岸戦争終結を受け、機雷掃海のためペルシャ湾に
向けて出航する、海上自衛隊の掃海派遣部隊=海上自衛隊横須賀基地
安倍首相が「高い掃海能力」を誇るのは、このときの経験も裏付けとなっています。ただ、防衛省関係者は「当時の海自部隊は装備面では他国に劣っていた面もあった」と指摘します。特に、水中に潜って爆雷を投下する装置にはカメラが付いておらず、水中処分員が目視で機雷を確認せざるを得なかったといいます。

海自が装備の遅れをカバーできたのは、先の大戦の“遺産”によるところが大きかったのです。

終戦当時、日本周辺海域には旧日本海軍が防御用に敷設した機雷約5万5000個のほか、米軍が敷設した約1万700個の機雷が残っていました。主要航路の掃海は昭和40年代後半まで行われ、現在も港湾工事前の磁気探査で機雷が発見されることがあります。これを処理してきた海自の経験が、精密で効率的な掃海能力を培ってきたのです。

機関砲や爆雷投下で処分できない機雷は、生身の水中処分員が潜って機雷に爆薬を取りつけます。水中処分員には体力、知力、精神力が要求され、海自の特殊部隊「特別警備隊」と同様に精鋭隊員が選ばれる。東日本大震災では「えのしま」型掃海母艦「ぶんご」に集約されたダイバーが、水中での行方不明者捜索に当たりました。

ホルムズ海峡だけではなく、東アジアでも有事の際は中国などが機雷を敷設して米軍や海自の艦艇を封じ込めようとする可能性が高いです。もちろん、ペルシャ湾派遣以降、海自掃海艦艇は「えのしま」型や「うらが」型などの導入により世界トップレベルとなっていいます。人と装備の両方を兼ね備えた海自掃海艦艇が担う役割は大きいです。
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さて、このような能力を持つ海上自衛隊です。半島有事の際には、この能力を使わない手はないと思います。この記事では、中国と機雷戦になったことを想定しいますが、北朝鮮とて同じです。

もし北朝鮮がブログ冒頭の記事のように潜水艦で機雷を敷設することにでもなれば、北朝鮮の軍港前にも日米の潜水艦によって機雷を撒き、それを公表するのです。同時に北朝鮮の海域で、米潜水艦によって敵軍艦を雷撃してもらい、わざとらしく「機雷が作動したと思われる」とアナウンスするのです。

すると北海軍の防衛ドクトリンがスタートすることになります。彼らは外国軍の潜水艦を近づけ北朝鮮に近づけないように、大量の機雷を撒かせることでしょう。こちらが機雷を撒くと、向こうも機雷を撒くのです。そうしてレバレッジ(梃子作用)が働いて、我が国の自衛行動が数倍の効果を生むことになります。

北朝鮮には撒いた機雷の位置を精密に記録するという訓練も装備もありません。そうして、北朝鮮の製機雷には時限無効化機構もついていません。

自分たちで撒いた機雷により、北朝鮮沿岸は半永久に誰も航行ができない海域と化します。もし、北朝鮮の機雷の数が十分でなかった場合は、日米間で撒けば良いのです。そうして、彼らは様々な商品を船で受け取ったり、送り出せなくなります。

外国船籍の原油タンカーが北朝鮮沿岸には近寄らなくなります(無保険海域となるのでオーナーが立ち寄りを許可しない)結果、北朝鮮沿岸部の都市では、石油在庫はたちどころに闇市場向けに隠匿されて、表の市場には出てこなくなるでしょう。他の生活必需物資も同様です。

およそ精鋭の掃海部隊があったとしても、大量の機雷の除去には数十年を要します。北朝鮮軍にはその準備がないので、北朝鮮は「石油高」「電力高」「輸出ストップ」に長期的に苦しむことになります。闇石油を押さえた軍閥が強くなり、石油を支配していない中央政府と大都市・大工場は逼塞します。この場合、クーデターがおこることも十分に考えられます。

機雷戦のメリットは、いったんスタートすると、核をチラつかせた脅しや、北朝鮮得意の政治的工作をもってしても、事態を元には戻せないことです。

そして、機雷戦がいったん始まれば、北朝鮮沿岸海域は長期にわたって無保険化することが確定するので、戦争の決着がどうなるかとは関係なしに、北朝鮮経済の未来は終わります。一方、日米韓は、たとえ北朝鮮が機雷を撒いたにしても、日本の掃海技術によって、支障が出ることはあまり考えられません。機雷戦がスタートした時点で、日米韓の勝利が決まるのです。

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2016年8月1日月曜日

日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷―【私の論評】戦争になれぱ中国海軍は、日本の機雷戦に太刀打ち出来ず崩壊する(゚д゚)!


平成20年6月12日、海上自衛隊による機雷の爆破処理で
海面に噴き上がる水柱。後方は神戸市街=神戸市沖
日本の国防を考える時、最大の脅威は中国だ。仮に共和党の大統領候補・ドナルド・トランプ氏が主張するように米国の後ろ盾がなくなったら、日本はどうすべきか。軍学者の兵頭二十八氏は、日本は「自衛」の結果、中国を簡単に滅する“奥の手”があると論じる。

* * *

在日米軍が2017年に急に引き上げ、日米安保が停止したとしよう。ふつうは他の集団的安全保障(たとえば核武装国である英・仏・印・イスラエルとの2国間の軍事同盟条約)を模索するだろうが、話を極度に単純化し、それもナシということにする。

すると日本は核武装国の中共に対して単独で自衛せねばならぬ。

体重百キロのチンピラに密室で襲撃された老人と同じく、弱者の自衛には手加減は不可能だ。日本は主権と独立を防衛するために、中共体制そのものを全力で亡ぼしてしまうしかない。じつはそれは簡単である。

まず尖閣の領海に機雷を敷設し、それを公表する。これは主権国の権利なのだが、チンピラの中共は必ず、わけのわからないことを叫び、軍艦か公船か漁船を出してきて、触雷するだろう。そのうえもっと軍艦を送り込むので、わが国は「自衛戦争」を始められる。

こっちは弱い老人だから体力のあるうちに早く決着をつけなくてはならぬ。すぐ、中共本土の軍港前にもわが潜水艦によって機雷を撒き、それを公表する。同時に黄海や上海沖で潜水艦によって敵軍艦も雷撃させ、わざとらしく「機雷が作動したと思われる」とアナウンスする。

すると中共海軍の防衛ドクトリンがスタートする。彼らは外国軍の潜水艦を北京や上海に寄せつけない手段として、漁船を動員して大量の機雷を撒かせることに決めているのだ。こっちが機雷を撒くと、向こうも機雷を撒く。レバレッジ(梃子作用)が働いて、わが自衛行動が数倍の効果を生むのだ。

 連中には撒いた機雷の位置を精密に記録するという訓練も装備もありはしない。しかもシナ製機雷には時限無効化機構もついてない。

自分たちで撒いた機雷により、シナ沿岸は半永久に誰も航行ができない海域と化す。中共に投資しようという外国投資家も半永久にいなくなる。なにしろ、商品を船で送り出せなくなるのだ。

外国船籍の原油タンカーがシナ沿岸には近寄らなくなる(無保険海域となるのでオーナーが立ち寄りを許可しない)結果、中共沿岸部の都市では、石油在庫はたちどころに闇市場向けに隠匿されて、表の市場には出てこなくなるだろう。他の生活必需物資も同様だ。

およそ精鋭の掃海部隊があったとしても、大量の機雷の除去には数十年を要する。中共軍にはその準備がないので、中共だけが「石油高」「電力高」「輸出ストップ」に長期的に苦しむ。闇石油を押さえた軍閥が強くなり、石油を支配していない中央政府と大都市・大工場は逼塞する。第二の袁世凱または張作霖があらわれるだろう。弱者の日本の正当防衛は成功したのである。

機雷戦のメリットは、いったんスタートすると、核をチラつかせた脅しや、シナ人得意の政治的工作をもってしても、事態を元には戻せないことだ。そもそも敵艦がわが領海を侵犯しなければ触雷はしないのだから、平和的だ。艦艇が沈む前に敵に脱出のチャンスを与えるという点では、対人地雷よりも人道的である。

そして、機雷戦がいったん始まれば、シナ大陸沿岸海域は長期にわたって無保険化することが確定するので、戦争の決着がどうなるかとは関係なしに、中共経済の未来は終わる。スタートした時点で、日本の勝利が決まるのである。

このように、強者の米国がバックについていない場合、余裕を失った弱者の日本は、却って簡単に中共を亡ぼすことになるのである。

※SAPIO2016年8月号

【私の論評】戦争になれば中国海軍は、日本の機雷戦に太刀打ち出来ず崩壊する(゚д゚)!

さて、ブログ冒頭の記事では、"日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷"としています。そうして、それがなぜなのかについて、ある程度説明はしているものの、肝心要の部分についてはほとんど解説されてないので、本日はそれについて掲載します。

その大きな一つして、真っ先にあげなければならないのは、日本の海上自衛隊による、機雷除去などの掃海能力は世界一だということです。世界一というと、以前にもこのブログではいわゆる通常型の潜水艦の能力や、P3Cなどの哨戒機による対潜哨戒能力(潜水艦を索敵する能力)は世界一であることを掲載したことがあります。

しかし、機雷除去などの掃海能力が世界一であることは、ほとんど掲載してきませんでした。これ抜きに、ブログ冒頭の記事のように、中国を壊滅される機雷作戦を敢行することはできません。

さて、日本にも昔から、掃海母艦、掃海艦、掃海艇、掃海管制艇があります。そうして、海上自衛隊が機雷掃海のために保有する艦艇は27隻に上ります。米国や英国など主要国の掃海艦艇は20隻以下とされおり、海自は世界一のの陣容を誇るのです。

「日本は高い掃海能力を持っている。掃海によって機雷を敷設することが無意味になっていく。つまり抑止力にもなる」

安倍晋三首相は一昨年6月9日の参院決算委員会で、自衛隊の掃海能力について、誇らしげにこう語りました。

最新鋭の「えのしま」型掃海艇は、木造船を使用してきた海自で初めて強化プラスチックを船体に使用し、耐用年数が大幅に延びました。掃海艇より大型の「やえやま」型掃海艦は潜水艦を標的とする深深度機雷の処理も行うことができます。

掃海艇「えのしま」
掃海艦「やえやま」
「うらが」型掃海母艦は旗艦として補給支援や機雷敷設などを行うほか、ヘリコプターの発着艦が可能で、掃海艇を狙った機雷を処理するためダイバー(水中処分員)を現場海域に送り届けます。「いえしま」型掃海管制艇はラジコンのような遠隔操縦式掃海具を操り、掃海艇が入れない水深の海域に敷設された機雷を処理します。

掃海母艦「うらが」
こうした総合力は、対潜水艦哨戒能力と並ぶ海自のお家芸ともいえます。一昨年7月の閣議決定で集団的自衛権の行使が認められたことにより、政府は新たに可能となる活動の1つとして、停戦合意前に中東・ホルムズ海峡で行う機雷掃海活動を挙げたのも、このためでした。

自衛隊が初めて海外での任務に投入されたのも、機雷掃海活動でした。

湾岸戦争終結後の平成3年、海上自衛隊はペルシャ湾掃海派遣部隊を送り込みました。当時はすでに他国海軍が活動しており、“遅参”した自衛隊に割り当てられた掃海区域は「最も危険で難しい場所しか残っていなかった」(海自関係者)といいます。過酷な条件下で海自部隊は約3カ月間に34個の機雷を無事に処分し、他国海軍から高い評価を受けたのです。
平成3年4月、湾岸戦争終結を受け、機雷掃海のためペルシャ湾に
向けて出航する、海上自衛隊の掃海派遣部隊=海上自衛隊横須賀基地
安倍首相が「高い掃海能力」を誇るのは、このときの経験も裏付けとなっています。ただ、防衛省関係者は「当時の海自部隊は装備面では他国に劣っていた面もあった」と指摘します。特に、水中に潜って爆雷を投下する装置にはカメラが付いておらず、水中処分員が目視で機雷を確認せざるを得なかったといいます。

海自が装備の遅れをカバーできたのは、先の大戦の“遺産”によるところが大きかったのです。

終戦当時、日本周辺海域には旧日本海軍が防御用に敷設した機雷約5万5000個のほか、米軍が敷設した約1万700個の機雷が残っていました。主要航路の掃海は昭和40年代後半まで行われ、現在も港湾工事前の磁気探査で機雷が発見されることがあります。これを処理してきた海自の経験が、精密で効率的な掃海能力を培ってきたのです。

機関砲や爆雷投下で処分できない機雷は、生身の水中処分員が潜って機雷に爆薬を取りつけます。水中処分員には体力、知力、精神力が要求され、海自の特殊部隊「特別警備隊」と同様に精鋭隊員が選ばれる。東日本大震災では「えのしま」型掃海母艦「ぶんご」に集約されたダイバーが、水中での行方不明者捜索に当たりました。

ホルムズ海峡だけではなく、東アジアでも有事の際は中国などが機雷を敷設して米軍や海自の艦艇を封じ込めようとする可能性が高いです。もちろん、ペルシャ湾派遣以降、海自掃海艦艇は「えのしま」型や「うらが」型などの導入により世界トップレベルとなっていいます。人と装備の両方を兼ね備えた海自掃海艦艇が担う役割は大きいです。

平成23年11月、不発弾を爆発処理し、海面に上がる水柱。
右は掃海艇「とよしま」=山口県下関市沖の関門海峡
さて、中国海軍は、新旧あわせて10万個以上の機雷を保有しているとされます。海自や米海軍は、イザというときに中国海軍には機雷を敷設する、機雷戦を仕掛ける能力と意思があるとみています。安上がりな機雷を使えば、強大な米海軍を追い払えるかもしれないからです。

米海軍大学の『海軍大学レビュー』(65号、2012年)の掲載論文「機雷の脅威を検討する-中国『近海』における機雷戦」によれば、湾岸戦争当時、イラクが敷設した1300個の機雷によって、米海軍はペルシャ湾のコントロールを一時失いました。10億ドルの米イージス艦が、2万5千ドルのイタリア製機雷で行動不能になったのです。

論文は、中国海軍が機雷をまくかもしれないケースとして、台湾封鎖や南シナ海危機、朝鮮有事を挙げました。グアム島近辺や東シナ海、西太平洋でもあり得るとしました。機雷は、水上艦艇だけでなく航空機や潜水艦、公船、商船、漁船でもゲリラ的に敷設することができます。

なぜか米海軍は、十分な数の掃海部隊をもっていません。そこで、海自とオーストラリア海軍に期待を寄せています。

さて、上の記事では、日本が単独で中国に機雷戦を挑み、中国を壊滅させることが掲載されています。機雷戦については、このように日本単独でもかなりのことができます。

しかし、より完璧にするためには、やはり集団的自衛権の行使は避けられません。政府与党の協議では、集団的自衛権の事例として、朝鮮有事などで邦人が乗った米艦船を自衛隊が守ることも論じられました。邦人がいなくても、各国民間人が乗った外国の艦艇、船舶が避難してくるときに、自衛隊が守らず見殺しになどできるはずもありません。そんなときに、北朝鮮でも中国でもいい、どこかの国が機雷を絶対にばらまかないという保証もありません。

南シナ海でも同じことです。世界の商業海運の半分が通過する大動脈であり、「航行の自由」が強く求められている海です。

中東だけでなく、アジア太平洋の海でも、集団的自衛権の限定行使として、海自が掃海にあたる事態は起こり得ます。

これは、米国の戦争に巻き込まれるという単純な話でもありません。実行するかどうかはそのときに決める話だが、日本の存立のため、安全保障の生命線である日米同盟を破綻させないために、できるようにしておくべきシビアな話です。幅広く考えておくことが、平和への備えにつながるのです。

そうして、日本の掃海能力が世界一ということは、掃海能力がほとんどゼロに近い中国に対してはかなりの強みであり、中国にとってはかなりの脅威です。

中国の081型掃海艇(ウォチー型/渦池型)技術的にもノウハウ的、人的資源の面からも
到底日本の掃海能力はには及ばない
掃海能力がほとんどゼロの中国海軍は、敵の飛行機から機雷バラ撒かれたらそれだけで、機能不全に陥ります。昔は、目標の海域に近寄らないと機雷を落とせなかったのですが、最近ゆで゜は、40海里離れたところから狙って落とせるようになりました。

米軍の最新式の「クイックストライク」機雷は、本体に滑空用の主翼が備わっていて、B-52Hから高空から投下すれば、40海里先まで飛翔して着水します。この実験は2014年9月23日に成功しています。

航空機から撒布される沈底機雷である「クイックストライク」は前からあったものですが、いよいよそれにJDAM機能が結合されたわけです。「GBU-62B(V-1)/B クイックストライクER」というのが正式名称です。

高度3万5000フィートから落とせば、40海里前に落ちます。航空機から機雷を撒く技術は、米軍は1943から実用化した。その基本的制約は2014までも同じでした。しかし、ようやくその技術に革命が起きたのです。

これを大量に使われたら、中国は南シナ海の人口島に、近寄れなくなってしまいます。ところが、米軍には「世界一の掃海屋」こと、海上自衛隊の助っ人が存在するので、機雷は怖くありません。これで、中国側の言う「領空侵犯」しなくても、一方的に中国を潰すことができます。中国には打つ手はありません。

日本にも、91式という凄まじい機雷があります。91式機雷(きゅういちしききらい)は、日本の海上自衛隊が装備する機雷で、世界初の複合誘導型追尾上昇機雷です。

91式機雷は、爆弾型の形状をしており、敷設された後は海底に鎮座する係維器と浮力を有する弾頭である缶体、そして両者を繋ぐ係維索(ワイヤー)により構成されています。目標を感知すると係維索が外れて缶体は浮力により浮上、その間も追尾しつつ目標に到達する仕組みになっています。

これまでの上昇機雷は、80式機雷の様に目標を探知して以降はそのまま浮力かロケット噴射により浮上するだけでしたが、91式は浮上中も目標を追尾し続ける点において世界初の装備です。その為に以下の特徴を有しています。
  • 係維器を筒型にしその内部に薄肉の缶体を収納することで、缶体の浮上するために必要な浮力と、航空機敷設時の耐振性、着水時の耐衝撃性を両立
  • 音響測定により目標の速度・方位を浮上追尾前に予測することによる、中・高速目標の対応や攻撃範囲の拡大
  • 低雑音性の潜水艦にも対応するためにパッシブ・ソナーだけでなく、磁気探知や測的にアクティブ・ソナーを用いた複合感応式
  • 音響測的による定方位比例航法を行うために、傾斜計方位計を用い地球重力極北を基準とした姿勢制御を行なう上昇追尾方式
91式機雷の模式図

類似した装備として目標を感知すると魚雷を発射するキャプター機雷がありますが、91式はそれらより本来の機雷寄りの装備と言えます。

この機雷簡単に説明すれば、海底に潜むように設置されており、海上や水中を中国の艦艇や潜水艦が近くを通過すれば、それを目掛けて機雷が自動追尾して、爆発し、破壊するわけです。

機雷というと、昔のイメージで、水中に設置してある爆弾で、船が触れると爆発するくらいの認識の方には、このブログ冒頭の記事の意味が良くお分かりにならなかったものと思います。しかし、ここまで掲載すれば、日本による機雷戦により、中国軍を崩壊に導くことも可能であることがお分かりになったと思います。

南シナ海でも、東シナ海でも、尖閣諸島付近でも、中国海軍は日本の海上自衛隊の機雷戦になすすべもなく、短期間に無力化され、機能を失うことでしょう。一方、掃海能力の優れた日本は、中国海軍に対して圧倒的強みを発揮することになります。

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